災害リスクカルテ アップデート~隠れ盛土と地震保険・水災特約コメントを追加

  • Update: 2023-02-27
災害リスクカルテ アップデート~隠れ盛土と地震保険・水災特約コメントを追加

災害リスクカルテ アップデート~隠れ盛土と地震保険・水災特約コメントを追加

災害リスクカルテとは?

 さくら事務所災害リスクカルテ(電話相談つき)は、知りたい場所の自然災害リスク(台風・大雨、地震etc)」をピンポイントで診断し、災害リスクレポート+専門家による電話コンサルティングで、あなたの調べたい場所の災害リスクを完全サポートする、国内唯一の個人向け災害リスク診断サービス(さくら事務所調べ)です。災害と建物の専門家がリスクと具体的な被害を予想、戸建て住宅では豪雨時に水害・土砂災害で避難をする必要があるか、地震でどのくらい被害を受けることが想定されるか、被害額の想定を示します。

 日本全国で、一戸建て、マンション、アパート、更地などの別を問わずに対応可能、現在住んでいる家、ご実家、購入や居住を考えている物件のリスクと対応策を知ることができます。レポートの発行だけでなく、建物の専門家による15分間の電話コンサルティングもついており、単に災害によるリスクをお知らせするだけではなく、リスクを知って住んでいくうえでどのような対策をすればいいか相談することができます。このたび、災害リスクカルテをアップデートし、最近TVでも話題になった隠れ盛土の可能性があるか、また災害に対する保険である火災保険地震保険の付帯、また水災特約(水災補償)加入のアドバイスに関するコメントを追加いたしました。

災害リスクカルテからみた住宅の災害・被災リスク

 災害リスクカルテは、2020年9月にリリース後、約2年半で380件を発行(2023年2月20日現在)しています。2022年9月には「災害リスクカルテ大分析〜依頼300件の55%近くが水害リスクのある立地に」のコラムで、当時ご依頼のあった物件(313件)の災害リスクの傾向について紹介しています。ここでは、建物の被災リスクではなく、純粋に立地としての災害リスクを示しています。その結果は、313件中において水害リスクのある立地は55%近く、土砂災害への警戒が必要な立地は15%弱、地震時に揺れやすい地盤は28.4%、液状化リスクが高い物件は19.9%、大規模盛土地に該当する物件は5.7%津波リスクがある物件は4.1%という結果となりました。

立地の災害被災リスク(災害リスクカルテ依頼物件より)

 さらに、2023年1月11日には「2023年 住宅災害で注意すべき点は? ~「災害リスクカルテ」家屋の被災リスクの傾向から分析~」として、建物の構造や築年数などを考慮した建物被災リスクを抽出しています。水害による被災リスクは45%弱がリスクがあると、半数弱の物件で何らかの水害による被災リスクがあることが浮き彫りとなりました。建物の構造によって、例えば平屋や1階の物件であれば安全な場所への避難が必要ですが、2階以上がある、または2階以上の居室では避難が不要のケースなどもありました。在宅で避難する際には、自宅に籠城するための食糧、水を中心とした備蓄なども必要となります。

建物の被災リスク(災害リスクカルテ依頼物件より)

 

アップデート その① 隠れ盛土リスクの抽出を追加

 2023年2月のアップデートでは、まず「隠れ盛土」によるリスクを追加いたします。隠れ盛土隠れ盛り土)とはどういったものでしょうか?1月14日に放映されたNHKスペシャルのHPでは、「自治体が公表している大規模盛土造成地マップに載っているのは、あくまでも大規模な盛土のみ。しかし、住宅数軒ほどの規模の小さい盛土も、多数存在しています。」と述べられています。大規模盛土造成地マップの掲載には、面積が3,000㎡以上(谷埋め型の場合)などの要件がありますが、これに満たない面積のものや、マップ作成段階で抽出の段階で漏れているものなど、中小規模の盛土地は無数に存在します。地震時には、盛土地での宅地被害が増加することが過去の度重なる地震の際に指摘されていることから、盛土地かどうかは重要な情報となります。しかしながら、不動産取引時の重要事項説明で説明義務があるのは、大規模盛土造成地マップで大規模盛土造成地に指定されている物件のみということが現状です。

