社内複業制度「前のめりパス」を活用して大活躍を見せる佐藤健斗と、自身もかねてより複業・兼業を実施し、今回「前のめりパス」を制度化したさくら事務所・らくだ不動産社長の大西倫加。複業・兼業を推進することで何が生まれるのか、そして多様な働き方を許容するさくら事務所グループの風土について聞きました。
- 大西 倫加
株式会社さくら事務所/らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
マーケティング会社を経て、2003年さくら事務所参画。広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。2011年にさくら事務所取締役、2013年1月に代表取締役社長に就任。2018年4月にらくだ不動産を創立。だいち災害リスク研究所副所長。執筆協力・出版や講演多数。神社めぐり、神代・古代史、オラクルカードが趣味で活字中毒。
「自分の可能性をせばめないこと」に楽しさを感じてもらえるとうれしいです!
- 佐藤 健斗
らくだ不動産株式会社/株式会社さくら事務所 兼務
電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。2社目に不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など、一つに留まらない多角的なコンサルティングを行う。
その後、らくだ不動産での不動産の売却・購入の業務のほか、さくら事務所のマンション管理会社向けコンサルタントとして活動。前のめりパスはいいところ取りの制度。専門領域が広がり、知的好奇心が満たされる楽しさと、いままでやってきた業務の上に知見を積み重ねる安心感があります。
仕事でもやってくる「春夏秋冬」
――さくら事務所は10年以上前から、複業・兼業の推進やフリーランスの方との協業を当たり前のように取り組んできました。そもそも大西さんは、なぜ複業・兼業を推進してこられたのでしょうか。
大西:理由はいくつもあるのだけれど、まず一つ目は私自身が「自分の可能性をせばめないこと」にわくわく、ときめきを感じていたから。だからきちんと制度化することで、同じような気持ちを持つ人に喜んでもらえるんじゃないかと思ったんです。
たとえば新卒で不動産仲介会社に入社して仲介業務を担当した人が、適性もあって成果も出して、とても充実した日々を過ごしていたとしても、その人には当然それ以外のポテンシャルだってあるわけですよね。もともとの専門領域を軸として付加価値をプラスしていくという可能性もあるし、まったく違う選択をする可能性だってある。
私は、たとえ自分がどれだけ好きで熱中していることであっても、やっていくうちに春夏秋冬が訪れると思っています。すごくうまくいっているときもあれば、それまでの実りが枯れてしまうときもある。うまくいくと心も温かくなるし、うまくいかないと寒々としてきますよね。仕事はそれの繰り返しだと思うんです。
ただ私の経験上、一つの仕事だけに集中しているほど、停滞期に陥ったときに浮上まで時間がかかることが多かった。そうなると「実は自分はこの仕事に飽きてきたんじゃないか」「燃え尽きてしまったのかもしれない」など、どんどんネガティブな思考に陥ってしまうんです。でも別の専門性や役割を持っていれば、「こっちはスランプだけど、こっちは絶好調」といったことも珍しくありません。そのような状態であればそこまで自分が追い詰められることもないですし、別軸の業務の好調さに引っ張られていつの間にかスランプを脱していることもあります。
あと私は、アイディアがまったくのゼロから生まれてくることはほとんどないと思っています。アイディアの多くは、いろんなネタを組み合わせて“編集”することで生まれてくるもの。違う領域の仕事をして違う人とかかわり、違う能力を使うことでアイディアの源泉がどんどん広がっていき、ある日「あ、これとこれはここで結びつくとすごいぞ」とひらめくものです。逆に言えば、自分がずっと似たようなことしかやっていなければ、ネタ元が限られてきてしまいます。このような思いから制度をつくったのですが、健斗くんの話を聞いて「狙い通りだ!」とすごく嬉しくなりました。
会社を挙げて複業・兼業を推進
――ちなみに大西さんは、これまでどのような複業や兼業をご経験されてきたのでしょうか。
大西:もともと私は、マーケティング・PRを専門領域としてきました。スカウトされてさくら事務所に入ってきたものの、不動産とか建築といった分野はまったくの未経験。マイホームすら買ったことがない中で、勉強しながらそっちの領域の仕事にもかかわるようになりました。そこで二つの領域の仕事をすることで新しいアイディアが生まれたり、もともとの専門領域を別の領域で生かすことで成果を挙げたりといったことを自分自身で経験してきました。
いまも実は会社経営のかたわら、まったく別のところで企業のコンサルティングや個人事業主、経営者の方々のメンタリングやコーチングにもかかわっています。いろんな領域で働く人たちがいろんな悩みを抱えていて、「もし私が一業種、一職種だけしか経験していなかったら向き合うのが難しかっただろうな」と思うこともすごく多いんです。
佐藤:非常によくわかります。僕自身も、営業のスキル一つとってもらくだ不動産では個人が対象、さくら事務所組合は管理組合に属する複数人が対象になるので、求められるスキルが全然違うんですよね。ある程度大きな管理組合だと、20人ぐらいの前で自分の案を提案する機会もあります。その“違い”による気付きも大きいですし、スキルアップにつながっていると感じています。
――さくら事務所では、佐藤さんのように入社時に「前のめりパス」を選択してくれてもいいですし、入社してから別の職種にチャレンジすることもできます。
大西:そうですね。会社としても2010年代前半くらいから社外での複業を奨励してきて、その後「社内にもいろんな仕事があるな」と改めて気付いたことで社内でも勧めている形だけど、いずれにせよ自身の専門性やスキルを広げていくことをかなり応援しています。それが絶対個人のためにも会社のためにもなると信じてるから。
佐藤:「個人と会社の両方の可能性を伸ばしていきたい」という考え方は、個人と会社との関係性にも表れていると感じています。とにかくフラットなんです。社内でももちろん役職だったり立場だったりといった違いはありますが、みんなお互いをリスペクトしている。しかもグループ会社って断裂しがちですが、「どっちが親会社で」みたいな意識もないですね。それも社内をまたいで複数の業務にかかわっていることの影響が大きいと思っています。
大西:「あいつはあっちの会社だから」みたいなことを思う人はいませんよね。そもそも「グループ会社」とは言うけど「親」とか「子」の表現すら一切していない。
佐藤:最初からそうなることを狙っていたんですか?
