はじめに
震度4以上の地震が全国各地で発生するなか、いきなり緊急地震速報が鳴って焦った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。緊急地震速報は、大きな地震が来ることを事前に教えてくれる重要なツールです。大地震発生時には、命を守るための行動を取るために有効活用することができます。
地震は、起きている時間ばかりでなく、深夜や早朝など眠っているときに起きることも有ります。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は、朝の5時46分という明け方に発生しました。在宅中で就寝中だった人が多かったこともあり、家具などの転倒・落下による負傷例が多く報告されています。
我が家でくつろいでいる時や就寝中に緊急地震速報が鳴っても焦らず、家具の転倒などで負傷しないよう、事前の地震対策を万全にしておくことが不可欠です。本記事では、屋内で緊急地震速報が鳴った際の適切な行動と、平時からできる備えについて解説します(2026年6月17日に一部追記)。
緊急地震速報の仕組み
地震が発生すると、震源からは特徴の異なる2つの波が地盤を伝わってきます。
| 波の種類 | 伝わる速度 | 揺れの特徴 | 被害の大きさ |
| P波(縦波) | 速い | 小刻みな揺れ | 比較的小さい |
| S波(横波) | 遅い | 大きな揺れ | 大きい(建物などに被害をもたらす) |
緊急地震速報は、早く伝わるP波を全国に配備された地震計で感知し、震源の位置や地震の規模(マグニチュード)、遅れて到達するS波の時刻をシステムが自動的かつ瞬時に予測して発表する仕組みです。
近年では、海底地震津波観測網の整備とデータ活用の高度化が進みました。これにより、2020年時点よりもさらに数秒早く、より正確に速報が発表されるようになっています(2026年6月現在)。
気象庁の発表によると、緊急地震速報の予測精度は非常に高く推移しています。複数の地震を同時に感知して過大に予測してしまうといった「空振り」もごく稀にありますが、速報が鳴ったら確実に備えの姿勢をとることが求められます。たとえ空振りであっても、いざという時の「素振り(訓練)」と捉えましょう。
緊急地震速報が間に合わないことも
迅速に危険を知らせてくれる緊急地震速報にも弱点があります。それは、都市直下で起きた地震の場合、速報が鳴る前に大きな揺れが到達してしまうことです。2026年6月16日夜に発生した地震なども、このパターンに該当します。
震源と居住地の距離が近いと、P波とS波の到達時間に差がほとんど生じません。その結果、自動計算して速報を発表する処理が間に合わず、S波の揺れを感じてから速報が鳴ることになります。
一般的に、緊急地震速報が鳴ってから強い揺れが来るまでの猶予は数秒から数十秒です。台風などの気象災害とは異なり、地震は前触れなく発生します。「速報が鳴った瞬間が、命を守る行動をとるラストチャンス」と認識し、最短数秒で大きな揺れに見舞われることを前提に行動する必要があります。

緊急地震速報が鳴ったらどうする?
テレビの警告音(約5秒)やスマートフォンの警告音(約5秒)が鳴ったら、即座に反射的な行動をとることが求められます。
地震時に物が人に被害を与えるパターンは、以下の3つです。
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倒れてくる
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落ちてくる
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移動してくる
阪神・淡路大震災での負傷原因の約46%は、家具の転倒や落下によるものでした(出典:日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」)。手足の負傷であれば命に関わることは少ないものの、頭を強打すると致命傷になる可能性があります。災害時は救急医療体制も逼迫するため、まずは頭を守ることが最優先です。

揺れている最中の行動原則
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火の始末は後回し: 2008年以降の比較的新しいガスコンロや、都市ガス等のマイコンメーターは、強い揺れを感知すると自動で火やガスを遮断します。揺れている最中に無理に火を消しに行くのは危険です。
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危険な場所から離れる: キッチンは冷蔵庫や電子レンジなどの重量物や、割れやすい食器が落下・移動しやすい極めて危険な空間です。すぐに離れてください。
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頭を守る: 近くにあるクッション、鞄、上着、就寝中なら布団や枕で頭を保護します。
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安全な場所で待機: 倒れる可能性のある家具から離れ、頑丈なテーブルや机の下に隠れて脚をしっかり握ります。
2008年にアメリカで始まった「シェイクアウト訓練」の原則である「まず低く、頭を守り、動かない(Drop, Cover, Hold on)」を実践してください。揺れが始まってからの無理な移動は、転倒や飛散物による負傷のリスクを高めるため控えるべきです。
