【徹底解説】家の基礎にひび割れを発見…危険な症状の見分け方や対処法を紹介

  • Update: 2022-12-19
【徹底解説】家の基礎にひび割れを発見…危険な症状の見分け方や対処法を紹介

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

「マイホームの基礎にひび割れを発見したけど、大丈夫なの?」
「だんだんひび割れが広くなっている気がするが、放置していても大丈夫?」
「直す方法はある?直すにしても費用が高くつきそうで不安…」

このような悩みにお答えしていきます。

大切なマイホームの基礎にヒビが入っていたら誰もが心配するはずです。しかし、ひび割れには危険な症状とそうでない症状が存在します。危険なひび割れにもかかわらず放置しているとマイホームの寿命を大きく縮めてしまうことも…。

そこで、この記事では以下の内容について解説します。

  • 危険な基礎のひび割れ症状6選
  • 基礎のひび割れが発生するメカニズムと4つの主な原因
  • 基礎のひび割れで行われる4つの主な補修方法と費用相場
  • 危険度の高いひび割れを見つけた際の対処法

この記事を読んで、危険なひび割れの見極め方をマスターし、大切なマイホームを守れるようになりましょう。

中古一戸建てホームインスペクション(住宅診断)

危険な基礎のひび割れ症状の見分け方6選

放置すると危険なひび割れの症状には、以下のような種類があります。

  • 基礎のひび割れ幅が0.3mmを超えている
  • 基礎のひび割れが一箇所に集中している
  • ひび割れが基礎を縦断するように走っている

それぞれの具体的な症状について解説します。

基礎のひび割れ幅が0.3mmを超えていたら要注意

基礎のひび割れ幅が0.3ミリを超えていたら、放置せずに適切な対処をしましょう。ひび割れ幅が一定基準を超えると、雨水が入り込んでコンクリート内部の鉄筋を腐食してしまい耐久性を低下させます。そのため品格法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)や建物状況調査の基準でもひび割れ幅が定められており、それを超えると危険と判断されます。

また、基礎のひび割れは幅だけではなく深さにも注意が必要です。宅地建物取引業法で定められた「建物状況調査」の基準では、深さが20mm以上の欠損は劣化事象と判断されます。

一戸建て住宅をはじめとする基礎は化粧モルタルなどで覆われていることがあり、表面のひび割れ幅だけを測定してもどこまで影響が及んでいるのか判断できません。そこで、基礎の本体部分までひび割れているかを測定するために、深さを調べるのが一般的です。さらに、ひび割れの数や量なども併せてチェックし、コンクリートの劣化状況を評価します。

なお、ひび割れ測定は、以下の2点の道具を用意すると自身でも調査可能です。

  • クラックスケール
  • ピアノ線

ただし、ひび割れが細く、ぐにゃぐにゃと曲がっている場合は正確には測れないため、注意しましょう。

基礎のひび割れが一箇所に集中している

基礎のひび割れが一箇所に集中している場合も早急な対処が必要です。このような現象が見られると基礎が何らかのダメージを受けている可能性が高く、設計での想定を超えた負荷が部分的に発生していると考えられます。

また地盤沈下(不同沈下)の初期症状であることも考えられるほか、換気口といった開口部であれば補強不足の恐れもあり得ます。

目安としては、1m以内に3つ以上のひび割れが発覚した場合は、何かしらの負荷がかかっている証拠です。一度、専門家の診断を受けることをおすすめします。

ひび割れが基礎を縦断するように走っている

ひび割れが基礎を縦断するように走っている場合も、速やかに適切な対処を行いましょう。

上下に走る縦方向のひび割れの多くは温湿度の変化による乾燥収縮が主な原因であり、構造への影響はありません。しかし、ひび割れ幅の上側が広がっている場合や、基礎の上から下まで縦断している場合は耐久性を低下させる恐れがあるため早急な対応が必要です。

基礎の劣化や地盤沈下によって発生している可能性もあることから、速やかに専門家の診断を受けることをおすすめします。

横方向・斜め方向に伸びている基礎のひび割れ

横方向に走るひび割れは、要注意です。この場合は、施工や設計の不良で、内部の鉄筋などが影響して何らかの負荷がかかり、基礎の耐久性を損ねている可能性があります。ひび割れの状況と対処法を専門家に見極めてもらうことをおすすめします。

