築60年のマンションについて「こんなに古いマンションに住んで大丈夫なの?」、「いつまで住めるんだろう」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
築年数が経過しているからといって、必ずしもマンションの価値が下がるわけではありません。適切な管理と修繕が行われていれば、古いマンションでも十分に住み心地の良い住まいとなります。
しかし築60年のマンションを購入する際は、注意しなければならない点がいくつか存在します。注意点を把握せずに購入すると、入居後発覚した不具合により、多額の修繕費用がかかったり、売却が難しくなったりする事態になりかねません。入居してから後悔するような事態に陥らないよう、しっかりと注意点を把握しておきましょう。
そこでこの記事では、築60年マンションのメリットデメリット、建て替えの可能性や購入時の注意点をまるっと解説します。
ぜひ最後までお読み下さい。
築60年マンションのメリット
築60年のマンションには、以下2つのメリットがあります。
- お手頃な値段で手に入るケースが多い
- 立地の良い物件がある
これらのメリットは築60年のマンションならではとも言えます。購入を検討している方は、ここで解説するメリットをぜひ参考にしてください。
お手頃な値段で手に入るケースが多い
築60年のマンションを購入するメリットのひとつは、価格の手頃さです。時間の経過とともに建物の価値は下がるため、築60年のマンションは新築時に比べて、かなり低い価格で市場に出回ることがあります。手頃な価格は予算を抑えつつ不動産を手に入れたい方にとって、魅力的なポイントでしょう。
ただし、例外もあります。とくに立地条件が良く、人気や需要が高いエリアは、築年数が経過していても価格がそれほど下がらない傾向があります。したがって、価格の手頃さを追求する場合は、立地や市場の需要をよく調べることが重要です。
立地の良い物件がある
築60年のマンションのメリットのひとつが、立地の良い物件がある点です。とくに都心部や交通の便が良い場所では、新築マンションよりも条件が良いケースがあります。
これは1960年代からマンションの建設が行われており、現在に至るまでの不動産開発によって古い物件ほど現在よりも立地条件の良いマンションが多い傾向があるためです。そのため、築60年のマンションは新築マンションでは得られない、魅力的なエリアに位置する物件を比較的見つけやすいです。
築60年マンションのデメリット
築60年のマンションには価格や立地でメリットがある一方で、以下のデメリットもあります。
- 耐震性能に不安がある
- 修繕積立金や管理費が高い傾向がある
- 予期せぬ出費が発生するリスクが高い
デメリットも合わせて把握し、比較したうえで、家族にとってより良い選択をする参考にしてください。
耐震性能に不安がある
築60年のマンションのデメリットのひとつは、耐震性能に不安がある点です。築60年のマンションは多くの場合、現行の新耐震基準が導入されるまえ、すなわち旧耐震基準に基づいて建設されています。新・旧の耐震基準には大きな違いがあり、新基準ではより厳格な設計が求められるため、古い建物は地震発生時の安全性が相対的に低い可能性があります。
新・旧耐震基準の具体的な違いは、以下の通りです。
項目 |
新耐震基準(1981年6月1日施行) |
旧耐震基準(1950年~1981年5月31日) |
想定される地震規模 |
震度6強~7(大規模地震)で倒壊・崩壊しないとされる 震度5程度の中地震で軽微なひび割れ程度 |
震度5(中規模地震)で倒壊・崩壊しないとされる |
新耐震基準と旧耐震基準の違い
もちろん旧耐震基準の建物であっても、耐震補強工事などの対策によって耐震性能は確保できます。しかし、耐震補強工事は建物全体の改修になるため、自身の判断だけでは行えません。耐震補強工事を行うには、基本的に区分所有者の3分の4以上の同意が必要(場合によっては2分の1でも決議可)です。
新耐震基準と旧耐震基準の違い
そのため築60年のマンションを購入する際は耐震補強工事の履歴や実施予定の有無を調べておくと良いでしょう。
修繕積立金が高い傾向がある
築60年のマンションの修繕積立金の高さは、購入者にとって大きなデメリットです。年月を経るにつれて、マンションが必要とするメンテナンスや大規模修繕の頻度と規模は増加します。そのため、これらのコストは新築や築年数の少ない物件に比べて高額になる傾向があります。
とくに築年数の経過したマンションでは、定期的なメンテナンスや予期せぬ修繕が必要になる場合が多いため、これらのコストを賄うために修繕積立金が設定されています。築60年のマンションを購入するまえに、将来的に見込まれるこれらの費用を十分に検討し、予算計画を立てることが重要です。
修繕積立金の残額が大きければ大きいほど備えられているといえるため、不意な出費を避けるためにも必ず確認しましょう。
予期せぬ出費が発生するリスクが高い
築60年のマンションは老朽化により、予期しない出費が必要になるリスクが高くなります。経年変化によって隠れた不具合が存在する可能性があり、これらは購入後にはじめて明らかになることも少なくありません。
入居後に予期せぬ不具合が発生した場合は、追加の修繕費用が発生するため、家計に影響を及ぼします。このような不測の事態に備えるためにも、購入前の詳細な物件調査や将来のメンテナンス計画の検討が重要です。不安な場合はホームインスペクションをはじめとした、第三者のプロに建物をチェックしてもらうのも、ひとつの手です。
築60年マンションの建て替えの可能性は
マンションの建て替えは一般的には困難とされていますが、不可能ではありません。建て替えの可否は、マンションの構造や立地条件、所有者間の合意など、多くの要因が関係するため、一概には言えないのです。またマンションの寿命は、適切なメンテナンスが行われているかどうかによって大きく変わります。