 隠れ盛土の探し方は、コラム「マップには載っていない「隠れ盛土」とは? 」で今昔マップこんじゃくマップ)」という無料の古地図閲覧サイトを大規模盛土造成地マップ(緑色の場所)の周辺を中心に、盛土造成地がある可能性があります。ただし、谷の判読は等高線を読まないとならないため一朝一夕にはいかず、慣れないと難しい点もあります。なお、実際の盛土地かどうかは古地図による洗い出しに加えて造成に関する書類、現在の現地および周辺の状況、地盤調査報告書などを総合して判断する必要があります。

今昔マップの地図画面に谷だったとみられる場所を青色で着色(今昔マップ

 災害リスクカルテでは、もともと土地の改変履歴を読み取っており、海や川、田を埋め立てた場所などの履歴を、災害リスクの判読に活用しておりました。そこで、水面を埋め立てた場所だけでなく、谷を埋めた「隠れ盛土地」の可能性がある場所についても、その可能性を記載することを行ってまいります。

 「大規模盛土造成地」に該当するか、該当しないかは従来より記載していましたが、そこに「盛土の可能性がある」という欄を設け、古地図から見て盛土があると想定される場合に記載する形でお知らせしてまいります。造成記録の確認や現地調査は実施せず、公開された机上資料をもとにしているため、あくまで「盛土地の可能性がある」という記載にとどまりますが、隠れ盛土の可能性を検討するにあたってお役に立てばと思います。なお、盛土造成地では地震の揺れが大きくなることなどから、地震時の家屋被害が大きくなることが知られている(例えば地盤工学会シンポジウム資料)ことから、盛土地の可能性について災害リスクカルテの「地震時の揺れやすさ」の評価の際に考慮することもあります。

アップデート その② 地震保険・水災特約コメントを追加

 地震や水害、土砂災害などがあった際に役立つ地震保険水災特約は、万が一の被災があった際の生活再建に大きな支えとなります。国内の災害関連に役立つ保険として主なものとしては、火災保険とセットで加入(付帯)する地震保険や、水災特約(水災補償)があります。被害を受ける可能性が高い立地や構造の住宅では、これら保険の加入により、万が一の際の安心につなげることができます。

 「災害リスクカルテ」では、水害、土砂災害、地震の揺れ、液状化、津波による被災リスクを示していることから、専門家による15分間の電話コンサルティングの際に地震保険、水災特約(補償)コメントを行っていることがありました。レポートに記載は行っておりませんでしたが、今後はレポートにも地震保険、水災特約(補償)に関するコメントを追記し、「災害リスクカルテ」のさらなる利便性の向上に繋げて参りたいと考えます。

地震保険のコメント

 地震保険とは、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による被害を補償する地震災害専用の保険です(財務省HP )。地震という、予測が難しくかつ経済的にも甚大な被害をもたらす可能性がある自然災害を対象としていることから、損害保険会社と政府が共同で運営している公共性の高い保険制度であるということができます。また、地震保険は単体で加入できず。火災保険に付帯(セット)して加入する必要があります。火災保険だけでは、地震、噴火、津波による損害、とくに地震時や津波で発生した火災は補償されません。これらを補償するには地震保険への加入が必要となります。

