①早朝に発生した地震・・・睡眠時の家具転倒被害対策
兵庫県南部地震は、早朝の5時46分という明け方に発生した地震でした。発生した時間帯から、在宅かつ睡眠中である人も多かったためか、負傷された方は家具等の転倒落下による例が多くみられました。私たちの1日の睡眠時間は6~8時間ということを考えると、人生の1/3~1/4程度は眠っている時間であるということができます。 寝ているところに家具の転倒などがあると速やかな避難行動がとれないばかりか、大けがによりその時は命を落とすことがなくとも、救助や治療が遅れることで、最悪の場合は死亡に繋がってしまうことも考えられます。いくら耐震性の高い住宅で万全の備蓄や備えをしていても、地震時のゆれによって家具などの倒壊や転倒などで避難ができない状態になることがないよう、備えをしておくことが求められます。
②「震災の帯」・・・ゆれやすい地盤における被害
兵庫県南部地震では、甚大な被害があり震度7と認定された地域が南北2㎞、東西25㎞にわたって帯状に分布しており「震災の帯」と呼ばれることがあります。この「震災の帯」が生じた理由は、建築研究所「兵庫県南部地震最終報告書」によると、地下に活断層があったという説ではなく、ゆれやすい地盤によって地震のゆれが大きく増幅される効果で説明できるとしています。ゆれやすい地盤では、周囲よりも地震のゆれが増幅されて、ゆれにくい場所と比べると震度が1階級、2階級大きくなることがあります。ゆれにくい地盤で震度5強であった地震が、近くのゆれやすい地盤で震度6弱、6強となり、それだけ被害が拡大してしまうという可能性があります。
兵庫県南部地震の際に見られた「震災の帯」(地震本部HPより)
地盤の揺れやすさは、その場所の地盤状況によって大きく異なります。揺れやすい地盤は、人工的に造成をした盛土地盤における被害が大きいことが知られています。近年発生した地震では、家1軒離れた場所でも盛り土地盤では地盤の揺れやすさが大きく、盛り土地盤で家屋の被害も大きくなるという事例もありました。このような揺れやすい地盤を実測する微動探査という地盤調査法もあり、宅地ごとの地盤の揺れやすさを知って、耐震性能の向上に生かすこともできます。
近年発生した地震における家屋被害と地盤のゆれやすさ
③地盤の液状化による被害
低地や埋立地などの地盤には、地下水が浅い場所に含まれています。砂が多い地盤の場合、普段は砂粒同士が支えあい、その間を水が満たしている状態で安定しています。しかし、地震により激しい振動が加えられると、砂粒の支えあいが崩れる「液状化現象」が起こることがあります。液状化現象が起こると「地盤の沈下」「地中のタンクやマンホールの浮き上がり」「建築物の傾き・転倒」「地中にある配管の破損」などの被害が発生します。 兵庫県南部地震では、神戸市、芦屋市、西宮市の埋立地・低地で多くの液状化被害が発生しました。国土交通省によると、埋立地の護岸に近い地区では液状化により側方流動という現象が発生し、護岸が海側に最大5m以上も前傾・移動し神戸港に壊滅的な被害をもたらしたこと、武庫川下流のデルタ地帯においては、江戸時代に築造された埋立地で液状化が発生し家屋がめり込むなどの被害が発生したとされています。
液状化による家屋・マンション被害のイメージ図(横山芳春原図)
佐藤・若松(1995)の論文のまとめでは、例えば西宮市南部では震度7があった地点ではほとんど液状化による噴砂がない一方、南部の埋立地で後半に液状化が発生しているとされ、液状化が発生した地域では死亡者がほとんどいなかったという例があります。 液状化の可能性のある地域(埋立地・低地など)の地盤では、地盤が建物の重さに耐えられるかどうかの地盤調査だけではなく、液状化を対象とした地盤調査と、必要に応じた地盤改良(地盤補強)工事などの対策を行うことが望ましいです。自治体で液状化ハザードマップを示している場合もあるので参考になります。 液状化による建物の傾斜などの被害が想定される場合には、建物側での対策は難しいといえ、地盤改良工事などを含めた対策が必要なことが大半です。建物建築前に、支持地盤まで小口径鋼管杭を打設することで被害を軽減できる場合があります。ただし、液状化では地域の地下インフラ全体に被害が発生することもあり、特に下水道では復旧に長期間がかかる場合もあることを念頭に置き、液状化は地域全体に被害を及ぼす可能性について心がまえや備えも必要です。④倒壊家屋の火災による被害
兵庫県南部地震では、地震後に非常に多くの火災が発生し、被害を拡大しました。内閣府資料によると、地震後には285件の火災が発生、出火点は揺れの大きかった震度6弱以上(特に震度7)の地域に多く、家屋被害と一致しているとしています。同資料をもと、兵庫県南部地震における火災の特徴・教訓をまとめます。 兵庫県南部地震では、火災の半数以上は地震直後(午前7時までの1時間余)に発生、残りの半数はそれ以降に断続的に発生したとされ、出火原因は不明が大半だが判明した原因では地震直後には電気・ガス関連、地震の数時間後以降は電気関連が多かったとされています。電気による火災の多くは、避難中の留守宅の送電回復に起こった火災、いわゆる「通電火災」が多かったとみられます。地震の被害を受けて屋外に避難する際は、可能な限りブレーカーを落として通電時の火災を防ぐことが求められます。 神戸市長田区などでは火災が延焼拡大し、大規模火災となりましたが、冬季にありながら風が弱いという気象条件などのため、延焼速度は比較的遅かったとされています。とくに乾燥している冬季の地震では、強い風により延焼の速度が速くなると火災の範囲は拡大して被害を急増させます。火災は古い木造家屋の密集、可燃物量の多さなどに加えて、家屋の倒壊・損壊も延焼拡大を助長した面があったとも指摘されています。建物の耐震性を高めることは、直接的な倒壊による被害防止だけでなく、避難の妨げにならないことや、火災時の延焼を防ぐことにもつながるため、重要だと考えられます。
兵庫県南部地震における火災発生状況(地震本部HPより)






















