耐震診断とホームインスペクションの違いってなに?

  • Update: 2024-03-04
耐震診断とホームインスペクションの違いってなに?

「耐震診断とホームインスペクションの違いがよくわからない」

「それぞれどんな検査をするの?」

「自分の場合はどちらの診断を活用すべきなのだろうか?」

このような悩み、疑問に対して答えていきます。

結論から言うと耐震診断とホームインスペクションの主な違いは下記の3点です。

  • 検査目的
  • 検査項目
  • 検査費用

目的と異なる検査を選んでしまうと、知りたい情報が手に入らなかったり、不具合を見落としてしまったりなどのトラブルに遭うことも考えられます。

そこで、この記事では耐震診断とホームインスペクションのどちらを選ぶべきかを判断できるように、下記内容について解説します。

  • 耐震診断とホームインスペクションの違い
  • 耐震診断をお勧めする物件の特徴
  • 耐震診断とホームインスペクションを併用する効果

について解説します。ぜひ最後までお読みください。

自宅一戸建てホームインスペクション

耐震診断とホームインスペクションの違いとは

耐震診断とホームインスペクションは大きく分けると、以下の3つで違いが見られます。

  • 目的
  • 検査内容
  • 費用相場

まずは、どのような違いがあるのかをチェックしましょう。

目的

耐震診断の目的は、建物の耐震診断に特化して調査することです。耐震診断は下記の講習を修了し、認定された建築士が実施します。

  • 国土交通大臣登録耐震診断資格者講習
  • 各都道府県主催の講習会

一方、ホームインスペクションの目的は、ホームインスペクター(住宅診断士)が欠陥や改修すべき箇所の有無など建物の不具合や劣化状況を中心に調査することです。耐震診断のように必ずしも耐震性能を確認できるわけではない点に注意が必要です。

検査内容

耐震診断(木造住宅)の調査方法は下記の2種類に大別されます。

  • 一般診断法
  • 精密診断法

一般診断法とは、屋根裏や床下、基礎、外周などの非破壊による目視検査のことです。図面の情報から必要な評点を算出し、劣化状態を含めて総合的に建物構造の強さを評価します。調査時間はおよそ2~3時間で、コストを抑えてできることが特徴です。木造住宅の耐震診断としては一般的な診断方法になります。

精密診断法とは柱や耐力壁などすべての重要構造を必要に応じて部分的に解体し、厳密にチェックする検査です。図面による分析も一般診断法よりも詳細な計算を行って評価します。一般診断法よりもコスト面でやや割高となるほか、調査時間も半日~終日と少し長めです。

一方、ホームインスペクションは下記部位について打診や目視など、非破壊によるチェックを実施します。

  • 屋根裏
  • 床下
  • 基礎
  • 外壁
  • 外周 
  • 室内

現在潜んでいる不具合状況のチェックのほかに、将来必要になるメンテナンス内容や時期なども判断する、いわゆる「家のお医者さん」のような役割を担っています。

費用相場

耐震診断とホームインスペクションの費用相場は以下のとおりです。

調査種類

費用相場(税込み)

耐震診断

(耐震診断報告書付き)

71,500円

ホームインスペクション

(基本コース)

66,000円

なお、こちらの費用相場はさくら事務所で提供しているサービス料がもとになっています。依頼する業者によって費用は前後するため、耐震診断やホームインスペクションの活用を検討している方は事前に確認しておくと安心です。

耐震診断は耐震基準適合証明書の取得が可能

耐震診断を受けて耐震基準に適合していれば、耐震基準適合証明書と呼ばれる書類が取得できます。この書類は中古住宅購入において、あらゆるメリットを得られます。

ここでは耐震基準適合証明書の概要やメリットなどを解説します。

記事の内容を理解して、ぜひ活用してください。

耐震基準適合証明書とは

耐震基準適合証明書とは、建物が耐震基準を満たしていることを示す証明書です。耐震診断の結果を上部構造評点という点数で評価し、1.0以上となれば発行できます。なお、耐震基準適合証明書が示す耐震基準とは、昭和56年6月1日に改正された建築基準法に沿ったものです。