 災害リスクカルテでは、地震による建物の倒壊・損傷の被害予想、津波による具体的な被害予想のほか、地盤の液状化による被害、また火山の近く(軽井沢・熱海・箱根等)では参考情報として火山ハザードマップ情報を掲載していることがあります。基本的に、ある程度の地震による被害や火災は想定されることから地震保険の加入は可能な限りお勧めしたいところと考えます。地震の揺れによる被害予測等により、地震保険による補償が発生することが見込まれる場合には、地震保険の付帯を一層お勧めするコメントを記載しております。なお、災害リスクカルテでは土地の災害リスク、建物の被災リスクの傾向から、各保険への加入のお勧めをするのみですので、特定の損害保険会社をお勧めするといったことは行っておりません。また、ご加入やお支払い条件の詳細については損害保険会社・代理店様にご相談ください。

地震保険により補償対象となる事例

水災特約(水災補償)のコメント

 水災特約(水災補償)とは、火災保険に付帯して水害・土砂災害による被害を補償するものです。川の氾濫(洪水・外水氾濫)、近くの下水道の排水能力をオーバーする豪雨による都市型水害内水氾濫)、台風の際の高潮による氾濫(高潮)、豪雨による土砂崩れ・土石流による被害について、一般的に、①再調達価格の30%以上の損害、②床上浸水、又は③地盤面より45cmを超える浸水のうち、いずれかの支払い要件を超えた場合に補償対象となります。

 災害リスクカルテでは、水害(洪水・内水氾濫・高潮)、土砂災害による被害予想を示していることから、水災特約(補償)支払い要件を超える被害(特に床上浸水又は地盤面より45㎝以上の浸水)が想定される場合、水災特約の加入をお勧めするコメントを記載することを行ってまいります。なお、災害リスクカルテでは土地の災害リスク、建物の被災リスクの傾向から、各保険への加入のお勧めをするのみですので、特定の損害保険会社をお勧めするといったことは行っておりません。また、具体的な保険のご相談・ご加入やお支払い条件の詳細については損害保険会社・代理店様にご相談ください。

一般的な水災特約(水災補償)支払い要件

 

 災害リスクカルテは、単なる災害リスクを知るレポートではありません立地、家の構造をもとに、災害と建物の専門家が具体的な被害を予想、最低限の対策から本格的な対策方法、災害対策の優先順位がはっきりわかり、住まいごとの災害対策ができるツールです。今後も、ニーズや社会的情勢を踏まえて、日常から万一の災害時まで安心・安全なくらしを継続しておただく一助となるサービスとして改善・アップデートを進めてまいります。

検討中の物件やご自宅の地震や災害リスクを知りたい方は「災害リスクカルテ」のご検討を

災害リスクカルテ(電話相談つき)

 さくら事務所の災害リスクカルテ(電話相談つき)は、知りたい場所の自然災害リスク(台風・大雨、地震etc)を地盤災害の専門家がピンポイントで診断、ハザードマップがない土地でも、1軒1軒の住所災害リスクを個別に診断します。1軒ごとに古地図の確認や地形区分の評価を行っているので、盛土地である可能性や、災害リスクについてもコメントしています。

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国内唯一の個人向け災害リスク診断サービスです。

※全国対応可、一戸建て・マンション・アパート対応可

 災害リスクカルテは、過去345件超の物件で発行しています。それらの傾向から、約47.3%の物件で何らかの災害リスクが「高い」という結果となり、水害に関しては55%の物件で浸水リスクがある」(道路冠水以上、床下浸水未満を超える可能性あり)という結果が得られています。

 災害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。

レポートだけではない!建物の専門家による電話相談アドバイスも

災害リスクの判定・予測をもとに専門家がアドバイス

 既にお住まいになっているご自宅や実家のほか、購入や賃貸を考えている物件、投資物件の災害リスクや防災対策が気になる方におススメです。特に、ホームインスペクションを実施する際には、併せて災害への備えも確認しておくとよいでしょう。災害リスクカルテの提出はご依頼から概ね4日で発行が可能です(位置の特定・ご依頼の後)。不動産の契約前や、住宅のホームインスペクションと同じタイミングなど、お急ぎの方はまずは一度お問合せください。

■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)

横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター

地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル。