「築20年のマンションっていつまで住めるの?」
「築20年のマンションが売り時・買い時と言われたがなぜ?」
築20年程度のマンションの購入を検討している人の中には、このような疑問を感じたことがあると思います。
実は中古マンションは適切な管理が行き届いていれば長く住み続けられます。さらに、築20年を過ぎたマンションの価格は新築時からゆるやかに下降しているので売り手にとっては損失が抑えられます。一方で、築25年を超えると手頃な価格に落ち着く傾向にあるので、買い手にとってはお買い得といえます。
そのため築20年マンションは、売り時・買い時と言われるほど人気のある物件です。
しかし、当然ながら築20年のマンションには注意すべき点も存在します。注意点を知らずに購入してしまったばかりに「予期せぬ出費が発生してしまった…」などの後悔につながる恐れがあります。
そこで本記事では、住宅のプロであるさくら事務所のホームインスペクターが築20年マンションが売り時・買い時と言われる理由を3つ紹介します。必要なメンテナンスの種類や住む際の注意点も紹介しているので、併せて参考にしてください。
築20年マンションが売り時・買い時と言われる理由
築20年マンションが売り時・買い時と言われる理由は、おもに以下の通りです。
- 中古マンションの平均成約築年数が約24年
- マンションの売却価格の分岐点
- 新耐震基準を満たしている
それぞれの理由を紹介します。
中古マンションの平均成約築年数が約24年
2023年における首都圏中古マンションの成約築年数は、23.83年でした。新規登録物件の平均築年数は29.41年だったことから、売りたい人・買いたい人ともに築20年から築30年程度の物件に需要があることがわかります。
図表 中古マンションの平均築年数
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構│RAINS TOPIC 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)
また、上記の表を見てみると、中古マンション市場における平均築年数は20年以上で、過去10年間で右肩上がりに増えていることがわかります。。つまり、築20年マンションは中古マンションの中でも需要が高いと言えるでしょう。
マンションの売却価格の分岐点
中古マンションの築年数と成約価格の推移によると、築21~30年にかけて大きな開きがあります。
図表 中古マンションの築年帯別平均価格
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構│RAINS TOPIC 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)
成約価格は築11~20年が5,000万円台・築21~25年が4,000万円台・ 築25年超が2,000万円台となっており、築20年代が売却価格の分岐点です。つまり、築20年マンションは新築や築浅の物件と比較すると、選択肢も多く売却や購入がしやすい価格帯であるといえるでしょう。
新耐震基準を満たしている
築20年マンションは、新耐震基準を満たしている物件です。新耐震基準とは1981年6月1日に施行された耐震基準で、それ以前の旧耐震基準よりも規定が厳格化されています。具体的には、以下のような基準が設定されています。
旧耐震基準 |
新耐震基準 |
震度5(中規模)までの地震で倒壊・損傷しない |
・震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷 ・震度6強から7に達する程度の大規模地震でも人命に危害を及ぼすような倒壊などの被害は免れる |
旧耐震基準と新耐震基準の定義の違い
表を見るとわかるように、旧耐震基準よりも新耐震基準のほうが厳しい条件で建設されているため、耐震性能が高いです。築20年マンションであれば現行の耐震基準で建設されているため、大きな地震にも耐えうる性能を持っています。
築20年マンションはいつまで住めるか
築20年マンションは築年数が経過していることから、購入後何年住み続けられるか疑問に感じる人もいるはずです。実は管理状況によって異なるものの、鉄筋コンクリート造のマンションであれば、100年近く住み続けられる可能性があります。
