2022年01月17日

横山 芳春

監修者:横山 芳春

さくら事務所 地盤・防災コンサルタント

地盤と宅地の防災を専門としており、災害が起きた際には速やかに被災地入りして被害調査を行ってきた経験から、想定外を起こさない立地・住宅の災害リスク評価、診断、備えのポイントを伝えることを目指しています。
広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震等では発生当日又は翌朝に現地入りして現地調査・メディア対応を実施。
防災に関するコラム執筆、現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤と防災のプロフェッショナル。
地震災害、地盤災害(陥没など)、豪雨災害など、取材・報道対応も行う。

屋内で緊急地震速報が鳴ったらどうする?屋内被害を回避する新常識

シェアする

屋内で緊急地震速報が鳴ったらどうする?屋内被害を回避する新常識

はじめに

震度4以上の地震が全国各地で発生するなか、いきなり緊急地震速報が鳴って焦った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。緊急地震速報は、大きな地震が来ることを事前に教えてくれる重要なツールです。大地震発生時には、命を守るための行動を取るために有効活用することができます。

地震は、起きている時間ばかりでなく、深夜や早朝など眠っているときに起きることも有ります。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は、朝の5時46分という明け方に発生しました。在宅中で就寝中だった人が多かったこともあり、家具などの転倒・落下による負傷例が多く報告されています。

我が家でくつろいでいる時や就寝中に緊急地震速報が鳴っても焦らず、家具の転倒などで負傷しないよう、事前の地震対策を万全にしておくことが不可欠です。本記事では、屋内で緊急地震速報が鳴った際の適切な行動と、平時からできる備えについて解説します(2026年6月17日に一部追記)。

 

緊急地震速報の仕組み

地震が発生すると、震源からは特徴の異なる2つの波が地盤を伝わってきます。

波の種類 伝わる速度 揺れの特徴 被害の大きさ
P波(縦波) 速い 小刻みな揺れ 比較的小さい
S波(横波) 遅い 大きな揺れ 大きい(建物などに被害をもたらす)

緊急地震速報は、早く伝わるP波を全国に配備された地震計で感知し、震源の位置や地震の規模(マグニチュード)、遅れて到達するS波の時刻をシステムが自動的かつ瞬時に予測して発表する仕組みです。

緊急地震速報の仕組み(気象庁 HPより)

近年では、海底地震津波観測網の整備とデータ活用の高度化が進みました。これにより、2020年時点よりもさらに数秒早く、より正確に速報が発表されるようになっています(2026年6月現在)。

気象庁の発表によると、緊急地震速報の予測精度は非常に高く推移しています。複数の地震を同時に感知して過大に予測してしまうといった「空振り」もごく稀にありますが、速報が鳴ったら確実に備えの姿勢をとることが求められます。たとえ空振りであっても、いざという時の「素振り(訓練)」と捉えましょう。

 

緊急地震速報が間に合わないことも

迅速に危険を知らせてくれる緊急地震速報にも弱点があります。それは、都市直下で起きた地震の場合、速報が鳴る前に大きな揺れが到達してしまうことです。2026年6月16日夜に発生した地震なども、このパターンに該当します。

震源と居住地の距離が近いと、P波とS波の到達時間に差がほとんど生じません。その結果、自動計算して速報を発表する処理が間に合わず、S波の揺れを感じてから速報が鳴ることになります。

一般的に、緊急地震速報が鳴ってから強い揺れが来るまでの猶予は数秒から数十秒です。台風などの気象災害とは異なり、地震は前触れなく発生します。「速報が鳴った瞬間が、命を守る行動をとるラストチャンス」と認識し、最短数秒で大きな揺れに見舞われることを前提に行動する必要があります。

緊急地震速報が間に合わないことも(気象庁 HPより)緊急地震速報が鳴ったのち、数秒から長くても数10秒ほどの時間を、命を守るために活用してください。事前にある程度予測できる台風や豪雨と異なり、地震は前ぶれなくいきなり発生します。緊急地震速報が発表された際には、僅かな時間でも対応できる時間を取れるチャンスであるとも考えられますので、最短で数秒以内に大きな揺れに見舞われる可能性を踏まえた、命を守るための行動が必要になります。

緊急地震速報が鳴ったらどうする?

テレビの警告音(約5秒)やスマートフォンの警告音(約5秒)が鳴ったら、即座に反射的な行動をとることが求められます。

地震時に物が人に被害を与えるパターンは、以下の3つです。

  1. 倒れてくる

  2. 落ちてくる

  3. 移動してくる

阪神・淡路大震災での負傷原因の約46%は、家具の転倒や落下によるものでした(出典:日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」)。手足の負傷であれば命に関わることは少ないものの、頭を強打すると致命傷になる可能性があります。災害時は救急医療体制も逼迫するため、まずは頭を守ることが最優先です。

兵庫県南部地震における家屋内での負傷原因(消防庁 HPより) 図の出展は日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」

揺れている最中の行動原則

  • 火の始末は後回し: 2008年以降の比較的新しいガスコンロや、都市ガス等のマイコンメーターは、強い揺れを感知すると自動で火やガスを遮断します。揺れている最中に無理に火を消しに行くのは危険です。

