不動産格差
長嶋 修
2017年5月12日 発売!
長嶋 修
2017年5月12日 発売!
序 章 | 不動産の9割が下がっていく |
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第1章 | 2022年、住宅地バブルの崩壊 |
第2章 | 「どこに住むか」が明暗をわける |
第3章 | 住宅の評価に革命が起きる |
第4章 | マンションは「駅7分以内」しか買うな |
第5章 | 一戸建ては手入れ次第で資産になる |
第6章 | 中古住宅に賢く住む |
第7章 | 空き家対策の基本は「直ちに売却」 |
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不動産は買い時なのか? この質問に一言で答えるのは昨今、非常に難しくなりました。理由は大きく二つ。一つは、「世界の政治・経済情勢が非常に不透明であること」です。イギリスはEU離脱を決めました。アメリカでは保護主義的政策を打ち出す不動産王トランプ氏が大統領に就任、演説やソーシャルメディアで過激な発言を繰り返し、そのたびに金融マーケットは上へ下へと翻弄されています。トランプ政権に対する議会の対応も不透明なままです。
もう一つは「不動産市場の三極化」です。国内のほとんどの不動産価格は下がり続け、価値ゼロないしはマイナス価値に向かう物件が出てくる中で、一部の不動産には上昇の余地が残されています。
その内訳はざっと、
「価値維持あるいは上昇する10〜15%」
「徐々に価値を下げ続ける70%」
「無価値あるいはマイナス価値に向かう15〜20%」
といった具合です。
このことは、どのタイミングで、どんな場所に、どのような不動産を買うかで、天地ほどの格差が生まれることを意味します。資産化する「富動産」からマイナス資産となる「負動産」まで、「勝ち組不動産」と「負け組不動産」がはっきりする時代が到来したのです。
まずは2012年、民主党から自民党への政権交代後の不動産市場を振り返ってみましょう。
民主党政権のデフレ政策ともいえるような政権運営、また東日本大震災といった不幸も重なって、停滞していた日経平均株価は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を政権運営の柱に掲げる自民党への政権交代で、その局面が大きく転換しました。
「アベノミクス」による資産インフレ期待に加え、リーマン・ショック後一定の回復を果たしてきた他先進国に比べ、割安感もあって、8000円台だった株価は13年12月末、1万6291円(終値)へと急浮上しました。
東京都心部の中古マンション価格動向は、日経平均株価と見事に連動しています(図表1)。12年の政権交代以降のグラフを見れば、都心3区(中央区・港区・千代田区)の中古マンション価格は株価と軌を一にするように、一気に停滞から右肩上がりへ反転していることがわかります。
そして15年9月、2回目のいわゆる「チャイナショック」により、株価の潮目に変化が生じたのと同様に、都心中古マンション価格も頭打ちとなり、新規売り出し物件の増加に反して、成約数、成約価格ともに停滞感が出ました。
この時点で株価と都心中古マンション価格との乖離が生じ、マンション価格も停滞から下落へ転じるのかと思われたところ、「トランプ相場」が始まりました。
株価は1万7000円〜1万8000円のボックス圏を突き抜けました。株価が1万9000円台なら現在の中古マンション価格は理解できる水準であり、株価が2万2000円、2万3000円のテクニカルラインに乗るようなら、都心中古マンション価格は上振れする余地が出てきます。
ところで、なぜ日経平均と都心マンション価格は連動するのでしょうか。その理由は「株高によって景気見通しに対する安心感が醸成される」「株を保有している親が、利益を確定して子供にマンション購入資金を贈与しやすくなる」「株の売却によって頭金を捻出できる」など、さまざまあります。
都心3区中古マンション価格を占うには、株価動向に加え、成約単価、このところ積み上がってきた在庫数の推移を見ていればいいでしょう。レインズ(REINS、東日本不動産流通機構)はこうしたデータを毎月公表しています(http://www.reins.or.jp/)。
株価の動きはまず、都心の中古マンション、そして外側の地域へ波及していきます。東京については、まず都心3区↓5区↓城南地区↓城西地区↓城東・城北地区といった流れになります。
首都圏ならば、東京↓神奈川↓埼玉↓千葉の順で波及します。どちらも「の」の字を描くような時計回りです。名古屋・大阪をはじめ、地方都市への波及は1、2年程度後になります。
一方、新築マンションは用地仕入れから販売活動までにタイムラグがあることや、中古マンションのような価格調整を適宜行わないこともあり、中古マンションほど敏感ではありません。
12年の政権交代以降は首都圏の新築マンション市場も好調を取り戻し、中古マンションより早いペースで価格、契約率の上昇が始まりました。