ここでは以下3つの建て替えの可能性を、詳しく解説します。
- 条件が合えば建て替えの可能性あり
- 実際に建て替えられているケースはかなり少ない
- 建て替えの際は費用負担が発生する点に注意
条件が合えば建て替えの可能性あり
結論から言えば、築60年のマンションの建て替えの可能性は、あります。ただし特定の条件が揃った場合に限られます。
条件は、おもに以下の3つです。
- 居住者が負担を担うこと
- 建物の容積率を上げることによる経済性の向上が見込めること
- マンションの敷地売却制度の活用
ただし実際の建て替えには区分所有者の4/5以上の賛成が必要となるため、所有者に十分なメリットが提供されない限り、合意に達することは困難です。
条件をすり合わせるこのプロセスでは、所有者間の意見調整が重要なポイントです。建て替えを実現するためには、各所有者が抱えるニーズや懸念に対して十分に対応する必要があります。
実際に建て替えられているケースはかなり少ない
築60年のマンションが実際に建て替えられたケースは、かなり少ないのが現実です。国土交通省の調査資料「マンションを取り巻く現状について」によれば、2022年度の時点で全国で確認された建て替え件数はわずか270件(22,000戸)に留まり、これはマンションストック全体の約1%にも満たない数しかありません。
この結果からも、築年数が相当経過したマンションの建て替えが進んでいない現状がうかがえます。マンションの建て替えには多くのハードルが存在し、とくに所有者間の合意形成が大きな課題となっていることが背景にあると考えられます。また経済的な負担や手続きの複雑さも、建て替えを進めにくい要因のひとつとして挙げられるでしょう。
建て替えの際は費用負担が発生する点に注意
築60年のマンションの建て替えでは、区分所有者に費用の負担が発生する点に注意が必要です。建て替えプロジェクトは、新たな建物の建設費用だけでなく、解体費用や仮住まいの費用、さらにはプロジェクトの管理費用など、さまざまな費用が含まれます。これらの費用は、建て替えに賛成する区分所有者の負担になるため、個々の負担はかなりの額に上る可能性があります。
そのため、建て替えに向けた初期の段階で、具体的な費用見積もりを取得し、所有者全員で共有することが重要です。費用の見積もりと負担の方法について明確な合意をとることが、建て替えプロジェクトを成功に導く1つの鍵となります。
築60年マンションを選ぶ際の注意点
築60年のマンションを選ぶ際は、いくつかの注意点があります。ここでは以下3つの注意点を、詳しく解説します。築60年のマンション購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- 売却時のことを考えておく
- 管理状況を確認しておく
- 地震時のリスクを把握しておく
売却時のことを考えておく
築60年のマンションを選ぶ際には、将来の売却を見据える必要があります。築60年のマンションには、耐震性の不足や劣化の進行などの、取引におけるデメリットが少なくありません。これらのデメリットを補うだけのメリットがなければ、将来的に売却するときに苦労してしまうでしょう。
そのため築60年マンションを選ぶ際は、入居の快適性だけでなく、将来的な売却や物件の価値の維持についても慎重に検討し、適切な出口戦略をあらかじめ計画しておくことが必要です。市場動向や物件の将来性を見極めるために、不動産の専門家の意見を聞くことも有効な手段のひとつです。
管理状況を確認しておく
築60年のマンションに限った話ではありませんが、管理状況の確認を行うことは、中古マンションを購入する際に欠かせないポイントです。理由は管理履歴がマンションの健全性と将来性を判断する上で不可欠な指標となるためです。適切な管理と修繕が行われているかどうかは、物件の長期的な価値を左右します。そのため中古マンションの購入時は管理修繕の実施状況を細かくチェックしましょう。
具体的なチェックポイントは、以下の3つです。
- 現地のゴミ箱や共有部分の清掃状況
- 掲示板に掲示されている情報の新旧
- 管理組合の議事録や修繕計画書を確認する
上記3つを確認することで、日常的な管理がどの程度行き届いているかや、将来的な大規模修繕の計画や過去に実施された修繕の内容とその質を理解できます。これらの情報の総合的な評価により、購入後の生活で予期せぬ問題に直面するリスクの低減が可能です。
地震時のリスクを把握しておく
築60年のマンションを選ぶ際は、災害時のリスクを把握しておくことが不可欠です。前述の通り、築60年のマンションは多くの場合、旧耐震基準で建設されています。そのため、大きな地震が発生した際の安全性が劣ります。築60年のマンションを選ぶうえで、避けられないリスクです。理解したうえで購入を検討しましょう。
ただし、なかにはすでに耐震補強を行なっている物件も見られます。そのような物件の場合は、耐震補強工事が行われているかどうか、また、その工事が新耐震基準に適合しているかどうかを事前にチェックしましょう。
耐震補強工事の履歴や耐震基準に関する情報は、購入を検討しているマンションの管理組合や不動産業者から入手できます。
築60年のマンションはリスクの把握が重要
築60年のマンションは、管理状況や耐震性を事前に詳しく把握することで、良い物件に出合える可能性が高まります。さくら事務所では、中古マンションの管理状況を専門家がチェックするマンション管理インスペクションサービスや、中古マンションホームインスペクションサービスを提供しています。築60年ほどのマンションを購入する方で、建物の状況を詳しく知りたい方は、ぜひご利用ください。管理状況や建物の状況について専門家によるチェックを受けられるため、より安心を得るための判断材料としてお役立てください。