建物調査には、主に「建物状況調査」と「ホームインスペクション(住宅診断)」の2種類があり、ともに専門知識を持った建築士などが建物の調査を行います。
両者は、調査の範囲や項目などが異なるため「調査を依頼したはよいものの、調査対象でない箇所に不具合が発生していて、調査時に見つけられなかった」といったことも少なくありません。
建物調査で後悔しないためには、建物状況調査とホームインスペクションにどのような違いがあるのかを把握しておくことが重要です。
本記事では、建物調査の概要や種類、必要なケースを解説します。費用相場も紹介するため、建物調査を検討している方はぜひお役立てください。
建物調査とは
建物調査とは、建築士などの専門知識を持つ第三者が、中立の立場で住宅や建物の現況を客観的に調査し、劣化や不具合の有無、補修が必要な箇所などを確認する、いわば「住まいの健康診断」です。
建物調査の結果は、購入時の重要な判断材料になるだけでなく、将来の修繕計画の立案や、引き渡し後の予期せぬトラブルを防ぐためにも役立ちます。
なお、ひと口に建物調査といっても、目的や調査範囲によって、宅建業法に基づく「建物状況調査」と、より網羅的な「ホームインスペクション」に分かれます。納得のいく調査をしてもらうためには、まずはこの2つの違いを正しく理解することが重要です。
建物調査の注目度が高まっている背景
近年、日本では新築住宅の供給数減少や価格高騰などを背景に、中古住宅市場が拡大しています。

中古住宅市場の拡大に伴い、建物の状態がわかりにくい中古住宅の売買リスクを減らすため、建物調査への関心が高まっています。
こうした状況を受け、国は「中古住宅流通の透明化」を推進し、2024年4月の標準媒介契約約款の改正では「不動産会社が建物状況調査のあっせんを行わない場合、その理由を書面に明記すること」が義務付けられました。
こうした制度整備からも、売り手・買い手の双方が建物の状態やリスクを把握したうえで取引を行うことが、これからの不動産売買のスタンダードになりつつあることが読み取れます。
建物状況調査とホームインスペクションの違い
建物調査には、建物状況調査とホームインスペクションの2種類があります。
建物状況調査は、宅地建物取引業法に基づく「既存住宅状況調査方法」に沿って実施されるため、依頼先によって調査内容や報告内容が大きく変わることはありません。
一方、ホームインスペクションは、建物状況調査の内容を基本としながら、設備の点検や外回り、床下・屋根裏への進入調査など、より広い範囲を確認できます。会社によって調査範囲や報告内容、アドバイスの有無などが異なるため、事前に確認しておきましょう。
以下は、両者の比較表です。ホームインスペクションについては、弊社調べによる一般的な内容を記載しています。
| 比較項目 | 建物状況調査 | ホームインスペクション |
| 対象物件 | 中古住宅 | 新築・中古住宅 |
| 調査範囲 | 基礎・外壁・屋根などの目視調査が中心 | 床下・屋根裏・設備・外回りなども含めて調査する会社が多い |
| 調査目的 | 現状の不具合や劣化の有無を確認 | 建物の状態・将来のリスク把握 |
| 調査時間 | 1~3時間程度 | 2~5時間程度(調査内容による) |
| 結果の報告 | ・国の基準に沿った報告書を基に、宅建士から結果を伝えられる※宅建士は建物のプロではなく、不動産取引の専門家 | ・建物のプロから、直接、結果報告やアドバイスを受けられる・写真付きなど、詳細な報告書を受け取れる |
ここからは、建物状況調査とホームインスペクションで分かることを紹介します。
建物状況調査で分かること
建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者が国の定める基準に基づいて実施する、中古住宅を対象とした調査です。
構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分を中心とした、目視で確認できる範囲の劣化や不具合の有無が分かります。必要に応じて、耐震性に関する書類も確認します。
建物状況調査の具体的な調査範囲は、以下の図のとおりです。