価格上昇の大きな要因にはマンション用地の上昇に加え、RC(鉄筋コンクリート)造の建築コスト上昇( 13 年前半、18万円/平方メートル前後↓16年11月、23・2万円/平方メートルへ28%上昇)があります。13年中頃の4600万円程度から15年11月の6328万円へと40%近く上昇しました。
しかし、こうしたトレンドも15年中盤には息切れし、16年に入ると一段と低迷します。不動産経済研究所(東京・新宿区)によれば、16年の首都圏新築マンション発売戸数は3万5772戸と、前年比4677戸(11・6%)の減少。ピークだった9万5635戸(2000年)の40%以下の水準まで落ち込み、契約できたのは2万9873戸と、3万戸を下回る結果となりました。
平均成約価格は15年11月の6328万円をピークに下落基調で、16 年12月は5078万円、契約率はほとんどの月で、好不調の目安とされる70%を切りました(図表2)。一部物件では水面下における価格交渉、つまり値下げ販売も行われています。
こうした不調の原因は、リーマン・ショック前のピークだった07年(4691万円)を大きく上回っている「価格」とみられます。地価上昇と資材、人件費の高騰に伴う建築コストを吸収しながら価格上昇を続けてきた新築マンション市場は、完全に潮目が変わりました。
とはいえ、現在の新築マンション市場は、事業体力のある大手マンションデベロッパーの寡占が進み、ただちに投げ売りや大々的な値引き販売を行うことはないでしょう。リーマン・ショック時のような市場のクラッシュは起きず、しばらくはやや下落しながら小康状態を保つといったところです。一部では「バブルか」とささやかれた新築マンション市場は、決してバブルと言えませんし、崩壊する懸念もほぼないとみていいでしょう。
ところで12年の政権交代以降、不動産価格の「すべて」が上昇したわけではありません。
上昇トレンドに乗って大きな恩恵を受けた不動産は極めて限定的でした。東京都心部なら前述の通り、中央・千代田・港区の都心3区に新宿・渋谷区を加えた5区くらいまでは50%程度上昇しましたが、東京全体ではプラス40%程度、神奈川・埼玉・千葉に至ってはせいぜい20%程度の上昇です(図表3)。
さらに南関東圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)で価格を上げたのはマンションのみで、一戸建てや一戸建て用の土地は、横ばいないしは下落トレンドにありました(図表4)。東京以外の都市部、地方では、価格が上昇した一戸建ては中心部のみ、あるいは、特別なニーズをつかむことができたほんの一部の物件でした。ただし新築マンションに比べて相対的に割安感のある新築一戸建てには、16年後半以降「見直し買い」の動きが見られます。
「トーキョー!」2013年9月、2020年のオリンピック・パラリンピック開催が東京に決まった瞬間から、住宅市場の空気は一変しました。
「とりあえずオリンピックまで不動産価格は上がりそう。でもその地域はオリンピック開催の東京湾岸地区・都心部を中心に限定的だろう。地方都市には多少波及するかもしれない。オリンピック後は需給悪化懸念もあるため、もう少し様子を見ないとわからない」
アベノミクスとオリンピックによって不動産価格がどうなるのかについて、当時はこのような見方がおよその業界コンセンサスであり、世間一般の見方とあまり変わりませんでした。
東京オリンピックは不動産市場にどの程度の影響を与えるのでしょうか? オリンピックの経済波及効果予測は、都による「3兆円」から、大和証券による「150兆円」までさまざまです。晴海に建設予定の選手村は1万7000人規模、大会終了後は首都圏最大級の住宅プロジェクトとして高層マンション街に生まれ変わる予定です。
98年の長野オリンピックの際に造られた選手村はオリンピック後、100戸程度のマンションとして売りに出されました。5000人以上の来場者に対し、1次募集時点は36戸、2次募集で値下げしましたが、販売数は全部で85戸と、完売できず苦戦しました。
しかし、今回はなんといっても東京都心部が舞台です。五輪を見据え、選手村周辺の江東区・豊洲などの地域で大規模なマンション再開発プロジェクトが進行しています。現在把握できるだけでも1万棟以上と目白押しです。一時的な供給過剰の懸念もあるものの、関係者は「交通網インフラや商業施設の整備が進めば街の魅力が高まる」と強気です。
東京・中央区は、オリンピック開催が決まる7カ月前、10年後に中央区の人口が16%増加し、14万9200人に達するという報告書をまとめました。その報告書では幼稚園や小学校の増改築が必要としていましたが、増改築どころか新設まで含め、再検討を余儀なくされています。
当然、交通網の整備も加速させなければなりません。例えば鉄道です。現在の大江戸線、ゆりかもめ、りんかい線、バス路線だけでは輸送力に限界があるのは明らかで、バス高速輸送システム(BRT)や路面電車(LRT)などが検討されています。
