マンション管理会社への不信感が外部コンサルタント活用を後押し! 外部コンサルの役割とメリット・デメリット

近年、マンション管理における「外部コンサルタント」の活用が注目されています。

2024年にさくら事務所のコンサルタントを活用していただいた全国60のマンション管理組合に「外部コンサルタント活用」に関するアンケートを実施したところ、管理会社などへの不信感を理由に挙げる組合が少なからず見られました。とはいえ、外部コンサルタントは管理会社と対立するための存在ではなく、良好な関係を保ちつつ持続可能な管理体制を築くために活用されるべきものです。

目次

「管理会社への不信感」が外部コンサルタント活用の一因に

外部コンサルタントを活用した管理組合の「理由」

マンションの管理組合が外部のコンサルタントを活用した理由として最も多かったのは「費用面の心配」でした。しかし、回答は分散しており、自由記述では管理会社などへの不信感が感じられる内容が散見されました。

マンション管理組合が外部コンサルタントを活用した理由
  • マンション分譲会社が策定した初期の修繕積立金月額単価が恐ろしいほど低いため。
  • 最初は引渡2年後の建物検査で建築会社と管理会社だけに任せることに不安があった。管理組合側に建築等の専門知識がなくアドバイスをいただける会社を必要としていました。
  • 満足度の高い大規模修繕工事をしたかったから。長期修繕の周期見直しについて、管理会社に不信感が強かったため 。
  • 大規模修繕にて施工不良個所が想定以上で、施工会社とのやり取りに具体的なデータと根拠が必要だったから
  • 不合理に高い金額で、ぼったくられている感覚をもったため。
  • 管理会社とその協力会社に不信感があったため。管理会社の壊れる前にまとめて全部やってしまいましょう的な予防保全的な考え方ではなく、プロの目線で過去の修繕状況から勘案して、次の大規模修繕の大まかな実施時期を判断したかった。
  • 管理会社主導で2回目大規模修繕工事の準備が始められており、管理組合が主体的に判断することを試みた。
  • 長期修繕計画では、第二回修繕工事時に大きな赤字になることが予測されていた。マンション資産を守り育み次世代に繋いでいくためにも、全て管理会社任せでなく、住民主体で活動する必要があると考えた。

「費用面の心配」が外部コンサルタントの活用理由として最も多かったものの、外部コンサル活用にも費用がかかることから、現状の管理費・修繕積立金やその方針に不満や不信感を持っている管理組合が多いものと推測されます。

2025年には、分譲マンションの大規模修繕工事において、施工会社が談合を行っていた疑いで公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いにより立ち入り検査が実施されたこともあって、管理会社や施工会社への不信感はますます募っているはずです。

外部コンサルタントの役割

マンション管理における外部コンサルタントの役割は、時代とともに変化しています。かつては管理費の削減が主要な目的であり、コンサルタントといえば管理費削減のインストラクションを行う専門家として認識されていました。

しかし、現在は昨今の物価上昇や人件費の高騰により、管理費の削減は現実的に困難な状況にあることから、管理会社からの値上げ要請を受けた際に、その増額を最小限に抑える方法を模索することが主要な課題となっています。コンサルタントの役割は、単純な費用削減から、より戦略的な業務最適化へシフトしているといえるでしょう。

主な役割は業務量とコストの調整

現在のコンサルティング業務は、管理業務を必要度に応じて細分化し、無駄を省きつつサービス品質を維持・向上することを重視しています。単純な費用削減ではなく、サービス品質を保ちながら効率的な管理体制を構築することを目指します。

外部コンサルタントの意義

マンション管理サービスには、一般的な商品のようなメーカー小売価格に相当する標準価格が存在しません。この特異性が、管理組合にとって大きな課題となっています。

居住者は、自分たちが購入している管理サービスのコストが適正なのか、他と比較して高いのか安いのかを判断する基準を持っていません。この情報の非対称性こそが、外部コンサルタントの専門性が最も発揮される領域です。

