ナフサ・ショックが住宅市場に与える影響は? 新築・リフォームを控えている方ができる対策とは

ナフサ ショック 住宅

中東情勢の緊迫化、そしてホルムズ海峡周辺の通航制限により「ナフサ」の供給が非常に不安定になっています。ナフサとは、原油を精製する過程で得られる透明の液体で、プラスチックや合成ゴム、繊維、化学製品などの基礎原料のひとつです。

住宅の断熱材や配管、塗料、接着剤、浴室やトイレなどの設備にもナフサが使用されており、一部のメーカーは受注停止や値上げを発表しています。これまでもウッド・ショックやアイアン・ショック、オイル・ショックなどにより、建材や設備が入ってきにくい状況に陥ったことがありました。しかし、「ナフサ・ショック」は特定の建材や物流の停滞に留まらず、ナフサは住宅を構成するありとあらゆるものの基礎原料となっているため、その影響は過去のショックを上回るおそれがあります。

目次

見積もり取得済み・契約済みの方に確認してもらいたい3つのこと

すでに新築・リフォームの見積もりを取得されている方、あるいは契約済みの方は、次の3つのことを早急に確認されることをおすすめします。

1.スライド条項(請負代金額変更の条項など)

まず確認していただきたいのが、契約書に「スライド条項(請負代金額変更の条項など)」の記載があるかどうかです。スライド条項とは、資材の価格が変動したときに、建築会社やメーカーが請負金額を増減できると定めた条項を指します。

現在は、施工会社にとっても緊急事態です。見積もり後、あるいは契約後にいざ発注をかけたり、納品してもらったりするタイミングで、資材や設備の金額が顕著に上がってしまうケースも頻発しています。施工会社も自分たちを守らなければなりませんので、スライド条項があるとすれば、苦肉の策として請負金額に転嫁せざるをえません。スライド条項には「値上げの上限額」が設定されているケースもありますので、よく確認してみましょう。

一方、スライド条項がない場合も、施工会社にコストアップ分を全額負担してもらえるとは限りません。スライド条項を根拠とした請負金額の増額ではなく、追加工事としての請求、あるいは仕様のダウングレードによる調整などが入る可能性があります。もちろん対応は施工会社によって異なりますので、担当者にコンタクトを取って状況を把握し、契約内容を確認しておきましょう。

2.見積もりの有効期限

続いてご確認いただきたいのが、見積もりの有効期限です。一般的に有効期限は3ヶ月ほどになっていることが多いですが、現在は1ヶ月や2ヶ月、あるいはさらに短く2週間程度になっているケースも少なくありません。

やはり今はさまざまな建材や設備の値上げ、受注停止などが起こる可能性が高い時期ですので、見積もりの有効期限が非常に短くなっています。見積もりの有効期限以降の施工、あるいは契約となる場合は、再見積もりが必要になる場合があります。

3.仕様変更に関する条項(設計変更など)

もうひとつご確認いただきたいのが、「仕様変更に関する条項(設計変更など)」です。この条項がある場合は、やむを得ない事情があった場合に、施工者の判断で仕様を変えることができます。

仕様変更における注意点は、変更後の仕様がダウングレードになってしまったり、自分の好みではない仕様に変えられてしまったりするケースがある点です。施工後に知らないものが付いていたということがないよう、やはりここでも担当者とコミュニケーションを取り、どのメーカーのどの製品に変更するのか確認しておくことが大切です。

一方で、仕様変更に関する条項がない場合でも、今の状況では仕様を変更せざるを得ないケースも十分に想定されます。スライド条項や仕様変更に関する条項が定められていない、見積もりの有効期限も長いという場合においても、できれば自ら施工会社にヒアリングし、契約どおり・見積もりどおりに進められるのか確認されることをおすすめします。

新築・リフォームは「待つ」のが正解なのか

これから新築やリフォームをしようと検討している方も、ナフサ・ショックに不安を感じていることと思います。「事態が落ちつくまで待とう」と考えている方も多いのではないでしょうか。

ホルムズ海峡が永久に閉鎖され続けるとは考えにくく、中東情勢が落ち着けば、ナフサの供給も徐々に回復していくでしょう。しかし、だからといって新築住宅の価格がかつての水準に戻るかというと、その可能性は低いと見ています。

