新築でもホームインスペクションは必要か?

  • Update: 2022-02-28
新築でもホームインスペクションは必要か?

2018年4月から中古住宅の仲介時にホームインスペクション実施についての説明が義務化され、ホームインスペクション(住宅診断)を利用する人が増えてきました。

しかし、新築住宅の場合、不動産の担当者からは「新築なのでホームインスペクションは必要ありませんよ」と言われる場合も多く、買主側からも担当者との関係性が壊れるのを心配してあまり強く言えないケースもあります。

結論から申上げると、新築でもホームインスペクションの実施は『重要』です。

さくら事務所でも「新築でもホームインスペクションは必要ですか?」と、お客様からご相談を受けることが多く、本コラムでは、よくある業者や担当者からの断り文句を切り口に、ホームインスペクションを行う必要性・メリット、実際に見つかった事例を解説し、インスペクションの重要性についてお伝えしていければと思います。

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新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!

新築工事の段階ですでに「約80%」の施工ミスを発見!

まず、皆さんに前提としてご理解いただきたいことは、「新築だから施工ミスはゼロ」といった事実はないことです。

もちろん中古住宅と比べると、経年劣化もないですし瑕疵率が低いことは事実ですが、私達さくら事務所が提供している新築工事チェック(建築途中検査)サービスでは、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が工事段階から複数回の検査を行いますが、2019~2020年にかけて、大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く集計・分析した結果、おおよそ8割近くで不具合が発生していることがわかっております。

また、住宅完成後の内覧会同行(引渡し前チェック)サービスでも、給水管水漏れによる床下の水たまりや、換気扇ダクトの取り付け忘れ、断熱材の外れなど、新築でも施工不良は多く見られるなど、おそらく多くの人が新築に抱くイメージとは大きくかけ離れた施工状況だと予想されます。

実際、現場では職人や現場監督が「法律や規定を知らなかった」「重要視していなかった」「うっかり間違えた」「忘れていた」など、初歩的なことが原因で不具合が発生するケースがよく見られ、工事段階の施工ミスは、一度完成してしまえば後に隠れてしまい見えなくなる箇所も多く、完成後の住宅を内覧したとしても分からないところが非常にやっかいなところです。

役所の検査を受けて検査済証があるから大丈夫?

建築確認の検査済証

建築確認の完了検査は、建築確認申請どおりの建物が完成したかを確認するだけの検査なので、欠陥住宅かどうかまではわからないというところが肝です。

建築確認の完了検査でみる主な内容はこちらです。

  • 建蔽率(建ぺい率)
  • 容積率
  • 北側斜線制限
  • 間取り
  • 居室の採光
  • シックハウス対策

これらの内容が建築基準法に則っていれば検査済証は発行されますので、「検査済証がある=施工不良がない」とはいえません。

ホームインスペクションは、雨漏りやシロアリ被害、建物の傾きなどの劣化状況や、新築時の施工不良などについて、建物に精通した専門家のホームインスペクターが診断するサービスであり、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などの改修アドバイスまでがサービスに含まれます。

ホームインスペクションを行うと、断熱材や石膏ボードの施工不良だったり、床下の水漏れ、基礎の割れなどを発見することがあり、このような施工不良や工事ミスは床下や天井裏の進入検査で発見することも多いのですが、役所の完了検査では床下や天井裏の検査はしません。

検査済証が発行されていても欠陥住宅であることは十分にあり得ますので、安心して住宅を購入するためには、事前のホームインスペクションが有効になります。

参考:新築一戸建ての施工不良(不具合)事例

10年保証があるから大丈夫?