数多くのマンションを見てきた経験と多様な管理形態を客観的に評価できる立場にあるコンサルタントは、管理組合にとって代替し得ない貴重な存在です。

管理会社の役割と期待値には「ギャップ」がある

マンション管理に対するニーズは、文字通り百人百様です。同じ規模のマンションであっても、立地条件や居住者の属性によって求められるサービスは大きく異なります。都心部の小規模マンションと郊外の同規模マンションでは、管理会社に対する要望が全く違うものになるでしょう。

多くの管理組合では、新築時に設定された管理体制をそのまま継続しており、住民は自分たちにとって本当に必要なサービスを見直す機会を持たずに管理サービスを受け続けているのが実情です。

管理会社の役割

管理会社の絶対的な役割として、管理費や修繕積立金の徴収、帳簿管理、決算準備といった金銭の出納管理業務が含まれます。これは「横領防止」という観点からも、外部委託が不可欠な業務といえるでしょう。

一方で、管理組合の運営サポートなど、その他の業務については、組合が自分たちで「できること」と「できないこと」を明確に切り分けることで、効率的な委託形態を構築できる可能性があります。

「部分委託」という選択肢も

小規模なマンションでは、金銭の出納のみを委託し、その他の業務は全て自分たちで行う部分委託という形態も有効な選択肢となります。管理委託費の高騰が続く現在、管理組合は自分たちが管理会社に何を期待し、何に対して対価を支払っているのかを細かく分析し、改めて組み立て直すことが重要です。

分析を進める中で、場合によっては現在よりも高いコストが必要になることが判明する可能性もあります。一方、不要な業務の発見や自分たちでできる業務の特定により、コストダウンの機会を見つけることも期待できます。重要なのは、一部の代表者だけでなく、できるだけ多くの居住者のニーズをヒアリングしながら管理のあり方を検討することです。

管理組合と管理会社のトラブル事例と対応策

管理組合と管理会社の間で発生するトラブルは残念ながら非常に多く、その多くは契約内容の理解不足に起因しています。

「契約内容の理解不足」が生むトラブル

トラブルの多くは「約束された業務が実施されていないのではないか」という組合側の疑問から生じます。しかし、詳細に調査すると、実際には管理委託業務に含まれていない内容に対して組合側がクレームを申し立てているケースも少なくありません。

全部委託契約を結んでいるからといって、すべての業務を管理会社が行うわけではありません。管理委託契約書を端から端まで読み、何をどの程度の頻度で実施してもらうのかを正しく理解している組合員は極めて少ないのが現状です。

たとえば、屋上の排水溝に泥が溜まったことで漏水が発生した場合も、屋上清掃が契約に含まれていなければ管理会社の責任を追及したくても難しいのが実情です。このような場合、なぜ提案してくれなかったのかという新たなトラブルに発展することもあります。

管理業務は属人的なものも少なくない

管理業務には、契約書に明記されない属人的な要素が含まれています。たとえば、前任の管理員が契約外の業務まで気を利かせて行っていた場合、後任者が契約通りの業務のみを行っていると、サービスが低下したという印象を持ってしまうものです。このような属人的な部分は契約書に記載されないため、トラブルの原因となりやすいもののひとつです。

管理会社側でも、契約で約束された最小限の業務のみを行う担当者と、多少の付帯業務も含めて対応する担当者が存在します。この違いは居住者の満足度に大きく影響しますが、標準化が困難な領域でもあります。

トラブル解決のアプローチ

トラブルが発生した際の対応として、まず管理委託契約書の詳細な確認が必要です。問題となっている事項が委託業務に含まれているかどうかを明確にし、含まれていない場合は追加費用での対応を検討する必要があります。契約内容に含まれていたとしても、実施頻度や「適宜」などの曖昧な表現の定義が不明瞭であれば、明確にする必要があるでしょう。

重要なのは、管理会社と管理組合のパートナーシップを維持することです。初めから対立的な姿勢で臨むのではなく、まずは建設的な話し合いを通じて解決を図り、組合側が努力しても管理会社が歩み寄らない場合に初めて本格的な協議を開始するという段階的なアプローチが効果的です。

