8月1日、関東甲信地方と東海地方で梅雨明けが発表されました。平年に比べ10日以上も遅い、夏の到来です。ただ、喜んでばかりもいられません。8月3日には台風4号が強い勢力に発達しています。そう、台風シーズンの到来でもあるのです。
台風といえば、2019年の台風15号、19号による被害が思い出されます。15号では約8万棟、19号では約10万棟の住宅が被災しました。ここでは、台風による被害も含めたいわゆる「風害」によってどのような被害が起こり得るのか、そしてそれを防ぐにはどうすればいいのかを、特に戸建て住宅に限定してご紹介します。新築でも中古でも、基本的な考え方は変わりません。住宅の購入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
「瓦屋根=風害に弱い」は間違い!ただし施工時期には要注意
まず、強い風によって特に損傷しやすい箇所はというと、屋根です。2019年の台風15号によってたくさんの戸建て住宅の屋根が吹き飛ばされ、ブルーシートで損傷箇所が覆われていた様子は多くの方がニュースでご覧になったことでしょう。
さて、屋根にはさまざまな材料が用いられています。昔ながらの陶器瓦、化粧スレート(セメントに繊維素材を混ぜたもの)、ガルバリウム鋼板やトタンなどの金属屋根といったところがメジャーです。屋根材の違いによって、風害による被害は異なるのでしょうか。
前述のブルーシートで覆われた住宅は瓦屋根が多かったため、ひょっとしたら、「瓦屋根=風害に弱い」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが…。
瓦屋根に関して言えば、「2001年以降に施工された瓦屋根は安心」な可能性が高いです。
1995年の阪神・淡路大震災を受けて、建設省(現在の国土交通省)は2001年、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」を策定しました。これは屋根の躯体にビスや釘で瓦を固定してくださいという内容で、このガイドラインに則って施工された瓦屋根は、2019年の台風19号でもほぼ被害がありませんでした。瓦という材料は耐久性に優れ、断熱性も高いため、「瓦屋根=風害に弱い」ということは決してなく、屋根材として瓦は優れた材料であるとお考えいただいて問題ありません。
では2001年より前、つまり「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」のできる前に施工された瓦屋根はどうでしょう。
昔の瓦屋根は、粘土に瓦を載せて銅線などで瓦同士をつないで固定しているだけでした。そのため、一定以上の強さの風が吹けば、ひとたまりもありません。2019年の台風15号や19号で屋根に被害を受けた住宅のほとんどは古い住宅、つまりガイドライン策定前に施工された瓦屋根でした。
中古住宅の購入を検討している場合、もしその屋根が瓦屋根だったら、工事の時期には注意してください。
屋根材としてはガルバリウム鋼板の金属屋根が最も安心
戸建て住宅の屋根材として最も多く使われている化粧スレートはどうでしょう。スレートは比較的コストが低く、軽量でデザイン性が高いため、人気です。
デメリットとしては、定期的なメンテナンスが欠かせないということ。ひび割れしやすかったり苔が生えやすかったりという特徴があり、耐久年数も30年程度とされています。
一方、最近よく見られるガルバリウム鋼板の金属屋根は風害に強いと言っていいでしょう。デザイン性が高く、丈夫で人気です。また、強風で飛ばされたという事例はあまりありません。
ただし、同じ金属屋根でも、古い住宅や倉庫でよく用いられているトタン屋根はしばしば強風で飛ばされています。屋根を固定していた釘ごとスポッと抜けて屋根がまるごと吹き飛ぶことがあり、こうなると周囲の住宅にも被害が及ぶため、非常に危険です。
新築の住宅で屋根材として使われることはまずありませんが、中古の住宅では、まれに使われていることもあります。ご注意ください。
風雨にさらされる「雨樋」のチェックも欠かさずに
屋根の次に風害の被害を受けやすい箇所といえば、雨樋です。強風や積雪によって雨樋がゆがんでしまったり、外れてしまったりということがあります。
チェックポイントとしては、外壁との固定の仕方。古い雨樋は金具で簡単に固定しているだけなので、風などの強い力がかかるとすぐに破損してしまいます。
一方、比較的新しい住宅の雨樋はゆがみにくい素材で作られており、外力に耐えられるようにしっかりと固定されています。建物の間取りや外観のデザインなどに比べるとはるかに地味なチェックポイントではありますが、強い風によって雨樋が被害を受ける可能性があるということを知っておくことは必要でしょう。
複層ガラスや網入りガラスの強度を盲信してはいけない
屋根、雨樋と、ここまでは住宅そのものが被害を受ける例について紹介してきましたが、風害の被害には、どこかから飛んできた物によって住宅がダメージを受けるケースもあります。
たとえば、近隣の住宅の屋根瓦が自分の住宅に吹き飛んできたら…そう、窓が心配です。
窓は、屋外に接している部分の中で最も強度の低い箇所。最近では窓に複層ガラスや網入りガラスを入れることが多いですが、決して、そこまで強度が高いわけではありません。強風にあおられて硬いものが飛んできたら、割れてしまいます。
これを防ぐには、雨戸やシャッターを閉めるのが一番。ただし、古い住宅だと、雨戸の戸袋ごと風で飛ばされた事例があります。
雨戸があることに安心するのではなく、経年劣化していないかどうか、その状態にも気を配るようにしてください。
さくら事務所の「災害リスクカルテ」でリスクをできるだけ低く
台風による風害はもちろん、大雨による水害、地震、津波などによる被害をできるだけ避けるには、市町村が公表しているハザードマップをチェックすることが欠かせません。
しかし、これはあまりよく知られていないことですが、実はハザードマップで確認できるのは、8~9戸分など、ある程度まとまったエリアの災害情報だけ。
さくら事務所のサービス「災害リスクカルテ」では、購入を検討中の物件や土地の「ピンポイント」の災害情報が確認できる上、専門家によるアドバイスを受けることも可能です。
日本で暮らす以上、災害のリスクを無視することはできません。後悔のない住宅選びの一助として、ぜひご活用ください。