揺れが収まった後の行動原則
地震の揺れは通常1〜2分で収まりますが、東日本大震災のような巨大地震や、高層マンションでの長周期地震動の場合は数分間揺れが続くこともあります。
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状況確認と火の始末: 揺れが完全に収まってから、必要であれば火を消します。
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避難経路の確保: 玄関などのドアを開け、建物の歪みによる閉じ込めを防ぎます(現在は「耐震丁番」や「耐震ドア」などの対策品もあります)。
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足元の安全確保: 散乱したガラスや家具を踏まないよう、スリッパや靴を履きます。
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電気火災の防止: 避難して自宅を離れる際は、通電火災を防ぐために必ずブレーカーを落とします(揺れを感知して自動遮断する「感震ブレーカー」の設置が推奨されます)。
室内での地震被害を減らすために
室内での地震被害を減らすための事前対策
速報が鳴ってからできることは限られています。日常の備えが万全であれば、被害を大幅に抑えることができます。
建物の耐震性の確認
建物の倒壊や大破を防ぐことは、すべての前提となります。
| 建築確認申請時期 | 基準の名称 | リスク・対策 |
| 1981年5月以前 | 旧耐震基準 | 倒壊リスクが高い。耐震診断と改修が急務。 |
| 1981年6月〜2000年5月 | 新耐震基準(木造の場合) | 2000年の法改正以前の木造住宅は、接合部などに弱点がある可能性あり。 |
| 2000年6月以降 | 現行基準 | 高い耐震性を持つが、繰り替えし大地震では被害がある場合も。 できれば「耐震等級3」がベスト。家具の固定などは必須。 |
耐震性が低い住宅の場合、地震時には屋外への避難が必要になることがあります。その際も、慌てて外に飛び出すと落下物(瓦、外壁タイル、窓ガラス)の危険があるため、周囲の状況確認が必須です。高齢者などがいる場合は、「耐震ベッド」や「耐震シェルター」を導入して睡眠スペースだけでも守るという選択肢もあります。
家具の配置と固定
耐震性確保で命を守ることに加えて、室内では家具の転倒、落下、移動に対する対策が求められます。理想的には、転倒、落下するような家具はなるべく居室、寝室に置かないということが有効です。住まいに転倒、落下するような家具がない部屋があれば、地震時に比較的安全な空間にできます。-
寝室・居室のレイアウト: 就寝中に被災するリスクを考慮し、寝室には背の高い家具を置かない、または倒れてもベッドに当たらない配置にします。普段過ごす場所や、避難経路となる廊下や玄関にも物を置かないようにしてください。
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確実な固定: 壁の裏の芯材(間柱)に向かってL字金具をネジ止めするのが最も効果的です。壁に穴を開けられない場合は、粘着マットと突っ張り棒を併用するなど、家具の高さや重量に合った適切な器具を選定します。
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キッチンの対策: 食器棚の開き戸には、揺れを感知して自動でロックがかかる「耐震ラッチ」の設置が効果的です。
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ガラス飛散防止: 窓ガラスや食器棚のガラス面には飛散防止フィルムを貼ります。
土地・建物のリスクを知りたい方は?
害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。 戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。ご自宅や検討中の物件などの災害リスクや防災の備え、地盤調査のデータ(戸建て住宅・個人の方向け)などについて、当コラム執筆者・地盤・防災コンサルタントの横山芳春にご相談したい場合は、「住まいの専門家相談」でのオンライン相談も可能です。 ピンポイントで特定した災害リスクや、建物の構造による被害予測をもとに何をしたらよいのか、対策や備えのポイント、避難する際の注意点など、各ご家庭でお知りになりたいことを具体的にアドバイスいたします。 既にお住まいになっているご自宅や実家のほか、購入や賃貸を考えている物件、投資物件の災害リスクや防災対策が気になる方におススメです。特に、ホームインスペクションを実施する際には、併せて災害への備えも確認しておくとよいでしょう。お急ぎで対応できる場合もあります。
当記事の内容についてお問い合わせがありましたら、執筆者の横山が対応させていただきます(取材申し込みはこちら)。このほか、地震災害、地盤災害(地盤の陥没、液状化など)、豪雨災害、住まいの防災等に関しては、豊富なメディア対応経験から、ご取材、執筆などの対応も行っていますので、お問い合わせください。
























