1999年に国内で初めてホームインスペクションサービスをスタートし、業界No.1の実績を持つさくら事務所では、これまで個人向けで69,000件以上の住宅を診断してきました。
その中で、中古住宅だけにとどまらず新築の一戸建てでも欠陥を発見するケースも多々あります。
じつは、私達さくら事務所が提供している新築工事中ホームインスペクション(第三者検査)サービスでは、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が工事段階から複数回の検査を行います。2019年から2020年にかけて、大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く集計・分析をした結果、おおよそ8割近くで不具合が発生していることがわかっております。
また、住宅完成後の新築一戸建てホームインスペクション(完成検査・内覧会立会い)サービスでも、給水管水漏れによる床下の水たまりや、換気扇ダクトの付け忘れ、断熱材の外れなど、新築でも施工不良は多く見られるなど、おそらく多くの人が新築に抱くイメージとは大きくかけ離れた施工状況だと予想されます。
一戸建てを検討中の方が知らずに欠陥住宅をつかまないためにも、これまでに住宅診断士(ホームインスペクター)が発見した欠陥住宅の事例を一部ご紹介いたします。
欠陥住宅とは?
欠陥住宅とは、建物の安全性に欠けた住宅のことです。本来、安全性のために備わっている性能が欠けている状態であり、基礎・土台・柱・床などの骨組みに関する部分が該当します。
欠陥住宅の原因は、施工不良や設計ミスによるケースが挙げられます。事例としては、基礎や壁のひび割れや雨漏りなどが起こり得るでしょう。
欠陥住宅の定義は明確に決まっていませんが、壁紙が剥がれることなど安全性に直接的に関係ない場合、欠陥住宅に該当しないことがある為、注意してください。
欠陥住宅の事例紹介 12選
まずはさくら事務所のインスペクションで発見した代表的な欠陥事例12選をご紹介します。写真と合わせてどんな問題があるのかを具体的に説明します。ぜひ参考にしてください。
事例1.基礎のひび割れの事例
ひとつ目の事例は基礎のひび割れです。建物を支えている基礎にはコンクリートが使用されています。コンクリートの特徴は運搬時は液状で運搬しやすく、型枠に流し込むと時間を経るごとに固まり強度が増すことです。この特徴からコンクリートは建築資材として幅広く使用されています。
ただしコンクリートは適切な管理を怠ると、ひび割れを促進させ、構造体としての寿命を縮めてしまうケースも存在します。
もちろん経年変化により避けられないひび割れも存在しますが、見分ける目安を理解していれば構造的な欠陥があるひび割れかどうかの判断が可能です。
危険なひび割れかどうかの見極め方は以下のコラムで詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
【参考コラム】
さくら事務所コラム「家の基礎にひび割れを発見…放置してはいけないケースや補修費用を徹底解説」
事例2.壁のひび割れ
写真のように入居後、室内の壁や天井にひびが発生するケースもみられます。結論から言うと危険なひび割れはマンションの天井など鉄筋コンクリートの構造体に直接壁紙が貼られている場合です。室内のひびは一般的な木造戸建住宅においては心配する必要はありません。
理由はひび割れの原因が下地に使用している石膏ボードの継ぎ目で発生している場合がほとんどのためです。木は外部の湿度や温度によって膨張・収縮を繰り返します。建物の構造に使用されている木材の膨張・収縮が繰り返される中で石膏ボードも動き、壁紙にひび割れが発生します。
対して鉄筋コンクリートの場合、木材ほど大きな乾燥収縮は発生せず、クロスがひび割れるほどの大きな膨張・収縮は発生しにくいです。クロスにひび割れを見つけたら構造体のコンクリートにひびが生えている可能性があるので注意しましょう。
より詳しく室内のひび割れについて学びたい人は以下のコラムをチェックしてみてください。
【参考コラム】
事例3.屋根から雨漏りの事例
続いては屋根からの雨漏りが発生した事例です。紹介する事例は築17年と比較的古い住宅ではありますが、施工不良によって発生している雨漏りがみられました。このように雨漏りといっても少しずつ漏れ出し、気づかないうちに劣化が進んでいたというケースもゼロではありません。
