長く続くコロナ禍の中でソーシャル・ディスタンスを保ちましょうという考え方が定着してきた昨今、突然ですが、おうちの正しいディスタンスについて考えたことはありますでしょうか。まもなく迎える新年度。3月から4月は引越しのシーズンでもあります。また年度の節目に大型家具や家電を買い替えるお宅も多いかと思います。
今回は、さくら事務所のホームインスペクターたちが実際に耳にした「壁と家具・家電などとのディスタンスに関する失敗あるある」即ち「そーなる!?ディスタンス」の事例を集めてみました。しっかり採寸もして、目見当では「入るはず」「オシャレになるはず」が、おさめてみたら「そーなる!?」となることはありませんか?
事前に注意して採寸していれば防げることはたくさんあります。また、まさにこれから家を建てる方も必見です。自分の理想のマイホームを作るために、家と家具とのディスタンスを正しく採寸する方法をプロのホームインスペクターがお教えします。
①カーテンサイズ ≠ 窓のサイズ
窓や窓枠の大きさを測ろうと思っていませんか?
実は、一般的には測るべきは「カーテンレールの幅」「カーテンレールのランナー」から腰高窓/出窓/掃出し窓等、窓の種別による総丈。カーテンレールやフックの位置・形状によって異なります。採寸違いをそのまま利用した場合、見た目に不格好でなかったとしても、長すぎればカーテンが床を引きずってホコリを集めてしまったり、短すぎると床が日焼けしたり冬場は冷気が侵入したりといったことも起きがち。たかがカーテンと侮るなかれ、と言えそうです。
カーテンは、カーテンランナーにフックで取り付けるタイプ以外に、カーテン自体をカーテンレールに通す「タブカーテン」「ハトメカーテン」や、上下に動かすシェードタイプなどもあり、これらはカーテンレールを測るのか、窓枠を測るのか、それぞれ異なります。
したがって、予め発注するお店に測り方を聞いておくか、掛けたいカーテンのイメージを決めておき、「シェード カーテン 測り方」といった検索で情報を得ておくのがおすすめです。
②搬入経路に思わぬ障害物
冷蔵庫やドラム式洗濯機など、大型家電を搬入する際、防水パンや設置したい場所の寸法は必ず採寸しますが、盲点は搬入経路の出入り口や階段。
玄関ドアや洗面室入口の実寸を測るとき、ドアの厚み、取っ手の出っ張りなどをを忘れてしまいがちです。枠の内寸ではなくドアを開き、一番狭い場所の幅✖️奥行き✖️高さをイメージして測りましょう。なお、階段の幅が狭めの一戸建てでリビングや脱衣所が2階という間取りは、階段を通過できない場合、ベランダ・二階の窓からクレーン搬入となり、思わぬ出費(買い替え時・退去時にも負担)となりますし、搬入できずに返品となることもあります。
大型家電を購入するときは、予め玄関外から置く場所までの経路の「一番狭い幅」を測っておきましょう。
③天井高はアタマに入っていました
天井高は頭に入っている方が多いせいか、設置場所の高さを改めて測らずに大物家具を購入してしまうケースがあるようです。
少しでも梁がかかると、設置場所の再検討を余儀なくされます。間取り図では下がり天井の位置や寸法表示が省略されていることもあるので、壁際に背が高い家具を置く場合は、事前に実際の建物で高さを計測しておきましょう。
なお、下がり天井は、照明器具選びにも影響が出ることもあります。シーリングライトをいざ取り付けようと思ったら、固定器具と下がり天井の距離が近すぎてぶつかってしまったケースは珍しくありません。そのほか、壁際の飾り木枠などもシーリングライトにぶつかってしまうケースがあるので、天井の照明取り付け器具と壁までの距離も、現地で測っておくと安心です。
④全部巻き上げてもブラインド(目隠し)