調査結果は、住宅の現況を客観的に把握し、売買時の判断材料として活用するほか、報告書も建物の現状を整理する内容が中心です。
ホームインスペクションで分かること

ホームインスペクションは、新築・中古を問わず利用できる住宅診断です。調査範囲や分かることは会社によって異なりますが、建物状況調査の内容に加え、床下や小屋裏、設備などを確認するケースもあります。
現在発生している不具合だけでなく、将来的に注意したい箇所やメンテナンスの優先順位、適切な修繕方法なども、現場で直接、アドバイスしてもらえる点が特徴です。
報告書においても、現状の結果報告にとどまらず、状況を踏まえたアドバイスが記載されていることもあり、長期的な維持管理や修繕計画にも役立ちます。
建物調査が効果的なタイミング
建物調査は、住宅の購入や売却など、建物の状態を正確に把握したいタイミングで実施すると効果的です。ここでは、建物調査が効果的なタイミングを具体的に紹介します。
なお、建物状況調査は、調査範囲が限定される点に注意が必要です。
中古住宅の購入時
下記グラフは、2025年1月~12月の期間で、さくら事務所が実施した中古一戸建てホームインスペクションの検査結果を築年帯別に統計したものです。

中古住宅でとくに注意したいのが、雨漏りやシロアリ被害、建物の傾きなど、建物の寿命にも影響を与える重大な不具合です。
築10年以内は、比較的、指摘率は低いですが、全項目において不具合の指摘はゼロではありません。これまでのメンテナンス履歴によりますが、築21~30年頃は、雨漏りの指摘が40%近くまで増加。加えて、外壁材や屋根材、キッチンやユニットバスなどの設備関係の劣化も進んでいる時期です。築30年を超えると雨漏りの指摘が6割を超えるなど、不具合指摘率が大幅に上がります。
とくに中古住宅の場合は「本当に購入してよい物件(状態)か」「購入後に必要な修繕は何か」を把握することが、住宅購入において後悔しないために重要です。
下記記事では、戸建て住宅のメンテナンス時期と費用を解説していますので、参考にしてください。
新築住宅の引き渡し前
新築住宅であっても、建物調査で不具合が見つかることは珍しくありません。当社が2025年に実施した新築一戸建てホームインスペクションでは、82.0%の住宅で何らかの不具合が指摘されました。部位別の指摘率は下記グラフのとおりです。

※2025年1月1日~12月31日の期間でさくら事務所が実施した新築一戸建てホームインスペクションの検査結果
※n=1,370
新築住宅の引き渡し前に建物調査を実施して、不具合が見つかれば、施工会社に無償で是正してもらえる可能性があります。
さくら事務所のホームインスペクションでは、不具合の程度や補修方法について第三者の専門家の立場から直接アドバイスを行うため、不安を解消した状態で引き渡しを迎えられます。
新築戸建ての内覧会・竣工検査に
引き渡し前にプロの目で
確認しませんか。
- 「外構未完成/引渡し直前」でも対応

住宅の売却時
住宅を売却する際に建物調査を実施すると、建物の状態を客観的に示せるため、買主に安心感を与えられます。また、修繕履歴や現在の状態を共有できることから、契約後の認識違いによるトラブルの防止にもつながることもメリットです。
「建物調査すると売りにくくなるのでは?」と不安に感じている方もいるかもしれません。しかし、さくら事務所のホームインスペクションを利用した方の約9割が、そのまま物件を購入(または購入予定)しています。

さくら事務所のホームインスペクションなら、不具合の有無から対処法、修繕の優先順位まで、物件の状況を詳しく買主に共有できるため、安心感につながります。些細な欠陥や不良が見つかったからといって、住宅購入自体を取りやめる方は、そう多くはないのが現状です。
中古戸建ての引き渡し前に
住宅の状態と費用の目安を
プロが診断します。
- お急ぎの調査にも対応

新築戸建ての工事中
建物調査(ホームインスペクション)は、新築戸建ての工事中にも活用できます。住宅完成後には見えなくなる構造や防水、断熱など、住宅性能に大きくかかわる重要箇所を詳細に調査できるのは工事中だけです。
完成後でもサーモグラフィー調査や床下・屋根裏への進入調査などによりわかることもありますが、限界があります。
是正が必要な箇所を早い段階で発見しやすく、完成後に壁や床を解体する大掛かりな工事が必要になるリスクを軽減できるのは、工事中の調査ならではの利点といえるでしょう。
以下は、2024年(265件)および2025年(360件)の1月~12月の期間にさくら事務所が実施した、新築戸建て工事中のホームインスペクションにおける不具合指摘率です。