大西:いい質問!私としては、本当は「組織」の概念自体も捨てたいと思っています。会社はガチガチに階層が決められた集団じゃなく、ただ自分が望む未来が共通する人たちが集まって、その希望に向かって旅をするチームという感覚をみんなが持てるのが理想的。さくら事務所では雇用形態にかかわらず、「ここからは社員だけ」みたいな線引きも設けていませんよね。それは所属に関係なく、「自分たちは『人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと。』の理念を実現する旅路にいる仲間、パーティーなんだ!」と意識してほしいからなんです。
自分と社会の未来をよくするために
――さくら事務所はフリーランスや業務委託の方が8割ぐらいとかなり多いですが、そういう方も会社の課題発見や企画立案プロセスの最上流のところから普通に参画していただいています。その人が社員なのか業務委託なのか、誰も気にしていません。
大西:私たちは雇用形態かかわらず全員が大事な仲間だと思っているから、業務委託の方もその想いに応えてくれる。仕事で応えてくれるだけじゃなくて、その方が別のお仕事でもうちの話をしてくれて、それがまた別のアイディアや人脈につながっていって…というケースも結構あります。
佐藤:雇用形態も個人に合わせていろんな形があるので、正直「この人はどういう雇用形態なのか」ということすら、僕はいまいちわかっていません。ただ、それで別にいいのかなと感じています。「正社員だから」「契約社員だから」が一切ないのが、組織として素晴らしいと思います。
大西:0か100かじゃない。10でも20でも、ちょっとでもさくら事務所にかかわってくれる人はみんな仲間なんです。そして「自分のさくら事務所の仲間だ」と思ってくれる人は確実に増えています。これにはすごく幸せを感じています。
――最後に、さくら事務所やらくだ不動産に興味を持ってくれている人に対してメッセージをお願いします。
佐藤:さくら事務所もらくだ不動産も、ここで話してきたことそのままの会社です。事務所の中で大西さんと会っても「社長」とすら呼ばないし、いまみたいな話を気負いなくさせてもらえる。そんな組織風土も魅力的です。前のめりパスは大変なこともありますが、それを上回るメリットを僕自身が感じています。モチベーション高く働きたい人にはお勧めできる会社です!
大西:二つあります。まずは弊社の最大の魅力は「仲間」だということ。いろんな面白い制度や働き方はあるし、「人と不動産の関係をより幸せなものにしたい」っていう思いで展開している事業もちろん重要だけど、やっぱり仲間が一番。みんなチャーミングで志が高い。そしてお客様だけじゃなくて自分の未来、日本の未来をしっかりと見据えたうえで「どうなれば幸せになっていくんだろう」と考え、行動に移せる人ばっかりだと自慢できます。
「何をするか」ももちろん重要だけど、「誰とやるか」もめちゃくちゃ大事だと思ってるんです。さらに言えば、「誰とやるか」にはその前提として「どんな思いでやるか」もあります。「気持ちよくいい仕事をしたい」「すばらしい仲間に恥じない、誇れる自分でありたい」などの思いを持って「誰と働くか」を大事にしている人なら、さくら事務所を心地よく感じてくれるんじゃないかな。
もう一つの伝えたいことは、自分自身の可能性や未来に思いっきり期待をしている人なら、さくら事務所を楽しんでもらえるはずだという自信があること。包み隠さず言えば、やっぱり複業・兼業を推進したりいろんな働き方を組み合わせたりしている以上、発生してくる難しい課題もあるし、忙しいのも事実です。組織としてもまだまだ未熟な状態にあります。だけど「新しい挑戦がしたい」「自分の中に眠っている能力を開花させて世の中にグッドインパクトを与えたい」と心から思い、そのプロセス全部に夢中であれる人が揃っています。そんな環境を「ユニークだな、自分も一緒に踊りたいな」と思える人に、ぜひ仲間になってほしいと思います。