水害を受けにくい戸建て住宅とは?

  • Update: 2020-09-08
水害を受けにくい戸建て住宅とは?

記憶に新しい2019年の台風15号、19号による甚大な被害。9月5日に発生した台風15号では、1都7県(東京、神奈川、静岡、千葉、埼玉、栃木、茨城、福島/消防庁応急対策室)で「全壊」が391棟、「半壊」「一部損壊」が7万6,483棟、「床上・床下浸水」が230棟と、計7万7,104棟が被災しました。

そして10月12日に上陸した台風19号は、観測史上最大の降雨量をもってより広範囲に被害をもたらし、全国で「全壊」が3,280棟、「半壊」「一部損壊」が6万4,705棟、「床上・床下浸水」が3万929棟。実に9万8,914棟が被害を受けました。

住宅選びに際して、価格や間取り、デザインなどはもちろん大切です。しかし、こういった相次ぐ天災により、それ以上に「災害に強い」という点が重要視されるようになってきました。
ここでは、新築、中古に限らず、戸建てを購入する場合のチェックポイントについてお伝えしていきます。

災害リスクカルテ

戸建てに住むなら、まずはリスクの低い立地を選ぶ

まず、「戸建て」には3種類の構造があります。建材に木材を使った「木造住宅」、柱や梁などに鉄骨を用いた「鉄骨造住宅」、柱や梁、床、壁が鉄筋とコンクリートで構成される「鉄筋コンクリート造(RC造)住宅」の3種類です。
実は、戸建ての大半を占めるのが木造住宅。建築費が安く済み、通気性に優れ、リフォームがしやすいというメリットがあるからです。ところが、きちんとメンテナンスしなければ水害の被害を受けやすくなります。河川の氾濫などの災害によって古い戸建てが倒壊したり、濁流に流されたりという映像をご覧になった方は多いと思いますが、そういった住宅のほとんどは木造住宅なのです。
…では、木造住宅は避けたほうがいいのでしょうか。いえ、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅でも、そのエリア自体が浸水してしまえば住宅の構造に関係なく被害は受けることになります。
つまり、最も重要なポイントは、「立地」です。洪水ハザードマップなどで調べて、リスクの低いエリアをまずは探しましょう。構造について考えるのは、それから。木造でも水害に遭いにくい構造になっているものはありますし、定期的なメンテナンスを心がければ、被害を受けるリスクを減らせます。構造は、メリットとデメリットを天秤にかけて選択すればいいでしょう。
次の3つのポイントのいずれか、もしくは複数の項目に当てはまる戸建て住宅は、水害に遭うリスクが極めて高くなります。構造にかかわらず、です。

  • 水害のリスクに遭いやすい土地に位置している
  • 先天的、あるいは後天的な構造上の問題を抱えている
  • メンテナンスを怠っている

水害に遭うリスクが高い戸建て住宅の3条件

「水害のリスクに遭いやすい土地に位置している」かどうかは、洪水ハザードマップを調べればわかります。洪水が起こった場合にどれくらいの深さまで水が来るかを想定した「浸水深」という数値が掲載されているのをご存じでしょうか。
浸水深が0~0.5メートルなら床下浸水、0.5~1メートルなら床上浸水、1~2メートルなら1階の軒下まで浸水、2~5メートルなら2階の軒下まで浸水、5メートル以上なら2階の屋根まで浸水する恐れがあります。浸水リスクがゼロのエリアがベストではありますが、そういったエリアは限られます。
目安として、浸水深が2メートルを超えるエリアで戸建てを選ぶことは極力避けるようにしてください。

「先天的、あるいは後天的な構造上の問題を抱えている」という点に関しては、例えば、居室が半地下や地下に設けられた物件、前面道路より下がった位置に玄関や駐車場がある物件などが挙げられます。
これは人為的に低地を作っている状態なので、水害に遭いやすい構造だと言えます。見た目にもわかりやすいですよね。ハザードマップで洪水リスクが低いとされているエリアであっても、安心はできません。
建物の高さ制限や軒の高さ制限を守るために建物の基礎を低くした戸建て住宅も見られますが、同様の理由で水害のリスクが高いと思っておいたほうがいいでしょう。

「メンテナンスを怠っている」については、どうでしょう。
少し意外かもしれませんが、2019年の台風19号の直後にさくら事務所に寄せられた住宅相談のうち、最も多かったのがバルコニーの水害被害に関するものでした。そう、浸水は床からだけでなく、屋根や壁、そしてバルコニーから起こることもあるのです。
具体的には、建物と一体化して作られたバルコニー。水が入る隙間などないように思えますが、時間の経過とともに劣化し、特に建物との接合部から雨水が染み込み、建物内部に浸水するケースがあります。
定期的なメンテナンス、清掃を怠ると致命傷になりかねません。

壁や屋根のメンテナンスも怠ってはいけない

定期的なメンテナンスが必要だと言われても、他にはどのような箇所に注意すればいいのでしょう。
さらに例を挙げれば、外壁の窓周りにクラックが生じ、そこから浸水するケースがあります。
特に窓や扉など開口部の周辺には地震などで負荷がかかりやすく、クラックが生じやすくなります。壁の開口部といえば、エアコンの配管穴もありますね。ここから雨漏りが発生する事例も多いため、注意が必要です。

浸水被害には、屋根からの雨漏りもあります。屋根の構造によってリスクが異なりますので、ぜひ知っておいてください。
まず、人気の「陸屋根」、これは勾配がほとんどなく平たい形状のものですが、最もリスクが高いです。傾斜がないぶん、水が長期間滞留しやすくなり、屋根や防水層が傷みやすくなります。
次いで、最近よく見る「片流れ屋根」。屋根が一方向だけに傾いた形状ですが、雨がその方向だけに流れるため、雨樋への負担が大きくなります。
そして、4方向に傾斜が作られた「寄棟屋根」、傾斜が2方向の「切妻屋根」の順にリスクは低下していきます。
いずれにしても屋根は常に濡れるわけですから、部材のメンテナンスや雨樋の清掃など、気配りを忘れないようにしてください。

とはいえ、住宅の全方向に完璧なメンテナンスを施すのは難しいものです。
さくら事務所では、「雨漏り・漏水解決相談」というサービスを展開しており、雨漏りや水漏れの原因を推測し、想定される被害範囲や今後の対処方法についてアドバイスを行っています。
現在のお住まいに関して「雨漏りが発生しているようだが原因がわからない」「カビが出てきて困っている」といったご不安がありましたら、いつでもご利用ください。
建物に精通したホームインスペクター(建築士)が現地で調査を行い、必要になる補修や工事についてもアドバイス致します。

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 災害リスクカルテは、過去345件超の物件で発行しています。それらの傾向から、約47.3%の物件で何らかの災害リスクが「高い」という結果となり、水害に関しては55%の物件で浸水リスクがある」(道路冠水以上、床下浸水未満を超える可能性あり)という結果が得られています。

 災害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。

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■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)

横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター

地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
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