令和3年(2021年)福島県沖の地震 ~寒い時期の避難行動と地盤の揺れやすさ~

  • Update: 2022-02-10
令和3年(2021年)福島県沖の地震 ~寒い時期の避難行動と地盤の揺れやすさ~
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令和3年(2021年)福島県沖の地震とその被害

 令和3年(2021年)2月13日の夜23時8分頃、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生しました。福島県相馬市、新地町、国見町、宮城県蔵王町で震度6強の揺れを観測し、2019年6月に起きた山形県沖地震以降、2022年2月13日までの間では、国内で唯一の震度6弱以上を観測した地震となっています。この地震による人的な被害は、消防庁のまとめによると死者2名(災害関連死1名を含む)、負傷者は重傷者16名、軽症者170名、住家の被害は全壊123棟、半壊1,937棟、一部破損34,239棟とされています。
 執筆者の横山は、地震発生翌朝の2月14日に現地に向かい、とくに揺れが大きかった沿岸部の福島県相馬市新地町付近における被害状況の調査を実施しました。外観の目視によるものでは、明瞭な倒壊等の家屋はみられませんでしたが、家屋の瓦の落下、港湾部での液状化現象落石橋脚部の被害などを確認し、海沿いの松川浦付近での家屋被害が比較的目立ちました。

相馬市内における家屋・屋根瓦に見られた地震翌日の被害状況(撮影:横山芳春)

寒い季節の地震による低体温症の懸念

 令和3年(2021年)の福島県沖の地震では、若干の海面変動が記録されていますが、幸いにも、津波による家屋被害は報告されませんでした。今後想定される大きな地震では、特に寒冷地において冬場の夜遅くに地震が発生した場合、道路の凍結落雪などの避難の妨げとなる悪条件や、避難を開始しようという意思決定の遅れに加えて、避難先や住宅が無事でも停電によって十分に暖を取れないなどで低体温症にある可能性が心配されます。
 昨年発表された国の被害想定では、津波から逃げ延びても、体が濡れて着替えが無かったりや屋外で過ごすことなどで低体温症が懸念される低体温症要対処者数」を含めた想定が発表されました。巨大地震が繰り返し発生している千島海溝日本海溝を震源とする地震が、冬の深夜に発生した際の想定として、津波による死者は最大で千島海溝の地震で約10万人、日本海溝の地震で約19万9000人と報告されています。
 これに加えて、津波から逃れても屋外で長時間過ごすなどして低体温症になる懸念のある人が日本海溝の地震で4万2000人、千島海溝の地震で2万2000人に及ぶとされています。大きな被害が想定されておりますが、津波避難施設の拡充などに加え、浸水域にいる人が地震発生から地震から10分ほどで避難を始めれば、犠牲者の数を大幅に減らすことができると推計しています。冬場の避難開始は腰が重いこともありますが、津波の懸念される地域では持ち出し袋に加え十分な防寒具なども平時から持ち出しやすい場所に準備することが望ましいです。

津波避難ビルの例(撮影:横山芳春)

 

 このほか、国の被害想定では、停電により冬季に暖房が機能しない場合、避難所等において低体温症で死亡するリスクが高まることも指摘されています。屋外や避難所だけではなく、自宅が津波や揺れによる倒壊といった被害がなくとも、停電や燃料の供給ができないことによって暖房が使えずに低体温症になる懸念も考えられます。望ましいのは、津波の浸水区域ではない、地震の揺れが大きく増幅されない土地で、十分な耐震性と省エネ性能の高い住宅に住むことが理想です。停電などがあっても昼間に十分に日光を取り込んで、その熱を逃がさないことができます。

場所によって地震の揺れの大きさが違う?

 地震が起きたとき、ある場所で感じる揺れの大きさは何によって決まるのでしょうか?地震の揺れの大きさを決める要素は、大きく分けて3つあり、①地震の規模(マグニチュード)、②震源からの距離に加え、③その場所の地盤の揺れやすさが影響しています。同じ地震でも、震源から近ければ大きく揺れ、震源から離れると揺れは小さくなっていくことは理解しやすいと思います。さらに、震源からの距離が同じでも、その場所の地盤の揺れやすさが違うと、揺れの大きさが違ってきます。地盤によって、同じ町内でもゆれにくい場所では震度5強ほどの揺れであっても、揺れやすい地盤の場所では、揺れが大きく増幅されることで震度6弱、震度6強の揺れになってしまうということもありえます。

 下の図は、地盤の揺れやすさを示す目安です。揺れにくい地盤の山地や丘陵地など山側に比べると、沿岸に広がる都市部に多い埋立地や川沿いなど、揺れが地盤の中で大きく増幅される揺れやすい地盤ということがいえます。

地形区分と地震時の揺れやすさ・起きやすい地盤災害(作成:横山芳春、2017を一部改訂)

 

  相馬市の地震計設置地点のゆれやすさはどうでしょうか。下の図は、防災科学技術研究所が公開するJ-SHIS地震ハザードステーションというサイトの画面です。ある場所で大きな地震が起こる確率や、地盤のゆれやすさなどの情報が掲載されています。地盤のゆれやすさは表層地盤増幅率という数値で表されます。相馬市付近では、地震計設置地点の表層地盤増幅率は1.6とされていますが、家屋被害のみられた沿岸部の増幅率は1.80~1.97ほどでした。両地点の倍率の違いから計算すると、2割以上ゆれが大きく増幅され、海沿いでは相馬市の地震計設置地点より大きな揺れがあったことも考えられます。

