東日本大震災から11年 大震災時の迂闊な一斉帰宅には要注意!

  • Update: 2022-03-11
東日本大震災から11年 大震災時の迂闊な一斉帰宅には要注意!
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はじめに

 今年で、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(「東日本大震災」は震原発事故を含む災害の名称)から11年が経とうとしています。その後の11年間にも、熊本地震大阪府北部地震北海道胆振東部地震など、多数の大きな地震がありました。「3.11」とも称される東北地方太平洋沖地震とはどういう地震だったのか、今後に生かすべき教訓は何か、振り返ってみます。

 東北地方太平洋沖地震規模は、マグニチュード9.0と日本周辺で観測された地震の中では最大です。世界的にみても1960年のチリ地震(M9.5)、1964年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ沖地震(M9.1)に次ぐ規模の大きな地震です。観測された最大震度は、宮城県栗原市の震度7です。 気象庁の観測による震度7の記録は、1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震に次ぐ3度目でした。警察庁のとりまとめでは、死者は15,899人、行方不明者は2,526人、建物の全壊122,000棟という甚大な被害が報告されています。

 ここ6年程に起きた熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振東部地震は、内陸直下で起きた活断層による活断層型地震でした。これに対して、東北地方太平洋沖地震は東北地方の東側沖合いで起こった海溝型地震です。活断層型地震は、内陸直下の比較的浅い場所に震源があることから、近くにある都市における建物の倒壊が特徴と言えます。一方で、海溝型地震は震源が都市から距離が離れていることが多いものの、活断層型地震より規模が大きいために大きな長い時間の揺れと、地震の起き方によっては大きな津波を引き起こすことがあることが特徴です。今後発生が懸念される、南海トラフ千島海溝で発生が懸念される巨大地震も海溝型地震です。

 東北地方太平洋沖地震では、様々な被害が発生しました。今後の地震災害に備えが進むよう、とくに特徴的な被害として海溝型地震による巨大な津波長周期の大きな揺れ、都心部では帰宅困難者という点にクローズアップして、解説いたします。

海溝型地震で懸念される津波

 東北地方太平洋沖地震では、東日本太平洋岸の広い範囲に津波が襲来しました。日本気象協会のまとめによると、福島県相馬港の観測値が 9.3m、岩手県宮古から福島県相馬まで沿岸の津波高は概ね 8~9mあったとされています。気じく、津波による浸水高は岩手県北部から宮城県牡鹿半島で10〜15m、最大で岩手県大船渡市において40.1mにまで遡上していたことが報告されています。警察庁によると、震源に近く被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県(被災3県)において、亡くなった方の死因の9割以上が溺死と報告されており、津波によって命を落とされた方が極めて多い地震であったといえます。消防庁のまとめでは、東北地方太平洋沖地震によって岩手県、宮城県、福島県で亡くなった方の56.35%が65歳以上の方(40歳未満の方は14.5%)であり、津波から逃げ遅れて亡くなった高齢者が多かったとされています。

東北地方太平洋沖地震で亡くなった方の死因(岩手県、宮城県、福島県)出典:警察庁HP

 津波はどのように起こるのでしょうか。海底を震源とした大きな地震が発生すると、海底の断層の動きで海底が大きく持ち上がって海面が押し上げられます。押し上げられた海面が、水の塊となって周囲に広がっていき、沿岸に押し寄せることで津波となります。津波は、沿岸部では入り組んだ湾では湾の奥に向けて波が高くなる現象や、岬や半島があると回り込んで波が高くなることがあります。東北地方太平洋沖地震の津波でも、三陸地方に特有なリアス式海岸や、太平洋に突き出た千葉県銚子の南側の旭市などで、このような現象が発生しました。

津波の起こるメカニズム(気象庁HPより

 

 津波は、ザバザバと浜辺に押し寄せる波とは異なり、海水そのものが持ち上がって押し寄せてくるので、大きな破壊力を持っています。普通の波の高さと同じように考えることはできません。内閣府の試算では、津波に巻き込まれた際には津波の高さ0.3m以上で死者が発生し、1.0mで死亡率100%に至るとして計算されています。津波の速さは、水深が深い所では時速数100kmから1000km以上、水深が浅くなるほど速度は遅くなり、陸上に遡上してからは時速36km程度と言われます。街中を走る車の速さ並みですが、短距離に換算すると100mを10秒で走る速度に相当します。オリンピックの100m走のトップ選手並みの速度であり、目の前に津波が見えてから平らな場所で走って逃げ切ることは難しいといえます。津波が陸上に押し寄せる前に避難を完了しておきたいです。