2026年3月 建築費指数 木造住宅
出典:建設物価調査会 総合研究所「建設物価 建築費指数®【2026年3月分】

ナフサが元どおり供給されることになったとしても、ここ数年、建築費は人件費や建材価格の上昇、住宅性能の向上、金利上昇などを背景に顕著に上がり続けています。これらの要因はさらに進むことはあっても、おそらく中短期的に後退することはありません。

ナフサ・ショックの混乱期に無理して動く必要はありませんが、今後は「安くなるまで待って新築・リフォームする」というのは現実的ではなく、価格が下がるという根拠のない期待のもとで判断を先送りし続けることもリスクを伴います。一時的な混乱が落ち着いた段階で、自分自身のライフプランに基づいて行動することが、最も合理的な選択と言えるかもしれません。

充実した助成制度が新築・リフォームを後押し

新築やリフォームに対する助成制度は近年、非常に充実しています。2026年度も、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」をはじめ、国や自治体の助成制度が多数設けられています。

ナフサ・ショックや建築費高騰による値上げ分をすべて回収できるとは限りませんが、条件によっては100万円単位の補助金が下りるケースもあります。申請フローや助成対象は制度によって異なるため、能動的に情報を収集し、施工会社と相談しながら活用を検討していきましょう。

情報のリサーチには「AI」の活用が非常に有効です。条件に合う補助金をリサーチさせ、細かい部分は自身で確認していくことで、効率的に情報を整理できます。

助成制度は予算が設けられており、申請が予算上限に達し次第、期日を待たずに受付終了となる場合があります。過去には実際に申請期日を大幅に前倒しして終了した制度もありますので、予算消化率もチェックしておくことをおすすめします。

「中古住宅」も改めて注目される

新築住宅の高騰や供給数の減少、そしてナフサ・ショックにより、「中古住宅」の価値が再認識されています。首都圏を中心に中古住宅の流通量は増加傾向にあり、国も2026年度税制改正で中古住宅のローン減税を拡充するなど、中古市場の活性化を政策的に後押ししています。

中古住宅最大のメリットは、建物がすでに既に存在しているため、新築やリフォームほど直接的には資材供給の影響を受けないことです。中古住宅市場も間接的な影響を受ける可能性はあるものの、新築住宅がウッド・ショックやアイアン・ショック、そして今回のナフサ・ショックと繰り返し資材の流通や価格の急騰に翻弄されてきたのとは対照的に、安定した市場を形成しています。

ただし、中古住宅を購入する際には、建物のコンディションを事前にしっかり確認することが不可欠です。構造の劣化や雨漏り、シロアリ被害など目に見えない問題が潜んでいる可能性があるため、ホームインスペクションを活用し、専門家による調査を行った上で購入を判断することを強く推奨します。

さくら事務所 ホームインスペクション

混乱期だからこそ問われる、消費者自身の「自衛力」

ウッド・ショックやコロナ禍における給湯器の供給不足などの局面では、工期の大幅な遅延や現場の混乱が見られました。ナフサ・ショックは、過去のこうしたショックを上回る混乱が生じる可能性が高く、施工の品質が損なわれるおそれもあります。これは職人や現場監督の能力や誠意の問題ではなく、異常事態という環境そのものが通常のチェック体制を機能させにくくするという構造的な問題です。

住宅の建築やリフォームというプロジェクトのリーダーは、ほかでもない消費者自身です。こうした異常事態下ではとくに、施工会社との密なコミュニケーションや契約内容の精査、そしてホームインスペクターなど第三者の専門家の活用を通じて、自分と家族の住まいを能動的に守っていくことが求められます。

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執筆者

田村啓のアバター 田村啓 さくら事務所取締役・ホームインスペクター

大手リフォーム会社での勤務経験を経て、さくら事務所に参画。建築の専門的な分野から、生活にまつわるお役立ち情報、防災の分野まで幅広い知見を持つ。多くのメディアや講演、YouTubeにて広く情報発信を行い、NHKドラマ『正直不動産』ではインスペクション部分を監修。住まいと暮らしに寄り添うホームインスペクターであることを信条に、現在はインスペクターを育成するインストラクターとしても活躍。

二級建築士 群馬県 第12156号
既存住宅状況調査技術者(住宅瑕疵担保責任保険協会/第02-23-00325-02号/有効期限2027-03-31)
日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター

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