相馬市付近の地盤のゆれやすさ(J-SHIS地震ハザードステーション 地盤増幅率 に加筆)

地盤の揺れやすさと被害の関係性

 最近発生した地震で、地盤の揺れやすさがフォーカスされた事例があります。昨年2021年10月7日に発生した千葉県北西部を震源とする地震でも、震源地の千葉県北西部(千葉市付近)よりも、震源から離れた場所にある埼玉県宮代町川口市、東京都足立区で震度5強を観測しました。このような揺れ方の違いも、地盤の揺れやすさの違いが影響しているものといわれています。

 市町村レベルの違いだけでなく、家1件単位で地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)と実際の被害の関連性がわかっている事例もあります。下の図は、近年発生したある地震の被災地において、表層地盤増幅率を実際に計測した事例です。家屋の損壊や道路面の被害が大きかった場所と、被害が軽微だった場所で計測を行いました。その結果、被害が大きかった場所は表層地盤増幅率が高く、人工の盛土地盤で、被害が軽微だった場所は表層地盤増幅率が低く、自然の丘陵地・台地の地盤であるということが分かりました。
 このように、家2件分ほど離れただけで地盤の揺れやすさが大きく異なることがあり、実際に発生した被害とも一致したという事例があります。裏を返せば、事前に地盤の揺れやすさを調べておき、揺れやすい地盤であることがわかっていれば、家屋の耐震性を高める、、制震ダンパーを設置して揺れを抑えることなどで事前に大きな被害を防ぐことができます。

宅地ごとの揺れやすさを調べるには?

 お住まいの地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)を調べるには、まず相馬市の事例で紹介した、J-SHIS地震ハザードステーションを活用することができます。住所で検索して、お住まいの周辺の250m四方の表層地盤増幅率を調べることができますので、地域の揺れやすさの目安にすることができます。ただし、2つの注意すべき点があり、①関東地方以外の地域ではその地域の実測した数値ではなく地形ごとに分けられた数字で示されている事、②250m四方という、場合によっては100件以上の家が建つ範囲が1つの区画になっているので、1軒ごとの評価ではない、ということがあります。あくまで、地域の目安の数値としてとらえるとよいでしょう。
 下の図のように、250m四方では揺れにくい側であっても、住んでいる家の場所が揺れにくい側とは限らないということもあります。実際には、地盤は家1件レベルで地形も異なり、地下の地盤も異なるということを考えて使う必要があります。ハザードマップを見るときの注意点ですが、境目でギリギリ安全な側だからOK!というようなことは言い切れないと考えたほうが良いでしょう。

250m四方の評価と、実際の地盤の計測値にギャップがあることがある

住まいの揺れやすさを把握するには?

 地図情報から地形や地盤情報を読み取って、J-SHISの結果が妥当かを含めてゆれやすさの目安を判断することもできますが、説明したように250m四方の数値だけではなく、正しく読み取るには地形や地盤の知識が必要となります。また、住宅が倒壊する可能性があるか、軽微な損壊で済むかなど実際にどのような被害が発生するかは住宅の耐震性によっても異なるので、地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率)と住宅の耐震性の双方について考えることが必要です。

 地盤と住宅の耐震性はそれぞれ専門知識が必要な領域ですが、さくら事務所が提供している災害リスクカルテでは、地盤・災害の専門家によりその場所の地盤に影響する地形区分およびJ-SHIS情報(実測値のある関東地方)、場合により近隣の地盤ボーリング調査データなどをもとに地盤の揺れやすさを評価しています。さらに、住宅の専門家により建物の建築年数耐震等級からみた家屋の耐震性を評価。これらの評価を総合して、建物倒壊・損傷の被害予想を示し、その他の災害リスクを合わせて、個々の住宅ごとの評価と必要な対策や備えについて15分間の個別アドバイスを行っております。災害リスクカルテ

 さらに一歩進んだものとして、地盤の揺れやすさ(表増地盤増幅率)を、個別の住宅で計測することもできるようになっています。現在、住宅を新築する際には地盤調査が行われていますが、この調査では住宅の重さに地盤が耐えられるかを調査するもので、地盤の揺れやすさ(表増地盤増幅率)を計測する目的ではありません。地盤が耐えられない場合は地盤改良工事を行うものの、この地盤改良は地盤を揺れにくいようにする工事ではなく、住宅の重さで地盤の沈下が発生しないようにするものです。
 表層地盤増幅率を計測するには、J-SHISの計測データ取得にも使われている、「微動探査(びどうたんさ)」という調査方法を用います。微動探査は、食パンより少し大きいくらいの機材(微動計)を地面に4台、合計1時間ほど置くだけで、地面に穴を開けたりすることもなく地盤の揺れやすさが調査ができる調査方法です。さくら事務所では、微動探査による地盤の表層地盤増幅率、建物と地盤が共振する可能性を踏まえて、その場所に建てる住宅の耐震性について助言する「地震対策トータルアドバイス」を提供しています。住宅1軒ごとの地盤の揺れやすさを知って、地震に強い住宅を建てたい方は、是非ご検討下さい。

「微動探査」機材の一例 地面に機材を置くだけで揺れやすさの調査ができる。