中古住宅を見極めるために、知っておきたい3つの要素は?

  • Update: 2019-07-05
中古住宅を見極めるために、知っておきたい3つの要素は?

建築物を考える上で重要なのは、3つの要素と言われています。
一つは建物の骨組みの部分になる「構造」。二つ目は給排水管や各種の住宅設備や機器を含める「設備」。そして外見やデザイン、内装によって形付けられる「意匠」が三つの要素となります。

中古住宅の評価ポイントは?その変遷

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建物の三大要素 構造・設備・意匠は、人に例えると骨格・内蔵・お化粧

建物を人の体に例えて考えてみると、建物の三大要素である「構造」「設備」「意匠」は、それぞれ骨格、内蔵、お化粧に相当するんです。
建物の「構造」は人の体を支える骨格。システムキッチンやユニットバス、上下水道や給湯器などの「設備」は、人の血管や内蔵のように住居を機能的に動かします。そして外見や室内のデザインを構成している「意匠」は、人の雰囲気や印象の部分に影響を与える洋服やお化粧、あるいはアクセサリーと考えるとわかりやすいかと思います。

これまでの中古住宅は土地で評価されていた

かつては中古住宅の査定と言えば、何よりも土地がメインでした。評価の対象は、まずは土地、次に建物という順序だったのです。日本の住宅の寿命は約30年と言われていましたから、上にある建物より土地の方が重要視されていました。また建物をチェックする時も、まず「意匠」、次に「設備」、家を支える「構造」は最も優先順位が低かったといえるでしょう。ぱっと見た時のビジュアルイメージや見栄え、印象が重視され、給湯やエアコンの調子と言った設備の具合の方が、土台や柱などよりも、中古住宅の評価として重きを置かれていたのです。

なぜこれまで建築物のチェックで「意匠」や「設備」の方が重要視されてきたのでしょうか。住宅寿命の他に、もうひとつ理由があります。


かつて昭和の高度成長期には生活空間の確保を最優先とされ、大量の住宅が供給されました。ところがその後、社会が成熟していくと住宅のステータス性にも注目が集まるようになりました。その結果、消費者たちが住宅の「意匠」や「設備」を重要視するようになっていったのです。

中古住宅が建築でも評価される時代へ

しかし現在では、建築物の安全性や耐久性が向上したことで新築・築浅・築古で差異が出てくることもあり、土地と同様に建物の評価も重要視されるようになりました。

ホームインスペクション(住宅診断)などで「構造」の部分を客観的な形で適切に評価できるようになったのもポイントです。
また最近の住宅購入者のニーズにも変化が現れ、建物の評価では、まずリフォーム・リノベーションで解決できない「構造」。次に「設備」、そして比較的変更が可能な「意匠」という順序になってきています。
中古住宅の評価はホームインスペクションを活用して、変えられない要素となる「構造」に着目すべきではないでしょうか。

中古住宅は耐久消費財になってしまうのでしょうか?

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中古住宅が陳腐化しているって本当?

住宅関連の雑誌などを見ていると、毎年のようにモデルチェンジされる設備機器や新開発の建材や素材が次々に投入され続けていると感じます。まるでファッションの流行を追うように様々な欧米や北欧のスタイルを真似た外観デザインが、シーズンごとに移り変わっているのです。
こうした状況を見ると最新にこだわって住宅設備を揃えても、わずか数年で陳腐化して最新のものに取って代わられるのが現状です。

欧米など先進国で著しく短い日本の中古住宅寿命

こうした住居を取り巻く状況から、日本の住宅寿命は欧米を含めた先進国の中で圧倒的に短いと指摘されています。
住宅ストック数を年間新築着工数で割った数を耐用年数を考える上での目安としてみると、ドイツにおける住宅の耐用年数は79年、フランスでは85年。さらにアメリカはもっと長くて103年。イギリスではさらに長く141年とされています。

一方、日本の住宅寿命はわずか30年程度。100年住宅が当たり前の先進諸国と比較して、住宅寿命が著しく短い日本の中古住宅は「耐久消費財」に近いかもしれないですね。

中古住宅の建て替えへの感覚も日本は特殊?