10年間の瑕疵担保責任

新築住宅には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、引き渡しから10年間の保証(瑕疵担保責任)が義務付けられています。

しかし、この10年保証は、「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」に範囲が限定されていることに注意が必要です。

つまり、売主が瑕疵担保責任を負うのは基礎や壁、柱などの構造上重要な部分と、外壁、屋根など雨漏りを防止する部分のみで、それ以外の部分の瑕疵・欠陥は保証の範囲外ということになります。

先にも述べたような断熱材の施工ミスや床下の水漏れをはじめ、床の傾斜や床鳴り、住宅性能の不足、変形やはがれなど、ホームインスペクションを行った際に10年保証の範囲外の部分に欠陥が見つかることも多く、新築物件に入居後安心して住むためには、10年保証だけでは不十分です。

仮に入居後どこかのタイミングで10年保証の範囲の住宅欠陥が見つかったとして、売主がすんなりと瑕疵を認めるとも限りません。

入居後に生じた問題は責任の所在があいまいになることも多く、売主側ともめた場合は精神的・時間的な負担も大きくなります。

また、仮に保証で対応してくれることになったとしても、構造や雨漏りに関する箇所の修繕には、広範囲で建物を解体する工事を伴うことも多く、場合により一定期間仮住まい先での生活になることや、住みながら工事を行う場合には騒音や振動などにより強いストレスを感じるなどの負担が生じる点にも注意が必要です。

瑕疵担保保険に入っているから大丈夫?

瑕疵担保保険

ホームインスペクションを売主側に打診した際に、「瑕疵保険に入っているので大丈夫です」と言われるケースがあります。

新築住宅に義務づけられている10年間の瑕疵担保責任は、瑕疵が見つかったタイミングで売主が既に倒産していたり、そもそも売主側に補修や建て直しのための財務的余裕がなければ意味がありません。

そういう場合に備え、売主側で予め供託金を住宅保険会社に納め、万が一住宅を販売した会社や建築した会社が倒産してしまった場合も、買主側が保険会社に瑕疵の補修にかかる費用を請求することができる、というのが瑕疵担保保険です。

瑕疵担保保険は、売主の瑕疵担保責任を確実に履行するための制度であって、住宅に欠陥がないことを意味しません。

10年保証と同じように、保険の対象は「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」に範囲が限定されていることが多く、オプションでさらに細かい保険の内容を追加できる場合もありますが、瑕疵担保保険に入る主体は売主ですので、過度な期待はできません。

また、免責事由に該当する場合などは、保険金の支払がなされない可能性もあります。瑕疵保険はもしもの時のための安心材料として必要な制度ですが、やはり、契約前に買主としてのホームインスペクションを行い、欠陥住宅のリスクを事前に回避することが重要です。

お金が無駄になるって本当?

ホームインスペクションはお金が無駄か?

この先何十年も住むかもしれない自宅が欠陥住宅トラブルになったときの精神的・金銭的な負担を考えると、何千万円もする高価な買い物の安心を数万円から買える、ということを高いと思うか、安いと思うかは人それぞれです。

ホームインスペクションを行った結果、複数の施工ミスや不具合が見つかり、物件引き渡し前までに直してもらえたという方は多いですが、その一方で結果的に非常に丁寧に作られていることが分かり、大きな施工不良等の指摘がなかったということももちろんございます。

この場合、無駄な出費だったと感じられるかもしれませんが、実施後に「大きな不良がないことがわかり、入居後の安心感が大きい」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。

ホームインスペクションは安心を買うために行うものです。新築であったとしても、利害関係がなく、売主と関係のない信頼できる業者で住宅検査をやるべきだと考えます。

大手ハウスメーカー・注文住宅だからホームインスペクションは必要ない?

ハウスメーカーで新築した場合もホームインスペクションは必要

予算の関係上、地元の工務店やローコストのハウスメーカーにしたから施工品質が不安だ、という方はいらっしゃいますが、ではテレビCMなどで見たことがあるような誰もが知っている大手ハウスメーカーの注文住宅や建売住宅なら第三者によるチェックがなくても安心と言えるのでしょうか?

