【北海道胆振東部地震・現地レポート】液状化現象の被害と災害リスク 

  • Update: 2019-09-05
【北海道胆振東部地震・現地レポート】液状化現象の被害と災害リスク 

2018年9月6日3時7分、北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源として発生した【北海道胆振東部地震】から1年が経とうとしています。

今回、さくら事務所では北海道胆振東部地震からの教訓を風化させないことを目的に、さくら事務所ホームインスペクション北海道の全面協力のもと、北海道胆振東部地震を振り返るコラムを9月5日・6日の2日間にわたって特集します。

本日の第1弾では、北海道胆振東部地震の被害状況をさくら事務所ホームインスペクション北海道の報告と合わせてお届けします。

震度7の揺れって?

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内閣府の発表※1によると、北海道胆振東部地震の地震規模はマグニチュード6.7、震源の深さ37km、北海道厚真町(あつまちょう)で最大震度7を記録、北海道安平町(あびらちょう)、北海道むかわ町で震度6強、北海道千歳市(ちとせし)、北海道日高町(ひだかちょう)、北海道平取町(びらとりちょう)、北海道札幌市東区(さっぽろしひがしく)で震度6弱を観測、死者42人・重症者31人・軽傷者731人という大きな被害を出しました。

この「震度7」という数字は震度階級のもっとも大きな階級で、気象庁※2によると、『立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。』とされ、耐震性の低い木造の住宅では、傾くものや倒れるものが(震度6強に比べて)さらに多くなるとされ、その地震被害にあった影響や恐怖は計り知れません。

北海道胆振東部地震での建物の被害は、住家被害として全壊462棟・半壊1,570棟・一部破損12,600棟、非住家被害が2,456棟という状況でした。

※1 内閣府「平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について」(平成31年1月28日)
※2 気象庁「震度について」

さくら事務所ホームインスペクション北海道の現地調査 ~札幌市清田区

北海道胆振東部地震の被害状況で注目されたのは、「土砂崩れ」「液状化現象」です。

とくに内陸部に位置する札幌市清田区で起きた「液状化現象」は、これまで臨海部や河川敷で起きやすいと思われていただけに、多くの衝撃をもたらしました。

さくら事務所ホームインスペクション北海道では、札幌市清田区で起きた液状化現象の現場を視察し、被害状況の把握に動き出しました。

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実は北海道では内陸部の液状化現象は過去にも起きており、札幌市清田区でも1968年、2003年の十勝沖地震の際に液状化現象被害が報じられています。

液状化現象は、以下の条件が揃うと発生するとされています。

  • 「弱い(締め固まっていない)細かい砂(細砂)」が地盤(地中)の一部にある
  • その「細砂層」に水が多く含まれている
  • 上記の層に強い揺れが加わる

逆の言い方をすれば、これらのうち一つが欠ければ液状化被害は起きないということで、埋め立て地であっても細砂層を含まず、たとえば「粘土質」の地層だけで構成されていれば液状化しにくいということになります。

今回視察した札幌市清田区の現場でも、同じ住宅街エリアにありながら通り一本違うだけで、まるで違う景色が広がっているという現象をいくつも目の当たりにしました。一見同じように見えても、地盤の状況が異なっていたことでこれだけの大きな被害状況の明暗につながってしまう怖さを感じます。

液状化現象が起こるとどうなるの?

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広範囲で液状化現象が起きれば、水が地上に浮くと同時に、吐き出された水の分だけ地盤が沈下します。その影響で街中の配管類が破損してしまうことがあり、自宅内の配管類に破損がなくてもしばらく水やガスが使えなくなる可能性があります。

実際、北海道胆振東部地震では、ガスは影響がなかったものの、北海道内の44市町村において最大68,249戸の断水が発生しました。

また、平坦であった歩道や建物の出入口に大きな段差が生じ、被害が出た場所ではベビーカーや車いすが使いづらくなったり、足が不自由な方が動きづらくなることも。

住まいの直下で地盤沈下が発生すれば家は大きく傾き、部分的に破損したり、表面上大きな破損は見られなくてもいずれ倒壊する恐れもあり、地盤ごと直さない限り居住するには危険を伴うと判定されることもあるのです。

しかしながら、地盤補強にかかる費用は百万円単位と言われており、建物の補修費用まで合わせれば多額の費用が必要となるため、場合によっては危険と知りつつもそのような生活環境の中で生活を継続しなくてはならない状況に置かれてしまう方ことも考えられます。

液状化現象が起きてしまった札幌市清田区の被害現場は、盛り土された住宅街であったことが原因の一つであるとされていますが、このような液状化現象の発生条件と重なる土地は日本全国に存在しています。

東京都心部でも河口周辺や河川に近いエリアなど埋め立て地が多く、決して他人事とは言えない状況です。

液状化現象の危険性を事前に知るには

日本は多くの地域の地盤調査データを保有しており、行政ごとで地域の液状化予想マップを作成しています。
ですから、これから住む家や地域を選ぶといった方は、まずは液状化予想マップでその地域がどの程度の危険性なのか見ておくのがおすすめです。
【市区町村名+液状化マップ】といったキーワードで検索してみましょう。

住みたい家の地盤データを知るには

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建物を建てるとき、多くの場合、地盤調査会社から地盤報告書が発行されています。マンションなどの大きな建物と一戸建てでは調べ方も異なりますが、いずれも予定された建物に対してどんなリスクがある土地なのかの考察が書かれているのが一般的です。

建設中の物件では工事会社が報告書を保有していることが多く、閲覧できる可能性が高いのですが、考察が書かれているといってもデータ自体は難しい情報が多く、わかりづらい部分も少なくありません。そういった場合は、ホームインスペクター(住宅診断士)など詳しい人に見てもらいましょう。

中古物件の場合は所有者が持っていなければその土地ピンポイントのデータを入手することは難しく、近隣の調査データを調べることになります。耐震診断などのホームインスペクション(住宅診断)を実施する場合は、地盤調査データも調べられないか、相談してみてください。

さくら事務所【災害リスクレポート】の有効活用を

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まだ、住宅を購入するかどうか漠然とした検討段階のため、売主へのコンタクトがとりづらい、という場合もあるかと思います。そんなときにぜひ活用していただきたいのが、さくら事務所の「災害リスクレポート」です。

さくら事務所の「災害リスクレポート」では、ご希望の住所を中心とした周辺地域の災害リスク(地震・液状化・浸水・土砂災害など)をレポートにまとめ、さくら事務所のオリジナル解説書をつけて、難しいデータやリスクをわかりやすくお知らせします。調査に必要なのは、「住所のみでOK」という手軽さも多くの方に支持されています。

液状化現象をはじめ、地震や豪雨災害など近年多発する自然災害に対しては、耐震性能などで建物の性能を上げることも大切ですが、周辺エリアの災害リスクや過去の被害の有無を知っておき、どんなことが災害が起きる可能性が高いのか、知っておくことが大切です。

住宅購入は一生に一度あるかないかの大きな買い物です。あの時知っていれば…という後悔をしないためにも、土地固有のリスクを事前に把握しておきましょう。