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欧米での中古住宅の建て替えの感覚

住宅の耐用年数が長い欧米では、親子代々住宅を受け継いでいくのが普通の感覚になっています。親子3代にわたって大切に住宅を守りついでいくのですから、たまたま自分の代が建て替え時期にあたってしまうと、それは「アンラッキー」と言われてしまうそうです。
一方、日本では30年しか耐用年数がありませんので、30年とか35年の長期住宅ローンを組んで、払い終わったと思ったら建て替えをしなくてはならない時期…という例も多いのではないでしょうか。

住宅市場の違いはホームインスペクション(住宅診断)にも反映

この住宅寿命の違いは、ホームインスペクション(住宅診断)にも反映され、その結果として住宅市場の構造も日本と欧米では大きな違いがあります。

日本の住宅市場は、新築に対して中古住宅が圧倒的に少ないという特徴がありますが、アメリカは逆で新築110万戸に対して中古660万戸と、中古の方が多い傾向です。イギリスでも新築20万戸に対して中古が160万戸。住宅寿命の違いから、日本と欧米とでは新築と中古の比率が逆になっているのです。

中古住宅の耐用年数を考える

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中古住宅の耐用年数が持つ2つの側面

住宅の耐用年数を考察する上で、考えるべき側面が2つあります。
一つは物理的にどれぐらいの期間、その建物が住居用途に耐えられるのかという「物理的耐用年数」。さらにもう一つの側面として、住む人や市場のニーズに応じることが出来る期間としての「社会的・経済的耐用年数」も重要です。

住居の間取りや広さが住人のライフスタイルにマッチしなければ、建て替えや住替えが必要になるのは自然の流れ。市場のニーズに対応できなければ、不動産としての資産価値が低下していくことになり、ニーズに合わせて戸建からマンションなどに建て替えた方が資産活用の面で優位になる場合もあるでしょう。

「物理的耐用年数」と「社会的・経済的耐用年数」。この両面を満たさなければならない点が、日本の住宅の耐用年数が短い理由のひとつとして指摘されています。

中古住宅の物理的耐用年数を延ばす工夫

それでは「物理的耐用年数」を長くするためには、どうすればよいのでしょうか。
まず「耐震性」と「耐久性」を保持すること。そして掃除や手入れのしやすさ、給水管周りや外壁などの点検を含めたメンテナンス性。さらにお子様の成長やシニアライフなど、変化していくライフステージに合わせて間取りやスペースを変えられる可変性も重要です。

地震が多い日本では耐震性が特に重要視されており、建築基準も厳しいものが導入されています。特に1981年から導入された「新耐震基準」は大きな節目といえるでしょう。築年数により「新耐震基準」を満たしていない旧耐震の中古住宅は要注意です。適切な耐震補強などで、建物の「物理的耐用年数」を伸ばすことを視野に入れた方がよいでしょう。

中古住宅の「構造」が建築基準に合致しているかをチェック

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住宅は設計だけが良くても、その性能を十分に発揮させることは出来ません。
建物の「構造」の要素を判断するためには、建築基準に合致した適切な施工になっているのかにも着目しましょう。


中古物件を見る際に「有名大手だから大丈夫」だとは一概には言えないのも悩ましい点ですし、無名の小さな施工会社が建てた素晴らしい施工の物件もあります。施工精度や仕上がりも千差万別。
特に中古住宅の「構造」は外観だけではわかりづらく、施工会社の規模や知名度で判断するのは難しいところです。


自らの目で実際に中古住宅を見ながらチェックポイントを確認し、プロのホームインスペクター(住宅診断士)によるホームインスペクションなど、第三者機関の調査も含めて判断したいところです。