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【インタビュー|鬼塚 竜司】
お客さんのために働きたい。 管理組合コンサルティングの仕事で それが実現できています

この十数年で、マンション管理組合向けコンサルティングサービスをご利用される管理組合が急増。そのさくら事務所の主要事業を支えるコンサルタントの一人が、マンション理事会・総会700回以上の出席経験を誇る鬼塚竜司です。


鬼塚 竜司

一級建築士
1級建築施工管理技士

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。


マンションの管理会社での14年間の経験で見えたこと

現在はマンション管理組合のアドバイザー的な立場で活動する鬼塚さんですが、これまでどのようなお仕事をしてきたのですか?

学生時代は、大学の建築学部で学びました。主に建物の空調などいわゆる「環境系」の研究をしていたのでそういった方面に興味があり、空調や給水、排水などを扱う設備系の会社に入りました。

そちらの会社では何年くらい働かれたんですか?

4年くらいですね。その会社での仕事はめちゃくちゃハードワークで……。それでマンションの管理会社に転職したんです。

それまで建築ばかりやっていて、実際にそこで暮らすお客さんと接することがなく、こういう仕事をやってみたいなと前々から思っていて。

カッコつけないで言うと、世の中にマンションはたくさんあるので、マンション管理の仕事だったら今後食いっぱぐれることはないなと思ったところもあります(笑)

それでマンション管理のお仕事を始められたんですね。

私は分譲マンション管理会社の中で、主に修繕部門にいました。

マンションでどこかが壊れた、修繕が必要だという時に、管理組合の理事会に呼ばれて見積もりを説明したり、工事を行う協力会社と打ち合わせをしたり。工事の管理も私の仕事でした。

楽しいことも苦しいこともありましたが、その会社では結局、14年ほど勤めました。

それから独立してご自身の会社を立ち上げたんですよね。どのような経緯でそうした思いに至ったのでしょうか。

結論から言うと、お客さんのために仕事をしたいという思いを大切にしたかったんですよね。

いまでも忘れられない、管理組合の理事長に言われた一言

どういうことですか?

私が勤めていた会社が利益重視の方針を強めたんです。企業ですから、毎年右肩上がりの成長を目指さないといけないのは当然です。

でも、四半期ごと、単年ごとと、短期的な売上向上が現場に求められるのが辛くて……。

マンションの管理会社って、本来は長いスパンで管理組合の収支や状況を考えて最善の提案をしていかないといけないんです。

でも、売上至上主義に陥ってしまっていたため、まだまだ建物の状況が悪くなっていないのに必要のない工事を勧めなくてはいけなくて。そういう思いを抱きながら仕事をしているのがイヤになったんです。

何のために仕事してるのかわからなくなった、ということでしょうか。

そうです。いまでも忘れられないことがあって……。

ある日、築35年くらいのマンションの管理組合に工事の提案に行きました。かなり利益率を高く取る工事だったので、その工事をすると管理組合の収支が悪くなってしまうことは十分にわかっていた上でのことです。

そうですよね、管理組合と日々連携を取っているわけですから、収支状況もご存じですもんね。

はい、それでも高い工事を売りに行くんです。そうしたら、新しく転入されて理事長になったばかりの方がこうおっしゃいました。

「このマンションが建ってから35年間、ずっとお宅が管理をしてて、マンションの管理状況、管理組合の収支がこのザマなんですね。お宅にはもう頼みたくないよ」……と。

悔しいですけど、「そうですよね」って私も思いました。そんなこともできない管理会社に存在価値はあるのかなと。

「管理組合のため」ではなく「自社の売上」のために工事を売る

しかし、決してお金があるわけでもない管理組合に対して、そうやって工事を売り込むことがあるんですね。

日常的にありますよ。管理会社が売上を上げるには工事をするのが一番ですから。

たとえばマンションの大規模修繕工事。一般的には12年に1回やらないといけないと言われていますが、マンションの管理状況によっては、17、18年に1回というふうに期間を広げることは十分に可能なんです。

ところが私のいた管理会社では、会社の中長期計画の中で、そのマンションの大規模修繕工事を「12年に1回」としているんです。管理会社にとって大規模修繕工事の受託はかなり大きな売上になりますからね。

管理状況の良し悪しにかかわらず、12年に1回と勝手に内部でカウントしてしまっているというわけです。

そういうふうに自社の売り上げのためだけにソロバンを弾く会社だったので、これはもう無理だなと思って退職しました。

そうして独立された、と。

管理の仕事は好きだったので他の管理会社に転職することも考えたんですが、どこの管理会社に移ってもたいして変わらないだろうと思って、それなら自分でやったほうがいいんじゃないか、と。それが2021年3月ごろのことです。

なるほど。さくら事務所にコンタクトを取ったのもそれくらいの時期のことですか?

