<中古戸建・マンション>リノベーション工事にも効く、ホームインスペクション

  • Update: 2020-08-18
<中古戸建・マンション>リノベーション工事にも効く、ホームインスペクション

ホームインスペクションはどのタイミングで行う?リノベーション済み物件でも必要?

少し前まで、戸建住宅やマンションは新築がベストといった風潮がありましたが、最近はリノベーションやリフォーム技術の発達、市場の拡大も手伝って、中古物件の市場が大いににぎわっており、床を張り替えたり、壁の色を塗ったり、自分たちで、好みのリノベーションを楽しんでいる方も大勢いらっしゃいます。また、プロが施工したリノベーション済み物件を購入することも選択肢のひとつです。

ただ、どれだけリフォーム・リノベーションを行ったとしても、建設当時から使い続けている構造体や建材の傷みが把握されているかどうかや、一見、きれいでも不具合がきちんと補修されているかどうかは確認する必要があります。ホームインスペクションは、プロの住宅診断士が住宅に訪問し、雨漏れ・水漏れ等、生活をするうえで困った問題が起こる前に、目視・触診できる範囲で様々な傷み・不具合の症状を診断し、ご依頼者様が安心して生活できるよう、しっかり情報をお伝えするお仕事です。

今回は、中古の戸建住宅やマンションを購入してどの段階でインスペクションを行うべきか、また、リノベーション物件を購入した場合でもインスペクションを行うべきかについて、さくら事務所が豊富な事例を交えて、解説いたします。

国は中古市場を活性化しようとしている

日本の住宅流通量に占める中古住宅の流通シェアは平成25年の段階で約14.7%と海外と比べて低水準となっています。そのため、現在、中古市場を活性化しようと国が施策を打っています。このまま新築物件だけに頼っていても大都市圏を中心に、利便性が良い場所にはすでに建物が多数立ち並んでおり、新規の建設は頭打ちになることが目に見えているからです。
また、「スクラップアンドビルド」で、作っては壊して建替えていく文化のままでは環境やエネルギーの負荷も大きいことから、建物を使い続ける文化へシフトしようとしています。

一方で中古戸建やマンションを購入しようとする人は、建設当時のまま使い続けられるか、早急に直すべきなのか、様子を見てなおせばいいのか、など判断ができず、どのようにリノベーション工事をしたらよいかについて不安に感じています。こうした不安を払しょくするためにも、ホームインスペクションの活用が望まれています。

中古戸建やマンションはどのタイミングでのインスペクションが適切か

リノベーション工事を前提に中古戸建やマンションを購入した場合、その工事の過程でホームインスペクションに適したタイミングがいくつか存在します。それは大きく分ければ、リノベーション工事前と工事中、そして工事が終わった後です。各段階でのインスペクションの効果やチェックすべき箇所について考えてみましょう。

リノベーション工事前

リノベーション工事に入る前にホームインスペクションを行えば、雨漏りやカビ、水漏れなど、特に急ぎ修理すべきところが把握できたり、重点的に修理・交換するのが望ましい設備機器や内装などが特定しやすくなることから、リノベーション工事でどこまで交換していくのかなどの検討に役立ちます。また、まだ工事の規模や範囲など、具体的には決めていない場合には、どの箇所を重点的に修繕すればよいかがわかります。インスペクションの結果をリノベーション工事に反映することができれば、適切な工事を行うことができます。

リノベーション工事中

リノベーションと一言で言っても、構造躯体以外のほとんどを交換する大掛かりな工事や、間取りは変更せず、内装材や水周りの設備機器などを入れ替える工事など、実施する工事の内容もバラバラです。
間仕切り壁や床・天井の仕上げ材を壊して新たに作り直す場合には、「解体工事が終わり、リフォーム工事に入ろうとする前(スケルトン)」の状況で一度ホームインスペクションするのがお勧めです。その次には内装材を壁などに貼る作業が予定されますが、一度解体時に見ておくことで外壁からの雨漏り有無、給排水管からの水漏れ有無などが確認できて、工事の予定には入っていなかった修繕などを検討できるかもしれません。