さくら事務所の統計では、比較的、指摘率が低い大手の施工会社でも約3~4割の現場で不具合が指摘されています。このことから、施工会社の規模にかかわらず、工事中に第三者による建物検査を実施する意義は大きいといえます。
工事前・工事中の方へ
完成後では見えない部分を
プロが確認
- 最適な検査の組み合わせを無料で提案

建物調査の費用相場
建物状況調査とホームインスペクションの費用相場を紹介します。
【建物状況調査の費用】
建物状況調査の費用は、6~8万円前後が目安ですが、依頼する会社や延べ床面積などによって大きく差があります。建物状況調査の費用の詳細は下記記事でまとめているため、参考にしてください。
【ホームインスペクションの費用】
完成後のホームインスペクションの費用は3~10万円前後、工事中のホームインスペクション費用は1検査あたり5~6万円が相場です。ホームインスペクションは、木造一戸建てやRCマンションなどの建物種別により、費用に差があります。点検箇所が多い一戸建てのほうがマンションよりも高額になる傾向にあります。
建物状況調査とホームインスペクションに共通して、交通費やキャンセル料がかかることがあります。調査会社により異なるため、事前に確認しておきましょう。
建物調査は目的に応じて選ぼう
建物状況調査とホームインスペクション、それぞれおすすめのケースを紹介します。
建物状況調査がおすすめのケース
宅建業法に基づく建物状況調査は、中古住宅の売買において「最低限の安心」をスピーディーに確保したいケースにおすすめです。
国が定めた一律の基準に沿って、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分を調査するため、売主・買主の双方が客観的なデータを共有しやすいというメリットがあります。
また、引き渡し後の売買トラブルに備える「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」の加入手続きをスムーズに進めたい場合にも、この調査が適しています。公的な基準に則った最低限のスクリーニングを行い、契約の判断材料や保険加入の要件を満たしたいという方に最適な選択肢です。
ホームインスペクションがおすすめのケース
最低限の公的基準を満たすだけでなく「住宅のコンディションに深く納得して購入したい方」や「引き渡し後のリスクを徹底的に排除したい方」には、ホームインスペクションがおすすめです。
ホームインスペクションは、各種設備の動作確認はもちろん、ファイバースコープや赤外線カメラといった特殊機材を用いた詳細な調査も、必要に応じて柔軟に組み合わせられますこれにより、目視だけでは判別が難しい壁の裏側や床下の水漏れ、雨漏りの兆候など、隠れたリスクにもアプローチが可能です。
調査機関によっては「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」にも対応しています。さらに、建築士から「どこを、いつ頃、いくらで修繕すべきか」という優先順位や長期的なメンテナンス計画の助言を直接受けられるのも大きなメリットです。
目先の不安解消にとどまらず、大切な資産を守り、長く安心して住み続けたい方にこそ、ホームインスペクションを強くおすすめします。
建物調査を依頼する会社選びのポイント
建物調査は、依頼する会社によって調査範囲や報告書の内容、調査後のサポートなどが異なります。そのため、費用だけで判断すると「調査してほしかった場所が対象外だった」「報告書の内容が不十分だった」と後悔することも少なくありません。
建物調査を依頼する際は、以下の4つのポイントを確認しましょう。
- 第三者性があるか
- 建物調査の実績が豊富か
- 希望する調査が含まれているか
- 報告書やアフターフォローが充実しているか
それぞれ詳しく解説します。
第三者性があるか
建物調査は、住宅の状態を「客観的かつ正確に」に把握することで、本来の目的を果たせます。そのためにも、売主や仲介会社、施工会社などと一切の利害関係がない独立した第三者に依頼することが極めて重要です。
