令和8年熊本地震・緊急現地調査からの提言。繰り返す震度7に私たちはどう備えるべきか

令和8年 熊本地震

2026(令和8)年7月28日に発生した「令和8年熊本地震(M7.1)」は、平成28年(2016年)熊本地震から10年が経過した熊本県内を中心に最大震度7の猛烈な揺れを観測し、甚大な被害をもたらしました。

お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様、現在も避難生活を余儀なくされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。

さくら事務所の地盤・防災コンサルタントの横山芳春(理学博士)は、発災翌日の7月29日から30日に現地入りし、熊本市から宇城市、氷川町、八代市にて、日奈久断層帯周辺や八代平野を中心に、地震の揺れ、地盤の変状、液状化現象などによる宅地被害を中心に緊急調査を実施いたしました。

本記事では、地震の揺れが大きかった地域でどのような被害が発生していたか、緊急調査の被害の特徴から見えてきた被害実態を踏まえた提言として、繰り返す震度7に私たちはどう備えるべきかについて解説します。

目次

熊本県は10年余りの間に3度の大地震を経験

令和8年熊本地震が発生した熊本県には「布田川断層帯」と「日奈久断層帯」という2つの活断層があります。平成28年熊本地震は、4月14日の前震(M6.5)で日奈久断層の北端部と、 4月16日の本震(M7.3)の地震が布田川断層帯の活動によるものであると考えられています。

今回発生した令和8年熊本地震では、地震活動は日奈久断層帯の日奈久区間の北東部付近に及んでいるとされています。10年前の平成28年熊本地震の震源域と隣接していることから、その際に「割れ残った」活断層が活動した地震と見られます。

熊本県 活断層
熊本県の活断層(布田川断層帯・日奈久断層帯 | 地震本部

熊本県では2016年4月14日、同16日に引き続き令和8年7月28日と、10年余りの間に3度の最大震度7の地震を経験したことになります。いずれも内陸直下、浅い場所で活断層が活動することによって発生した地震であり、内陸の都市や郊外において大きな揺れをもたらし、家屋や構造物などに大きな被害を与える地震となりました。

令和8年熊本地震 被害の特徴

令和8年熊本地震で被害を受けた現地調査を行った結果、以下の被害の特徴が見られました。「1.活断層近傍における被害」「2.建物の地震の揺れによる被害」「3.液状化による被害」、これらについて順番に説明していきます。

1.活断層近傍における被害

現地調査を行った結果、「都市圏活断層図」において日奈久断層帯として示されている位置沿いに、令和8年熊本地震で生じたとみられる連続的に追跡できる地割れや亀裂が見られました。

横山による調査では、緑川と球磨川の間の約23kmにおいて、連続的に追跡できる地割れが見られ、その近傍で家屋、道路や擁壁、護岸などの構造物、農地や水路などの大きな被害が見受けられました。その位置と代表的な写真を以下に示します(地理院地図に、都市圏活断層図として後藤ほか(2018) : 1:25,000活断層図「八代(改訂版)」 ,国土地理院を表示して加筆)。

令和8年熊本地震 地割れ 位置

このような地割れは、地震を引き起こした震源断層である日奈久断層帯の活動による地震で、断層のずれが地表まで到達して地表にずれが生じた「地表地震断層」である可能性が高いものと考えられます。
※地割れは地震の揺れ、盛土、液状化、構造物付近など様々な理由で生じることがあります。

その理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 連続的に追跡でき、日奈久断層帯があるとされている場所に沿っている
  • 局所的な盛土や液状化などの地盤変状などではない
  • 日奈久断層帯と同じ右横ずれ(断層の線の向こう側が右側にズレるタイプの断層)

詳細は、今後の専門機関の調査等が進んで明らかになっていくでしょう。

令和8年熊本地震 右横ずれ断層

このような「地表地震断層」の可能性が高い地割れは、熊本市南区から宇城市、氷川町、八代市にかけて追跡できますが、とくに宇城市南部より南では、山と平野のへりを通っていました。

そうした場所には住宅地もあることから、地割れは住宅や宅地の擁壁、ブロック塀などの構造物、橋や道路、護岸などのインフラ、田畑など農地を横断し、それらを大きく左右に引き裂いたり、地盤が沈下することで大きな傾きを与えるなどの被害を与えていました。

これは、住宅や構造物の甚大な被害に加えて、土地の形自体がズレ動いているということが数10kmにわたって発生しているということになります。基本となる土地境界の位置なども変わってしまっている場合や、擁壁などを損壊させており、そのまま住宅再建が難しい場合なども想定されます。