ここでは、以下の2つに分けて築20年マンションにいつまで住めるかを解説します。
- 法定耐用年数=寿命ではない
- 適切に管理されていれば100年程度もつといわれている
それぞれについてもう少し詳しく説明します。
法定耐用年数=寿命ではない
多くのマンションで使用されている鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年と定められています。そもそも法定耐用年数とは、減価償却資産(固定資産)を使用出来る期間のことです。税金を納める際に使用する基準であり、建物の寿命と必ずしも一致するわけではありません。
適切に管理されていれば100年程度もつといわれている
国土交通省の資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」によると、鉄筋コンクリート造の建物は平均寿命68年、管理状況次第で100年以上使用出来るという研究報告があります。
たとえば外装仕上げのメンテナンスを定期的に行うことで、コンクリート自体の寿命を延ばすことも可能とされています。つまり、適切な工事と管理がされた築20年マンションであれば、平均寿命を超えて長期間住み続けられるケースもあるでしょう。
築20年マンションで発生するメンテナンスはどんなものか
上記で解説した通り、中古マンションに長く住み続けるためには定期的なメンテナンスが必須です。とくに共用部分に関しては区分所有者(各住戸の所有者)単体ではメンテナンスを実施できないため、管理組合が計画した修繕計画の有無やメンテナンス実施状況がマンションの寿命を左右すると言っても過言ではありません。
上記を踏まえた上で築20年マンションを購入する際は、共用部分にはどのようなメンテナンスが必要となるかを把握しておきましょう。中古マンションの共用部に発生するおもなメンテナンスは以下の通りです。
- 外壁塗装の補修
- 屋根防水のやりかえ
- エントランス・廊下部分の補修・塗装
- サッシ・玄関ドアの点検・交換
- 設備機器の修理・交換
それぞれのメンテナンスについて解説します。
外壁塗装・補修
築20年マンションでは、外壁塗装や補修工事を行う可能性があります。外壁は共用部分に該当し、12~15年ペースでメンテナンスが必要です。
マンションの外壁は塗装仕上げやタイル貼りをしているケースが多く、劣化するとひび割れなどが発生して雨水がコンクリート内部に浸入します。すると鉄筋が錆びて、劣化の進行が早まります。そのため定期的なメンテナンスを行い、適切な外壁の状態を維持しなければいけません。
屋根防水のやりかえ
築20年マンションでは、屋根防水のやりかえを行うケースがあります。屋根防水は共用部分に該当し、12~15年ペースでメンテナンスが必要です。屋根防水が劣化すると雨漏りの原因ともなるため、マンションの強度に影響を及ぼします。
エントランス・廊下部分の補修・塗装
築20年マンションは、共用部分の補修および塗装が行われるケースがあります。廊下や玄関をはじめとする共用部分は箇所によって必要なメンテナンスが異なり、概ね鉄部塗装は5~7年、床の防水は12~15年ペースで行なわれます。
エントランスや廊下など、生活動線上にある部分のメンテナンスを怠っていると、老朽化によるイメージの悪化や日常生活に支障をきたすような不具合が発生するリスクが高まるため注意が必要です。
サッシ・玄関ドアの点検・交換
あまり知られていない点になりますが、実はサッシや玄関ドアは共用部分に該当します。そのため自身での交換やメンテナンスは勝手には行えません。サッシの網戸も該当するため、注意が必要です。
サッシや玄関ドアの点検・交換目安は以下の通りです。
- 点検・調整:12〜15年
- 取り替え:34〜38年
築20年のマンションでは取り替えの時期には達していませんが、点検や調整の時期には達しています。内見時にサッシや玄関ドアに作動状況が問題ないかを確認しておきましょう。
設備機器の修理・交換
築20年マンションは、設備機器の修理や交換が行われる場合もあるでしょう。マンションに使用されている設備機器にはそれぞれ耐用年数の目安があり、必要に応じて修理や交換が求められます。築20年時点で修繕時期に達する、代表的な設備機器は以下の通りです。
設備機器の種類 |