窓用に木製ブラインドを注文。寸法は合っていたものの、物がしっかりしているだけにブラインドに厚みがあり、「たまり」(ブラインドを開けた時に上部にたまるブラインド板)の長さが20㎝も。
まさかの「窓が一部Blind(隠れてる)」に!採光や視界が想定より狭くなります。巻き上げた時の見え方も、事前に確認したいですね。
⑤巾木(はばき)に阻まれて
三方、囲まれた冷蔵庫置き場で、壁の内寸を測り、安心して設置。…のはずが!壁の足元に取り付けられた「巾木(はばき)」の存在に後から気づき、結局冷蔵庫がギリギリ入らないというケースがありました。
昨今増えた作り付けワークスペースなどに、シンデレラフィットの家具を買う際なども、巾木の有無を確認し、ある場合には巾木の表面から内寸を測るように注意しましょう。
⑥愛車はわがままボディだった
自宅駐車場に車止めを設置し、いざ愛車を停めてみると車体が収まりきらなかった…。まぁいっか、では看過できません。再工事か、車の買い替えか…。痛い出費となりそうです。
車の全長や幅と駐車場スペースの寸法は事前にしっかりと確認しておきましょう。
⑦そのすき間、コンセント差せますか?
間取り図で家具配置を検討し、いざ設置すると、接する壁にコンセントがあり、家具とプラグが干渉。配置を二次元で決めてしまう落とし穴です。
間取り図で電源・LAN配線などが書かれている場所は、プラグの幅(3センチ程度)分はすき間を開けることを計算に入れておきましょう。コンセントを差して家具を無理やり押し込むのはプラグの根元を傷つけます。コロナ以降、タコ足火災増加傾向もあり、コンセント周りは常に掃除しやすいオープンな環境が望ましいです。
⑧新居は右開き?左開き?
スペースだけを見て設置場所を決めてしまいがちですが、場所によっては扉が壁などに当たり、完全に開かず半開き仕様に。前の家では便利に使えていたのに周りの家具の位置が反転するとそうはいかなくなることも多いです。そうなると半開きで使い続けるか、逆開きに買い替えるしかありません。
ドラム式洗濯機にも同様のワナがあります。冷蔵庫やドラム式洗濯機は、設置位置と扉の開き勝手(方向)の相性を考えておきましょう。
⑨近すぎるコンセントとガス台
長引くおうち時間を楽しくするために、便利なキッチン家電が数多く出ています。レシピを検索するタブレットの充電など、必要なコンセントは増える一方。増設したいところですが、火元近くはお気を付けください。
そもそもコンロのすぐ近くには「コンセント類」を設置しないという消防に関する規定があります。万が一コンロの端から15センチ以内に設置されている場合には延焼しないようコードを不燃モールディングで固定したり不燃カバーなどで覆う対策が必要です。
⑩一家団らんの食卓に、したたる雫
ペンダントライトをダイニングテーブル近く、低めに吊り下げるインテリア。ホットプレートやカセットコンロの出番が多い食卓には、馴染みにくいかもしれません。
お鍋や焼肉など、蒸気が上がるとそのままペンダントライトからしずくとなって戻ってきてしまいます。「インテリアも譲れない」場合は、テーブルから蒸気が出るメニューのときだけ、ダイニングテーブルごと、民族大移動できるスペースを考慮して、家具選びしておくと対策になりそうです。またはライトのコードを短くしてテーブルとの距離を十分にとれば解決することもあります。
まとめ
ここまで数多くのお客様と日々接してきているプロのホームインスペクターが、実際に耳にした「そーなる!?ディスタンス」事例を見てきました。みなさんも1つくらい経験したことのある事例があったのではないでしょうか。
さくら事務所の新築一戸建て引き渡し前チェック(内覧会立会い・同行)では、ホームインスペクションだけでなく、お客様とのコミュニケーションの中で、居住後に関する相談にも対応しています。もし何か不安なことがあれば担当ホームインスペクターにご相談ください。