水害リスク・見るべき土地と自治体の情報とは

  • Update: 2021-10-01
水害リスク・見るべき土地と自治体の情報とは

IPCC (気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書によれば、気候の温暖化には疑う余地はなく、陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年の期間に0.85℃上昇し、最近30年の各10年間はいずれも、1850年以降の各々に先立つどの10年間よりも高温でありつづけたことがわかっています。また今後も世界全体で海洋は昇温し続け水位は上昇、地表の気温も21世紀にわたって上昇すると警告しています。現在「第6次」の調査を行っていますが、この傾向におそらく変わりはないものと思われます。

また気象庁によれば、温暖化が最悪のシナリオで進行した場合の21世紀末には、全世界での台風発生総数は30パーセント程度減少するものの、日本の南海上からハワイ付近およびメキシコの西海上にかけて猛烈な熱帯低気圧の出現頻度が増加する可能性が高いと予測しており、今後「想定外」と思えるような、さらなる頻度や規模の風水害は来るものとみておいたほうがいいでしょう。

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地名でわかる土地の歴史

「土地の履歴書」ともいえる「地名」には、その地域の歴史が刻まれていることが多いものです。例えば「池」や「川」「河」「滝」「堤」「谷」「沼」「深」「沢」「江」「浦」「津」「浮」「湊」「沖」「潮」「洗」「渋」「清」「渡」など漢字に「サンズイ」が入っており、水をイメージさせるものは低地で、かつては文字どおり川や沼・池・湿地帯だった可能性があります。例えば渋谷駅周辺は、舗装された道路の下に川が流れており低地で、地盤も弱いのです。

内陸部でも「崎」の地名がつくところには、縄文時代など海面が高かった時代に、海と陸地の境目だった地域もあり、地盤が強いところと弱いところが入り組んでいる可能性があります。東日本大震災の津波被害で一躍注目を浴びた宮城県仙台市の「浪分(なみわけ)神社」は、1611年の三陸地震による大津波が引いた場所という言い伝えが残っています。杉並区荻窪の「オギ」は湿地に育つイネ科の植物。古くは一帯に「荻」が自生していました。「クボ」は文字通り窪地。中心を流れる善福寺川の氾濫で、浸水を繰り返し、これまで何度となく水害にあっています。新宿区大久保、国分寺市恋ケ窪なども同様です。中野区沼袋は低湿地で沼地があったとされます。目黒区には現在暗渠になっている蛇崩川(じゃくずれがわ)という河川がありましたが、ここは大水で崖が崩れ、そこから大蛇が出てきたという伝説が残されています。大阪市梅田は「埋田」から転じたとされ「梅」は「埋める」に通ずるようです。

中には「音」(読み方)で分かることも。椿はツバケル(崩れる)で崩壊した土地を意味し、「桜」が「裂ける」を意味することもあります。

注意したいのは、近年になって地名が変更されたところ。例えば戦後の高度経済成長期以降に開発された大規模宅地などでは、旧地名から「〇〇野」「〇〇が丘」「〇〇台」「〇〇ニュータウン」といった地名に変更されていることがあります。

東日本大震災関連の津波に関する報道の中で「津波は神社の前で止まる」とテレビで放映されたことが話題になったことがあります。福島県相馬市の津(つのみつ)神社には「津波がきたら、神社に逃げれば助かる」という言い伝えがあり、近隣の人たちは、小さいことからその伝承を聞いて育ったようです。3.11の際にはその教えに従い、神社に避難した50人ほどが助かりました。

所轄の法務局に行くと、該当地の「登記事項証明書」を、一通600円で土地所有者でなくても取得でき、そこには「田」「畑」「宅地」といった土地の用途区分が書かれています。現在は宅地のように見える土地でも、過去をさかのぼれば田んぼだったかもしれず、そうなると地盤は柔らかい可能性が高くなります。

地域の図書館に赴けば、その地域の歴史が刻まれた書籍が置いてありことが多く、それらを参照するのも有用かもしれません。また多くの自治体が地名の由来などについて、ホームページで紹介しています。

インターネットで確認できる「ハザードマップ」

河川の氾濫による洪水や地震による津波、土砂災害、火山噴火等の様々な災害による被害を予測し、その被害の範囲を地図上に示した「ハザードマップ」の確認から。

ハザードマップポータルサイト

「重ねるハザードマップ」では防災に役立つ災害リスク情報などを地図や写真に重ねて表示でき、ある地点の自然災害リスクをまとめて調べることができます。「重ねるハザードマップ」では、スマートフォンのGPS機能を用いて、現在地の防災情報を簡単に入手できます。