不動産会社から調査会社をあっせんしてもらう場合は、その調査会社が「不動産会社にとって都合の悪い(契約不成立につながるような)不具合」をどこまで厳しくチェックできるか、慎重に見極める必要があります。
リフォーム工事の受注を前提に調査を行う会社も要注意です。100%中立な立場で「調査の実施」そのものを目的としている会社を選ぶことこそが、本当に客観的で付加価値の高い建物調査を受けるための大前提になります。
建物調査の実績が豊富か
建物調査において、建築士などの資格の有無はもちろん大切ですが、目に見えない初期の雨漏りサインや、構造的なゆがみの予兆などは、数多くの現場を経験した調査員だからこそ気づけるものです。累計調査件数に加えて、新築・中古住宅、一戸建て・マンションなど、希望する物件種別の実績や不具合事例をホームページ等で確認しましょう。
とくに、ホームインスペクションでの調査のポイントは、築年数や構造などによって千差万別です。例えば、一戸建ての場合、屋根や外壁の劣化や基礎のひび割れといった「構造全体を見極める調査」が必要となります。
マンションの場合は、建物検査で対象となるのは、基本的に専有部分のみです。しかし「本当に安心できる住まいかどうか」は、共用部の維持管理の状況にも大きく左右されます。
だからこそ、調査範囲外である共用部の維持管理状況まで踏まえて、総合的なリスクをアドバイスできる経験と知見を持っていることが、会社選びのポイントになります。
希望する調査が含まれているか
建物状況調査は、国の基準で一律に調査範囲が決まっていますが、ホームインスペクションは、会社によって調査内容がさまざまです。例えば、雨漏りやシロアリなどの重大な不具合が起きやすい「床下」や「屋根裏」が調査対象外の会社もあれば、より詳細な進入調査ができるオプションが用意されている会社もあります。
また、物件種別によっては対応していない会社もあるため、事前に確認しておきましょう。単に「調査項目が〇個」という数字だけで判断するのではなく、自分が不安に思っている箇所をどこまで深く調査してもらえるのか、把握しておくことが重要です。
報告書やアフターフォローが充実しているか
建物調査は、購入後の維持管理や将来の売却時にまで活かせる「報告書の質」と「その後のサポート」も大切です。
ホームインスペクションの報告書は、国の様式に沿って一律で作成される建物状況調査の報告書とは異なり、会社によって情報量に大きな差があります。不具合の場所や程度がひと目でわかる写真付きの報告書か、具体的な修繕アドバイスが記載されているかを必ず確認しましょう。
また、最も差がつくのが「調査後の相談体制」です。住み始めてから気づいた疑問や、将来のメンテナンス計画について、期限を設けずいつでも中立的な立場で相談に乗ってくれるような会社を選ぶのが理想的です。
建物調査で住宅購入・売却のリスクを軽減しよう
建物調査は、住宅の状態を客観的に把握し、購入や売却、将来の維持管理に役立てるための重要な調査です。建物状況調査とホームインスペクションでは、調査目的や範囲が異なるため、自身の目的に合った調査を選びましょう。
とくにホームインスペクションでは、依頼する会社によって、調査内容や報告書の質に差があります。第三者性や実績から、調査範囲、アフターフォローまで、事前に確認しておくことが大切です。
さくら事務所では、累計8万組以上(※2026年9月時点)のホームインスペクション実績と経験をもとに、新築・中古住宅を問わず、第三者の立場で住宅の状態を調査しています。床下や小屋裏まで含めた詳細なオプション調査や写真付き報告書、調査後のご相談にも永続的に対応しています。
住宅の状況や目的に応じて最適な調査内容を提案しているため、ホームインスペクションをご検討中の方はもちろん、どの調査を選べばよいか迷っている方も、お気軽にご相談ください。
もっと詳しく知りたい方へ
10秒で完結
個人情報の入力なし
チェックシート・動画など
豪華特典を無料でGET!
限定動画「戸建てにまつわる小さい声でなら言える話」
プロ監修!内覧会・施主検査チェックシート
注文住宅トラブル防止ブック
中古戸建てのコスパを見抜くポイントまとめ

迷ったままにしないために。
現場のリアルをあなたに
届けます。

