耐用年数の目安 |
|
共用部分 |
給排水管 |
15年〜40年(材質による) |
空調設備 |
13〜17年 |
|
電灯設備(照明器具・非常用照明など) |
18〜22年 |
|
自動火災報知設備 |
18〜22年 |
|
インターホン設備 |
15〜20年 |
|
専有部分 |
給湯機 |
15〜25年 |
設備機器の種類と耐用年数の目安(20年付近のものを抜粋)
中には耐用年数を迎えているのに、修繕や交換が実施されていない設備機器が使用されているケースもみられます。設備機器は適切なメンテナンスや交換を行わないと、不具合の発生につながるため注意が必要です。たとえば電気設備をメンテナンスしないまま放置すると、漏電を起こして火災の原因になる可能性も否定出来ません。
築20年マンションに住む上で注意すべき点
築20年マンションに住む上で注意すべき点は、おもに以下の通りです。
- 専有部分のメンテナンス状況を確認する
- 修繕積立金の状況・積立額を把握する
- 管理状況を都度チェックする
それぞれの注意点を解説します。
専有部分のメンテナンス状況を確認
築20年マンションを購入するときは、専有部分のメンテナンス状況を確認しましょう。マンションの共用部分は建物ごとに定められた長期修繕計画を元にメンテナンスが行われるものの、専有部分にある玄関ドア、窓枠、サッシ、バルコニー、共用配管などは共用部分に属するため、一般的にこれらの修繕は管理組合によって実施されますが、給湯器やユニットバス、システムキッチンなどの設備類や内装仕上げ材などは区分所有者(各住戸の所有者)の判断に委ねられています。
きちんと管理出来ていないと予期せぬ修繕やリフォームが発生する恐れがあるため、専有部分のメンテナンス状況の把握は事前にしておくことが大切です。メンテナンスがしっかりと出来ている築20年マンションであれば、購入後の生活も快適でしょう。
修繕積立金の状況・積立額を把握する
築20年マンションを購入するまえに、修繕積立金の状況や積立額を把握しておくのもポイントです。修繕積立金とは12~15年ごとに実施される大規模修繕にかかる費用に充てるお金のことで、将来的な積立金額の増加を予測する指標になるものです。
修繕積立金は築年数とともに増額されるケースが多く、入居後の生活コスト増加にもつながります。そのため事前にチェックしておき「生活に大きな影響を与えないか」といった検討を行っておくのをおすすめします。
なお、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、新築マンションの修繕積立金は月額約7,000円(平均 95.4 円/㎡・月)が相場です。しかし、修繕工事の実施時に積立金の不足で、一時徴収金が発生したり、金融機関から借り入れするケースも見受けられるため、適正な修繕積立金は約200円/㎡・月が目安とされています。修繕積立金をチェックする場合は、これらの相場費用を目安にしてください。
管理の状況は都度チェックを
築20年マンションを購入する場合は、管理履歴のチェックを行いましょう。上記で解説した通り、管理修繕の有無はマンションの寿命にかかわる重要なポイントです。そのため築20年マンションを購入する場合は、エントランスや外構の清掃状況、劣化具合、管理人の有無などを確認しておくと、適切な管理が運営されているかどうかを見極める判断材料となるでしょう。
築20年マンションの管理状況と併せて管理組合の議事録や修繕計画を確認しておくと、より状況判断しやすくなるでしょう。
築20年のマンション購入はプロの力を借りることでより安心して取引きが可能
築20年マンションは売却価格の分岐点であり、売り時・買い時と言われる中古マンションです。適切に管理されたマンションであれば、平均寿命を超えて住み続けられる可能性もあるため、お得にマンションを購入したい人におすすめです。今回紹介した注意点を参考に、お気に入りのマンションを見つけてみましょう。
とはいえ、管理状況や建物劣化状況の確認などは、専門的な知識がないと判断が難しい場合も少なくありません。さくら事務所の中古マンションホームインスペクションやマンション管理インスペクションを活用すると第三者の立場からアドバイスを行えます。築20年マンションを後悔なく購入したい人は、ぜひさくら事務所のサービスをご利用ください。