【横浜市営地下鉄ブルーライン】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

  • Update: 2021-09-02
【横浜市営地下鉄ブルーライン】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

一戸建てやマンションなど、新居を探すときには路線や駅名などで物件検索する方も多いでしょう。物件情報に加え、通勤や通学にかかる時間、駅周辺にある生活施設などをリサーチするとき、「災害リスク」も確認していますか?

同じ路線でも、エリアにより地形や地盤は大きく特徴が異なり、災害リスクは駅ごとで異なるのです。

そこで今回は、水害と地震による揺れやすさの2つの災害リスクについて、だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクターの横山芳春が首都圏人気路線の災害リスクをデータからリサーチ。

今回は、横浜市営地下鉄ブルーラインの災害リスクが低い駅ランキングを出してみました。

※他の路線についてはこちらから
【東急電鉄目黒線】編
【京王電鉄井の頭線】編
【東急電鉄東横線】編
【東急電鉄田園都市線】編

災害リスクカルテ

■横浜市営地下鉄ブルーライン【地形概要】

東急田園都市線との乗換駅となる横浜市営地下鉄ブルーラインのあざみ野駅は、鶴見川にそそぐ早渕川から上っていく丘陵の斜面付近に位置しています。

地下にあるあざみ野駅を出発したブルーラインは一度地上区間に出ますが、ここで早渕川の谷底低地を横断します。中川駅が近づくと周囲から山が迫ってくるように見え、地下区間に入ると丘陵の造成地にある中川駅に到着します。

センター北駅は南側に下る台地斜面にあり、起伏の大きな街となっています。センター北駅を出ると、ふたたび早渕川の谷底低地に出てブルーラインも地上区間になり、早渕川を超えると、谷底低地と台地斜面の境界にあるセンター南駅に至ります。

センター北駅からは台地の地下を通って、仲町台駅までは台地の造成地にありますが、仲町台駅を出て台地(標高約40m)の地下区間を超えると、鶴見川低地(標高約5m前後)に出て、その高低差分が新羽駅付近では「高架上にある地下鉄」として現れています。新羽駅、北新横浜駅、新横浜駅は、この鶴見川の低地に位置しています。

岸根公園駅に向かうと、台地に低地が入り組んだ複雑な地形の地域になっていきます。岸根公園駅から地上に上がると目の前に見える篠原池は細い谷底にあり、対岸の県立武道館や岸根球場は台地の上にあります。片倉町駅、三ツ沢上町駅、三ツ沢下町駅は、いずれも台地に囲まれた谷底低地に位置しています。

横浜駅の手前まで、台地に谷の入り組んだ起伏の大きな地域の地下を走っていたブルーラインは、横浜駅の手前からは平坦な海岸平野、埋立地の地域へと入っていきます。横浜駅、高島町駅、桜木町駅 関内駅、伊勢佐木長者町駅、阪東橋駅、吉野町駅といった商業施設も多い地域は、入り江のような海を埋め立ててできた、低平な場所にあります。野毛山動物園や、山手の洋館などはいずれも急な坂道を上った丘の上、台地に位置しています。

蒔田駅、弘明寺駅、上大岡駅は大岡川沿いの谷底低地にあり、弘明寺のお寺や京急の弘明寺駅は、急な弘明寺坂を上った上の台地にあることと対照的です。

大岡川支流の日野川の谷底低地にある港南中央駅を過ぎると、沿線の地形は再び起伏の大きな丘陵地帯へとなり、上永谷駅、下永谷駅や高台の上にあります。舞岡駅は丘陵地の中の細い谷筋に、戸塚駅は柏尾川の低地にあります。柏尾川の低地を過ぎると台地の高台となり、 踊場駅は台地の上、続く中田駅、立場駅、下飯田駅は谷底低地から台地を上る斜面に位置しています。 終点の湘南台駅は平坦な台地の上にあります。

■横浜市営地下鉄ブルーライン【水害低リスク推しステーション】

1位(浸水想定区域外) 湘南台駅
三ッ沢上町駅
1位(想定浸水深:0.02~0.2m) 中田駅
港南中央駅
桜木町駅
片倉町駅

※同順位の場合、湘南台駅からあざみ野駅に向かった順番で記載

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

地下区間は駅出入口付近の想定浸水深で評価しています。

1位タイは三ッ沢上町駅、湘南台駅の2駅で、浸水想定区域外でした。湘南台駅は台地の上の高台ですが、三ツ沢上町駅付近は低地にありますが、駅出入口のある国道1号線付近は少し標高が高く、想定浸水区域外となっています。その周辺は内水氾濫の浸水が想定されている場所もあります。