結論からいうと、大手ハウスメーカーでも、第三者機関のホームインスペクションは重要です。

ハウスメーカーによっては1人の現場監督が複数の建築現場を同時に担当することも多く、どれだけ優秀な現場監督でも、人間なのでミスや見逃しがあることは仕方ありません。

1人の監督で10棟以上の新築工事を同時に監理することも珍しくなく、こうなると適切な監理をするための時間を確保することが難しくなり、週に1回どころか、2週に1回ですら現場に行けないと、悩んでいる現場監督もいます。

大手ハウスメーカーの場合、社内検査態勢が整っていることも多いですが、検索してみるとわかるように、大手であったとしても欠陥住宅のトラブルがゼロではありません。

ハウスメーカーから「第三者機関で検査しているから大丈夫」という説明を受けることもあると思いますが、この場合、ハウスメーカーの関連会社や長い付き合いのある取引先であることが多いです。

このような場合、依頼主であるハウスメーカーに厳しい指摘が出来ず、どうしてもお手盛りになってしまう懸念があり、ハウスメーカーから紹介される検査機関に本当に第三者性があるのかは疑問です。

瑕疵保険や住宅性能評価に関わる現場検査を第三者検査として説明されることも多いですが、それらは数十分程度の限られた時間内で確認されることがほとんどで、施工品質を十分に検査しきることが目的とはされていないことにも注意が必要です。

住宅検査の際は、ハウスメーカーと利害関係がない独立した第三者機関を買主自ら選び、検査を依頼することが必要です。

指摘するべきところはきちんと指摘する一方で、売主、若しくは施工会社との今後の関係にも配慮したコミュニケーションや振る舞いを心がけています。

第三者のチェックが入ることで抑止効果が働き、丁寧に施工してもらえるという副次効果もあります。

ここ最近の大手ハウスメーカーの場合、従来に比べて工場生産による工業化が進み、人の手を掛けずに建築できる仕組みをもっていることも多いため、その点では確かにミスが出にくくなっているとも言えますが、その一方で、最終的には現場で組み立てなければならない工程は必ずあり、その範囲でミスが起こることもあります。

実際に、さくら事務所で新築工事中に行った大手ハウスメーカーの検査でも、指摘が出てくることは珍しくありません。

これまで大手ハウスメーカーの新築住宅を診断してきた実績がございますので、新築戸建てを建築・購入予定の方は是非ご検討ください。

実際に見つかった不具合事例と原因

実際、現場では職人や現場監督が「法律や規定を知らなかった」「重要視していなかった」「うっかり間違えた」「忘れていた」など、初歩的なことが原因で不具合が発生するケースがよく見られます。

ケース①【床下の水たまり】

床下点検口から床下空間に進入して確認してみると、進んだ先に水たまりが残っていることが分かりました。

床下で通気をとっていない仕様ということもあり、新築でありながら湿気がたまってカビの繁殖も見られました。

 

ケース②【換気扇ダクトの取り付け忘れ】

ユニットバスの天井点検口から天井裏を見たところ、配管(ダクト)が一度取り付けたあとに外され、そのまま放置されていました。

そのままだったとしたら、浴室の蒸気が天井裏に放出され、天井裏にカビが多数発生していた可能性があります。

 

ケース③【天井裏(小屋裏)の束の取付忘れ】

図面に記載されていた位置に、構造材を支える「束(つか)」という小さな柱が取り付けられておらず、穴が開いたままでした。

小屋裏は人が頻繁に見る場所ではないことと、多数の構造材があることから、部材や固定金具の取り付け忘れや取り付け間違いが気づかれないままになりやすい場所です。

ケース④【使用場所に合わない部材使用】

電気の線を覆うカバー用配管に間違いがありました。何が違うのかおわかりになりますか?

