| ひとつ、例をあげて考えてみましょう。
3000万円の住宅ローンを、返済期間35年で借りるとします。例えば金利3%のときには月々11.5万円、総支払額では4850万円ですが、4.5%の場合は月々14.2万、総支払額は5963万円にもなります。月々にして2.7万円、総支払額では1153万円もの差が出ます。
確かに一見、低金利であるほうが支払額は低く、買い時であるように見えます。ところがこれは、あくまで一面だけを見た真理なのです。もう一方では、全く逆のことがいえます。
それは、「金利の上昇は、マイホーム価格を下げる方向に働く」ため。
なぜ、そうなるのでしょうか。
価格決めの方法に、その理由があります。
供給側がマイホームの価格を決める際、「この物件は、いくらなら売れるのか?」で決まるのではなく、「この物件を買う人は、月々いくら払えるのか?」で決まります。
例えば頭金を1000万円出せて、月々11.5万円払える購入者を想定したとします。この「想定購入者」は、金利3%なら4000万円の物件を買えるでしょう。ところが金利が4.5%に上昇したら、この想定購入者は月々11.5万円しか払えないため、この範囲で借りられる住宅ローンは2430万円。つまり、この想定購入者は3430万円の物件しか買えないため、そこまで価格を下げないと売れないということになるのです。

これは中古住宅市場でも同じです。中古住宅を探す人もほとんどが住宅ローンを組むため、「月々いくら払えるか」から逆算して借りられる住宅ローン額が決まり、そこに頭金を足した額が「買える価格」となるのです。
「低金利の今が買い時」というのはあくまで、会計学でいう「フローの視点」から見た場合の、一面的な真理です。住宅の資産価格という「ストックの視点」から見た場合には、「金利上昇は住宅価格低下をもたらす」ものであり、これも間違いなく一面の真理なのです。
実はこれは、不動産の世界の常識です。
詳細なデータは省きますが、現在はまさに「住宅ブーム」。マンションも一戸建ても、本当によく売れています。この住宅ブームには様々な要因がありますが、「低金利」も明らかに、住宅ブームのひとつの追い風となっています。
業界向けにコンサルティングを行う、とある民間企業は「金利の先高感が世の中に広がっていることから、今後は“あおり効果”を期待できる」と、先般発表したほどです。あおられて住宅を購入する人がいるだろうと、業界から期待されているのです。
住宅ブームのもうひとつの大きな要因は、「旺盛な需要」です。住宅の価格は、あくまで「“需要”と“供給”の関係」で決まります。今、ボリュームとしてそうとう大きい「団塊ジュニア」が購入適齢期に入ってきたことから、彼らとその次の世代が通り過ぎるまで、住宅業界はある程度安定的であるともいわれています。
しかしもう少し長い目で見れば、日本は本格的な人口減少社会を迎えます。住宅を必要とする人の数が減少していく、つまり需要より供給の方が多い状況になります。
「人口」という絶対的な需要が減れば、当然住宅は余ります。言うまでもなくそれは、価格下落の大きな圧力になります。ゆえに、現在120万戸程度で推移している住宅着工戸数はやがて100万戸を切り、90万戸、80万戸と、徐々にダウントレンドに向かうであろうことも、業界のコンセンサスなのです。
それだけではありません。実は、もうすでに日本の住宅は700万戸以上も余っています。日本の総世帯数約4700万世帯に対して、住宅数は5400戸。日本全体の空室率は、12%にもなります。
もちろんそれらの中には、耐震性に問題のある住宅や、立地的に難のある住宅も含まれています。しかしいずれにしても、もうそれほど新築住宅を造る必要はないということは明白なのです。

(資料)総務省 住宅・土地統計調査より作成
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