基礎のひび割れの雨染みがある

天候に関わらず、ひび割れに濡れたような雨染みがある場合は、コンクリート内部の奥深くまで水分が浸透しています。コンクリートが常に湿気にさらされているので、鉄筋が錆びるのは時間の問題です。もし、ひび割れから錆のような茶褐色のシミが浮き出しているようであれば、すでに鉄筋が腐食している可能性が大きいです。

雨染みが進行すると、腐食した鉄筋が爆裂し、基礎に重大なダメージを与えるだけでなく、湿気によってカビやシロアリなどの二次被害が発生している恐れもあります。早急な処置が必要なひび割れです。雨染みの予防には、基礎に塗膜を施すなどの定期的なメンテナンスが有効です。

基礎表面が剥がれ落ちている

内部の鉄筋が錆びて膨張すると、内部のコンクリートが押し出されて、表面のコンクリートが剥離や滑落します。構造上の強度はほぼ期待できないほど、基礎が大きなダメージを受けている状態です。放置すれば、不同沈下など建物全体に影響を及ぼしかねず、大規模な補修が必要になります。

このほか、塗装の中断や塗り直しによって、塗膜の継ぎ目(縁)に生じる「縁切りクラック」は、外壁に多くみられるひび割れです。

基礎のひび割れが発生するメカニズムと5つのおもな原因

コンクリートのひび割れは、引張力によって起こります。基礎に使われるコンクリートはセメントと水の化学反応によって固まり、この過程で残った水や化学反応で発生する水和熱が環境の変化を受けることでコンクリートの体積が収縮・膨張します。

しかし、コンクリートは壁や骨材などによって固定されているため自由に変形できず、引張力が生じてひび割れが発生する仕組みです。

なお、このメカニズムが起こる主な原因は以下の5つです。

  • 乾燥収縮
  • 温度変化
  • 鉄筋の被り厚さ不足
  • 不同沈下や地震によるゆがみ
  • 経年劣化によるコンクリートの中性化

ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。

乾燥収縮

発生頻度がもっとも高く、おもに、コンクリートに含まれる余剰水が蒸発することで起こる、微細なひび割れ(幅0.2㎜以下)です。内部コンクリート打設後初期にあらわれはじめ、コンクリートの特性上、やむを得ない現象とされています。風通しの良い乾燥した箇所に発生しやすい傾向があります。

温度変化

おもに施工精度によって発生するひび割れです。物質は温度変化によって膨張・収縮する特性がありますが、コンクリート打設時に発生する水和熱は、硬化にともなって「上昇=膨張」したのち、「下降=収縮」します。

この過程で、外気による内部温度の急激な変化や凍結、引張力が発生しやすい状態にあると、コンクリートの内外にひび割れが発生しやすくなります。

鉄筋のかぶり厚さ不足

これも、おもに施工精度によって発生するひび割れです。コンクリートを補強するために内部に施工されている鉄筋を覆うコンクリートの厚さ(かぶり厚さ)が不足すると、鉄筋が施工されている一定間隔でコンクリート表面にひび割れが生じることがあります。

10cm,15cm,20cmなどの等間隔でひび割れが見られる場合にはこの原因である可能性が高いでしょう。床下の基礎底盤(床面)に現れることも多い事象です。

不同沈下や地震によるゆがみ

軟弱な地盤では、建物の荷重や地震により、家屋が傾くリスクが大きくなります。こうしたゆがみによって荷重が局所に偏ると、基礎に深刻なひび割れを発生させる恐れがあります。地震による影響は、悪条件が重ならなければ、さほど心配する必要はありませんが、経年劣化や大きな揺れ、度重なる振動で、ダメージが大きくなることもあります。

いずれも、ひび割れの状態によって家屋が倒壊する危険があり、早急な対処が必要です。

経年劣化によるコンクリートの中性化

コンクリートは、水和反応で生じる水酸化カルシウムを多く含むため、強アルカリ性です。しかし、コンクリートは吸水性が高く、成分の水酸化カルシウムは、雨水や大気中の二酸化炭素と結合してゆきます。こうした経年劣化により、コンクリートのアルカリ度が低下し、中性へと変質する現象が起きます。