外部コンサルタント活用のメリットと注意点

外部コンサルタントを活用することで、管理の透明性や効率が向上する反面、注意しなければならない点もあります。

メリットは客観的な比較分析ができること

外部コンサルタント活用の最大のメリットは、他の管理会社とのコスト比較や同じ管理会社が提供する他のマンションとの比較を客観的に行えることです。管理組合だけでは入手困難な情報を基に、現在の管理体制の妥当性を評価できます。

たとえば、コンシェルジュサービスの廃止や時短など、居住者の間で意見が分かれやすい問題について、第三者の立場から調査したり、議論の進行を支援したりすることができます。当事者である組合員が直接調査を行うと、隣人関係に影響を与える可能性があるため、中立的な立場のコンサルタントが介入することで円滑な合意形成が可能になります。

コンサルタントの「質」に注意

外部コンサルタント活用のデメリットは、やはりコストが発生することです。しかし、より深刻な問題はコンサルタントの質の格差でしょう。最近では安価にサービスを提供するコンサルタントも増えており、実務経験や専門知識に乏しいケースでは、期待通りの成果が得られないリスクもあります。

コンサルタントは継続的に依頼するものではないため、必要な局面では、多少コストが高くても該当分野のエキスパートを起用することが重要です。安価であっても実務経験が乏しいコンサルタントでは、費用を支払っても期待する成果を得られないリスクがあります。コンサルタントの経歴や経験値を事前に確認し、慎重に選択することが成功の鍵となります。

効果的な外部コンサルタントの活用方法

外部コンサルタントとの連携は、管理会社と敵対するためのものではなく、持続可能で効率的なマンション管理を実現するための選択肢のひとつです。

継続的な値上げ要請への対応

現在、マンション管理コンサルタントへの問い合わせで最も多いのが、管理会社からの継続的な値上げ要請への対応です。急激な物価上昇の影響により、値上げしたばかりにも関わらず、再度の増額を求められるケースが増加しています。

このような状況では、値上げを一律に拒否するのではなく、その妥当性を客観的に分析することが重要です。管理会社の責任ではない外部要因による値上げについて、適切な情報収集と分析を行い、今後の良好な関係維持を前提とした判断が求められます。

値上げ要請を突っぱねることで管理会社から契約解除を求められるリスクもあるため、慎重な対応が求められます。組合員への説明責任を果たすための分析や他のマンションとの比較による妥当性の検証など、専門的な業務については外部コンサルタントの活用が有効でしょう。

持続可能な管理体制の構築

マンション管理を取り巻く環境は、今後も変化し続けることが予想されます。人口減少、高齢化、技術革新など、さまざまな要因が管理のあり方に影響を与える可能性があります。このような変化に対応するためには、固定的な管理体制ではなく、柔軟性を持った仕組みの構築が求められます。

外部コンサルタントの活用は、このような変化への対応力を高める有効な手段となります。定期的な見直しと最適化により、時代に適応した管理体制を維持することが、マンションの資産価値保全と居住者の満足度向上につながります。

現代のマンション管理においては、従来の慣習にとらわれることなく、客観的な分析に基づいた戦略的な判断が求められています。外部コンサルタントの専門性を適切に活用することで、複雑化する課題に対して効果的な解決策を見出すことが可能になります。

まとめ

マンション管理における外部コンサルタントの活用は、複雑化する現代のマンション管理の問題の解決策として、また将来的な変革への対応策として有効な手段です。さらには、居住者の満足度や資産価値の維持・向上にも貢献しうる選択となります。管理会社と「敵対」するのではなく、不信感を払拭し、ともにより良い管理をしていくための手段のひとつとして検討しましょう。

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執筆者

土屋輝之のアバター 土屋輝之 マンション管理コンサルタント

2003年さくら事務所に参画、不動産仲介から新築マンション販売センター長を経る間に、不動産売買及び 運用コンサルティング、マンション管理組合の運営コンサルティングなどを幅広く長年にわたって経験。
不動産、建築関連資格も数多く保持し、深い知識と経験を織り込んだコンサルティングで支持される不動産売買とマンション管理のスペシャリスト。

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