続く3位タイは、中田駅、桜木町駅、片倉町駅、港南中央駅の4駅で、想定浸水深0.02~0.2mでした。中田駅は谷底低地から台地を上る斜面、片倉町駅、港南中央駅は谷底低地、桜木町駅は海沿いの埋立地にありますが、洪水や内水氾濫、(桜木町駅では高潮)では床上に及ぶような浸水は想定されていないようです。

【集計方法】
各市区が公開している水害に関するハザードマップ(洪水、内水氾濫が別の場合はそれぞれを確認して最も大きな浸水深のマップを使用)し、例えば想定される浸水深が0.5~3.0m未満、の場合は最大値である3.0m(実際は未満ですが)を集計しています。駅構内または駅に隣接するメッシュで浸水深が最も深いメッシュの想定浸水深を読み取っています。

■横浜市営地下鉄ブルーライン【地震の揺れやすさ低リスク推しステーション】

1位(震度6強確率:5.2%/地盤増幅率:1.22) 中川駅
2位(震度6強確率:6.3%/地盤増幅率:1.25) 三ッ沢上町駅
3位(震度6強確率:6.4%/地盤増幅率:1.29) あざみ野駅
4位(震度6強確率:7.5%/地盤増幅率:1.3) 桜木町駅
5位(震度6強確率:7.6%/地盤増幅率:1.31) 三ッ沢下町駅
6位(震度6強確率:7.8%/地盤増幅率:1.36) センター北駅
7位(震度6強確率:9.1%/地盤増幅率:1.39) 片倉町駅

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

1位は中川駅、2位は三ッ沢上町駅、3位はあざみ野駅、4位桜木町駅、5位が三ッ沢下町駅、6位がセンター北駅、7位は片倉町駅でした。

中川駅は丘陵の上、あざみ野駅、センター北駅は丘陵地や丘陵地の斜面にあり、高台に位置する台地や丘陵地、または台地斜面に位置する駅であり、高台の地盤で揺れやすさが小さいというセオリーと一致していました。これらの駅の近傍でも、高低差のある敷地などでは盛土などで部分的に揺れやすい地盤の地域などもあります。

三ッ沢上町駅、桜木町駅、三ッ沢下町駅、片倉町駅は谷底低地や埋立地側であり、従来は比較的地震時に揺れやすいと考えられている地域でした。しかし、このランキングで使ったデータは、最新の防災科学技術研究所の地盤の実測値に基づいた数値で、従来想定されているより地震の時に揺れにくい地盤であった結果を反映しています。

【集計方法】
国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開する地震ハザードステーションJ-SHIS Mapより、250m×250mメッシュで地盤の揺れやすさと地震の起きやすさから算出されている「今後30年間に震度6強以上の揺れに見舞われる確率」の数値(%)および、「その場所の地盤の揺れやすさ」を示す地盤増幅率をもとに集計しています。

■まとめ

皆さんのイメージと一致したランキングだったでしょうか?

以前は地震発生時に揺れやすいと考えられていた、低地・埋立地にある三ッ沢上町や桜木町、三ッ沢下町、片倉町などが、最新の技術をもとに取得されたデータからは、沿線内では相対的に揺れにくいことがわかるという意外な結果となりました。

なお、本ランキングは各駅地点の地震ハザードステーションJ-SHIS、自治体の水害ハザードマップに基づき、同一路線内で「相対的」にリスクが低いことを表しているため、災害が起きないわけではありません。

また、駅から少し離れることで地形や地質が異なることもあることから、気になる一戸建てやマンションの最寄り駅が災害低リスクランキングに入っているからといって、その周辺一帯全てが低リスクと言い切れません。

地形や地盤は少しの距離でも性状が変化するため、ピンポイントの場所の災害リスクを把握しておくことが望ましいと言えます。

そこで、さくら事務所ではご希望の住所に関して、災害リスク度合いと、そのリスクに対する対策をアドバイスする災害リスクカルテサービスを開始。

リスク有無の把握に加え、その場所に住むなら建物や生活でどんな注意が必要なのかをホームインスペクターが電話で直接ご説明いたします。住みたい場所の災害リスクやどんなリスクヘッジ方法があるのかを知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

★明日9月3日(金)は、地盤災害ドクターの災害低リスク推しステーション」【東急電鉄目黒線】を公開します。お楽しみに!

 

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