既存住宅インスペクション・ガイドラインでも第三者性を重視

6月17日(金)に国土交通省から、さくら事務所会長・長嶋も検討会委員として参加していた「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が公表されました。

すでに欧米などでは中古住宅売買の際には欠かせない「ホームインスペクション」。日本でも今、中古住宅を買って自分好みにリノベーションをする人気とともに、建物のコンディションを把握するためホームインスペクションの注目も高まってきています。

しかし、これまでは事業者によってホームインスペクションの位置づけや現場で診断を行う担当者の技術力・診断項目が異なり、依頼する際の判断基準をどうすればいいのかわかりづらく、診断結果の違いなども生じていました。

そこで今回、事業者に関わらず一定の結果が得られるよう、インスペクションの適正な業務実施、トラブルの未然防止の目的で「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が策定されました。

【図1】既存住宅現況検査における検査項目(一戸建ての場合)
[出典:国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」より]

さくら事務所が大切にしている「第三者性の確保」もしっかりと盛り込まれています。

  • 自らが売主となる住宅についてインスペクションしない
  • 依頼主承諾なく依頼主以外から報酬受け取らない
  • 仲介、リフォーム事業者から、謝礼等提供受けない
  • 紹介・推薦等の謝礼等を提供しない
  • 媒介業務やリフォーム工事受託は、その旨を明らかに
  • 売買やリフォームの請負契約を締結しない旨の意思表示者に契約勧誘しない

また、依頼者へのホームインスペクターの資格や経験などの情報の提供や、ホームインスペクション会社は免許や検査項目の概要、料金などの情報公開についても盛り込まれています。今回公表されたガイドラインは、最低ラインを指針したもので、強制力はありませんが、どの会社に依頼するか一定の判断基準にすることができるでしょう。

今後、ホームインスペクションを行う事業者はガイドラインに準じて、さらに質の高いサービスを行っていくことが期待されています。

インスペクションは、リフォームや仲介の契約をとるための道具ではありません。

もう少し大きな構図、つまり中古住宅流通の仕組み全体の中で、不可欠な仕組みのひとつ、という位置づけです。インスペクションは業界の為だけにあるわけではないのです。

国からインスペクションのガイドラインが示されたのは画期的です。もちろん、今後の市場の成熟度に応じて本ガイドラインも軌道修正を迫られる時が来るでしょう。

本検討会では当局担当者も、事務局メンバーも非常に熱心に取り組んでくださり、委員の意見も尊重され、仕上がりとしては高レベルのものができたと思います。本ガイドラインが国民に広く認知され、有効活用されることを切に望みます。

このところ、国土交通省当局による中古住宅・リフォーム市場に対する各種方策の展開には、目覚ましいものがあります。

ここから先は、民間事業者である私たちが奮起しなければなりません。

次世代にどのような形で日本の住宅市場を手渡したいのか。
30年、50年、100年後の住宅市場をどのようにしたいのか。

そのくらいのスケールで私たちは物事を考え、行動する必要があります。

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