この事例を詳しく解説したコラムを載せておきますので興味があれば合わせて読んでみてください。
【参考コラム】
事例4.配管の接続不良による水漏れ
こちらは配管に接続不良があった欠陥事例です。浴室の配管がつながっていなかったため、床下に水が溜まってしまいました。
水漏れ事例は定期点検や異臭・カビの発生などで気づくケースが多くみられます。今回の事例は早期の段階で異変に気づき、インスペクションを依頼できたため被害は小さく済みました。しかし万が一気づかなかった場合はカビの発生や木材の腐朽で建物の寿命を早めてしまう可能性もありました。
こちらも調査時の様子をまとめたコラムがありますので、ご紹介しておきます。
【参考コラム】
事例5.配管のつまりによる水漏れ
配管のつまりによって水漏れが発生するケースもあります。水漏れの原因は配管の勾配が排水方向と逆向きになっていたため、配管につまりが発生していました。
今回は中古住宅のインスペクションで発覚した事例でしたが、新築でも十分起こりうる欠陥事例です。
配管の勾配は一般の方では判断しにくいため、ホームインスペクターなどの専門家へチェックを依頼するのがオススメです。
詳細は下記コラムで解説しています。ぜひチェックしてみてください。
【参考コラム】
さくら事務所コラム「中古一戸建てホームインスペクション現場事例 ~床下の水漏れ・不具合
事例6.小屋裏における構造欠陥天井裏の事例
普段目にすることが無い小屋裏。小屋裏にも欠陥が潜んでいる可能性があります。ご紹介する事例は金物の未取付け、小屋組の構造体が切り欠かれているケースです。
材料加工の不具合などが原因で小屋組の構造体を切り欠いて納めてしまった可能性が考えられます。現地で勝手に加工してしまう行為は設計図面との相違を生み出し、建物の強度低下につながる恐れがあります。
今回の事例は築年数が古い物件ですが、このようなケースは新築でも考えられるため注意しましょう。
当事例についてのコラムは下のリンクからご覧ください。
【参考コラム】
事例7.構造体の欠込み、換気扇ダクトの接続不良
先ほどの事例と同じく、こちらも小屋裏・天井裏の欠陥事例です。
当事例は設備配管に関わる欠陥事例です。本来設備配管は構造体を避けて配管するように計算し、施工されるのですが、写真のように構造体を切り欠いて配管してしまっています。構造体を切り欠いてしまうと「事例6」同様、設計通りの強度が発揮できません。
また、この物件では換気扇ダクトの接続不良も発覚しました。ダクトに隙間があると浴室の蒸気が小屋裏や天井裏に侵入してしまいます。結果、見えないところでカビや木材の腐朽が進行し建物や住人に被害を及ぼしてしまいます。
他の事例同様にコラムを紹介しておきます。
【参考コラム】
事例8.地盤沈下による建物の傾き
つづいては地盤沈下による欠陥事例です。
築12年の一戸建てを購入する際にホームインスペクションを依頼したところ、建物の傾きが発覚したケースです。
地盤沈下による建物の傾きで以下のような被害が建物に発生していました。
- 基礎のひび割れ
- 構造材(梁)の傾き
特に梁材の傾きは建物の倒壊に繋がりかねない危険な状態です。
この不具合を直すためには建物をジャッキアップして支え直す必要があり、とても大掛かりな作業となります。
物件の購入前にホームインスペクションを実施した結果、トラブル回避につながった事例です。
当事例は以下のコラムで解説されています。
【参考コラム】
さくら事務所コラム「築12年の中古住宅 建物の傾きで「どうする?」」
事例9.基礎工事後の穴あけとひび割れ
9つ目の事例は基礎に関する欠陥です。複数箇所にひび割れが見られました。基礎などのコンクリートに発生するひび割れは、構造に影響があるものと、そうで無いものが存在します。今回の事例はひび割れ幅が広く、構造的に影響があるひび割れでした。
上記に加えて配管を通すために基礎に穴を開けた箇所が見つかりました。穴あけ箇所は鉄筋が露出しており、構造に悪影響を及ぼしてしまう状態でした。露出した鉄筋にサビが発生するとコンクリートのひび割れを助長してしまいます。
早急な対応が必要な事例です。
【参考コラム】
事例10.床下断熱材のずれ、たわみ
写真は一階床下の状況を撮影したものです。写真を見てみると、白い発泡スチロールのようなものがずれ落ちているのが分かるかと思います。白い発泡スチロールのようなものの正体は床下の断熱材です。床下からの熱や冷気をシャットダウンするために床下全面に敷き詰められています。しかし、中には写真のようにずれ落ちているものや、完全に外れて床下に転がっているケースが見られます。