2.建物の地震の揺れによる被害

地震による家屋被害も各地で認められました。活断層による引き裂かれるような被害とは別に目立ったものが、家屋の倒壊です。

7月30日朝、熊本市から八代市に向かうにあたって国道3号線の渋滞を避けるために熊本県道14号を南下すると、氷川町鹿島付近から家屋被害が増加、氷川(河川名)を渡って八代市鏡町に入ると、複数の倒壊家屋が集中してみられるようになるなど、家屋被害が多く発生している様子が見られました。

令和8年熊本地震 家屋 倒壊
令和8年熊本地震 家屋 倒壊
令和8年熊本地震 家屋 倒壊

八代市鏡町では、倒壊や損傷している家屋もかなり古い木造建物が多いように見受けられました。10年前の平成28年熊本地震の際、被害が集中した益城町で多く見られたような、一階部分が潰れている家屋も多く見られました。

従前の街並みの写真を見ると、県道沿いに軒を連ねるように古い商店や家屋が立ち並んでいる地域であったものと見られます。ただし、古い街道筋の町や築年数の経過した住宅は他の地域にも多数あるなかで、鏡町にはとくに被害が集中している傾向が見られます。

地震 地盤

過去の地震では、地震時に揺れやすい地盤で地震の揺れが増幅されたケースや地盤と建物が「共振」したことで被害が増加した可能性も想定されます。揺れやすい地盤では、揺れにくい地盤に比べて震度が1〜2階級大きくなる(震度5強から見ると、震度6弱、6強になってしまう)可能性もあります。その分、被害は大きくなりやすい傾向にあります。

地盤の揺れやすさがわかる、国が無料で公開している「J-SHIS Map」という地図で「表層地盤」の「地盤増幅率」を見ると、八代市鏡町付近(図の中央付近)は、やや揺れやすい地盤を示す濃赤色の着色があります。今後、地盤と建物被害の詳しい調査が進むことでしょう。

J-SHIS Mapより、八代市鏡町付近の地盤の揺れやすさを表示(濃い赤色ほど揺れやすい)

3.液状化による被害

熊本市南区から八代市では、地盤の液状化による砂の噴出や道路の地割れなどが確認できました。平成28年熊本地震でも熊本市周辺で多数の液状化被害が発生していましたが、令和8年熊本地震でも複数箇所で地盤の液状化現象が起きていたようです。

7月30日までに確認できた液状化現象がみられた最北端は、平成28年熊本地震でも液状化が発生していた熊本市南区川尻でした。最南端は、八代市古城町。少なくとも南北約27kmにわたって液状化が発生していたことがわかりました。

ほか、埋立地の港湾部である八代市新港町では、大規模な砂の噴出跡(噴砂)や液状化によると見られる地割れ、地盤の陥没、建物基礎部分の地盤沈下が見られました。

令和8年熊本地震 液状化

埋立地で八代港がある八代市新港町では複数箇所で液状化が見られましたが、埋立地、低地エリアを車で通った限りでは、辺り一面で家屋が甚大な被害を生じているような液状化が発生しているという様子は見受けられませんでした。

地盤の液状化は、ゆるい砂地盤があり、地下水の水位が浅い地域で、大きな地震があると起きやすく、とくに埋立地(上図で灰色)や低地(上図で緑、黄色、青色)の場所で起きやすい傾向があります。熊本は豊富な地下水を誇る「地下水都市」でもあります。低地や沿岸の埋立地はこのような条件に合致しやすく、液状化リスクの確認と対策が求められます。

液状化リスクの調べ方、対策などは「地盤の液状化とは?どこで起きるのか?対策や備えは?」の記事を参照ください。

防災上の課題と留意点

被害の全容把握と並行して警戒しなければならないのが、地震の再来と避難生活に潜むリスクです。最後に、防災上の課題と留意点を見ていきましょう。

大きな地震が再来するリスク

このコラム公開時点で、令和8年熊本地震の発生から6日目を迎えます。気象庁は、地震が発生した28日の記者会見で「今後1週間程度(とくに最初の2〜3日間)は同程度の地震に注意」をするよう呼び掛けていました。

8月3日までは最大震度5弱以上の地震は発生しておらず、10年前の平成28年熊本地震のような、前震の2日後(正確には28時間後)に前震を上回る本震が発生することはありませんでした。ただし同程度の地震が起こるかもしれないという恐怖心から、避難所や車中泊避難の継続に繋がる懸念なども想定されます。

