ベランダ防水の種類とメンテナンスのタイミングはいつ?

  • Update: 2020-04-20
ベランダ防水の種類とメンテナンスのタイミングはいつ?

ベランダ防水は、建物を雨水などから守る重要な役割がありますが、いつか必ず劣化するため定期的なメンテナンスが必要です。劣化が進行して必要なメンテナンスを怠ると、雨漏りの原因にもなり、建物にとって大きなダメージを与えることがあります。
またベランダ防水にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や耐久性も異なります。ベランダ防水の種類や特徴を理解しておくことで、リスクを回避することも可能になるでしょう。
今回はベランダ防水の種類や特徴について、またメンテナンスのタイミングや日ごろのお手入れについても解説します。

自宅一戸建てホームインスペクション

ベランダ防水の種類は4つ

ベランダ防水の種類はおもに以下の4つになります。

  • ウレタン防水
  • FRP防水
  • シート防水
  • アスファルト防水

●ウレタン防水

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層をつくりトップコートで仕上げる「塗膜防水」になります。複雑な形状にも対応できることや、工事費が安いことなどがおもな特徴です。
また施工性に優れる点でメンテナンスにもよく採用されます。施工方法は「密着工法」「通気緩衝工法」の2種類があります。

  • 密着工法
    既存下地に、直接ウレタン樹脂と補強繊維で防水層をつくる工法です。
  • 通気緩衝工法
    既存下地に通気緩衝シートを貼り、その上からウレタン樹脂を重ねて防水層をつくる工法です。
    既存下地から発する蒸気によって起こることがある防水層の膨れを防げます。

ウレタン防水の耐用年数はおおよそ10年ですが、トップコートは5年程度の塗り替えが目安となります。

●FRP防水

FRPとは、繊維強化プラスチックのことをいいます。FRP防水は、液状のポリエステル樹脂と補強繊維を一体化してつくる防水層で、ウレタン防水と同じ「塗膜防水」になります。
新築工事で採用されるケースが多く、耐久性の高さと短い工期で施工できることなどがおもな特徴です。FRP防水の耐用年数はおおよそ10年ですが、トップコートは5年程度の塗り替えが目安となります。

●シート防水

シート防水は、「塩ビシート」や「ゴムシート」などの防水材を床面に貼ってつくる防水層になります。耐久性や耐候性に優れることがおもな特徴です。
シート状になっていることや、歩行も可能なことから、ベランダだけでなく屋上など広い範囲で施工する場合でもよく採用されます。ただし、下地の状態が影響しやすいことや接合処理が難しいなど施工は比較的難しいため、施工業者の技術力もポイントになるでしょう。
シート防水の耐用年数はおおよそ10~15年になります。

●アスファルト防水

アスファルト防水は、液状の溶解アスファルトとアスファルトシートを組み合わせてつくる防水層になります。水密性や耐久性に優れることがおもな特徴で、屋上など広い範囲の防水として使われることがありますが、ベランダで採用されることがそれほど多くありません。
アスファルト防水の耐用年数はおおよそ15~20年になります。

メンテナンスのタイミングは?

ベランダ防水は徐々に劣化するため、状況に応じて適切なメンテナンスが必要です。おもにベランダ防水の種類ごとに設定されている耐用年数を目安として計画的に実施するとよいでしょう。外壁や屋根のメンテナンスも10年程度が目安となるため、これらに併せて実施することも有効です。
またベランダ防水は、不具合が発生すると雨漏りなど深刻な事態につながる可能性が高い部位でもあります。そのため何らかの症状が見られる場合は、不測の事態に陥る前に専門業者へ調査を依頼することも必要になるでしょう。
ベランダ防水のメンテナンスを検討するべきおもな症状をご紹介いたします。

●トップコートのひび割れ、剥がれなど

まずトップコートとは、おもにウレタン防水やFRP防水など塗膜防水において、防水層を保護するための仕上げ塗装のことをいいます。
トップコートは、紫外線や雨水にさらされ続けていることから、最も劣化しやすい部分になります。劣化の初期症状として現れるのは、表面に粉状のものが付着する「チョーキング」です。
「チョーキング」が見られる場合、深刻な症状ではありませんが、そろそろメンテナンスをする時期が近いことを意識しておくとよいでしょう。ただしトップコートにひび割れや剥がれがある場合、塗膜として機能していない可能性が高いため、早めの塗り替えを検討するタイミングといえます。
トップコートは5年程度を目安として定期的に塗り替えをするだけでも、防水層の機能を長く維持することが可能です。