当然のことですが断熱材が外れていると、その部分から熱や冷気が部屋の中へ侵入するでしょう。また気温が低い冬の季節などは、部屋の暖かい空気が急激に冷やされ断熱が外れている部分の床が結露する可能性も考えられます。
建物の劣化を早めてしまう原因になりうるため、早めの対応がポイントです。
欠陥事例の詳細は以下コラムからご覧下さい。
【参考コラム】
さくら事務所「断熱材がずれてる?一戸建て内覧会で床下をチェックして分かること」
事例11.土台の切欠き
建物を支える土台に関する欠陥事例です。
木造住宅の土台は基礎から飛び出た金属の棒(アンカーボルトと呼びます)と緊結して固定します。そのために土台に穴を開けアンカーボルトを通す作業が必要です。しかし、基礎と土台の寸法に誤差が生じると写真のように穴あけ位置がずれてしまいます。当然ながら、このまま建物が建ってしまうのは望ましくありません。
場合によっては建物の力の伝わり方が変わり、構造材が劣化する速度が早まる恐れも十分考えられます。
工事が進むと隠れてしまう箇所のため、適切なタイミングで指摘・修繕を実施しなければなりません。
【参考コラム】
さくら事務所コラム「新築一戸建て工事中の現場で見つかる不具合」
事例12.外壁下地材の露出
最後の欠陥事例は新築工事の内覧会へ同行した際に発覚したケースです。
内覧会で写真のような部位を発見しました。この写真はサッシ横の外壁を下から覗き込む形で撮影した写真です。外壁の裏側に見える木材は通気胴縁と呼ばれる材料です。
現状のままでは外壁やサッシを伝って降りてきた雨水が、木材に付着する可能性が高い状態です。木材が乾かないうちに雨が降ってしまうと、常に湿潤状態となり、ゆくゆくは木材が腐ってしまう恐れも十分考えられます。
このようなケースが見られたら、被害が広がらないよう、早急に施工会社に修繕を、依頼すべきでしょう。
参考にインスペクションを行った際のコラムを紹介しておきます。
【参考コラム】
さくら事務所コラム「新築一戸建ての不具合事例~入居前に見つけよう!」
万が一住宅に欠陥が見つかった場合の対処法
「マイホームを購入したけど、住み始めてから欠陥が見つかった…」このような時、どのように対処すべきか分からない方が多いと思います。パニックにならないためにも、これから紹介する欠陥を見つけた際の対処法をしっかり理解しましょう。 具体的な対処法は以下の3ステップです。
1. 専門家へ相談
2. 建物調査の実施
3. 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の追求
専門家へ相談
欠陥が見つかった際は、まず専門家に相談して判断を仰ぎましょう。最初は施工会社に相談してみるのが良いでしょう。施工会社を通さずに修繕を行なってしまうと以降のアフターサービスを対応してくれない可能性もゼロではありません。
建物調査の実施
万が一施工会社が対応してくれないなどの状況に陥った際は、別の手段を講じる必要があります。別の手段とは具体的には欠陥箇所を明らかにし、法律に基づいて責任を追及する方法です。
- 建物状況調査
- ホームインスペクション
どちらも建物の欠陥を見つけるための調査ですが、検査項目が異なります。
将来起こりうる不具合を見つけ出し、適切にメンテナンスを行うにはホームインスペクションでの調査がおすすめです。
それぞれの違いについて詳しく知りたい方は以下のコラムもチェックしてみてください。
【参考コラム】
建物状況調査(検査)とは?ホームインスペクションとは何が違うのか?
契約不適合責任(瑕疵(かし)担保責任)で補修請求
建物調査で欠陥を明らかにしたら、法律に基づいて売主に責任を追及できます。住宅に欠陥が見つかった際、施主や買主を守るために契約不適合責任(瑕疵担保責任)と呼ばれる法律で定められた制度が利用できます。
追求方法 |
内容 |
追完請求 |
修補などの請求ができる |
代金の減額請求 |
追完請求をしても売主の履行に見込みがない場合は代金減額請求ができる |
損害賠償請求 |
売主の帰責事由がある場合に損害賠償を請求できる |
契約の解除 |
契約不適合の内容が重度の場合、契約解除が可能 |
新築時点での欠陥発生率はなんと8割!
