【東急電鉄東横線】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

  • Update: 2021-08-31
【東急電鉄東横線】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

一戸建てやマンションなど、新居を探すときには路線や駅名などで物件検索する方も多いでしょう。物件情報に加え、通勤や通学にかかる時間、駅周辺にある生活施設などをリサーチするとき、「災害リスク」も確認していますか?

同じ路線でも、エリアにより地形や地盤は大きく特徴が異なり、災害リスクは駅ごとで異なるのです。

そこで今回は、水害と地震による揺れやすさの2つの災害リスクについて、だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクターの横山芳春が首都圏人気路線の災害リスクをデータからリサーチ。

今回は、東急電鉄東横線の災害リスクが低い駅ランキングを出してみました。

※他の路線についてはこちらから
【東急電鉄目黒線】編
【横浜市営地下鉄ブルーライン】編
【京王電鉄井の頭線】編
【東急電鉄田園都市線】編

災害リスクカルテ

■東横線【地形概要】

東横線の渋谷駅周辺は、青山学院大側の台地から宮益坂を下り、西側の道玄坂側の台地に上る間の、低平な渋谷川の谷底低地の地下にあります。渋谷駅を出た東横線は、渋谷川の谷に沿って走った後、大きく右側(南側)にカーブして代官山駅に向かいます。

代官山駅は低地と台地の境目の斜面にあり、渋谷駅側の北口は谷側にあり、線路は地上に出ていますが、中目黒駅側の南口は台地側にあり、ホームは半地下のようになっています。この低地から台地の高低差は、代官山駅の北口から南口に沿った道路が急な坂道となっていることに現れています。

代官山駅から中目黒駅の間は台地の高台の地下をくぐって、目黒川の谷底低地で線路が地上に現れます。代官山の台地頂上(標高約30m)と比べると、中目黒駅付近の谷底(標高約9m)は20m以上の高低差になっています。

目黒川の谷を越えると、東横線は高台の台地にさしかかり、祐天寺駅、学芸大学前駅は台地上の平坦地に位置しています。都立大学前駅は周囲より標高の低い場所にありますが、呑川の谷底低地にあるためです。

自由が丘駅は「丘」と駅名についていますが、駅は谷底低地にあります。自由が丘駅付近を東横線沿いに歩いてみると、自由が丘駅が一番低いところにあることがよく理解できます。とくに田園調布駅側は急な坂道で台地斜面を上がり、田園調布駅は台地の斜面にあります。田園調布付近の住宅地は南北に2本の谷筋があり、20m近い高低差があるので、東西方向に歩くと意外と高低差があることを感じます。

田園調布駅の台地斜面から、多摩川につながる細い谷筋にある多摩川駅に向けて周囲の標高が下がっていき、多摩川駅を過ぎて多摩川の橋を超えると多摩川低地が広がっています。

元住吉駅を出発して矢上川を超えると、日吉駅に向かって標高が高くなり、下末吉台地上にある日吉駅に到着します。

日吉駅を過ぎると、鶴見川の低地に下っていき綱島駅に到着、鶴見川を越えていくと、車窓に斜面や林が見え、台地上にある大倉山駅に到着します。大倉山駅から菊名駅は、ふたたび蛇行して流れる鶴見川の低地に下り、菊名駅から細い谷筋を通りぬけて、丘と低地を繰り返して妙蓮寺駅、白楽駅は台地・丘陵上に位置しています。

東白楽駅で海沿いの低地に降りると、東横線は地下へと潜っていきます。反町駅は地下にありますが地上部は台地・丘陵の斜面にあり、埋立地にある横浜駅に地下ホームに到着します。

■東横線【水害低リスク推しステーション】

1位(浸水想定区域外) 学芸大学駅
田園調布駅
3位(想定浸水深:0.02~0.2m) 日吉駅
白楽駅
5位(想定浸水深:0.1~0.5m) 代官山駅
祐天寺駅
妙蓮寺駅
反町駅

※同順位の場合、渋谷駅から下りの駅順で記載

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

1位タイは学芸大学駅、田園調布駅の2駅で、浸水想定区域外でした。3位タイは日吉駅、白楽駅の2駅で、想定浸水深0.02~0.20m未満でした。5位タイは代官山駅、祐天寺駅、妙蓮寺駅、反町駅で、想定浸水深0.1~0.5mでした。