  • 危険な場所から離れる: キッチンは冷蔵庫や電子レンジなどの重量物や、割れやすい食器が落下・移動しやすい極めて危険な空間です。すぐに離れてください。

  • 頭を守る: 近くにあるクッション、鞄、上着、就寝中なら布団や枕で頭を保護します。

  • 安全な場所で待機: 倒れる可能性のある家具から離れ、頑丈なテーブルや机の下に隠れて脚をしっかり握ります。

2008年にアメリカで始まった「シェイクアウト訓練」の原則である「まず低く、頭を守り、動かない(Drop, Cover, Hold on)」を実践してください。揺れが始まってからの無理な移動は、転倒や飛散物による負傷のリスクを高めるため控えるべきです。

 
地震発生時の身の守り方のイメージ(消防庁 HPより)
 

揺れが収まった後の行動原則

地震の揺れは通常1〜2分で収まりますが、東日本大震災のような巨大地震や、高層マンションでの長周期地震動の場合は数分間揺れが続くこともあります。

  1. 状況確認と火の始末: 揺れが完全に収まってから、必要であれば火を消します。

  2. 避難経路の確保: 玄関などのドアを開け、建物の歪みによる閉じ込めを防ぎます(現在は「耐震丁番」や「耐震ドア」などの対策品もあります)。

  3. 足元の安全確保: 散乱したガラスや家具を踏まないよう、スリッパや靴を履きます。

  4. 電気火災の防止: 避難して自宅を離れる際は、通電火災を防ぐために必ずブレーカーを落とします(揺れを感知して自動遮断する「感震ブレーカー」の設置が推奨されます)。

とくに、地震発生直後に耐震性が低い旧耐震基準の住宅の場合は倒壊のリスクが高いため、大地震の際には屋外へ避難が必要な場合があります。その際には、外に慌てて飛び出すと瓦や割れたガラスなどの落下や、周囲の建物の倒壊などもあるので、周囲に確認しつつ避難を行ってください。 さらに、周囲の家屋が倒壊していたり、崖や斜面が崩れていたり、火災が発生している、陥没や液状化現象で道路が損傷して、道路の交通が困難になっていることがあるほか、さらに地震が発生する場合があることにも注意が必要です。

室内での地震被害を減らすために

室内での地震被害を減らすための事前対策

速報が鳴ってからできることは限られています。日常の備えが万全であれば、被害を大幅に抑えることができます。

建物の耐震性の確認

建物の倒壊や大破を防ぐことは、すべての前提となります。

建築確認申請時期 基準の名称 リスク・対策
1981年5月以前 旧耐震基準 倒壊リスクが高い。耐震診断と改修が急務。
1981年6月〜2000年5月 新耐震基準(木造の場合) 2000年の法改正以前の木造住宅は、接合部などに弱点がある可能性あり。
2000年6月以降 現行基準 高い耐震性を持つが、繰り替えし大地震では被害がある場合も。 できれば「耐震等級3」がベスト。家具の固定などは必須。
緊急地震速報が鳴ってから揺れが来るまでは短い時間しかなく、できることは限られます。日常の備えが万全であれば、速報が鳴った後に大きな地震があっても慌てることが少なくなり、被害も抑えることができるといえます。とくに、戸建て住宅であれば、家屋が倒壊や大破の被害を受けてしまうと、家具などの固定が完璧で身を守る行動を取ろうとしても、大きな被害を受けてしまう場合があります。 1981年5月以前に建築確認申請を受けた*建築物(旧耐震基準)に加え、1981年6月以降に建築確認申請を受けた*建築物(新耐震基準)のうち、木造住宅であれば特に建築基準法の改正があった2000年5月以前の住宅も十分な耐震性がないことがあります。耐震診断や、必要に応じた耐震改修により、地震によって家屋が倒壊・大破することがないか調査、対策する備えも求められるでしょう。 ※竣工日が当該日以降でも、確認申請がこれ以前の場合は古い基準である場合もあります。

耐震性が低い住宅の場合、地震時には屋外への避難が必要になることがあります。その際も、慌てて外に飛び出すと落下物(瓦、外壁タイル、窓ガラス)の危険があるため、周囲の状況確認が必須です。高齢者などがいる場合は、「耐震ベッド」や「耐震シェルター」を導入して睡眠スペースだけでも守るという選択肢もあります。

家具の配置と固定

耐震性確保で命を守ることに加えて、室内では家具の転倒、落下、移動に対する対策が求められます。理想的には、転倒、落下するような家具はなるべく居室、寝室に置かないということが有効です。住まいに転倒、落下するような家具がない部屋があれば、地震時に比較的安全な空間にできます。
  • 寝室・居室のレイアウト: 就寝中に被災するリスクを考慮し、寝室には背の高い家具を置かない、または倒れてもベッドに当たらない配置にします。普段過ごす場所や、避難経路となる廊下や玄関にも物を置かないようにしてください。

  • 確実な固定: 壁の裏の芯材(間柱)に向かってL字金具をネジ止めするのが最も効果的です。壁に穴を開けられない場合は、粘着マットと突っ張り棒を併用するなど、家具の高さや重量に合った適切な器具を選定します。

