2023年 住宅災害のポイント
2022年に起きた日本各地の災害
2023年が明けましたが、2022年も様々な災害がありました。2022年の1年間に、国内で震度5強以上を観測した地震は8回ありました。同震度を観測した地震は、2021年は6回、2020年は1回、2019年は3回、2018年は4回でしたので、過去5年間の中では少し回数が多い1年でした(気象庁震度DBより)。 1月4日の父島沖を震源とし母島で震度5強を観測した地震にはじまり、3月16日には福島県沖を震源とする最大震度6強を観測する地震がありました。福島県沖の地震では死者4名(災害関連死を含む)、重傷者28名、住家の全壊は217棟、半壊は4566棟と記録されています(消防庁 による)。現地調査を実施したところ、耐震性の低い建物の被害、特に傾斜地における擁壁・ブロック塀の被害、道路の陥没、地盤の液状化による地盤沈下などの被害がみられました。 能登半島では地震が多発し、6月19日には最大震度6弱を観測する地震がありました。このほか、北海道から東北、関東、北陸、九州と各地で地震が起きています。
2022年に発生した地震および大雨・台風災害 (内閣府HPおよび消防庁HPを参照)
大雨、台風等による被害も多くみられました。7~9月には複数の台風および前線に伴う大雨等が繰り返され、各地で「記録的な大雨」となる降水量を背景とした水害が目立ちました。中でも、青森県をはじめ内水氾濫とみられる水害も多発、内水ハザードマップの整備が遅れていることもニュースになりました(内水氾濫とは?都市部で多い、川がなくとも起こる水害)。 静岡県西部・浜松市付近で現地調査を行った台風15号では、人為的な盛土(残土)の影響とみられる土砂崩れをはじめ、3か所で土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に指定されていない場所で、土砂災害による家屋の被害がありました。ハザードマップで指定された区域以外でも被害が及ぶ可能性があることが、改めて浮き彫りになりました。 12月31日には山形県鶴岡市で土砂災害があり、土砂災害特別警戒区域にも指定されている斜面が崩落。住宅2件を含む建物に土砂が巻き込まれ、年明けになって2名の方の死亡が確認されました。 2023年も、立地の災害リスクを知って、住宅側で住み方に応じた備えをしていくことが、住宅の災害を防ぐ観点から重要になってくるものと思われます。「災害リスクカルテ」による家屋の被害想定
さくら事務所で実施していた、個人向け災害リスクコンサルティングサービスである「災害リスクカルテ」について、過去依頼のあった300件超の結果から、物件は立地の災害リスクについて「災害リスクカルテ大分析〜依頼300件の55%近くが水害リスクのある立地に 」として取りまとめました。 今回は、家屋の被災リスクについて、想定される被害はどういった災害が多いか、2021年から2022年12月25日までに建物被災リスクを判定した物件として、計187物件の傾向を分析しました。戸建て住宅では、水害の被害想定から推奨される避難避難の必要性や、想定される被害額について示しています。マンション、戸建て住宅(新築・中古)のそれぞれで注意すべき災害は何か?、どのような被害が想定されるか、災害に対する備えや被害などに関する考え方の参考となれば幸いです。家屋の被災リスク傾向
災害リスクカルテでは、ご依頼があった戸建て住宅、マンションごとに、家屋の被災リスクを災害の種類ごとに水害、土砂災害、地震、津波について、高い(戸建て住宅では概ね中破以上)、中程度(概ね一部損壊程度)、低い(無被害・軽微程度)の三段階で示しています。 水害による被災リスクは25%弱がリスク高い、20%ほどが中程度と、全体の半数弱の物件で何らかの水害による被災リスクがあることが浮き彫りとなりました。リスクが低い物件も55%ほどあり、決してどこでも水害の被害を受けるということではありませんが、全物件の災害の種類ごとの集計では、水害がリスク高い割合が最も高い結果でした。
土砂災害による被災リスクでは6.3%ほどがリスク高い、11.5%ほどが中程度という結果となりました。水害と比べるとリスクがある物件は限られますが、リスクが高い場合には水平避難が必要な場合もあり、予めチェックしておくことが望まれます。
地震による被災リスクは、全体の11%ほどがリスク高い、45.6%ほどがリスク中程度となり、2/3ほどが一定以上の被害を受けるリスクがあるという結果でした。
津波による被災リスクは、95.3%ほどの物件でリスクが低い一方、3.7%でリスク高い結果となりました。津波リスクがある物件は限られますが、個人レベルでの対策は難しいので津波避難ビルや高台などへの早期の避難を念頭に置く必要があります。
以下、水害、土砂災害、地震(地震時の揺れによる被害)、津波の4つの観点で、新築の戸建て(59件)、中古の戸建て(77件)、新築マンション(8件)、中古マンション(43件)を合わせたマンション(51件)の3種別でリスク傾向を見ていきましょう。
水害による被災リスクはマンションで高め