令和8年熊本地震を引き起こした日奈久断層は、その南西側が未だ活動をせずに「割れ残って」いるものと考えられます。10日後なのか、10年後なのか、100年後なのか……この部分が割れる=地震が起きるのがいつなのかがわからないというリスクもあります。

熊本地震 日奈久断層帯
日奈久断層帯(八代海区間)の地震が発生した際に想定される震度(地震本部より)

日奈久断層は、その南西側で海域にある「八代海区間」だけでM7.3程度の地震を引き起こし、割れ残った範囲がもう少し広い場合、より大きな規模の地震となることも考えられます。また、令和8年熊本地震でも一時津波注意報が発表されましたが、震源域が海底に及ぶ場合には、活断層の動き方によっては津波が発生するリスクも想定されます。

活動があった場合は、八代市、宇城市のほか、上天草市、天草市、水俣市、出水市などで揺れが大きくなることが想定されます。今回被害が大きかった八代市、宇城市で再び大きな地震が発生すると、さらに被害が増加することも懸念されます。

また、隣接する活断層だけではなく、南海トラフ地震や、近隣の異なる活断層によるリスクもあります。とくに九州では、福岡市を縦断する「警固断層」に警戒が必要であると考えられます。

猛暑の災害関連死の予防

令和8年熊本地震は、真夏の猛暑が続く7月28日という時期に発生した地震です。横山は7月13日、現代ビジネスに「猛暑の「首都直下地震」で避難所は「生き地獄」に…エアコンなし水なしで「命を奪う空間」へと変貌する」という記事を寄稿していましたが、まさにこの懸念がある猛暑の中で起きた、内陸直下の地震でした。

前の項で書いた通り、熊本では繰り返しの地震を懸念して帰宅を躊躇されるケースや、家屋に被害があって戻れない方は、避難所滞在や車中泊を継続する方が多くなります。水分や運動不足、狭い空間で姿勢を変えないなどが続くと、エコノミークラス症候群などから災害(震災)関連死につながりかねません。

現地では、電気が通っている地域でも屋内ではなく、屋外の裸同然の格好で過ごされているお年寄りも見かけました。お話を聞いてみると、2016年の平成28年熊本地震のように、繰り返しの地震が怖いとのことで、外で過ごされていました。お話は聞けていませんが、敷地内で車内で過ごされている方も目にしています。

そのような中で、熊本県の木村知事は8月2日には70代の女性が「地震後に避難のため車中泊をし、熱中症の疑いで死亡した」と記者団に明らかにし、初の災害(震災)関連死の疑いがある事例であると述べています(NHKニュース)。

停電や給水は徐々に解消されつつありますが、8月3日の週はさらなる高温が想定されています。こまめな水分補給、エコノミークラス症候群の予防、涼しい避難環境の確保などを意識していただきたいです。

全国で意識したい地震防災の優先順位は?

世界各地や日本各地で大きな地震が起きていますが、とくに地震大国日本にあって、次にいつどこで大きな地震が起こるかは誰にもわかりません。ゲリラ雷雨や台風などは事前に予測ができますが、地震は起こるまでわからず、起きた瞬間に過酷な生と死を分ける状況が訪れてしまう災害です。

震度6強程度の地震は日本全国どこでも起きうる想定が必要であると考えます。その中でとくに大きな地震に見舞われやすいとされている地域では、優先的に備えを行っておくことが求められるでしょう。

具体的には、次の優先順位を意識した備えを行うことをおすすめします。家の耐震化や立地リスクを考えずに在宅避難を前提としたグッズや飲食料だけ備えていても、地震で建物が倒壊してしまう場合もあります。まずは命を守り、室内で怪我をせず、生き延びること、そして衛生環境の維持と情報収集のための備えを進めてほしいと考えます。

  • 第1優先:建物を倒壊させない(耐震化・立地の確認)
  • 第2優先:室内で怪我をしない(家具の固定・ガラス飛散防止)
  • 第3優先:生き延びるための物資(水・非常食・カセットコンロ)
  • 第4優先:衛生環境の維持と情報収集(携帯トイレ・モバイルバッテリー・ラジオ)

それでは、「本当に地震に強い家」とはどんな家でしょうか。①立地のリスクが低い(または把握して対処ができる)、②初期性能としての耐震性能が高いことに加え、③性能維持のための定期的なメンテナンスと補修が大切です。

活断層の直上や至近にあるか、津波の可能性があるか、液状化が起きやすい、地震時に地盤の揺れが大きくなりやすいか?などは、立地のリスクです。立地は後から変えられません。土地選びの際は十分に確認して、後から「こんなはずではなかった」とならないようにしていただきたいです。