 津波の被害を免れるためには、まず津波ハザードマップで、津波による浸水が想定されている地域にあるか、想定されている場合は浸水深の確認をしておくことが必要です。津波ハザードマップでは、指定緊急避難場所津波避難施設津波避難ビルなど)、避難経路の位置も記載されています。津波の被害を受けないためには、理想的には津波の浸水が想定される区域外に住むことですが、区域内に居住・生活される際には迅速な避難が必須となります。津波警報大津波警報、また感じたことがない揺れに見舞われた場合などは、迅速に避難を開始することが重要です。津波の浸水域にお住まい、またお勤め等の場合は、平時から避難先や経路について確認するとともに、持ち出し袋を準備し、定期的に避難訓練を行うなどで備えることが求められます。

津波避難施設(津波避難ビル)の表示の例・千葉県旭市

 日本では、北海道東方沖千島海溝北海道西方から新潟県沖日本海東縁部、本州東方の日本海溝三陸沖から房総沖)、関東地方南方の相模トラフ、西日本南方の南海トラフなど、海溝型地震の巣のような位置にあります。海溝型地震は過去数十年〜数百年ごとに繰り返し発生して、沿岸部に大きな被害をもたらしています。また、南米など遠くで発生した地震による遠地津波といわれる津波で被害をもたらすことも懸念されます。冒頭に書いた、1960年に起きたチリ地震津波では、日本でも三陸地方で高さ最大6mほどの津波があり、142人の方が亡くなっています。

 東日本太平洋沖地震の発生した3月11日、東北地方沿岸では気温0~5度程度とまだ寒い時期でした。津波に巻き込まれて逃げ延びた方は、水に濡れたことや防寒具、暖房がないことなどにより、低体温症となった方が発生しました。宮城県下の二次、三次医療機関への聞き取りでは、発災から72時間以内に入院した偶発性低体温症症例が102例あり、そのうち津波に巻き込まれたことによるものが71.6%とされています(出典)。今後も津波をもたらす地震では、津波から逃げ延びても、体が濡れて着替えが無かったりや屋外で過ごすことなどで低体温症が懸念される「低体温症要対処者数」の発生が想定されます。巨大地震が繰り返し発生している千島海溝日本海溝を震源とする地震が、冬の深夜に発生した際の想定として、津波による死者は最大で千島海溝の地震で約10万人、日本海溝の地震で約19万9000人と報告されています。冬場に津波を伴う地震の発生時には、寒さや凍結、積雪などで避難行動が遅れることも懸念されますが、早期避難と寒さ対策が要点になります。

長周期地震動〜高層ビル、タワーマンションで揺れの懸念

 地震には、揺れ方の「周期(揺れが1往復する所要時間)」があり、ガタガタとしたこきざみな揺れ方から、ユッサユッサとゆっくりした揺れ方があります。巨大な地震では、揺れの周期が数秒〜10秒以上でゆっくりと長く揺れる、長周期地震動」が発生することがあります。「低周波地震動」と呼ばれることもあります。長周期地震動による揺れの大きさを示す指標として、気象庁では東日本太平洋沖地震後の2013年以降、「長周期地震動階級」が用いられてます。気象庁によると、長周期地震動階級が用いられる前に発生した東北地方太平洋沖地震では、東北〜関東で最大の長周期地震動階級4に相当する長周期地震動があったとされています。

長周期地震動階級(気象庁HPより)

長周期地震動による揺れの長い揺れの周期と、背の高い高層建物じたいの揺れやすい周期が一致すると「共振」と呼ばれる大きく長時間揺れ続ける現象が発生することが知られています。また、長周期地震動は震源から遠い場所にも伝わりやすい傾向があります。高層ビルタワーマンションなどでは 長周期地震動によって立っていられないほどの大きな揺れに見舞われることが懸念され、家具什器が大きく移動してきたり、転倒する危険性や、内装材天井材の変形、損傷が発生することが懸念されます。

長周期の地震と短周期の地震のイメージ図

 気象庁によると、東北地方太平洋沖地震の際に、震源から遠く離れた大阪市住之江区南港ある、大阪府咲洲庁舎において大きな揺れが観測されたと報告されています。咲洲庁舎で観測された揺れの大きさは震度3でしたが10分以上の間揺れが続き、52階では1m以上の揺れ幅に揺れが発生、エレベータの閉じ込めや内装材の破損などがあったとされています。今後、南海トラフ巨大地震などで、長周期地震動による大きな揺れに見舞われることが懸念されます。

