欧 米では、不動産を購入する前に、専門家が建物の調査に入るというのは、もう何十年も前からの常識ですが、日本においてもこのような慣行がようやく根付きつ つあります。私が創業した「さくら事務所」には連日、マイホームや収益物件の購入を検討している方からのホームインスペクション(住宅診断)依頼が舞い込 んできますが、昨今の不動産投資家の意識の高まりには、目を見張るものがあります。
実際、不動産市場において、売りに出ている建物の品質の ばらつきは驚くほど大きく、同じ価格、同じ利回りでも実質的な運用には天と地の違いが。建物の質をきちんと見極めないと、金融電卓をはじいた利回り計算な ど全て吹っ飛んでしまい、計算も何もあったものではないのだということを、多くの住宅購入者・不動産投資家が認識し始めています。
先日、さ くら事務所で調査を行った、築5年の木造中古住宅は一見、何の問題もなさそうに見えましたが、ホームインスペクション(建物調査)の結果、驚くべき事態が 判明しました。床下点検口をのぞいて見ると、全体に湿気がムンと充満しているのです。ここしばらくずっと天気はよかったはずなのにこの現状があることに は、何かしら建物に問題がありそうです。
原因は「雨漏り」でした。おそらく新築のときから、これまでずっと雨漏りしていたようです。このことによる影響がどの程度あるのか未知数であるため、建物の一部を壊して確認をしてみると・・・。もはや取り返しのつかないほど、建物内部にまで雨水が浸透していました。
下の写真は外壁の一部を壊して建物内部をのぞいたところ↓↓↓
木 部が十分に水を吸ってしまっており、すでに時間も経過していることから、腐りが進行しています。またこのような状況は、カビや雨漏りの温床ともなりますの で、建物には相当なダメージをもたらすことになります。このような物件を何の調査も行わずに買ったら、のちのち大変なことになっていたことでしょう。購入 を検討していたWさんはもちろん契約を見送り、売主である個人は、購入当時の売主の責任において、雨漏り箇所の特定とダメージ回復の工事を行っているとこ ろです。
幸い当時の売主である施工業者さんは、誠意のある対応をして下さっており、これから徹底的にリカバーをしてくださるようですが、こ のようなケースばかりではないのが実情であることも私たちは知っています。言い訳や責任逃れをする施工業者、のらりくらりとあいまいな対応に終始する施工 業者、倒産してすでに責任追及できなくなってしまった施工業者など。
この物件を所有する投資家の方はきちんと対応してもらえるだけ、まだいいほうです。もっともこの雨漏りも、工事をキチンと行っていれば防げた初歩的なミスが原因でした。工事中のプロセスを、第三者であるホームインスペクターにチェックしてもらうことも検討してください。