これは、決して「リスクがある場所に住まないで」ということではありません。どのようなリスクがあるかを知って、それに対してできる備えを行ってほしいということです。そのうえで、避難が必要になる可能性が高ければ即座に避難できる準備を手厚く行っておくことが望ましいでしょう。

立地のリスクが低く、建物としての耐震性(初期性能)が高い住宅であれば、安全な自宅に留まることができる可能性が高くなります。自宅で在宅避難ができる方が増えることで、真に避難所を必要としている人(家屋を失った方や要配慮者)のためにスペースを空け、避難所環境を改善することにも繋がります。

新築住宅であれば、繰り返しの最大震度7の地震があった平成28年熊本地震でその有用性が明らかになった「耐震等級3」とすることが望ましいでしょう。現状で建っている住宅の場合、とくに1981年5月以前の旧耐震基準を中心とした耐震性能の低い住宅であれば、耐震診断・耐震改修が求められます。自治体の補助金制度なども活用して、まずは倒壊しない住まいを備えて欲しいと考えます(最低でも新耐震基準レベルへの改修)。

いくら新築時の性能が高くても、雨漏りやシロアリの被害などによって損なわれていると、十分な耐震性能の維持ができなくなります。家を長持ちさせて家族の命を守ることにもつながります。定期的なメンテナンスや補修を行うことも、地震防災につながってくるのです。

地震に強い家

このような立地と住まいの耐震性を踏まえ、被災シナリオと避難可能性を想定した備えこそ、全国で地震防災として意識いただきたい内容です。

繰り返す震度7に私たちはどう備えるべきか

令和8年(2026年)熊本地震における熊本市から八代市にかけての緊急調査から見えてきた被害の実態まとめと、繰り返す震度7に私たちはどう備えるべきか、今後取るべき防災アクションについて提言します。

直下型地震の破壊力と「立地リスク」の顕在化

日奈久断層帯の活動により、数十キロにわたって地表地震断層(地割れ)が出現しました。活断層の真上やその近傍至近では、建物の耐震性にかかわらず基礎から引き裂かれるような甚大な被害が生じていました。土地選びの段階で、活断層の位置を把握することが極めて重要です。八代市鏡町などでは家屋被害が集中していました。耐震性確保が不可欠ですが、地盤が揺れやすい地域などでは、より一層の耐震化の推進が優先されます。

広域な液状化被害

熊本の豊富な地下水と低地や埋立地の砂質土という特性が重なり、市街地や産業・物流拠点が集積する沿岸部周辺で広範な液状化が発生していることが想定されます。現行の耐震基準を満たす強固な建物であっても、足元の地盤対策がなければ、建物の不同沈下や上下水道の途絶といった被害は免れません。液状化リスクの把握と、自治体や個人としての備えが求められます。

猛暑下の複合災害と関連死への警戒

真夏に発生した今回の地震では、繰り返す余震への恐怖から車中泊や避難所生活が長期化し、熱中症やエコノミークラス症候群といった「災害関連死」のリスクが急増しています。過酷な環境を避け、安全な自宅で過ごす「在宅避難」を可能にする住まいづくりが、命を守る防波堤となります。

優先順位を間違えない「4つの備え」

防災対策は順序を間違えると命に関わります。水や食料の備蓄の前に、まずは「死なない空間」を作ることが大前提です。最優先は①建物を倒壊させないこと(耐震化・立地確認・定期メンテナンス)、次に②室内で怪我をしないこと(家具固定・ガラス飛散防止)、③生き延びる物資を確保すること(水・非常食)、そして④衛生と情報を維持すること(とくに携帯トイレの多めの備蓄・電源確保)を意識してください。

災害は、私たちが日常で見落としがちな「足元のリスク」を容赦なく突いてきます。今回の熊本地震を対岸の火事とせず、ご自身の住まいやこれから購入する不動産の立地リスクを今一度確認し、優先順位に基づいた的確な備えを進めてください。

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執筆者

横山芳春のアバター 横山芳春 だいち災害リスク研究所 所長/地盤災害ドクター

早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門等で関東平野の地形・地質および活断層・津波に関する研究活動に従事したのち、地盤調査会社にて技術部長、技術本部副本部長、一般社団法人理事等を歴任して現職。産学連携による地盤調査法の開発とその普及促進、被災地の現地調査、地盤災害に関する事前の防災意識の啓発などに取り組んでいる。

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