【東急電鉄田園都市線】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

  • Update: 2021-08-30
【東急電鉄田園都市線】地盤災害ドクターの「災害低リスク」推しステーション

一戸建てやマンションなどに住み替えを検討するとき、住みたい街、路線、駅などで候補物件を検索する方が多いですが、よく使うあの路線、気になるあの駅の「災害リスク」について考えたことはありますか?

同じ路線でも、エリアにより地形や地盤は大きく特徴が異なり、災害リスクは駅ごとで見る必要があります。

そこで今回は、水害と地震による揺れやすさの2つの災害リスクについて、だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクターの横山芳春が首都圏人気路線の災害リスクをデータからリサーチ。

今回は、東急電鉄田園都市線の災害リスクが低い駅ランキングを出してみました。

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災害リスクカルテ

■田園都市線【地形概要】

田園都市線の渋谷駅周辺は、青山学院大側の台地から宮益坂を下り、西側の道玄坂側の台地に上る間の、低平な渋谷川の谷底低地にあります。地下ホームを出発した田園都市線は、幾つかの谷や丘の地下を越えて、神田川の谷底低地から台地斜面の地下にある池尻大橋駅に到着します。

人気の高い三軒茶屋駅や駒澤大学駅は、高台となる台地の平坦地にありますが、周囲は起伏が大きく谷底やくぼ地も多くみられます。桜新町駅は、東西から見るとすり鉢の底のような場所に見えますが、南側と北側に標高が下がって行く頂上のような場所の台地斜面に位置しています。用賀駅の地上では北口・東口側から南口側に南西側の東名高速側に標高が下がっていますが、これは台地から谷底低地にゆるやかに下っていく台地斜面にあることによります。

用賀駅を過ぎて、二子玉川駅に到着する前に、田園都市線の線路は地下から地上に現れます。これは、用賀側の台地の上(標高35m前後)から、多摩川の低地(標高13m前後)に下るときの高低差によるもので、二子玉川駅では線路は高架になっています。二子玉川駅と、多摩川を超えた二子新地駅、また高津駅、溝の口駅は、この多摩川沿いの低地にあります。

溝の口駅を過ぎると、それまでの開放的な光景から、急に山が迫ってくるような印象がありますが、これは多摩川の低地から台地・丘陵地の地域に差し掛かって来るためです。

梶ヶ谷駅は台地・丘陵地中腹の斜面を削った場所に位置しており、駅の北側には斜面が残されて起伏が大きい地域であることがわかります。梶ヶ谷駅を出発すると、台地・丘陵地の高まりの部分の2か所をトンネルで超えて宮崎台駅は台地上の平坦地にあります。宮前平駅は、鶴見川にそそぐ矢上川の谷底低地にあります。

宮前平駅付近の標高約28mから、次の鷺沼駅は標高約55mと高くなっています。「沼」の字がつく鷺沼の町内では谷あいの場所もありますが、鷺沼駅じたいは駅は丘陵の上に位置しています。

たまプラーザ駅は丘陵地の斜面にあります。周囲には丘陵の起伏や川の流れる谷も入っており、全体的に高低差の大きな街になっています。

あざみ野駅は鶴見川にそそぐ早渕川の谷底低地にあります。あざみ野駅前の道路は江田駅側に向かって上り坂になっており、低地の端から斜面を上りかけた場所にあざみ野駅があることがわかります。丘陵地を通って江田駅は、谷底低地にあり、周囲の丘陵地より低い場所に位置しています。

江田駅から周囲の丘陵地を抜けて行くと、沿線の地形は少しずつ標高を下げていき、市が尾駅は丘陵から少し低い台地と、鶴見川の谷底低地の境界に位置しています。鶴見川を越えると再び丘陵地帯となり、藤が丘駅も丘陵地には位置していますが、北側に谷が入っており少し低い場所になっています。

青葉台駅(標高約44m)も丘陵地の丘の上にありますが、周囲は起伏の多い山あり谷ありの造成地になっています。田奈駅(標高約24m)は周囲より標高の低い恩田川の谷底低地にあります。長津田駅(標高約46m)はゆるやかに傾斜する高台である台地の上にあり、つくし野駅(標高約65m)、すずかけ台駅(標高約70m)はさらに標高の高い丘陵地にあります。

南町田グランベリーパーク駅は台地の平坦地にあり、境川の低地を超えたつきみ野駅、終点中央林間駅も台地の上にあります。

田園都市線は東京都内の武蔵野台地では主に地下を走り、多摩川の低地の高低差で地上に姿を見せます。

多摩川を超えて多摩丘陵の丘陵地に至ると、線路を周囲より低くした掘割状の場所に通したり、高い部分はトンネルで横切ったり、また途中の谷地は高架となっているなど、丘陵や台地、低地を通る非常に起伏豊かな区間となり、境川を超えると相模台地の平坦地に入っていきます。

