太陽光パネル付き中古住宅を購入する際に注意すべき 3つのポイント

  • Update: 2024-07-31
太陽光パネル付き中古住宅を購入する際に注意すべき 3つのポイント
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さくら事務所 編集部

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

2022年に東京都が環境保護条例を改正し、2025年4月以降に建築の確認済証を交付された住宅には、大手メーカーなどに太陽光パネルの設置を義務付けるなど、太陽光パネル付き住宅が注目を集めています。

日本では2010年前後から太陽光パネルを設置する戸建住宅が増えてきました。そこから約10年以上経過するなかで、今後さらに太陽光パネル付きの中古戸建が市場に流通することが考えられます。

太陽光パネル付き中古住宅は、昨今の電気代の高騰で、例えば日々の電気代を抑制できたり、余った電気を売ることが可能になる経済的なメリットなどがアピールポイントとして挙げられるケースが多くあります。

アピールポイントがある一方でメリットばかりではなく、注意するべきポイントもあります。
ここでは太陽光パネル付き中古住宅を購入する際に注意するべき3つのポイントについて解説していきます。

ポイント1 太陽光発電にもメンテナンスが必要な箇所がある

まず屋根に取り付けてある太陽光パネル自体は、メンテナンスが必要ないと言われることが多いです。ここで最も注意するべき点としては、太陽光パネルではありません。

太陽光パネルで発電した電気はそのままでは利用できず、その電気を家庭で使えるようにするにはその電気を変換するパワーコンディショナーという機器が必要になります。このパワーコンディショナーという機器は、一般的な家電同様に約10〜15年周期で交換が必要とされています。

そのため、太陽光パネルの設置が増えてきた2010年前後から既に10年以上が経過しているので、太陽光パネル付きの中古住宅購入後すぐにパワーコンディショナーを交換する工事が発生する可能性もあるということに注意が必要です。

パワーコンディショナーを交換する費用は、1台あたり20〜30万円程度の費用が発生します。屋根に設置されている太陽光パネルの数が増えるとそれに応じてパワーコンディショナーの台数も増える可能性があります。そのため、まずパワーコンディショナーの交換時期などは太陽光パネル付中古住宅を購入する際は、しっかりと売主側に確認しておく必要があります。

ポイント2 太陽光パネルの下にある屋根材のメンテナンス時の注意点

屋根をメンテナンスする際の方法は

1.塗装
2.カバー工法
3.葺き替え

の大きく3つの方法が考えられます。

上記のうち、2と3に関しては、屋根材自体を物理的に取り替えたり、今の屋根材の上に新しい屋根材をカバーしたりするため、屋根材の上に取り付けてある太陽光パネルに関しては脱着しなければなりません。太陽光パネルを脱着するにあたっては大きく2つの注意点があります。

まず太陽光パネルを脱着する作業に費用が発生します。屋根に取り付けてある太陽光パネルの枚数によりますが、基本的には20〜30万円程度の費用が発生するといわれています。そのため屋根材のメンテナンス費用に加えて、太陽光パネル脱着の費用もかかることも頭に入れておく必要があります。

2点目の注意点は、太陽光パネルを脱着することで、もともと太陽光パネルに付けられている保証が外れてしまう可能性があります。まずもともと太陽光パネルを付けた業者に脱着作業をお願いできる場合は、そのまま最初の保証が有効という可能性があります。しかし違う業者に脱着作業を依頼した場合は、もともと付いていた保証を引き継ぐことは基本的にはできません。そのため後々トラブルが発生した場合、誰もその状況を保証できないということになりえます。

もしカバー工法や葺き替えでの屋根のメンテナンスを検討されている場合は、太陽光パネルを最初に設置した業者に連絡し、脱着作業をお願いすると良いでしょう。

また、塗装による屋根材のメンテナンスを行う場合には、一般的に太陽光パネルで隠れている部分以外の範囲だけを塗装することが多いため、上記のような脱着作業を伴わなくなります。しかし、塗装の場合は塗料を扱うため、塗料が太陽光パネルに付着しないよう注意することが重要です。太陽光パネルに塗料が付着することで、その部分で正常に発電ができなくなる可能性や、部分的に熱を帯びやすくなるなどして故障の原因になる可能性も考えられるためです。また作業中に物理的に太陽光パネルを破損しないように注意することも大切なため、屋根材のメンテナンスを担当する業者としっかりすり合わせをすることが重要です。

ポイント3 太陽光パネルの名義人変更が必須

太陽光発電で余った電気を売る制度は「固定価格買取制度(FIT)」と呼ばれ、太陽光パネルを設置している家庭の多くでこの制度を利用しています。この「固定価格買取制度(FIT)」を利用するためには、誰がどの太陽光パネルを所有しているのか届け出をして登録することになっています。そのため太陽光パネルが設置されている中古住宅を購入する場合、太陽光パネルの所有者も変わるため、名義人を変更する必要が生じます。ただこの名義人変更が少し煩雑なため注意が必要です。

変更者だけが届け出を出せば完結するものであれば簡単ですが、例えば前所有者である売主の実印とその印鑑証明が必須なため、売主の協力が必須であることと、状況次第では手続きが完了するまで3ヶ月かかった事例もあります。この点に関しては売主であったり不動産仲介サイドも知らない場合も考えられるため、しっかりと確認する必要があります。

最後に

太陽光パネル付中古住宅はこれからどんどんと市場に流通していく段階と考えられるため、まだ不動産仲介でも取り扱いに慣れていない可能性も考えられます。そのため太陽光パネル付中古住宅のメリットだけに耳を傾けるのではなく、今回解説したポイントに関しても十分に売主・仲介側とすり合わせをして、皆が納得する不動産取引を実現することが大切です。

ホームインスペクター 友田 雄俊
監修者

さくら事務所 執行役員
プロホームインスペクター、二級建築士

友田 雄俊

大手リフォーム会社にて、木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。
外壁塗装などのメンテナンス工事から、フルリノベーションまで幅広く手掛ける。
その後、株式会社さくら事務所に参画。