はい、独立してすぐでしたから、2021年6月です。さくら事務所のことは以前から知っていました。YouTubeの動画もほぼ全部見ていましたし。

動画の中で業界の闇やタブーについて問題提起をすることも多々ありますが、それもすべて、不動産業界がよくなるために、という思いでのことなんですよね。

その点にとても共感を抱いていて、少しでも一緒に働かせてもらうことができれば勉強になるかなと思って連絡をしました。

さくら事務所で始めた、管理組合コンサルティングという仕事

さくら事務所で管理組合コンサルティングのお仕事を始められて、いかがですか?

マンションの管理組合の理事って、だいたいが輪番(住戸番号などで順番に回ってくる)で決められているんです。なので、ほとんどの人が知識も経験もありません。10数年に1回の大規模修繕工事ともなれば、たまたまその年に理事の順番に当たって、初めて担当するというケースがほとんどでしょう。

 

そんな状況で経験のない人ばかりが話し合いをしても、何も進みませんよね。工事にかかる金額や規模の大きさから決めるべきことも多く、専門知識も「物差し」となる情報もなければ、その人ごとの価値観のぶつかり合いになって、ケンカが起きてしまうこともしばしばです。

いざこざを避けるために、付き合いのある管理会社の言う通りにして進めるというのもひとつの方法ですが、理事の中に、管理会社の言いなりになりたくないと考える人が現れると、正論かもしれずとも理事同士の意見がまとまらず、理事会は進まなくなります。なかなか難しいものなんです。

そんな中に、私が出向き、理事会や総会での合意形成を目指していく。過半数で話は決まるわけですが、同じマンションの中で意見が大きく割れたまま住民同士がいがみ合った結果として話が進むのは避けたいですからね。

5割、6割で満足するのではなく、判断に必要な情報をしっかり提供して、最低でも8割、できれば10割の合意形成まで持って行きたい。

 

なかなか人間くさいお仕事なんですね。管理組合コンサルティングのお仕事に必要な資質などはありますか?

建築に関する知識は最低限必要となりますが、人と向き合う力もかなり大事ですね。

マンションの理事には老若男女、多種多様な方々がいらっしゃるので、どうやって理事会の意見をまとめていくかを考えた時には、相手に合わせた説明をしないといけません。自分の価値観だけで説得すればいいというわけにはいきませんから。

 

場数というか、経験がものを言うんでしょうか。

様々な人と向き合ってきた場数はめちゃくちゃ大事です。「この人にはどういう説明をしたら理解し、納得してくれるかな」ということを常に考えていないとうまく進みませんから。

あと、場数、経験という意味では、地域性の違いも頭に入れておく必要がありますよね。

 

地域性ですか。地域によって何が違うんですか?

地域というか、エリアと言い換えてもいいですね。たとえば、高所得の方が集まるエリア。こうしたエリアでは投資目的で物件を所有している方も多いので、住人の目線とは考え方が異なります。

また、不動産や金融に詳しい方が多いので、そういった点を理解した上で私たちも説明をしなくてはなりません。相手の求めるものを考えたうえで自分の人格を変える、と言ってもいいでしょう。

 

なるほど、よくわかりました。ところで鬼塚さんは建築士の資格をお持ちですよね。資格はいつごろ取られたんですか?

ええ、一級建築士の資格を持っています。管理会社に勤めている時に取りました。当時は30歳前後で若かったので、名刺に「一級建築士」と刷られていると箔が付くかなと思って(笑)

 

建築士の資格はマンション管理のお仕事で役に立ちますか?

