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【前編】「個人が自分の人生を豊かに生きる」時代の新たな“採用”と“働き方”のカタチとは

「まかない採用」「マインドフルフレックス」「前のめりパス」など、次々に独自の採用や働き方に挑戦しているさくら事務所。そんなさくら事務所では、応募者を「採用」「不採用」で判断しないケースも珍しくありません。人事にとっては難しい判断やマネジメントを迫られることも多い中、なぜそこまでして新しい採用や働き方の在り方を追求しているのでしょうか。さくら事務所の採用や働き方の考え方、目指す未来像について、採用人事担当執行役員の田村啓に聞きました。【前後編:前編】


田村 啓

さくら事務所 人事担当執行役員。さくら事務所、らくだ不動産の採用・人事を担当する傍ら、自らもホームインスペクターとしてYouTubeに出演している。
大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。
建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。
多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。
住まいと暮らしに寄り添うホームインスペクターであることを信条に、現在はインスペクターを育成するインストラクターとしても活躍。
フルタイム共働きで二児の父。さくら事務所で2回の育休取得。


重要なのはカルチャーフィット

――早速ですが、さくら事務所の採用にはどのような特徴があるのでしょうか。

田村:さくら事務所には、「まかない採用」という制度があります。これは簡単に言えば、レストランのシェフがいまある食材を活かしてまかない料理を作るように、さくら事務所に応募していただいた方の個性を活かして活躍できるフィールドを生み出していこうとするやり方です。

採用の場面では、会社側が求める要件と応募者のスキルセットが完全に一致しないケースがよくありますよね。でも、さくら事務所が一番大事にしているのは、単なるスキルの高さよりも“カルチャーフィット“。さくら事務所の理念に共感してくれる方であれば、ご活躍いただくための一番大切なステップをクリアしてくださっていると考えています。

そこで面談では、こちらが一方的にスキルや実績を聞いて合否を判断するのではなく、まずはできる限りその方の価値観や歩みたいキャリアなどをヒアリングすることに努めています。多少募集している要件とは異なっていたとしても、「この方といまご一緒させていただければ、当社でご活躍いただけることはもちろん、この方自身も幸せに働いていただけそうだな」と思ったら、その方のスキルに応じて新しい職種をつくることもあるんです。

――聞いたことがない採用方法ですね!これまでにご入社された方では、具体的にどのようなケースがあったのでしょうか。

田村:つい最近の話では、こんなケースがありました。もともとは事業部の運営に関する職種でご応募をいただいた方でしたが、その方のパーソナリティやご希望の働き方を考えると、そのポジションでご活躍いただくことが難しそうでした。しかし、当社の理念や事業にすごく共感してくださっていたし、お話ししていてとても魅力的な方でした。そこで各事業部のリーダーに時間を取ってもらってお話をさせていただいたうえ、お電話やメールでも何度もやりとりを行い、どうにかご縁をつなごうと思いました。社長の大西さんにも時間をもらって検討を重ね、最終的には当社のご依頼者様とのオペレーションを最前線で担っていただきつつ、その経験を活かして広報も携わっていただくという、これまでに無い新しいポジションでジョインしていただくことになりました。

もちろん人事としては、たくさんの応募者の中から、一定程度の条件でスクリーニングすることも大事な仕事です。ですが僕らの願いとしては、「さくら事務所とかかわりたい!」という想いを持って応募してくださる方と、どうにかして一緒にお仕事ができないかを模索していきたいのです。

――「募集している職種の要件と違うから不採用」という考え方ではないんですね。

田村:そもそも、「採用」「不採用」といった明確な判断をしないことも多いんです。たとえどれほど模索したとしても、どうしても社内の状況とその人の状況がかみ合わず、ご応募いただいたときにご一緒できないことはやっぱりあります。ですが、状況というのは刻々と変わるもの。応募時にはご縁がなくても、その半年後、あるいは1年後に状況がかみ合えば、そのタイミングでジョインしていただくこともあります。

もちろん、「状況に応じて柔軟に調整する」というのは、採用時の話だけに限りません。病気や育児、介護など、誰しもライフステージが変わるものですよね。そのため正社員として入社された後でも、ご家庭の事情で業務委託に切り替えるなど、そのときどきの状況に応じたベストな選択を追求しています。

たとえば以前、ある方とホームインスペクター職での業務委託契約を結んだものの、その方はご家庭の事情などであまり働くことができず、契約を解除することになりました。ただその後、ご事情が変わられて「もう一度うちで働きたい」とご連絡があったんです。もともとさくら事務所の理念には大変共感いただいていた方なので、僕らとしても喜んで戻ってきていただきました。その方はいま大活躍されており、2023年度には年間MVPにも選ばれました。

さくら事務所の採用の大きなイメージは、大海原を冒険しているような感じです。まず「さくら事務所」という船が大海原を渡っている。いろんな港に着くたびに船に乗り込む仲間が増えていく。またその港では、船に乗り込みこそしないものの、僕らを応援してくれる人もたくさんいる。僕らがその港に寄港したときにだけ何かを一緒にしてくれる人もいれば、普段は別の船に乗っていてときどき私たちの船に遊びに来てくれる人もいる。そんなイメージでさくら事務所を応援してくれる人を増やし続け、いまでは正社員・業務委託の方などを合わせて150名ほどがかかわってくれています。