この中性化により、コンクリート内部の鉄筋に錆びが生じます。さらに錆が進行すると、鉄筋の膨張力で深刻な爆裂(ひび割れ)を発生させます。

基礎のひび割れで行われる4つのおもな補修方法と費用相場

基礎のひび割れと言っても、その状態によって対処法はさまざまです。

代表的には以下の4つの補修方法があります。

補修方法

費用相場

工期の目安

シール工法

ひび割れの表面にシール材などを充填する

1mあたり数百円~

1〜2日程度

Uカット(Vカット)シール材充填工法

脆弱となったコンクリート部分をU字型もしくはV字型で除去し、補修材を注入する

1mあたり4,000~6,000円ほど

1~2日程度

ビックス工法(低圧注入工法)

ひび割れの奥深くまで補修材を充填する

1mあたり10,000~20,000円ほど

2日程度

アラミド繊維シートとエポキシ樹脂のハイブリッド工法

基礎全体にアラミド繊維シートをエポキシ樹脂で接着する

1mあたり20,000円前後~

1~3日程度

基礎のひび割れ補修の種類と費用相場・工期の目安

それぞれの詳細について解説します。

シール工法

ヘアークラックなどの軽微なひび割れに採用される補修です。ひび割れ表面の隙間にシール材(シーリング)などを充填します。表面の処理だけなので、ひび割れの内部まで充填剤は注入されておらず、大きなひび割れや再発の恐れがあるひび割れには適していません。

費用の相場は1メートルあたり数百円程度~と比較的お手軽です。

Uカット(Vカット)シール材充填工法

比較的幅が広く深いひび割れに用いられる補修です。漏水や剥離した脆弱なコンクリートを、専用カッターでU字型(またはV字型)に除去した後、健全なコンクリートにシール材(シーリング)やエポキシ樹脂などの補修材を注入して(深さ15ミリ程度)、表面をモルタルで平らに仕上げます。

費用の相場は1メートルあたり4,000~6,000円台と幅広く、工期は補修の規模により1~2日程度とされています。このほか、必要に応じて補修跡を目立たなくする、パターン調整などの費用が加算されることもあります。

ビックス工法(低圧注入工法)

構造上問題のある重度なひび割れに採用される補修です。専用の器具でひび割れに加圧しながら、ひび割れの奥深くまでエポキシ樹脂などの補修材を充填します。健全なコンクリートと同等の強度まで回復可能とされ、重度なひび割れで劣化したコンクリートの補強に適した方法です。

費用は1メートルあたり10,000~20,000円と比較的高額で、工期は補修の規模によりますが2日程度とされています。

アラミド繊維シートとエポキシ樹脂のハイブリッド工法

ひび割れ補修というより、基礎全体の補強を目的とした工法です。剥離や爆裂など重度のひび割れを起こした基礎の復元と劣化防止に非常に有効です。基礎全体に、高強度で軽量なアラミド繊維(炭素)シートをエポキシ樹脂で接着させることで、両者がもつ特性と強度を相乗的に高める工法になります。アラミド繊維シートは引張力に強く、地震など横揺れの耐震性向上に加え、エポキシ樹脂を基礎全体に塗布することで、コンクリート表面の保護と強度の向上も得ることができます。

建物の解体や重機が不要で、床下に進入するだけで施工が可能なため、基礎の補強工事としては比較的低予算になります。1メートルあたり20,000円前後~、工期は1~3日程度とされています。

新築なのに基礎にひび割れが?

こうした基礎のひび割れは、中古住宅で見られるものと思われる方も多いかもしれませんが、実際には乾燥収縮や鉄筋のかぶり厚さ不足に伴う基礎のひび割れは、新築時点で発生していることが珍しくありません。物件の引き渡しを受ける前であれば、スムーズに建築会社やハウスメーカーに補修対応してもらうことが出来ますので、引渡し前にしっかりとチェックをしておきましょう。

こうしたひび割れは、日陰など暗くなっていると気付きにくいため、明るい時間に確認したり、明るいライトで照らしながら確認するなどの工夫が必要です。場合により、第三者が行うホームインスペクションを利用することも有効でしょう。

参考コラム:新築のホームインスペクションは無駄じゃない!理由を住宅診断士が徹底解説

危険度の高い基礎のひび割れを見つけた際の対処法

危険度の高いひび割れを放置すると雨水がコンクリート内部に入り込み、内部の鉄筋を錆びさせます。その結果鉄筋が錆によって膨れ上がり、内部からコンクリートが破壊されていきます。その結果基礎の耐久性が著しく低下し、場合によっては家屋の傾斜や不同沈下を招く恐れがあります。