私の経験のすべてを理事に知ってもらうことは難しく、どんな経験やスキルを持っているのかは図りづらいでしょう。そこで建築士を持っていると、国家資格ですから、話す内容により説得力を持たせることはできます。

また、建築士の資格は簡単に取れるものではありません。勉強し、多くの知識を身につけていないと合格はできませんので、その知識は管理組合コンサルティングの現場で必ず役に立ちます。取れるなら取っておいたほうがいいでしょう。

「プロポーザル方式」をマンション管理業界で広めていきたい

ちょっとお話は戻りますが、鬼塚さんはマンション管理会社時代にさまざまなジレンマを感じられたということですが、クリーンにビジネスをしていきたいという思いは、今現在、さくら事務所で実現できていますか?

ええ、それはもう。

私たちがいただくコンサルティングの料金は決して安いものではありませんが、それでも、私たちの理念やご提案する内容、仕事の進め方に共鳴してくださるお客さんはきちんといらっしゃって。数としてもどんどん増えてきています。

私たちの推進する「プロポーザル方式」が今後も広まっていってくれたらいいなと考えています。

プロポーザル方式とは何ですか?

たとえば、ある修繕工事をやるとなったとき、古くからのやり方だと、まずは設計会社が仕様とその内訳(どの部分をどのように工事するのか)を決めて、複数の施工会社にその同じ条件について見積もりを頼むんです。

各社に出されている仕様は同じものですから、単純に価格競争になります。最も低い価格を出した施工会社が工事を受注できる、ということになるわけです。

ただ、このやり方だと、談合がしやすいんですよね。仕様も内訳も決まっているので、数字をちょいちょいって入れるだけでいいんです。

マンション修繕工事の業界では談合は当たり前に行われていて、繋がり合っている複数社ですでに談合の話がまとまっている時は、たとえば4社が見積もりに参加していることになっていても、すでに4社の中で受注することが決まっている1社が残りの3社分の見積書も作っちゃうんです。

こうした習慣がこの業界では、まかり通っていました。

ところが、私たちが勧めるプロポーザル方式では、同じく相見積もりを取るにしても、その内訳や数量など、どんな工事を同提案するのかは、各社に任せるんです。

このやり方だと、ただ単に数字を書き換えるだけというわけにはいきませんから、談合がしにくくなる。

それだけでなく、プロポーザル方式だと、各施工会社が価格だけでなく、仕事内容で勝負することができるんです。

「うちはこういう長期保証をつけますよ」「うちは工期は長めですがこういう箇所に新しい材料を使ってますよ」といったように。この方法だと、施工会社側も「どんな提案をしてみよう」と考え、モチベーションが上がりますよね。

何よりも、そうやって自由に提案してもらうことは、管理組合にとってのメリットが非常に大きいのです。なんといっても、マンションの長期的な品質のために各社が提案を出してきてくれるわけですから。ただ、専門知識のない理事だけで複数の案を比較検討することはできません。そこで私たちのような存在が必要になるんです。

 

どんな関わり方をしているのですか?

一般の方にもわかりやすくなるように、まずは各施工会社から上がってきた案を私たちが比較表を作って整理します。「A社はこういう点を強く打ち出しているけど、実はB社のほうがその点は優れている」とか、専門知識のある私たちが説明して差し上げるんです。すると、管理組合側がベストな方法を選ぶことができます。

そのマンションが求める品質水準に適した工事方法や材料を各社がそれぞれ提案し、私たちはその情報を通訳しながら、判断するための「物差し」をご提供して料金を頂戴し、管理組合は自らの考えと選考プロセスを主体的に経て、納得して工事を発注できる。これって、まさに「五方良し」ですよね。

管理会社の勤務経験者は即戦力

まさに五方良しですね。

もし、かつての私のように、マンション管理の業界でジレンマや不満を感じている方がいらっしゃるなら、「さくら事務所で一緒に働きませんか?」と私は言いたいです。

管理組合に寄り添い、管理組合にとってベストと思われることを提案し、それが仕事になってお金をいただける。これはさくら事務所で働かせていただいているからこそ、だと思っていますから。

ちょっと意外かもしませんが、管理会社での経験は管理組合コンサルティングの仕事で活かすことができます。「経験を活かすことができる」どころじゃないですね、間違いなく即戦力になれます。

少しでも気になったら、自分にはできるだろうか?と考えるよりも前に気軽に問い合わせてください。私をはじめ、さくら事務所の気さくなメンバーがざっくばらんにどんな仕事をしているのか、お話しますよ!

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