全体として変化の非常に大きな路線であるということができます。

■田園都市線【水害低リスク推しステーション】

1位(浸水想定区域外) 駒澤大学駅
桜新町駅
梶が谷駅
宮崎台駅
鷺沼駅
つくし野駅
すずかけ台駅
つきみ野駅
中央林間駅
10位(想定浸水深:0.2m) 青葉台駅
長津田駅

※同順位の場合、渋谷駅から下りの駅順で記載

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

1位タイは9駅あり、鷺沼駅、つくし野駅、すずかけ台駅、つきみ野駅、中央林間駅、宮崎台駅、梶ヶ谷駅、桜新町駅、駒澤大学駅が浸水想定区域外でした。10位タイは2駅あり、青葉台駅と長津田駅でした。いずれも標高の低い低地ではなく、高台に位置する台地や丘陵地の浸水リスクの低さが際立ちました。

【集計方法】
各市区が公開している水害に関するハザードマップ(洪水、内水氾濫が別の場合はそれぞれを確認して最も大きな浸水深のマップを使用)し、例えば想定される浸水深が0.5~3.0m未満、の場合は最大値である3.0m(実際は未満ですが)を集計しています。駅構内または駅に隣接するメッシュで浸水深が最も深いメッシュの想定浸水深を読み取っています。

■田園都市線【地震の揺れやすさ低リスク推しステーション】

1位(震度6強確率:2.4%/地盤増幅率:1.02) 鷺沼駅
たまプラーザ駅
3位(震度6強確率:2.5%/地盤増幅率:1.02) 市が尾駅
藤が丘駅
青葉台駅
6位(震度6強確率:2.7%/地盤増幅率:1.02) つくし野駅
7位(震度6強確率:2.9%/地盤増幅率:1.04) すずかけ台駅
8位(震度6強確率:4.8%/地盤増幅率:1.19) 江田駅
9位(震度6強確率:4.6%/地盤増幅率:1.21) 池尻大橋駅
10位(震度6強確率:4.9%/地盤増幅率:1.23) 渋谷駅

※同順位の場合、渋谷駅から下りの駅順で記載

【地盤災害ドクター 横山芳春の解説】

10位の谷底低地にある渋谷駅を除いて、いずれも丘陵地か台地に位置し、比較的地盤が安定している高台である、台地で揺れやすさが小さいというセオリーと一致していました。

これらの駅の近傍でも、高低差のある敷地などでは盛土などで部分的に揺れやすい地盤の地域などもあります。とくに梶ヶ谷駅~すずかけ台駅の間の多摩丘陵地帯は起伏が大きく、盛土造成地に該当していないかなどは要チェックです。

【集計方法】
国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開する地震ハザードステーションJ-SHIS Mapより、250m×250mメッシュで地盤の揺れやすさと地震の起きやすさから算出されている「今後30年間に震度6強以上の揺れに見舞われる確率」の数値(%)および、「その場所の地盤の揺れやすさ」を示す地盤増幅率をもとに集計しています。

■まとめ

新築や中古の一戸建て・マンションを買うときに、建物が地震に強いかどうか気にする方はこれまでにもたくさんいらっしゃいましたが、災害リスクを気にする方はまだまだ多くはないかもしれません。

ですが、地球温暖化に伴い短時間あたりの降雨量が増加し、崖崩れなどの土砂災害や河川の氾濫、水が排水されずに起こる内水氾濫などの水害が発生しやすくなっている地域があります。また、地震についても、日本中、どこで発生してもおかしくないと言われています。

そんな中、浸水や内水氾濫などの起きやすさや、地震の発生しやすさ・揺れやすさはデータによりリスクを把握できるようになってきていますので、住みたい街、住む予定の街の災害リスクは事前に把握しておきたいものです。

なお、本ランキングは各駅地点の地震ハザードステーションJ-SHIS、自治体の水害ハザードマップに基づき、同一路線内で「相対的」にリスクが低いことを表しているため、災害が起きないわけではありません。また、地形や地盤は少しの距離でも性状が変化するため、ピンポイントの場所の災害リスクを把握しておくことが望ましいと言えます。

ただ、行政が出すハザードマップにも多数の種類があり、どれを見ていいのかわからない、見てもどう解釈していいのかわからないという声もよく聞かれます。

そこで、さくら事務所ではご希望の住所に関して、災害リスク度合いと、そのリスクに対する対策をアドバイスする災害リスクカルテサービスを開始。リスク有無の把握に加え、その場所に住むなら建物や生活でどんな注意が必要なのかをホームインスペクターが電話で直接ご説明いたします。

住みたい場所の災害リスクがどうなのか、もし住みたい場所の災害リスクが高い場合はどんなリスクヘッジ方法があるのかを知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

★明日8月31日(火)は、「地盤災害ドクターの災害低リスク推しステーション」【東急電鉄東横線編】を公開します。お楽しみに!

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