最近では、あらゆるモノの価格が上がっています。住宅もまた、例外ではありません。新築住宅の価格はどんどん高騰しており、中古物件を選択肢に入れる方も増えてきました。
中古戸建ては新築と比べると安価ですが、築古の物件はリフォーム費用がかさみます。そこで近年、注目されているのが、取得費に加え初期費用も抑えられる「築浅物件」や「リフォーム済み物件」です。
しかし、築浅やリフォーム済みであっても不測の出費がかかる可能性があります。また、第三者のプロのチェックが入っている「インスペクション済み物件」についても、それだけで「安心」と過信してはいけません。
この記事では、できる限り「状態の良い」中古住宅を購入するために気をつけたいポイントを解説します。
築浅物件の注意点
「築浅なら状態も良いはず!」と思われる方も多いですが、実は築浅だからといって状態が良いとは限りません。
外壁の不具合
築2〜3年の築浅物件でも、よく見ると外壁に細かいひび割れが入っていることも珍しくありません。
建売住宅に多く見られる14mmの比較的薄めのサイディング(外壁材)は、釘で打ち付けて固定するのが一般的です。その際に、釘周辺の外壁部分を傷つけてしまうことが少なくないのです。また、釘打ち部分が地震や風の影響を受けた際に釘周辺部分に力が加わり、後からひび割れの原因になることもあります。
外壁のひび割れは、雨漏りだけでなく、サイディングの変形にもつながります。サイディングのメンテナンスは基本的に「塗装」ですが、変形してしまうとサイディングごと「交換」しなければならない可能性があります。交換には、塗装以上の費用がかかります。
配管の不具合
- 水回りの配管の緩み
- 配管の接続不良
- 排水管の勾配の角度が不足している
このような配管の不具合は、水漏れや漏水、異臭などにつながります。また、長期的には、カビの発生や木材の腐朽により建物の寿命を早めてしまいかねません。
新築戸建ての不具合指摘率は半数以上
住宅の状況に合わせたリフォームを実施すると、断熱性能が向上します。ただし、施工方法や工程によって、リフォームにかかる日数や費用に大きな差が見られる点に注意しましょう。
ここまで紹介した不具合は、ごく一部です。新築の住宅が完成した際にする建物の検査で、全く不具合がない住宅というものはほとんどありません。
さくら事務所が行った新築工事中ホームインスペクションでは、半数以上の住宅で工事中になんらかの不具合が発覚しています。築浅だからといって安心するのではなく、こうした部分を注意深く見ておかなければ、比較的早いタイミングで補修が必要になってしまうということにもなりかねません。
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リフォーム済み物件の注意点
リフォーム済み物件は、これまでほとんど修繕やメンテナンスされていない物件と比べると「状態は良い」ということになりますが「リフォーム済み」ということだけでは安心できません。
どこをリフォームしているかきちんと確認する
「リフォーム済み」という事実だけでなく、住宅のどの部分をどのようにリフォームしているかによって、取得後の費用のかかり方は変わってきます。
たとえば、建物も綺麗で、キッチンも新しいものに変えられているリフォーム済み物件でも、排水管や給水管はそのままで中が錆びてしまっていて交換が必要なケースもあります。錆びは配管の詰まりや水漏れの大きな要因となるため、築20〜30年の物件は表に見えない配管なども一通り交換してあるか確認すると良いでしょう。
また、リフォーム済み物件において「床の表面をリフォームしています」という説明を受けて購入したところ、購入後に床が傾いていることが発覚したケースもありました。リフォーム業者へ問い合わせると「床の表面は綺麗にしたが、床の傾きを直したとは言っていない」とのこと。「リフォーム済み」という言葉だけ聞いて良いイメージが先行してしまうと、こうした部分に気づかないまま購入してしまう可能性があります。
リフォーム工事の施工品質
リフォーム済みであっても、その施工品質に問題がある場合もあります。
たとえば「外壁リフォーム済み」という物件であっても、外壁表面だけを塗装して、シーリングはそのまま、あるいは上から塗っただけというケースもあります。シーリングとは、外壁と外壁の隙間を埋める目地剤で、雨漏りを防ぐ役割があります。サイディングの外壁をリフォームする際は本来、古いものを取り除き、新たに充填しなければなりません。古いものの上から塗っただけでは、防水効果に期待できません。
リフォームの場合、新築と異なり、基本的に外部の第三者機関がチェックをすることはありません。そのため、施工会社の独断で進められてしまい、蓋を開けるととんでもない施工がされてしまっていたということが起こり得るのです。
こういった物件を購入してしまうと「リフォーム済み」と聞いていたのに数年や数ヶ月といった短い期間で再度、塗装し直す必要性が出てくるかもしれません。場合によっては、100万円単位の出費となります。
インスペクション済み物件の注意点
築浅物件やリフォーム済み物件に加え「インスペクション(建物状況調査)済み物件」も、一見すると状態が良い物件と捉えられがちです。インスペクション済み物件とは、物件を売り出す際に第三者のプロによって調査されている物件を指します。
何も調査されていない物件の場合、自分で状況を確認しなければなりませんが、プロが調査したインスペクション済み物件には報告書もあるため、物件を買う際の安心につながります。ただし、「インスペクション済み」だからといって不具合がないとは限りません。
どこまで建物を見ているか確認する
インスペクション(建物状況調査)では、建物をすべて見るわけではなく、調査する範囲は限定的です。調査項目は主に「構造」と「雨漏りに関連する部分」。キッチンや浴室、洗面室などの「設備」は調査項目に入っていない場合があります。
また、構造や雨漏りに関する部分についても、すべての箇所が調査されているとは限りません。たとえば、インスペクションで最低限遵守しなければならないガイドラインでは、建物の「傾き」に関する調査において、各階において1区画以上の範囲で傾きを測定すればいいという規定になっています。
1区画とは、わかりやすくいえば1部屋ということです。各階ごとに1部屋しか調査していない場合、地盤沈下による建物全体の傾きなどはどうしても判別しにくくなります。
さらに、床下の調査についても、ガイドラインでは「点検口から見える範囲だけ確認する」という規定になっています。点検口から見える床下の範囲は、非常に限定的です。見えない部分でシロアリ被害が進行してしまっている可能性もあります。
売主が居住中の調査結果に注意
居住中にインスペクションが実施された場合は、とくに注意が必要です。居住中ということは、家具や家財が置かれている中で調査したということ。空室の状態と比べて、見えない部分がさらに多くなります。
居住中に行ったインスペクション調査では問題がなくても、家具がなくなった状態で見ると雨漏りを疑うシミ跡があり、調査するとひどい雨漏りをしていた……という物件も実際にありました。概要書に「問題なし」「劣化なし」とあっても、実は調査できていない部分がある可能性があるということは頭に入れておく必要があります。
「築浅」「リフォーム済み」「インスペクション済み」でも過信は禁物
インフレ時代に突入した昨今、初期費用を抑えるため、なるべく状態が良い中古物件を購入したいと考える方が増えてきているように感じています。
築浅・リフォーム済み・インスペクション済みの物件は「すぐ住める」「しばらく補修・メンテナンスの必要もない」というイメージがあるかもしれません。しかし、重大な不具合が隠れている可能性もゼロではありません。
相対的に見れば、築年数が古い物件と比較すると状態の良い物件である可能性は高くなりますが、築浅・リフォーム済み・インスペクション済みということだけで過信せず、確認を怠らないことが大切です。インスペクション(建物状況調査)ではなく、買主自ら「ホームインスペクション(住宅診断)」を依頼するというのも効果的なリスクヘッジ方法のひとつとなるでしょう。
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