このオレンジのカバー用配管(CD管)は、コンクリートの中に配線を通すときに使うもの。屋外用より安価ですが、紫外線の影響で劣化しやすいため、通常は耐候性がある薄いベージュのPF管を使います。

 

▸このほかの新築一戸建ての指摘事例はこちら◂

「一級建築士」だからといって安心はできない

ホームインスペクター(住宅診断士)も、いざ探してみると多くの人がいて、どこに頼むのが良いか迷われるかもしれません。その中でも特に「資格」について気にされている方は多いでしょう。

ホームインスペクションは、建物の状態を確認し、適切なアドバイスが求められる仕事のため、一定の知識や経験がないと難しく、それを表す代表的な資格と言えば、やはり「建築士」になりますが、この建築士にも幾つかの種類があり、最も一般的でよく認知されているものが下記の2つです。

  • 一級建築士
  • 二級建築士

結論、一級建築士と二級建築士は役割の違いという側面が強く、必ずしも能力の違いを表しているわけではありません。例えば大規模な建築物ばかりを扱ってきた一級建築士の場合、住宅にはあまり詳しくないといったことがありえますので、持っている資格名の印象だけを参考にすることには注意が必要です。

ホームインスペクターやその会社を見ていくと、「一級建築士」であることを強く謳っているところがよくありますが、一級建築士と二級建築士の違いについては述べられていないことがほとんどです。

一級建築士と二級建築士の違いは、設計や監理で扱う建物の用途や規模によって異なっており、大まかには一般的な住宅程度が二級建築士で、学校や病院などの大規模な建物まで扱う場合は一級建築士が必要な資格となります。

 

ホームインスペクション会社は大きく分けて3種類

ホームインスペクション会社は現状で大きく分けて下記の3種類と見られ、それぞれ特徴がございますので選ぶ際の参考にしていただくと良いでしょう。

  • ①完全独立系の組織型
  • ②個人型
  • ③建築会社等グループ系列の組織型

①完全独立系の組織型

特に自社やグループ会社で、直接工事や設計の請負をしておらず第三者性を重視している中立的な完全独立系の会社。

複数のホームインスペクターが在籍する形の組織で運営している完全独立系のため、設計や工事の請負や紹介などは基本的にせず、それに伴う利害関係がないため、公平な目線で診断がしやすいことが特徴です。

組織的に動いているため、引き受けられる仕事量も一定多く、本部機能があれば、インスペクターのスケジュールによらず、急な連絡や相談など含めてコンタクトは安定してとりやすいでしょう。

担当者の入れ替わりが起こる可能性はありますが、組織として活動を続けていれば、利用時点だけでなく、先々も相談先としやすいなどのメリットがあります。

さくら事務所はこのカテゴリーに当たります。

②個人型

設計事務所業などと合わせて、組織ではなくあくまでも個人としてホームインスペクションも請け負っているタイプの会社。

個人HPの他、業界団体やプラットフォーム系サービスから仕事を取得していることがよく見られます。

受けられる仕事の量や、チェック方法、アドバイス内容などは完全に個人のキャパシティーや属人性で決まることが多いので、相性によっても得られる結果が大きく変わる可能性があります。

設計や工事なども直接受けられている場合、ホームインスペクションに第三者性が損なわれることもあり得る点には注意が必要であり、またその方個人の活動がいつまで続くのかによって、将来的な相談先にはなれない可能性もあるでしょう。

③建築会社等グループ系列の組織型

複数の関連するグループ会社があり、その中のひとつとしてホームインスペクションを行っているタイプの会社。

新築やリフォーム、シロアリ工事やインテリア工事などを行っている会社がグループ会社にある場合もあり、組織全体の規模が大きければ安定的な活動が期待される一方で、完全独立系ではないため、インスペクションの結果によって、グループ会社に工事紹介などを繋げられる可能性もあることから、公平な目線での診断になっているのかどうかには注意が必要です。

さくら事務所は業界No.1!経験年数20年以上のプロ集団が対応

さくら事務所は、国内におけるホームインスペクション普及のパイオニア的存在であり、これまでご依頼実績は業界No.1(累計60,000件超)、満足度98%(Google口コミ☆4.8)と非常に有り難い評価をいただいております。

弊社理念の核でもある「第三者性・中立性」を保持しながら、建築・不動産・防災・マンション管理など、あらゆる難関資格を持つメンバーが連携、サービスご利用後にもあらゆる住まいのご相談に対応するための「永年アフターフォローサービス」もご用意これから暮らす住まいの安心に加え、心強い建築士と末永いお付き合いをいただける内容となっております。

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