オリンピックが決定する以前は、有楽町―晴海間の新鉄道が検討されていました。東京駅から豊洲・有明・台場方面まで延伸する話も出ています。
1964年東京オリンピックの選手村は、米軍居住地域だった「ワシントンハウス」跡地の渋谷区代々木に建設されました。オリンピック以前はぱっとしない工場街でしたが、オリンピック後は高級住宅地に様変わり、周囲には表参道や原宿などの商業集積地が誕生しました。2020年オリンピックの選手村に予定されている晴海は、国が新成長戦略として進める総合特区制度のエリアにも位置づけられており、柔軟な街づくりが可能になります。
交通網の整備は都心部全体に広がっていくでしょう。成田空港―羽田空港間の移動は92分から50分台に短縮されます。押上―泉岳寺間の新路線、東急・京急蒲田駅間を結ぶ「蒲蒲線」、環状8号線の下を走る「エイトライナー」などの構想もあります。
鉄道といえば、2020年に山手線の田町・品川間に設置予定の新駅は、高層の商業施設やオフィスビルからなる、東京ドーム15個分の開発を促します。
道路については「首都高速中央環状線」が2015年に全線開通、6割程度の完成割合である「東京外かく環状道路」、「首都圏中央連絡自動車道」といった3つの環状道路などは、2020年までに9割の完成を目指すことになっています。
こうしたインフラ整備が進んでいけば、東京の利便性は確実に増し、それを見込んだ住宅供給が加速します。住宅ができれば生活に必要な飲食や日用品などの商業施設も増え、さらに利便性に磨きをかけることになります。
こうしたインフラ投資が行われる一部地域を除き、不動産市場にもたらす恩恵は、限りなく限定的だと思います。昨今は業界関係者の多くが醒めた見方をしています。
はっきり言えることは、今後の不動産価格の上昇は、日本経済の成長や給与所得の上昇を伴うのならば健全ですが、そうでない場合、その分はバブルになります。その後間違いなく下落し、国の借金と供給過剰の住宅が残り、状況はさらに悪化する懸念があります。
非常に刺激的で、一気に読ませていただきました。
人口問題や世界経済の大きな流れのなかに、日本固有の課題、生産緑地や用途地域の見直し、管理組合の内部分裂といった喫緊の課題を明確に位置づけてくださり、目が覚めるようでした。
大きな視点と身近な問題がダイナミックに絡み合い、感嘆しつつ、拝読いたしました。
大変、示唆に満ちた本をありがとうございました。
40代 男性
長嶋 修
2017年5月12日 発売!
セミナー内容
・管理力はどこをみる?契約前にチェックすべき7つの書類
・マンションのトラブル、実例と防止の方法
・パターン別、マンションのデキること、デキないこと
・ここが明暗を分ける!信頼できる仲介会社と担当者
・分譲会社と建設時期でこんなに違う!リノベ向きマンションの見つけ方
日時7月16日(日) 13:00~15:15
・第一部管理力チェック編 13:00~14:00
・第二部リノベしやすさチェック編 14:15~15:15
講師
さくら事務所 マンション管理コンサルタント 土屋輝之
さくら事務所 ホームインスペクター 山見陽一
会場
FORUM8(フォーラムエイト) 513会議室
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル 5階
アクセスマップ ※JR渋谷駅ハチ公口 徒歩5分程度
参加費1000円 ※書籍をご購入頂いた方は無料になります
個別無料相談つき(要予約・先着順・1組30分)
※セミナー終了後、同会場での開催となります。
「不動産格差」を手元にご用意ください。
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1967年(昭和42年)東京都墨田区生まれ。
広告代理店を経て、1994年(平成6年)ポラスグループ(中央住宅)入社。営業、企画、開発を経験後、1997年から営業支店長として幅広い不動産売買業務全般に携わる。
日々の不動産取引現場において『生活者にとって本当に安心できる不動産取引』『業界人が誇りをもてる仕事』『日本の不動産市場のあるべき姿』を模索するうちに、『第三者性を堅持した不動産のプロフェッショナル』が取引現場に必要であることを確信。
1999年、『人と不動産のより幸せな関係』を追求するために、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立する。 以降、様々な活動を通じて『“第三者性を堅持した不動産コンサルタント』第一人者としての地位を築く。
マイホーム購入・不動産投資など、不動産購入ノウハウにとどまらず、業界・政策提言や社会問題全般にも言及するなど、精力的に活動している。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。
長嶋 修
2017年5月12日 発売!