地震のキホン・震度とマグニチュードについて徹底理解
地震のニュースや速報を見ていると、「地震の規模を示すマグニチュードは4.0、千葉県北西部で震度3を観測しました」などと聞くことも多い、地震の震度とマグニチュード。震度7やマグニチュード7.0など、ちょっと似たような数字であることも。数字が大きければ規模も大きい?震度8はある?など、地震の大きさに関する数字だということはなんとなくわかっていても、どういう数字か説明が難しいこともありますね。ここでは、緊急地震速報や地震のニュースを読み解く際や、地震の数字の目安を考える際に参考となるように、震度とは?マグニチュードとは?について、様々な公的資料をもとに、事例を紹介しつつ基本から深堀りまで徹底解説します。、
マグニチュードとは?:「地震の規模」、1つの地震に1つだけ
マグニチュードとは、「地震そのものの規模」を示します。マグニチュード(M)4.8や7.1など少数点以下1位までで示され、一つの地震に対して、一つの数字しかありません。数字が大きいほど大きなエネルギーをもった地震であるため、大きなゆれを起こす地震であるといえます。マグニチュード7.0以上の地震は大地震、マグニチュード8.0前後より大きい地震は深刻な被害をもたらすことが多く、巨大地震と呼ばれることがあります。海底が震源の地震の場合、マグニチュード7.0前後より規模が大きく、震源の深さが40kmより浅い地震が起きると、被害を及ぼす津波が発生することがあります。
マグニチュードと震度のイメージ(地震本部HPより)
それでは、どのくらいの規模(マグニチュード)の地震で被害が発生するのでしょうか。気象庁と消防庁が 28年間の地震(地殻内で発生したマグニチュード4以上)を取りまとめたデータでは、マグニチュード5前後から大きくなるほど負傷者が増え始め、マグニチュード6.0で死者が発生、マグニチュード6.4以上では必ず人的被害が発生する結果となっています。震源の場所や深さなどによりますが、おおむねマグニチュード6.0以上の地震が発生した場合、被害が多発するような地震になりやすいことを示しています。
陸が震源で震源の深さが浅いと、人が住んでいる場所の近くで揺れが発生することになります。震源からの距離が近いほど揺れ(震度)が大きくなりやすいので、被害が大きくなる傾向があります。同じ規模の地震があった場合、震源が沖合の海(主に海溝型地震)と陸域(主に活断層型の地震)では震源からの距離から陸域で起きた地震でゆれによる被害が大きくなりやすいです。
震源がどこか(都市などから近いか)、また震源の深さがどれくらいか(10㎞などはごく浅く、大きな被害につながりやすい)も着目してください。
マグニチュードと被害の関係性(消防庁HPより)
発生した地震の規模(マグニチュード)が大きかった地震には、どのようなものがあるでしょうか。1900年以降の世界の地震の規模ランキングは以下の通りです。最大の地震は1960年に南米チリで発生したチリ地震で、マグニチュード9.5でした。この地震では巨大な津波が発生、太平洋を越えて23時間をかけて日本に押し寄せ、チリ地震津波として142名の被害(内閣府による)をもたらしました。次に1964年にアラスカ湾で起きたアラスカ地震でマグニチュード9.2、3番目が2004年のインド洋大津波をもたらしたインドネシア・スマトラ島沖地震でマグニチュード9.1。これに次いで、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(災害名:東日本大震災)となります。
東北地方太平洋沖地震は、世界で1900年以降に起きた地震の中で4番目に大きな地震であると同時に、同期間に日本国内で起きた地震で規模が最大の地震であるということになります。
1900年以降に発生した地震の規模ランキング(気象庁HPより)
それでは、例えばマグニチュード8.0とマグニチュード9.0では、どのくらい大きさが違うのでしょうか。マグニチュードの数字は1.0しか違いませんが、エネルギーの大きさは32倍にもなります。マグニチュードが2.0違うと、約1000倍もエネルギーが違うということになります。
2011年に起きた東北地方太平洋沖地震のマグニチュード9.0と、熊本地震や兵庫県南部地震(災害名:阪神・淡路大震災)と比べると、マグニチュードの数値は1.7しか違いませんが、エネルギーは約350倍も大きいということになります。東北地方太平洋沖地震は沖合いの海底で発生し大きな津波が発生した地震、熊本地震や兵庫県南部地震は内陸直下で発生し、都市に大きな被害をもたらした地震でした。
マグニチュードと震度の関係(地震本部HPより)
震度はゆれの体感:観測した場所ごとにある
次に、震度とは地震自体の規模ではなく、地震があった時にある場所が揺れたときの「ゆれの大きさ」です。下の図は、日本の気象庁が採用している気象庁震度の階級と、ゆれの状況を示します。気象庁では、もともとは、ゆれの体感や周囲の状況で震度を決めていましたが、1996年4月以降は、震度計で観測した数値を用いています。
震度は、観測した場所ごとにあります。一つしかないマグニチュードとは異なり、観測した地点の数だけ震度があります。地震情報、地震ニュースなどでは最も大きかった震度を示して「最大震度5弱の地震が発生」とか、「千葉県北西部で震度4を観測する地震」などと示されることがあります。
震度には、震度0、震度1、震度2、震度3、震度4、震度5弱、震度5強、震度6弱、震度6強、震度7の10階級があります。震度の最大は7で、震度8や震度9、震度10はありません。どれだけ大きな地震でも、最大は震度7です。震度のうち5,6のみ弱、強の二つにわかれています。数字が大きいほど観測されたゆれが大きく、家屋や施設の被害が起きやすくなります。この表の内容を覚えておくと、今の地震が震度3くらいだった、などと体感や周囲の状況で震度を推測することができます。
気象庁震度階級による震度とゆれの状況(地震本部HPより)
木造住宅の被害と震度の関係はどのようになっているでしょうか。耐震性が低い(概ね、旧耐震基準相当の住宅)住宅と、耐震性が高い(概ね新耐震基準相当の住宅)住宅で見てみましょう。耐震性が低い住宅では、震度5弱で壁などに軽微なひび割れや亀裂がみられることがあり、震度5強でひび割れ、亀裂がみられることがあります。震度6弱では建物が傾いたり、倒れるものもあり、6強では傾くものや倒れるものが多くなります。耐震性が高い住宅では、被害の想定はおおむね2階級ぶん被害が小さくなっています。実際の地震被災地での被害を見てみると、耐震性が高いとされる新耐震住宅でも耐震性が不十分なものは、震度6強、震度7のゆれで新耐震基準の住宅でも倒壊等があるケースもあります。
2016年に発生した熊本地震の震度(気象庁資料より)
地盤、斜面の状況としては震度5弱~5強で亀裂や液状化が生じることが、震度6弱で地割れが、震度6強、7では大きな地割れが発生することがあります。斜面等では、震度5弱~5強で落石や崖崩れが生じることが、震度6弱でがけ崩れや地滑りが、震度6強、7ではがけ崩れが多発し、大規模な地すべりや山体の崩壊が発生することがあるとされています(気象庁資料)。
マグニチュードと震度との関係は?
