2025(令和7)年度税制改正はどうなる? 住宅ローン減税・仮想通貨・扶養控除の行方は

2025(令和7)年度税制改正大綱の公表が近づいてきました。10月現在は、各省庁などから税制改正大綱要望が出揃った段階です。今年も、不動産の売買やマンション管理の税制に関する要望が提出されています。加えて、仮想通貨や扶養控除に関する税制にも注目が集まっています。

目次

「税制改正」とは? スケジュールは?

税制改正とは、国や地方の財政状況や経済・社会の構造変化に対応し、税負担の公平性の確保などを目的に税制を改正することを指します。税制改正は毎年行われており、夏頃に各省庁から「税制改正要望」が出され、12月末に税制改正大綱が公表された後、閣議決定となります。

2024年10月時点は、各省庁からの税制改正要望が出揃った段階です。例年通りだと、12月20日頃に2025(令和7)年度税制改正大綱が公表される見通しです。先述のとおり、税制改正大綱は原則的に国会に提出された後に閣議決定という流れになりますが、中には2025年1月1日から適用となる税制もあります。

10月時点で各省庁などから出されている主な2025年度税制改正要望は、以下のとおりです。

国土交通省の主な2025年度税制改正要望

国土交通省の主な2025年度税制改正要望は、次のとおりです。

住宅ローン減税の子育て世帯優遇延長

国土交通省2025年度税制改正要望
出典:国土交通省「令和7年度国土交通省税制改正要望事項

2024(令和6)年度税制改正では、住宅ローン減税の借入限度額を子育て世帯および若者夫婦世帯に限り1,000万円上乗せする措置が決定しました。国土交通省はこの措置について、2025年度の延長を要望しています。加えて、子育て世帯および若者夫婦世帯に対するリフォーム税制の拡充も要望しました。

老朽化マンションの再生・長寿命化改修に対する特例措置の創設・拡充・延長

マンションの高経年化は、年を追うごとに深刻化しています。税制だけでこの問題を解消することは難しいと言わざるを得ませんが、現在、長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対して固定資産税が優遇される措置が取られています。国土交通省は、この措置について2年間の延長を要望しています。

また、長寿命化だけでなく、老朽化したマンションの区分所有関係の解消や再生のための仕組みに関する税制上の特例措置の創設・拡充についても要望が出されました。具体的には、マンション建替円滑化法に新設する「マンション取壊し敷地売却事業(仮称)」「マンション更新(一棟リノベーション)事業(仮称)」の円滑化のため、恒久措置として組合に対する次のような特例措置を創設することを要望しています。

  • 法人税・法人住民税・事業税・事業所税:収益事業以外の所得の非課税措置
  • 消費税・地方消費税:資産譲渡等の時期、仕入税額控除及び申告期限の特例

その他の省庁の主な2025年度税制改正要望

その他の省庁の主な2025年度税制改正要望は、次のとおりです。

金融庁

  • 「資産所得倍増プラン」および「資産運用立国」の実現
  • 「世界・アジアの国際金融ハブ」としての国際金融センターの実現
  • 安心な国民生活の実現など

内閣府

  • PFI法の選定事業者が整備した公共施設等に係る課税標準の特例措置の延長等
  • 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長
  • 沖縄振興に関する施策の推進 など

経済産業省

  • 国内投資拡大の継続・対日投資の拡大
  • イノベーション・新陳代謝の加速
  • 国民の所得向上
  • GXの実現とエネルギー安定供給の確保 など

こども家庭庁

  • こども・子育て支援加速化プランに基づく制度改正等に伴う税制上の所要の措置
  • 経済社会の構造変化を踏まえた子育て支援に関する政策税制の見直し など

デジタル庁

  • マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載に伴う本院確認措置等に係る所要の措置
  • 預貯金口座付番制度におけるマイナンバーの告知等に係る所要の措置 など

JBAらは暗号資産(仮想通貨)の分離課税・繰越控除などを要望

2025年度税制改正要望を出しているのは、省庁だけではありません。日本ブロックチェーン協会(JBA)らは、暗号資産(仮想通貨)に関する税制改正要望を提出しました。要望事項は、次のとおりです。

  • 申告分離課税・損失繰越控除の導入
  • 暗号資産同士の交換時における課税の撤廃
  • 暗号資産を寄付した際の税制の整備
  • 特定譲渡制限付暗号資産の今後の見直しの継続検討

同協会によれば、2024年6月時点の暗号資産の時価総額は400兆円。保有者は2024年までに5億円を超えており、日本でも保有者および保有を検討している人は増加傾向にあるといいます。

その一方で、仮想通貨による所得は原則、雑所得として総合課税の対象と定められており、税率は課税所得金額に応じて約15〜55%です。仮想通貨同士、雑所得内での損益通算は可能なものの、繰越控除はできません。

これに対し、上場株式などによって得た利益は原則的に分離課税の対象であり、20%の税率が適用されます。また、損失は翌年以後3年間にわたって繰越控除が可能です。これら点において、暗号資産は税制上、上場株式などと比べると著しく不利に感じられる投資であることから、上記のような要望が提出されました。

2024年度税制改正で持ち越しとなった「扶養控除」はどうなる?

2024年度税制改正では「扶養控除」の見直しに注目が集まりましたが、決定は2025年度税制改正に持ち越されました。見直しというのは、16歳から18歳までの扶養控除の縮小を指します。縮小が検討されている理由は、2024年10月から児童手当が拡充されたためです。拡充された点は、以下のとおりです。

  • 所得制限を撤廃
  • 支給期間を高校生年代まで延長
  • 第3子以降の支給額を3万円に増額

この改定を受け、15歳以下の取り扱いとのバランスを踏まえつつ、高校生年代の子育て世帯は教育費などの支出がかかることに鑑みて、扶養控除を所得税を38万円から25万円に、住民税を33万円から12万円に縮小することが議論されています。

まとめ

2025年度税制改正大綱は12月末に公表される予定です。公表され次第、さくら事務所の専門家のOPINIONをまとめてご報告いたします。

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