  • キッチンの対策: 食器棚の開き戸には、揺れを感知して自動でロックがかかる「耐震ラッチ」の設置が効果的です。

  • ガラス飛散防止: 窓ガラスや食器棚のガラス面には飛散防止フィルムを貼ります。

 
夜間に停電を伴う地震があった場合に、家具の転倒等があると、何もできないうちに身動きがとれなくなってしまうことも考えられます。まずは、寝る場所に家具が倒れてこない配置を考えてください。 家具などの配置を見直したのちには、確実な固定が求められます。家具などが倒れないようにするには、効果的なものは壁にL字金具でネジ止めしてしまうことです。壁に穴を開けたくない場合には、粘着シートと、突っ張り棒などを適切に用いる、キャスターがある場合はロックしてキャスター皿を使う、ガラス面には飛散防止フィルムを貼ることなどが有効です。家具の高さなどにもよるので、適切な器具を選定して、向きなどを間違えないように固定を行って、「固定したはずなのに効果がなかった」ことがないようにすることが必要です。 キッチン周りの対策としては、簡易的なものだとS管やゴムのようなもので食器棚の開き戸が揺れによって開いてしまうのを防ぐ留め具の設置、もしリフォーム等をする場合には、キッチンに揺れを感知して自動で扉がロックされる「耐震ラッチ」を設置してもらうことをおすすめします。 吊り照明はまた、家具は下図のような転倒、移動をすることから、とくに本棚などが前面に転倒したとき、人のいる場所に倒れてこないように、ドアをふさいで逃げ道が確保できなくなることがないような家具の配置も工夫することが望ましいです。
家具転倒防止グッズの効果(内閣府 HPより)
高層マンションの上階などでは、長周期地震動との共振によりゆらゆらと長い揺れが続き、家具の横方向への移動が発生する懸念もあります。台の上に置かれたテレビ、電子レンジなどの落下なども発生しやすく、家具の移動、落下が発生しないよう固定に対して意識が必要となります。これはペットのいる家庭にも大きく意識してほしい点です。室内でペットを飼っていらっしゃる場合はできるだけ落下が発生しない場所に屋根付きのゲージを設けることをおすすめします。  
地震による家具の動き方のパターン(消防庁 HPより)
  トイレや浴室に逃げ込むと良いという話も耳にします。落下物が少ない点はありますが、ドアが開かなくなった場合などに避難が困難になる場合もあるので必ずしもお勧めできません。トイレや浴室に居て地震があった場合や、逃げ込んだ場合にはドアを開けることが望ましいです。地震対策や身を守る行動は、耐震性や家具・ものの状況や部屋の造りにより「ケースバイケース」であるものも多いことを覚えておいて欲しいです。 以上のように、緊急地震速報が鳴ってからどうしようかと慌てるのではなく、事前にできることを万全にしておくと、いざというときにも心構えができます。地震によって、住まいは無傷であっても住んでいる人が被害を受けてしまうことを防ぎたいですね。是非、緊急地震速報が鳴ったときにどう行動するか、また普段から家の中で家具が倒れてくることのない空間について、意識してみてほしいと思います。  

土地・建物のリスクを知りたい方は?

害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。 戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。

ご自宅や検討中の物件などの災害リスクや防災の備え、地盤調査のデータ(戸建て住宅・個人の方向け)などについて、当コラム執筆者・地盤・防災コンサルタントの横山芳春にご相談したい場合は、「住まいの専門家相談」でのオンライン相談も可能です。 ピンポイントで特定した災害リスクや、建物の構造による被害予測をもとに何をしたらよいのか、対策や備えのポイント、避難する際の注意点など、各ご家庭でお知りになりたいことを具体的にアドバイスいたします。 既にお住まいになっているご自宅や実家のほか、購入や賃貸を考えている物件、投資物件の災害リスクや防災対策が気になる方におススメです。特に、ホームインスペクションを実施する際には、併せて災害への備えも確認しておくとよいでしょう。お急ぎで対応できる場合もあります。

当記事の内容についてお問い合わせがありましたら、執筆者の横山が対応させていただきます(取材申し込みはこちら)。このほか、地震災害、地盤災害(地盤の陥没、液状化など)、豪雨災害、住まいの防災等に関しては、豊富なメディア対応経験から、ご取材、執筆などの対応も行っていますので、お問い合わせください。

シェアする

横山 芳春

監修者横山 芳春

さくら事務所 地盤・防災コンサルタント

地盤と宅地の防災を専門としており、災害が起きた際には速やかに被災地入りして被害調査を行ってきた経験から、想定外を起こさない立地・住宅の災害リスク評価、診断、備えのポイントを伝えることを目指しています。
広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震等では発生当日又は翌朝に現地入りして現地調査・メディア対応を実施。
防災に関するコラム執筆、現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤と防災のプロフェッショナル。
地震災害、地盤災害(陥没など)、豪雨災害など、取材・報道対応も行う。

この人が監修したその他の記事

お役立ちコラム 関連記事

お役立ちカテゴリ