そのため、危険度の高い基礎のひび割れを見つけたときは、以下のような対処が必要です。

  • 地震によるひび割れかどうかで依頼先を判断する
  • 地震と思われる場合:保険会社(火災保険・地震保険)へ相談
  • 地震以外:施工会社へ相談

それぞれの対処法について解説します。

地震によるひび割れかどうかで依頼先を判断する

まず、基礎のひび割れが地震によるものかどうかを判断しましょう。ひび割れが発生した原因によって修復方法やその依頼先が異なります。

ただし、基礎のひび割れが地震によるものと判断されるのは、基本的に木造住宅のみです。鉄筋コンクリート造などは補償の対象とはならないケースが多いため注意してください。また震度1~2程度の揺れであれば、地震によるひび割れと判断される可能性は低いです。ひび割れは地震以外の原因でも起こり得ることから、必ずしも補償されるわけではない点に注意が必要です。

地震と思われる場合:保険会社(火災保険・地震保険)へ相談

地震によって基礎のひび割れが生じた場合は、保険会社(火災保険・地震保険)へ相談しましょう。相談する際の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 損害状況を確認する
  2. 保険会社へ連絡する
  3. 保険会社から必要書類が送付される
  4. 保険会社に届いた必要書類を提出する
  5. 鑑定人によって被害状況を確認してもらう
  6. 保険金の算出および確認が行われる
  7. 保険金を受け取る

地震によってひび割れが起きた場合は損害状況を確認し、必要に応じて写真を取っておきます。物的証拠を残しておけば、損害状況をより詳しく説明できます。なお、自分で損害状況を確認しにくい場合は、専門の業者への依頼もひとつの手です。

そして必要書類を提出したら保険会社から委託された鑑定人による現地調査が行われるため、地震によってひび割れが生じた旨をしっかりと説明しましょう。その後、損害状況に応じた保険金が保険会社より支払われるのが一般的です。

地震以外:施工会社へ相談

基礎のひび割れが地震以外によって起きた恐れがあるときは、施工会社へ相談しましょう。理由は施工の不具合が原因かどうかを判断してもらう必要があるからです。

もし施工の不具合によってひび割れが生じている場合は、瑕疵(かし)保険で対応する可能性もあります。瑕疵保険とは、目に見えない不具合(瑕疵)によって起きた損害を保証する保険のことです。住宅の検査と保証がセットになっており、損害に応じた保険金を受け取れます。

瑕疵保険の詳細は以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

参考コラム:瑕疵保険って何?意外と知られない中古住宅のお得な購入方法も解説

「施工会社から補修方法について説明を受けたけど、この方法で本当に大丈夫だろうか?」

といった不安を感じている人は、専門家によるセカンドオピニオンの利用もひとつの手です。第三者の立場から専門的なアドバイスや助言をもらえるため、感じている不安を和らげられます。

ホームインスペクションの活用で住宅欠陥のリスクヘッジを

ここまで読み進めてくださった方は、戸建を購入する際は、地盤や基礎の状態もしっかりチェックしておく必要性を実感されたのではないでしょうか。コンクリート基礎の劣化は、家屋の傾斜やシロアリなどの二次被害にとどまらず、悪条件が重なれば家屋の倒壊を招く恐れもあります。定期的なチェックと適切なメンテナンスで、不安材料を早期に摘み取っておくと、安心快適な状態で建物の長寿命化を図れるだけでなく、資産価値も維持することができます。

とくに基礎のひび割れは、見た目では判断しにくい不安要素のひとつです。中古戸建に限らず新築戸建の購入を決断されたら、専門家に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することをおすすめします。

さくら事務所では、お客様に安心と安全を提供する、経験豊かな信頼できるホームインスペクターをご紹介しています。まずはお気軽にご相談ください。

ホームインスペクター 友田 雄俊
監修者

さくら事務所 執行役員
さくら事務所 プロホームインスペクター
さくら事務所 住宅診断プランナー

友田 雄俊

大手リフォーム会社にて、木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。
外壁塗装などのメンテナンス工事から、フルリノベーションまで幅広く手掛ける。
その後、株式会社さくら事務所に参画。