 長周期地震動への備え・対策はどのようなことができるでしょうか。東京都によると、想定される被害は設備エレベータなど)、非構造部材天井板間仕切り板)、家具の転倒・滑動があり、上階ほど影響が大きくなるとされています。建物レベルでは鋼材ダンパー、オイルダンパー等による補強のほか、居住者・利用者側としては、まず家具や什器については床や天井、壁に固定する、キャスター付きのものは固定する、居室であれば寝ているところに家具などが倒れてこないようにすることなどがあげられます。地震の揺れによって、家具などは倒れる、落ちてくる、移動してくるという3つのパターンで人に被害を与えますが、とくに長周期地震動では大きな移動がある可能性を踏まえた対策が必要です。

帰宅困難者〜次は、帰ってはいけない

 東北地方太平洋沖地震の起きた2011年3月11日14時46分は、平日である金曜日の午後でした。首都圏勤務通学されていた方は、金曜日の午後に大きな地震があり、その後も何度も地震があって鉄道は止まり、「帰宅難民」として大変な思いをして帰宅された方も少なくないでしょう。内閣府によると、帰宅困難者は515万人に及んだとされています。

 地震発生後、首都圏では巨大な地震の揺れを受けて鉄道は軒並み運休し、首都高速道路も全面通行禁止となりました。しかし、市街地における多数の家屋倒壊や延焼を繰り返すような大規模な火災などはありませんでした。液状化の被害などがない場所では、交通の混乱を除けば歩いて帰れる状況となっていました。私も当時、帰宅困難者の一人として千代田区内の勤務先から千葉県の住居まで、25kmほどを会社にあった自転車を借りて帰宅しましたが、道路の車は全く流れず未曽有の大渋滞に、途中では喧嘩のような混乱状況も目にするほどでした。

 しかし、今後発生が想定される首都直下地震では、シビアな想定がされています。政府の被害想定ではまず、都心部の周囲を環状に取り囲むように全壊・消失棟数が多いエリアが存在します。このような木造住宅密集地域木密地域)は、東は荒川沿いから西に環状七号線環七)沿いにドーナツ状に広がっています。東京都などは不燃化事業を進めていますが、未だ木造住宅の密集する地域が多くあります。このような地域では、家屋の倒壊や大規模な火災発生の可能性が懸念されます。耐震化の進んだビル等の多い都心部から、千葉県、埼玉県、東京都西部、神奈川県などのベッドタウンに帰ろうとしてしまうと、この環状の地域に向かうことになってしまいます。上記被害想定では、焼失家屋は 最大約41万2000棟建物倒壊等と合わせ最大約61万棟死者は最大約1.6万人、建物倒壊等と合わせると最大約2.3万人と想定されています。

首都直下地震による全壊・焼失棟数(都心南部直下地震、冬の夕方、風速8m/秒)出典:内閣府HP

 さらに、帰宅困難者を一時的に受け入れて休憩や帰宅する際に拠点となる施設として、「一時滞在施設」というものがあります。公共施設のほか、民間のビルやホテルなどの民間一時滞在施設もあります。しかし、昨年の日本経済新聞の記事では、「休日に開設できない恐れのある自治体が、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の主要29市区の9割に上る」との内容が掲載されました。大きな地震発生時には担当者が対応できない、そもそも担当者や施設自体も被災している可能性も考えられますし、開設されている情報がある一時滞在施設に人が殺到することもリスクでしょう。

 国の想定では、首都直下地震では帰宅困難者が約 650万人(東京23区で350万人)発生すると想定されています。地震発生時には、建物の倒壊や損壊、火災の発生、交通網の寸断、道路などの破損など、様々な危険な状況が発生します。人の移動により、消防や救急の活動にも影響し、助かる命が助からなくなることもあります。国は内閣府のパンフレットにおいて、「むやみに移動しない」「安全な場所にとどまる」、帰宅については「安全に帰ることができるか確認したら帰宅を開始」ということを薦めています。

大地震時の一斉帰宅抑制を促すポスター(JR上野駅・2021年2月28日撮影)

 家族が心配だということもあるでしょうが、そのために家族は無事であっても帰宅しようとして被害に遭ってしまった、という悲しいことがないようにしたいものです。自宅は可能な限り揺れや火災のリスクの少ない立地を選び、耐震性防火性の高い住宅として、十分な備えをしておくことが望ましいです。地震があっても、在宅の家族も首都圏に出勤等している人もお互いに安心できるような日ごろの備えが求められます。

 東北地方太平洋沖地震のあの日、帰れてしまったことは、「負の教訓」であるともいえます。あの日以上の大きな地震があった際は、帰宅することで大きな被害に巻き込まれてしまうこともあります。むやみに移動を開始せず、信頼できる情報を得た後に移動することを心掛けましょう。オフィスでの備え家庭での備えや大地震発生時の行動などについて、ぜひ3.11から11年を迎える今こそ、家族や会社で話し合っておくことが求められます。

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