水害による被災リスクでは、リスクが高い(概ね床上浸水以上)、リスクが中程度(概ね床下浸水程度を想定)のいずれも、マンションで高い傾向がありました。 マンションでは、2階以上にある居室まで浸水がなく無事であっても、地下階の電気・機械室や機械式駐車場等が被害を受け、とくにインフラの被害を受ける可能性についても留意と備えが必要です。 戸建て住宅では、水害による被災リスクが高い割合は新築、中古ともほぼ同程度でしたが、リスクが中程度の割合は中古で10.3%であったことに対し、新築では20.4%と10%ほど高い結果となりました。
戸建て住宅では大規模な洪水の際には家屋の流失、また浸水深が大きい場合には大規模半壊以上の被害を受けることが多いといえます。以下、戸建て住宅の水害被害について、想定される浸水深や避難の必要性などについて掘り下げてみます。
戸建て住宅で想定される水害の被害は?・・浸水が想定される住宅では平均961万円
住宅災害で遭遇する可能性が高いと考えられる、水害による浸水。戸建て住宅(新築・中古を一括)において、ハザードマップ(ハザードマップがない場合は周辺の標高など)から想定される、最大の浸水の深さがどれくらいかまとめてみました。 61.8%では水害による被災リスクが低い、浸水が想定されていない、または10㎝程度未満の家屋に影響がない浸水深の物件でした。15.4%は主に床下浸水(一部床上浸水)が想定される浸水深50㎝未満でした。2階でも浸水の影響を受ける、最大3m未満の浸水以上が想定される戸建て住宅の合計は19.1%と、2割近くに達していました。
災害リスクカルテでは、想定される最大浸水深をもとに、家屋の損壊の程度を想定、されに定される被害額の予想中央値を示しています。一般社団法人住宅生産団体連合会「住宅における浸水対策の設計の手引き」に基づき、以下の区分で示しています。浸水が床上に及び、半壊以上の被害を受けると想定される被害額が跳ね上がります。
戸建て住宅の想定浸水深と水害による被災リスク評価、被害想定などの関係 「住宅における浸水対策の設計の手引き」に基づく
水害による被災リスク評価を行った戸建て住宅の136件で、想定される水害の最大浸水深から、その被害想定額を合計すると5億円となりました。これを水害リスクがある(中程度以上の物件)52件で割ると、平均961万5千円でした。水害リスクが低い物件も含めた全物件数136件で割ると平均約367万6千円でした。 床上以上の浸水があった場合に想定される家屋被害及び、想定される補修費用は甚大です。かさ上げや基礎の高さを上げるなどでの対策もありますが、床上を大きく超える水害リスクが想定される場所では、火災保険の水災補償(水災特約)の契約などの対策を取っておくと良いでしょう。
戸建て住宅の水害による被害想定まとめ
※水害による被害額の想定は、一般社団法人住宅生産団体連合会「住宅における浸水対策の設計の手引き」に基づきます。土砂災害による被害が多いのは?
土砂災害による被災リスクが高い物件の割合は、中古戸建てが9.1%、新築戸建てが5.0%、マンションが2.0%と、中古戸建て物件でリスクが大きい結果となりました。中古戸建て住宅を取得する際は、「眺めのいい家」は崖地に隣接するなどで土砂災害リスクがある場合があります。 特に、既存擁壁の上にある物件の場合、擁壁が古い基準で建築された「既存不適格」となっていることがあります。その場合、家屋の建て替えを行う際には、新たに擁壁を作り直す必要や、地盤改良等が必要な事例もあります。既存不適格の擁壁では、建て替え時のコストが大きくなる可能性だけでなく、平時にはとくに問題がない場合でも、大雨や大地震で擁壁が倒壊、破損することもあります。
地震による被害は中古戸建てで特に注意
地震による被災リスクが高い物件の割合は、中古戸建てが16.9%と、新築戸建ての5.1%、マンションの5.9%と比べて3倍以上高いという結果となりました。被災リスクでは、立地としての地盤の揺れやすさだけではなく、築年数や耐震等級などの家屋の耐震性を加味した判断を実施していることも影響して、古い耐震基準で建築されていることが多い中古戸建て住宅では自地震による被災リスクが大きくなるという結果でした。 中古戸建て住宅では、リフォーム、フルリノベーション済みの物件も多く流通していますが、築年数の古い物件については、水回りなどだけでなく、築年数に応じた耐震基準や、特に旧耐震基準の住宅では耐震改修の有無に留意しておくことが望まれます。
2007年7月16日に起きた京都府沖を震源とする地震の震度(気象庁資料より)
津波リスクは限定的だが速やかな避難を
津波による被災リスクが高い物件の割合は、中古戸建て、新築戸建て、マンションのいずれも3%代と、今回の集計の中では大差はありませんでした。津波は個人のレベルでの対策は困難であることから、あらかじめハザードマップなどで津波浸水が想定されるか確認を行いましょう。津波浸水が想定される地域の場合、大津波警報、津波警報等の発令の際には津波避難ビルや高台などの避難場所に避難が必要です。