それでは、マグニチュードと震度との関係性はどのようになっているでしょうか?マグニチュードが大きいほど、また地震の起きた震源に近い場所ほど、震度が大きくなる傾向があります。震源までの距離が同じ場合、規模の大きなマグニチュードが大きい地震ほどゆれが大きくなることから、観測される震度が大きくなります。
例えば、下の表の通り、震源から20㎞の場所を例にとると、マグニチュード8の地震が起きたとすると震度6強ほど、マグニチュード7の地震が起きたとすると地震では震度5強ほど、マグニチュード6の地震が起きたとすると震度4ほどとなり、マグニチュードが大きいほど、震度も大きいという関係にあることがわかります。
マグニチュードと震度の関係(内閣府「我が国で発生する地震」より)
実際の地震の震度は?
実際の地震における震度の例を見てみましょう。下の図は、2016年の熊本地震(本震)の例を示しています。マグニチュード7.3の地震、震源の深さは12㎞と浅く、震源は熊本県熊本地方(下の図の×印)でした。地震の規模を示すマグニチュードは7.3という1つの数字だけですが、震度は観測された地点ごとに多数あることがわかります。
震度は、多くの地震では震源の近くで最も震度が大きく、震源から離れていくとだんだん震度が小さくなっていく傾向があります。震源付近では震度の大きな震度6強や6弱の場所があり、その周辺に震度5強、震度5弱の場所があり、さらに外側に震度4,3などと、おおむね震源の近くで最も震度が大きく、震源から離れていくほど震度が小さくなっていくという傾向がわかります。
2016年に発生した熊本地震の震度(気象庁資料より)
気象庁震度階級のうち、最大の震度7が観測された地震にはどのようなものがあるでしょうか。1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年の熊本地震(前震と本震)、2018年の北海道胆振東部地震の6回があります。北海道から東北、関西、九州といった地域で観測されており、地震はいつ・どこで起きるかわからないこともわかります。
なお、震度7は1949年に制定されましたが、それ以前に発生した1923年関東地震(災害名:関東大震災)などの大きな地震では、震度7に相当する揺れがあったものと想定されています。また、1949年以降の地震でも、被害の特徴などから震度7の揺れが観測されたにものと考えられる地震がいくつかあります。
地震の震度は、地盤の状況によって大きくなることも
それでは、ある地震で「〇〇市で震度5弱」という震度が発表された場合、市内はすべて同じ震度なのでしょうか。震源からの距離が遠いほどゆれは弱まって震度が小さくなる傾向はあります。これとは別に、私たちが住む地面の下にある「地盤」の影響で、地震の際のゆれが大きくゆれやすい地盤と、ゆれにくい地盤があります。
下の図は、赤色系の色の場所ほどゆれやすく、緑色系ほどゆれにくい地盤の場所を描いています。山側ほどゆれにくく、川沿いの低地や海沿いの埋立地がゆれやすいことがわかります。実際には、地盤状況によって局所的に揺れやすい場所などがあります。このほか、高台の丘陵地などでも、人が造成した「盛土」地盤ではゆれが大きくなりやすいことがあります。ゆれにくい場所で震度5強だったゆれが、すぐ近くのゆれやすい場所では、ゆれが大きくなって震度6弱や震度6強のゆれになってしまうことも考えられます。
ゆれやすい地盤の場所に住む、家を建てる場合には、家屋の耐震性を高めることや、そのうえで制振ダンパーを設置する、既存住宅では耐震診断・耐震補強を行っておくことが望ましいと考えます。耐震性の高い耐震等級3の住宅や新しいマンションでも、大きな揺れがあると家具の転倒・倒壊・落下につながることがあります。勘違いされることもありますが、耐震性能が高い家でも、屋内でのゆれがなくなるわけではありません。家具の据え付けや、そもそも寝室やリビングに転倒するような家具を置かないという配置の対策もあります。地震については日本全国、すべての場所で地震対策を行うことが望ましいですが、ゆれやすい地盤の地域、耐震性能の低い住宅にお住いの場合は、より一層地震への対策が優先されるでしょう。
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