新築マンションや新築戸建てをお探しの方なら、「未入居物件」という言葉を見たことがあるかもしれません。「新築なんだから、未入居なのは当然でしょ?」と思われるかもしれませんが、少し違います。
新築とは、「建物が完成して1年以内」の「誰も住んだことのない物件」を指します。つまり、完成して誰も住んだことがなくても、完成から1年以上経過した場合「新築」とは言えず、売買時の扱いが異なるのです。
では、具体的にどのような点に注意してチェック、購入すればいいのでしょうか。今回は「未入居物件」の購入を検討されている方に、契約前の大切な3つのポイントを解説します。
なお、ここでは主に、「一度誰かが購入したが、入居せずにまた売却された物件」ではなく、「完成から時間が経って新築と呼べなくなった物件」を中心にお話を進めていきます。
【ポイント1】未入居物件として販売される背景は?
昨今、不動産市場の過熱によって特に首都圏の新築マンション、新築戸建ての価格が高騰した影響を受け、首都圏を避けて郊外で住宅を求める人が多くなってきました。それにより郊外では住宅の供給が追いつかずに、未入居物件までもが探され始めています。これが未入居物件という言葉が最近よく聞かれることになった理由です。
前述した通り、未入居物件とはつまり、1年以上誰も買い手がつかなかった売れ残りの物件です。未入居物件の購入を検討する際は、まず「なぜ売れ残ってしまったのか」という背景を知っておかなくてはなりません。
新築マンションや戸建ては、仕入れた土地の価格や建物の建設費用のほかに、駅らの距離や、周辺の環境の良さ、地価の相場などから価格が設定されています。人気の高い地区での新築物件で、使い勝手の良い設備や仕様を取り入れた住宅は、当然ながら価格も高く設定されるというわけです。申し込みの依頼があっても、ローンの審査が通らない買い主の申し込みの手続きに追われ、結局、契約に至らず、売れ残っていることもあります。
気をつけなければならないのは、売り主や付近の住民しか知らない事情がある場合です。
- 問題を起こす住民が付近に住んでいる
- 近隣にごみ処理場があるなど、時間帯や季節によって異臭が立ち込めることがある
- 深夜の大型トラックなど交通量が多く、振動や音が気になる
- 土砂災害、洪水などの災害リスクが高い
- 繁華街が近くにあり、治安が良くない
など、ざっと挙げるだけでもこのようなことが考えられ、いずれも今後長く住むにあたっては避けたい問題です。
このような、外部からでは見えにくい隠れた原因には注意が必要です。夜間や天候の悪い日も含め、複数回にわたって物件を見学しに行くことで、その原因が見つかることもあります。可能な限り、その経緯を知っておきたいものです。
【ポイント2】建物の保証は? その期間は?
新築住宅は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(「品確法」とも呼ばれます)の「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」に守られており、10年間は躯体や雨漏りに対する保証期間があります。「雨漏り」や「土台や柱など躯体に対する強度」など構造耐力上主要な部分に関して問題が発生した場合、売主や施工会社側に補修してもらえる制度です。また、隠れた瑕疵を発見してから1年以内であれば損害賠償請求をすることも可能ですし、目的が果たせなければ契約を破棄できる可能性もあります。
しかし、前述したように、住宅は完成から1年以上経過すると、人が住んだことがなくても「新築物件」にはなりません。そのため、「契約不適合責任は2年間」など、新築住宅と比較して、売主に有利な契約を交わすことも可能になってきます。建物に問題が見つかった場合でも、建物の躯体に関する保証が短い契約を結んでしまう可能性があるということですね。
一般的に、未入居物件の場合、売り主が不動産会社であれば、契約不適合責任を引き渡しから2年とすることが多いようです。また、大手ハウスメーカーや工務店での建築物件であれば契約不適合責任のほかにも各社それぞれのアフターサービスがついていることが多いです。
「未入居物件」は「新築」ではないので新築物件での10年間の保証がない点、また未入居物件にかかる保証はケースバイケースであり、売り主の考え方によるという点、この2点をよく理解しておいてください。そして、希望に当てはまる未入居物件が見つかった際には、必ず保証内容を契約前に確認しましょう。
【ポイント3】建物の状態は問題がないか?
上記の通り、未入居物件は新築物件に比べると保証が手厚いとは言えません。そこで肝心なのが、購入時に建物の状態を確認しておくことです。
「完成してから人が1年以上住んでいないなら、ほぼ新築と同じコンディションなんじゃないの?」と考えてしまいがちですが、これは大間違い。その理由を説明します。
新築住宅の場合、契約を経て建物完成後から引き渡しまでの間に、「施主検査」や「内覧会」というプロセスを踏みます。内覧会ではデベロッパーや施工会社、現場監督などが同席のもと、キズや汚れ、不具合のチェックが行われ、万が一何か見つかった場合はその箇所を修理した上で買い主に引き渡し、となります。
ところが未入居物件の場合、言わば中古住宅と同じ扱いになるため、この「施主検査」や「内覧会」が省略されることが多いのです。これはつまり、内覧会があったら見つけられていたはずの初期の施工不良が1年以上の長期にわたって放置されてしまっているということ。
加えて、未入居物件はそもそも人気のない物件ですから、内見も頻繁には行われていません。そのため窓を開けての換気はほとんどされていませんし、電気を止めていることが多いので24時間換気もストップしています。もし施工不良による漏水や雨漏りが放置されていて、1年以上換気が行われていなかったら……。間違いなく、床下のみならず、部屋の中もカビだらけです。
「人が住まないと家は傷む」とよく言いますよね。それと同じことが起きているわけです。未入居物件は「新築」ではなく「空き家」なんだと考えておいたほうがいいでしょう。
マンションの場合は未入居であってもデベロッパーがちゃんと管理していたり、隣に住民が住んでいたりするため、戸建てに比べればリスクは低いと言えます。ただし、あくまで「空き家」であるということは念頭に置いておくべきです。
大事なのは購入前のインスペクション
そこで重要になるのが、さくら事務所のような第三者機関によるインスペクション。住宅に精通したプロのインスペクターが室内や外回りはもちろん、屋根裏や床下、給湯器などの設備機器などもくまなくチェックすることで、施工不良や不具合を発見することができます。保証期間内であれば修理費用も抑えられるので、保証内容の確認は必ずしておいてください。
インスペクションを活用するのにベストなタイミングは「契約前」ですが、売り主の意向などでそれができない場合は「契約後、引き渡し前」に、それも無理なら「引き渡し後」でも構いません。これまでお伝えしてきた通り、未入居物件には高い確率で大なり小なりの施工不良、不具合がありますので、ぜひインスペクションを活用して住宅のコンディションを整えてあげてください。「未入居物件の購入」と「インスペクション」はセットだと覚えておきましょう。
未入居物件には上記のような注意点こそあれど、価格交渉が比較的しやすく、新築より安く住宅を手に入れられる可能性があります。また、マンションであればどんな人たちが住んでいるのか雰囲気だけでもわかるかもしれませんし、共用部の様子や居住者の使い方、清掃状況を見れば、住み心地をイメージすることもできるでしょう。チェックの仕方次第では得られる情報はぐんと多くなります。
もし希望条件に合うようであれば、未入居物件の購入を検討する価値は大いにあると言えるでしょう。
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