台風シーズンに備える! 「一戸建てのひび割れ」3つのチェックポイント

  • Update: 2024-09-20
台風シーズンに備える! 「一戸建てのひび割れ」3つのチェックポイント

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住宅相談統計年報2023」によると、一戸建ての不具合に関する相談で全体の20%と最も多かったものが「ひび割れ」に関するものでした。とくに、外壁や基礎部分のひび割れに関する相談が多く見られたということです。

2024年8月末〜9月頭にかけて日本列島を横断した台風10号の記憶も新しいところですが、台風シーズンが本格的に到来する今後に向けて、一戸建てのひび割れをチェックしておきましょう。この記事では、チェックしておきたい3つのポイントを解説します。

1.外壁のひび割れ

外壁のひび割れは、ホームインスペクションでも必ず慎重にチェックするポイントのひとつです。

ひび割れの位置と雨漏りが発生する位置が異なることも

外壁のひび割れは、雨漏りに直結する要因です。しかし、ひび割れの位置と室内で雨漏りが発生する位置は、必ずしも一致しません。水は重力に従って下に流れるため、予想外の場所で被害が発生する可能性があります。

たとえば、2階の外壁のひび割れが要因で、1階で雨漏りがするケースもあります。したがって、確認する際はひび割れが見られる部分の内側だけでなく、下の方までくまなくチェックすることが大切です。

サイディングが変形する可能性もある

外壁のひび割れが見られるときに懸念されるのは、雨漏りだけではありません。ここ最近の一戸建ては、外壁材に「サイディング」が多く使われています。サイディングにひびが入った状態を放置すると、雨漏りのリスクに加え、サイディング自体が水を吸って膨張してしまうおそれがあります。

サイディングのメンテナンスは基本的に「塗装」ですが、変形してしまうとサイディングごと「交換」しなければならない可能性があります。当然ながら、交換には塗装以上の費用がかかります。

釘周りはひびが入りやすい

サイディングには、さまざまなグレードがあります。その中で、建売住宅によく使用される標準的なものが「14㎜厚」のサイディングです。

14㎜厚のサイディングは釘で打ち付けて施工していくため、地震や台風などで建物が揺れ動いたときに、釘の周囲にひび割れが発生する可能性が高くなります。目視で確認する際は、とくに釘周りを注意深くチェックしましょう。

2.屋根のひび割れ

屋根も、外壁と同様に雨水の浸入を防いでくれる大事な建材です。ただ、外壁と異なりご自身でひび割れのチェックをするのが難しい部分です。

屋根の状態の確認方法

屋根の状態の確認方法はいくつかありますが、ひとつは離れたところから双眼鏡で見る方法です。敷地条件にもよりますが、建物から離れていくと部分的に屋根が見えるポイントがあると思います。その地点から、双眼鏡などを使って表面をチェックしていきます。

2つ目の方法は、自撮り棒の先端にスマートフォンやデジタルカメラをつけて撮影する方法です。実は、ホームインスペクションでもこの方法で屋根の表面を確認することがあります。地面からではなく、最上階の窓から手を伸ばして撮影すると、1m程度の自撮り棒でも屋根の状態を確認することができます。静止画を撮るのは難しいため、動画を回してから棒を伸ばしていくのがいいでしょう。この方法だと比較的、広範囲のひび割れの有無をチェックすることができます。

ただし、2階や3階から手を伸ばして撮影することになりますので、身を乗り出さないようにしていただき、スマホやカメラの落下には十分ご注意ください。ベランダがある場合は、窓からではなくベランダに出て自撮り棒を伸ばしたほうが撮影しやすいと思います。

屋根裏の確認方法

ひび割れが見られる場合は、屋根裏を確認していきます。屋根裏は、最上階の居室やクローゼットなどの天井にある「天井点検口」から覗く形で確認します。

屋根裏に入ることができるお住まいもありますが、屋根裏は足下が不安定で、ささくれや先端の尖った釘などが出ている可能性もあるため、ご自身で入ることはおすすめしません。屋根裏は非常に狭い空間ですので、ここでも役立つのが自撮り棒です。自身で確認することが難しい場合は、インスペクターなどのプロに依頼しましょう。

3.ベランダ・バルコニーの防水加工のひび割れ

上の画像はバルコニーの天井で発見されたひびです。基本的に、ベランダ・バルコニーの床は防水加工されているため、雨が降っても水を弾いてくれます。しかし、撥水・防水の効果は永久的に続くわけではなく、施工から十数年すると劣化し、コーティングにひびが入ります。次第に撥水・防水の効果は落ちていき、ひびから雨水が浸入することで、ベランダやバルコニーの表面の傷みにつながります。

ベランダやバルコニーの床面は、特別な道具を使わずにすぐに確認できます。まず床面をチェックし、表面に細かな傷が見られる場合は、その裏側、あるいは下層階の天井に染み跡がないかチェックしましょう。

ベランダやバルコニーにタイルやデッキを置いている場合はとくに、あまり床をまじまじと見ることもないと思います。タイルの下や排水口の溝などにごみがたまっていると排水機能が落ちますので、定期的に掃除し、そのタイミングで表面がひび割れていないかもチェックしてみてください。

ひび割れが見られる場合は早めのメンテナンスを

外壁や屋根、ベランダ、バルコニーの床面の表面にひび割れが見られる場合は、基本的に塗装でメンテナンスします。一方、ひびが深い場合や変形が見られる場合は、建材の交換やコーキング材の充填などが必要になることがあります。

いずれの箇所も、軽微なひび割れが見られる時点で気づくことができれば、被害やメンテナンスにかける費用を最小限に抑えられます。ご自身で確認することが難しい場合や、ひび割れだけでなく雨漏りが見られる場合は、ホームインスペクターやリフォーム業者に相談しましょう。

ホームインスペクター 友田 雄俊
監修者

さくら事務所 執行役員
プロホームインスペクター、二級建築士

友田 雄俊

大手リフォーム会社にて、木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。
外壁塗装などのメンテナンス工事から、フルリノベーションまで幅広く手掛ける。
その後、株式会社さくら事務所に参画。