――どんな状況でも働ける環境があるのはメンバーにとっても安心ですね。ただたとえば正社員から業務委託になることで、モチベーションが低下することはないのでしょうか。

田村:業務委託でモチベーションが低下するのは、単なる外注のようになってしまったり、正社員の時にモチベーション高く取り組んでいた仕事にかかわれなくなったりなど、立場による違いを感じるからだと思います。たださくら事務所では、業務委託やフリーランスの方が事業に深くかかわっているケースも多いんです。さくら事務所では理念に共感してくださり、一定のスキルとリーダーシップがあれば、どんどん事業の深いところまでコミットしていただける環境があります。

業務委託の方からは、「これまでの仕事では『もっと自分にできることがあるのに』と思うことも少なくなかった。それがさくら事務所では、課題を発見したり企画を立てたりする段階から仕事までを任せてもらえるので、面白くて仕方ない」と言っていただくこともあります。さくら事務所はマーケティングに力を入れている会社ですが、いまはその中にも業務委託の方にどんどん入ってきてもらっています。コミットしていただく条件や成果に合わせて、報酬も変えていっています。

「個の時代」に求められるマインドフルフレックス

――働くうえでも何か特徴的な制度があるのでしょうか。

田村:さくら事務所を象徴しているのが、「マインドフルフレックス」な働き方です。これは「マインドフルネス」と「フルフレックス」を組み合わせた造語です。僕らは、働く人の人生がマインドフルであることがまず大切だと考えています。そしてそのために重要なことのひとつが、1日の時間を自分で自由に組み立てられること。人生を「マインドフル」に生きるために1日の時間を自由に使える「フルフレックス」、だから「マインドフルフレックス」です。
前提として僕らは、これからは「個の時代」だと考えています。個の時代とは、個人が仕事のためではなく、自分の人生が豊かになるような生き方を自分で選べる時代。現代はかつてのように、「いい大学を出ていい会社に勤めることがゴール」という価値観ではなくなりましたよね。価値観が多様になった時代だからこそ、自分に合う価値観に出会うことができれば、その人の人生は豊かに広がっていくはずです。

そしてさくら事務所も、人生を豊かにするためのたくさんの選択肢のうちの一つでありたいと思っています。僕らの掲げる理念に共感してくださるのであれば、同じ船に乗ることで、きっとその方も豊かで楽しい人生が送れると信じているんです。

人生において、最も重要なのは“時間”です。時間はその人の人生そのものですからね。だからこそ本来は、人生の中で優先順位の高いものから時間を使っていくべきだと思うんです。そう考えると、いまのように「一律で9時から18時まで働く」というのはどう考えても非効率な話じゃないですか。

たとえば僕でいえば、まだ小さい子どもが2人いるのですが、子どもはどうしても突然熱を出すことがあります。こんなとき一般的には、有休あるいは半休を取るケースが多いと思います。ただ仕事の都合もありますし、僕の場合は1日休みをもらうよりも、子どもを病院に連れていくために2時間だけ仕事を抜けられるほうがずっとありがたいんです。

また僕の場合、夜はしっかりと子どもたちとの時間を持ち、子どもたちを寝かしつけた22時以降に働くほうが、パフォーマンスがいいことが自分でわかっています。マインドフルフレックスであれば、そんな働き方が叶うんです。まずは自分の人生を豊かにすることを考え、会社はそのためのひとつの舞台になる。それがあるべき姿だと思っていますし、結果的にそのほうが高いパフォーマンスを出せることも多いんです。

――本当にいろんな事情を抱える人が働きやすい環境ですね。一方で、あまりに「自分はこうしたい!」と主張する人がいれば、チームのほかのメンバーにしわ寄せがいくこともあるんじゃないかと思ってしまいました。

田村:それはその通りですね。ただ、自由であることは同時に責任も伴います。「一人ひとりが自由である」ということは、同時に相応の成果を求めることでもあります。そしてその成果とは、個人目標の達成だけではなく、「チームで成果を残すこと」が大切です。営利企業である限り、私たちは社会に求められ、利益を出し、持続できなければなりません。自由な環境を維持するためには、同時に多くの方に喜んでいただき、会社が社会に求められ続ける存在である必要があります。一人だけではなく、大切な仲間とチームとして成果を出すことで、一人では到底できない成果を生み出すことができます。

そしてチームで成果を出すには、仕事もノウハウも経験もチームで共有していくことが重要。それが持続できる会社の仕組みにつながっていくのです。私たちの理念である「人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡す」の実現のためには、長期的な視点が絶対に必要です。

さくら事務所には「五方良し」という大切にしている考えがあります。これは「自分、依頼者、会社、業界、社会全体のすべてにとって良い」という、僕らの取るべき姿勢を表したものです。

さくら事務所は、それぞれの個性こそ動物園並みに豊かですが(笑)、自分のことだけを主張するような人は誰一人いないと自信を持っていえます。補足すると、これは「誰かに意見をしない」との意味ではありません。むしろ、他者を思い、成果を大切にするからこそ、積極的に意見を出すことを推奨しています。もちろん、発言をするうえでは他者に配慮する必要がありますが、そういったことも僕らからしっかりとお伝えするようにしています。

また、たとえば誰かが自分だけのことを考えたような発言をしたときには、「あの人がこんな発言をするのには、何か理由があるのかもしれない」といったことを僕らが考える必要があるとも思っています。その発言が出た背景として、いまその人が置かれた環境が、本来その人が向かいたいベクトルとは違うものになってしまっている可能性もありますからね。

もちろんケースバイケースではありますが、実際にそうして掘り下げていった結果、タスクやかかわるチームを変えることで、さらなる成果を出せるようになった方もいるんです。このような取り組みを続けることが、結果的に心理的安全性が担保された職場づくりにつながっていると感じています。

さくら事務所グループの採用・人事担当募集しています

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