冒頭でも述べましたが、実は新築時点での欠陥発生率は多いのが現状です。さくら事務所が2019~2020年にかけて大手ハウスメーカーや地元の工務店まで幅広く工事中の工程別不具合を集計・分析した結果、おおよそ8割近く発生していることが分かっています。
尚、以下のコラムでは「欠陥住宅を建ててしまう可能性があるハウスメーカーの見分け方」という観点で解説しています。気になる方は是非ご覧ください。
欠陥住宅にさせないハウスメーカーの見分け方は?正しい会社の選び方と対策を徹底解説
パターン別!欠陥住宅を購入しないための予防策
ここからは、以下3つのパターン別に欠陥住宅を購入しないための予防策を紹介していきます。
注文住宅、建売住宅・新築マンション・中古住宅といったパターンごとに、予防策が少しずつ異なるため、それぞれのパターンでの予防策を具体的に解説するので、ぜひ参考にしてください。
- 注文住宅の場合
- 建売住宅・新築マンションの場合
- 中古住宅の場合
注文住宅の場合
注文住宅を購入する際には、以下のポイントに注意することが重要です。
- 信頼できる施工会社の選定
- 第三者検査の実施
- 余裕のある工期の設定
- 仕様変更への慎重な対応
- 保証内容(契約不適合責任)の確認
依頼する施工会社の過去の実績や口コミを確認し、複数の会社から見積もりを取って比較検討することで、信頼性を高められます。また、第三者検査を実施することも有効です。建築会社が依頼する検査機関に加え、施主側からホームインスペクターを依頼することで、より透明性の高い検査が行えます。
急いで工事を進めると、細部にわたる施工不良が発生しやすくなります。時間に余裕を持ち、計画的に進めることで、品質の確保が可能です。
仕様変更は、慎重に対応する必要があります。設計段階で細部まで確認し、変更が必要な場合はその影響を十分に検討した上で進めることが求められます。
保証内容の確認も、不可欠です。契約不適合責任などの保証内容をしっかりと確認し、何か問題が発生した際に適切な対応が取れるようにしておきましょう。
建売住宅・新築マンションの場合
建売住宅や新築マンションを購入する際には、以下のポイントのチェックが必要です。
- 施工会社の実績確認
- 引渡し前の内覧会で不具合をチェック
- 保証内容の確認
必ず施工会社の実績を確認しましょう。過去のプロジェクトや評判を調べることで、信頼性や品質を把握できます。また、インターネット上の口コミや評価サイトも参考になります。
引渡し前の内覧会で、不具合をチェックすることも大切です。内覧会では外観や内装だけでなく、基礎や配管、電気配線などの見えない部分も確認しましょう。自分でチェックできるか不安な場合は、住宅の専門家であるホームインスペクターに同行してもらう方法があります。
保証内容の確認も必須です。建築会社ごとに保証内容が異なるため、契約書に記載された保証範囲や期間をしっかりと確認しましょう。特に欠陥が発見された場合の対応方法や修繕費用の負担について、確認しておくと安心です。
中古住宅の場合
中古住宅を購入する際は欠陥住宅を選ばないために、以下の重要なポイントへの注意が必要です。
- 物件の詳細情報を確認
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の確認
- リフォーム履歴の確認
- 住宅診断・ホームインスペクションの実施有無を確認
- 住宅瑕疵保険への加入
まず、物件の詳細情報をしっかり確認します。不動産業者から提供される情報だけでなく、自分自身でも調査し、周辺環境や物件の過去の履歴などを把握しましょう。
次に、契約不適合責任(瑕疵担保責任)について確認することが重要です。売主がどの程度の責任を持つか、契約書に明記されているかを確認し、万が一問題が発生した際の対応を事前に把握しておきましょう。
続いて過去にどのようなリフォームが行われたか、その際に使用された材料や工法についても詳しく調べることで、将来的な問題を予測しやすくなります。また住宅診断・ホームインスペクションの実施有無を確認し、必要であれば自分で専門家を依頼して詳細な検査を行うことをおすすめします。
最後に、住宅瑕疵保険への加入も検討しましょう。住宅瑕疵保険への加入により、購入後に発見された欠陥について一定の保証を受けることができ、安心して住み続けることができます。
欠陥住宅を防ぐにはホームインスペクションターなどを活用して、漏れのない調査を行おう
さくら事務所では、中古だけでなく新築住宅を購入する際にホームインスペクションを入れることを、皆様に強くお勧めしております。
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