いずれも、標高の低い大きな川沿いの低地ではなく、高台に位置する台地や丘陵地、または坂の途中のような、台地斜面に位置する駅の浸水リスクの低さが際立ちました。

【集計方法】
各市区が公開している水害に関するハザードマップ(洪水、内水氾濫が別の場合はそれぞれを確認して最も大きな浸水深のマップを使用)し、例えば想定される浸水深が0.5~3.0m未満、の場合は最大値である3.0m(実際は未満ですが)を集計しています。駅構内または駅に隣接するメッシュで浸水深が最も深いメッシュの想定浸水深を読み取っています。

■東横線【地震の揺れやすさ低リスク推しステーション】

1位(震度6強確率:4.9%/地盤増幅率:1.23) 渋谷駅
2位(震度6強確率:5.1%/地盤増幅率:1.23) 都立大学駅
3位(震度6強確率:7.2%/地盤増幅率:1.36) 中目黒駅
4位(震度6強確率:8.5%/地盤増幅率:1.39) 日吉駅
5位(震度6強確率:9%/地盤増幅率:1.45) 代官山駅
祐天寺駅
7位(震度6強確率:11.9%/地盤増幅率:1.51) 東白楽駅

※同順位の場合、渋谷駅から下りの駅順で記載

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

1位は渋谷駅、2位は都立大学駅、3位は中目黒駅、4位日吉駅、5位タイが代官山駅、祐天寺駅、7位東白楽駅でした。

渋谷駅、都立大学駅、中目黒は谷底低地であり、従来は比較的地震時に揺れやすいと考えられている地域でした。しかし、このランキングで使ったデータは、最新の防災科学技術研究所による地盤の実測値に基づいた数値で、従来想定されていたよりも地震の時に揺れにくい地盤であった結果を反映しています。

日吉駅、代官山駅、祐天寺駅、東白楽駅は高台に位置する台地や丘陵地、または台地斜面に位置する駅であり、高台の地盤で揺れやすさが小さいというセオリーと一致していました。これらの駅の近傍でも、高低差のある敷地などでは盛土などで部分的に揺れやすい地盤の地域などもあります。

【集計方法】
国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開する地震ハザードステーションJ-SHIS Mapより、250m×250mメッシュで地盤の揺れやすさと地震の起きやすさから算出されている「今後30年間に震度6強以上の揺れに見舞われる確率」の数値(%)および、「その場所の地盤の揺れやすさ」を示す地盤増幅率をもとに集計しています。

■まとめ

皆さんのイメージと一致したランキングだったでしょうか?

以前は地震発生時に揺れやすいと考えられていた渋谷などが、最新の技術をもとに取得されたデータからは、沿線内では相対的に揺れにくいことがわかるという意外な結果となりました。

今回は「駅」について調べたものであり、駅から少し離れることで地形や地質が異なることもあることから、気になる一戸建てやマンションの最寄り駅が災害低リスクランキングに入っているからといって、その周辺一帯全てが低リスクと言い切ることはできません。

通常、住みたい駅は「通勤に便利」「生活利便施設が多そう」「学区が良い」などの理由で選ぶことが多いと思われますが、地球温暖化などに伴い異常気象も増えていることから、地域の災害リスクなども住まい選びの参考にお役立てください。

なお、本ランキングは各駅地点の地震ハザードステーションJ-SHIS、自治体の水害ハザードマップに基づき、同一路線内で「相対的」にリスクが低いことを表しているため、災害が起きないわけではありません。また、地形や地盤は少しの距離でも性状が変化するため、ピンポイントの場所の災害リスクを把握しておくことが望ましいと言えます。

ただ、行政が出すハザードマップにも多数の種類があり、どれを見ていいのかわからない、見てもどう解釈していいのかわからないという声もよく聞かれます。

そこで、さくら事務所ではご希望の住所に関して、災害リスク度合いと、そのリスクに対する対策をアドバイスする災害リスクカルテサービスを開始。リスク有無の把握に加え、その場所に住むなら建物や生活でどんな注意が必要なのかをホームインスペクターが電話で直接ご説明いたします。

住みたい場所の災害リスクがどうなのか、もし住みたい場所の災害リスクが高い場合はどんなリスクヘッジ方法があるのかを知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

★明日9月1日(水)は、「地盤災害ドクターの災害低リスク推しステーション」【京王電鉄井の頭線】を公開します。お楽しみに!

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