「わがまちハザードマップ」では、全国の市町村が作成したハザードマップを地図や災害種別から簡単に検索できます。

https://www.mlit.go.jp/common/001237894.pdf

全ての自治体がハザードマップを公開しているわけではありません。国交省によると、浸水が見込まれる区域がありハザードマップ公表が義務付けられた市区町村は全国1,347。またその基準も異なるのです。最大の雨量は「数十年から100年に1度レベル」の旧基準では98%の1,323市区町が公表済みですが、2015年改正水防法による最大の雨量が「1000年に1度レベル」とした現行基準で公表済みなのはわずか33%の447にとどまります。したがって「旧基準」か「現行基準」かの確認が必要でしょう。

また市区町村役場の多くでは、過去の水害実績などを見せてくれることがありますので、問い合わせてみてください。

河川情報

近所に気になる河川があるなら、国や自治体がウェブサイトで公開している「河川整備計画」が参考になります。この河川整備計画では、これまでの治水対策から今後の整備計画までが網羅されており、河川に関するおよその情報はここで分かるはずです。河川整備計画は「河川管理者」が公開しており、例えば、江戸川や荒川の管理は国交省や河川事務所のウェブサイトから、都道府県が管理する河川について調べたいときは、自治体のウェブサイトから探します。あるいは「〇〇川 河川整備計画」で検索してもいいでしょう。

災害情報で、一番便利で使いやすいのは「Yahoo! 天気・災害」。前述のハザードマップや河川情報はもちろん、台風や津波・洪水情報もリアルタイムで確認できます。河川水位のライブカメラもあり、様々な情報が一元化されています。要ブックマーク。

https://weather.yahoo.co.jp/weather/

「Yahoo! 防災速報」といったスマホアプリDLしておくと速報も届きます。

https://emg.yahoo.co.jp/

地盤や土地の歴史を知る

「国土地理院地図」がインターネット上で公開されています。画面左下には、その場所の「標高」が示されています。土地の高低差は、2つの視点に留意する必要があります。ひとつは「絶対的な高さ」。津波や洪水などの際の被災可能性ということです。もうひとつは「相対的な高さ」。要するに、周辺の土地と比べてどうかということ。ゲリラ豪雨など、短時間に集中的な雨が降るなどの場合、排水処理能力が追いつかず洪水となる可能性があります。例えば東京都の場合、時間当たりの排水処理能力は50ミリ程度が標準とされている自治体が多いのですが、ゲリラ豪雨はこの能力をはるかに凌駕します。すると、周辺地域でもっとも土地が低いところに雨水が集中して冠水するわけです。

地盤の性質を知るには、左上の「情報」→「ベクトルタイル提供実験」→「地形分類(自然地形)」(または人工地形)を調べると、色分けによってその土地が地震に強いのかといった特徴がわかります。

建物が傾くことや液状化被害などが心配なら前出の「わがまちハザードマップ」から、該当自治体の「液状化マップ」を検索するか、そもそも「台地」など相対的に土地が高い位置にあり、浸水や液状化の懸念がなく、地盤の固いところを選ぶべきでしょう。地盤の固いところでも、地面をかさ上げする「盛土」をしていればその限りではありませんのでご注意ください。その土地が、土を盛って造成し、地盤面を高くしたため地盤の固さが限定的な「盛土」か、元の地盤面を削ったので、地盤は全体的に均質で締まっているとされる「切土」かについては、市区町村役場で確認できます。窓口の名前は様々ですが「都市計画課」「建築審査課」などです。

国土地理院地図

大規模な造成宅地なら「大規模盛土造成地マップ」があります。阪神・淡路大震災や東日本大震災等では、自然地盤ではない「大規模な造成宅地」で土砂災害などの被害が見られたことから作成されたもの。大規模の定義は「3,000平方メートル以上」「角度20度以上」「盛土5メートル以上」など。全国の公表率は76.2%です。「大規模盛土造成地マップ 自治体名」で検索するとよいでしょう。いかにも地盤が強そうな、東京都心の高台にある高級マンションの敷地のかなりの部分が、実は盛土造成地であることなどがわかります。 地盤が弱く揺れやすい地形の場合、地盤の固いところに建つ建物より揺れやすくなることも知っておき、必要に応じて耐震性を高めましょう。また仮に液状化した場合、建物は無事でも、上下水道など地下に敷設されているインフラは毀損する可能性があります。それも踏まえて、万が一災害に見舞われた場合は、地下のインフラのチェックも怠らないようにしてください。

以前の空中写真や衛星画像を見るならやはり「国土地理院地図」。左上の「情報」→「空中写真・衛星画像」では、古くは戦前からの写真・画像を確認することもできます。筆者は子供のころ埼玉県某所に住んでいたのですが、大雨が降るとよく浸水するところでした。そこで1936年の画像を確認したところ、その地帯はかつて河川だったことがわかります。

地震や津波に関するより詳しい評価は「地震本部」「地震ハザードステーション」などのHPで確認できます。

地震調査研究推進本部

地震ハザードステーション( 防災科学技術研究所 )

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