●塗膜防水層の膨れ、破れなど

防水層の膨れが見られる場合、施工段階で水分が残っていたりプライマーの塗布不足があったりすると起こりやすい現象です。破れにつながる可能性もあるため、早めに補修をするなど適切な処置をしておくとよいでしょう。
また地震発生時などは、下地面が動くことで防水層が追従できずに破れてしまうことがあります。この場合、放置すると雨漏りなど深刻な症状につながる恐れがあるため、早期に補修するなど適切な処置をとらなくてはいけません。

●シート防水層の浮き、破れなど

シート防水の場合も下地面に水分が残っていると浮きの原因になります。
また端部や入隅部なども浮きやすい部分になりますが、浮き上がりから破れにつながることがあります。さらにシートどうしの接合部分も剥がれることがあり、雨水が侵入するようだと防水層全体を浮き上がらせる原因にもなるのです。
シート防水も部分的な補修が可能ですが、耐用年数によって張り替えをするなど状況に応じて適切なメンテナンスを検討するとよいでしょう。

●水たまりができる

ベランダは、雨水がうまく排水されるようになだらかな勾配がつけられているため、正常であれば水たまりができることはありません。長期間水がたまった状態が続くと、ドレンの腐食や、防水層の劣化促進などの原因になるため注意が必要です。
水たまりの原因としては、排水口にゴミが堆積して排水を妨げていることや、防水層の浮きが勾配をじゃましていることなどが考えられます。
雨が降っていないときでも水たまりがある場合は、原因を特定し除去する必要があるでしょう。

日ごろのお手入れ方法とは

ベランダ防水は、日常的にお手入れをしておくことで、機能を長く維持することが可能になります。
ベランダ防水の、おもなお手入れ方法は以下の通りです。

●床面の掃除

ベランダは1年に1度は床面の掃除を心がけましょう。
まずはベランダに置いているものを移動し、床面が見える状態にします。水を流す前に掃き掃除をしますが、ゴミは排水口に流さず掃除機で吸引するかちり取りで集めて処分します。
その後、中性洗剤やベランダ専用の洗剤を使って水洗いをします。デッキブラシでゴシゴシこすると塗膜を傷つける恐れがあるため、布やスポンジ、モップなどやわらかい素材で行うとよいでしょう。
最後は水で洗い流し、しっかり乾燥させて終了です。

●台風、豪雨時のチェック

台風や豪雨、あるいは梅雨時期など大雨の予報があった場合は、あらかじめベランダの排水口をチェックしておきましょう。排水口にゴミが堆積していると、ベランダに雨水がたまり、場合によっては室内に浸水することもあります。
また台風や強風のあとも、落ち葉やゴミが飛んできていないかチェックすることが重要です。

防水の劣化はリスクが大きい!

ベランダ防水が劣化し機能を失うと、雨漏りを起こすなど被害の規模は大きくなってしまいます。雨漏りが発生した場合、防水の補修工事だけでなく内装の天井や壁の手直し工事が必要となり、また家財まで傷めてしまうこともあります。
さらに構造まで傷めることがあると、耐久性は損なわれ建物寿命を縮める原因にもなるなど非常にリスクが大きいのです。ベランダ防水は、いずれ必ず劣化するため、状況に応じて適正な処置を適正なタイミングで実施する必要があります。
そのためには、定期的に建物のコンディションをチェックし、状態を把握することが重要になるでしょう。
そこで効果を発揮するのがホームインスペクション(住宅診断)です。
ホームインスペクション(住宅診断)は、ベランダ防水だけでなく建物のコンディションを見極め、劣化状況やメンテナンスの必要性やタイミングまでチェックできます。
ベランダ防水をはじめ、住宅に潜むあらゆるリスクを回避するためにも、ホームインスペクション(住宅診断)の実施を検討してみてはいかがでしょうか。