【リノベーション工事に入る寸前のスケルトン状態でのホームインスペクション例】

外壁の内側に断熱材が一切貼られておらず、結露が原因と思われる紫のカビが一面に生えていました。また、一部では新築時の施工が不十分と思われる「鉄筋の爆裂(錆び)」によるコンクリートの剥がれも。
内装工事に入る前に、今後カビが再度繁殖しづらいようカビの滅菌処理をしたり、また結露を起こしづらいよう断熱材を壁に新に施工することなどの対策を、リノベーション工事に追加することになりました。

 

建設当時からの30年以上使い続けている排水たて管(上階から捨てられた水が通る管)。水漏れなどの跡はなく、特段修繕など不要でしたが、上階の住戸が水を流すと流水音が聞こえる可能性があることから、遮音用のグラスウールを巻き付けたり、パイプスペースの周囲に貼る石膏ボードを2重にするなどの対策案を紹介することができました。

 

次に見ておきたいのはリノベーションの工事中。こうしたリノベーション工事中にインスペクションができれば、完成後では隠れて見えなくなる壁の内部、天井裏、床下などの診断が容易になります。普段は時間や手間がかかる箇所が簡単に確認することができるからです。インスペクションは基本的に非破壊検査ですので、工事のタイミングでもないと内装材で隠れてしまう部分まで目視することはできません。工事中は普段は難しい箇所の目視が可能です。リノベーション工事はインスペクションのまたとない機会となっています。

【リノベーション工事中のホームインスペクション例】

キッチンや浴室の換気扇ダクト(配管)について、外から一定の距離の場所までは、万が一の火災時の延焼を防ぐために「不燃材」という材料で覆うことが義務付けられていますが、リノベーション工事中のインスペクションによって、ダクトに不燃材がきちんと巻かれていることを確認できました。

 

管理規約には、使用できる床材の遮音等級を指定している管理組合も多数あります。ホームインスペクションにより、当初から設置を予定していた製品が搬入されていたことが確認できました。

リノベーション工事完了時

リノベーション工事が終了すると、部屋は見違えるようにきれいになります。工事後は工事そのものの不具合の箇所と、元々存在しかたもしれない不具合の箇所、という2点を重点的に確認することが必要です。見かけ上はきれいであっても、工事自体が不備や不具合を生み出していることもあります。また、リノベーション工事前や工事中にホームインスペクションを実施していない場合、工事前から不具合があったものを隠している可能性もあるからです。

【リノベーション工事完了時のホームインスペクション例】


キッチンの通水検査をしたところ、何度水を流してもシンクの一部に水が溜まり、排水口に流れないことから、勾配計で傾きを調べたところ、シンクが水溜まりの方向に向かって下がって取り付けられていることがわかりました。

 

浴室の水栓は、水を流していないときも常に水滴が滴っている状況でした。お風呂場のため水で濡れることに問題はなくとも、無駄な水道代がかかってしまうため、修理が必要です。

 

浴室でバスタブに水を張り、水栓を外して水を流したところ、すぐに水が流れなくなり、水位が下がりませんでした。排水管の勾配(傾き)に不良があるか、排水管に補給する空気(通気)が足りないかのいずれかが考えられるため、リフォーム会社に確認してもらうことになりました。このままでは、一度張った水を捨てることができないため、日常でお風呂に入ることができません。

リノベーション済み物件でもホームインスペクションは必要

買取再販(かいとりさいはん)物件といって、不動産業者が中古戸建やマンションを買い取り、リノベーションを施して販売する手法があります。
プロの不動産業者が行うリノベーションなのでポイントを押さえた工事が特徴で、見た目は新築物件と遜色ないレベルのものもあります。不動産業者も物件価格に利益を乗せて売却できるので大きな利益が期待できます。
ただ、中には利益のために、不具合のある箇所を放置したままリノベーション工事を行った物件も見受けられます。こうした不具合を見逃さないためにも、リノベーション済み物件であってもインスペクションが必要なのです。

まとめ

国の施策もあり、今後中古市場は活性化していくことが期待されます。中古戸建やマンションの流通も増えていくはずです。
それに伴い、リノベーション工事を行う機会やリノベーション済み物件との出会いも多くなります。そして、残念ながら、不具合のある工事も増加が予想されます。
インスペクションには、不具合を発見して工事の参考資料とする使い方があります。
また、工事がきちんと行われたかの確認を行うことも可能です。こうした様々な効果が期待できるインスペクション。ぜひ活用してください。