昭和56年6月1日に改正された新耐震基準とは、以下のような違いがあります。

耐震基準

旧耐震基準

震度5程度の地震では倒壊や崩壊はしない

新耐震基準

震度5程度の地震で軽微なひび割れが生じる恐れがあるものの、震度6強もしくは7程度の地震では倒壊・崩壊はしない

上記の違いが見られることから、昭和56年5月31日以前に建築確認申請を受けた建物は耐震基準適合証明書によって新耐震基準を満たしているかどうかを判断します。

耐震基準適合証明書の発行で得られるメリット

昭和57年1月1日以前に完成(完了検査を受けた)建物の場合、耐震基準適合証明書の発行で下記メリットが受けられます。

  • 住宅ローン控除が利用できる
  • 所有権の移転登記などに必要な登録免許税が軽減される
  • 不動産取得税が安くなる
  • 地震保険料が割引される
  • 贈与税の非課税措置が受けられる

以上のように、控除や軽減措置を活用したい場合は、耐震基準適合証明書を発行してもらいましょう。いずれも面積要件などによって受けられる控除や軽減措置が異なります。利用したい方は最寄りの税務署でご確認ください。

耐震診断をしておきたい住宅の特徴とは

耐震診断をしておきたい住宅の特徴は、主に以下のとおりです。

  • 老朽化が目立つ
  • 1階の壁面積が少ない
  • 外壁線が揃っていない

とくに耐震診断をしておきたいのは、現行の耐震基準が適用されていない住宅です。耐震基準は建築基準法に定められている最低限の耐震性能基準のことを指し、住宅建築の際には必ず守られなければいけません。

耐震基準は大規模地震が発生するたびに改正され、強化が図られてきた経緯があります。とくに昭和56年6月の建築基準法改正で定められた耐震基準は大幅な見直しがあり、非常に大きな転換点となりました。

過去の大規模地震では「旧耐震基準」で建てられた住宅の多くが深刻な被害を受けていることから、住宅の耐震化整備は国を挙げての急務となっています。1995年には「新建築基準」を満たさない建築物に対し、耐震診断や耐震のための改修を促すことを目的とする法律「耐震改修促進法」も施行されました。2025年までには耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することなどを目標として、耐震診断や耐震改修に対する支援制度なども設けられています。

以上のことからも「旧耐震基準」で建てられた住宅は耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強をしておくべきといえるでしょう。そして「新耐震基準」で建てられている住宅であっても、経年によって必ず劣化します。本来の耐震性能を維持するためにも、定期的に建物のコンディションをチェックすることをおすすめいたします。

ここでは、耐震診断をしておきたい住宅の主な特徴を見ていきましょう。

老朽化が目立つ

経年劣化などによって老朽化が進むと、耐震性能も低くなります。たとえば、以下のような劣化が起きていると耐震診断を検討するといいでしょう。

  • 壁や天井にひび割れがある
  • 壁紙にシワができている
  • 玄関ドアや窓の建て付けなどが悪くなっている

これらの異変が見受けられたら、建物に歪みが生じているかもしれません。

1階の壁面積が少ない

1階の壁面積が少ないと耐久性能が低い傾向にあります。以下のような構造になっていると耐震性能はあまり高くないため、早めに耐震診断を受けるといいかもしれません。

  • 1階に1辺4m以上の吹き抜けがある
  • 1階に20畳以上のリビングがある
  • 1階部分を店舗や倉庫、車庫などに使っている

ただし1階の壁面積が広くても、バランス良く壁が配置されていないと耐震性能はあまり期待できません。建物を上から見たときの形に凹凸が少ないと、耐震性能も高くなります。

外壁線が揃っていない

耐震診断を受けたほうが良い住宅の特徴の一つに、外壁線が揃っていないことが挙げられます。外壁線とは上の階から1階までの外壁をつないだ線のことです。1階よりも上の階のほうが飛び出していたり、上の階よりも下の階のほうが大きかったりすると耐震性能が低くなる傾向にあります。

耐震診断とホームインスペクションを同時実施は効果的

耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)では実施する目的が明確に異なります。

診断内容も違うため、同時に実施し双方のデータを共有することで、建物のより正確な状態を知ることが可能です。

とくに築年数の古い建物は、より正確な情報をもとに適正な修繕やリフォームなどを計画的に行えます。

また中古住宅を購入する場合も、耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)を同時に実施することが非常に効果的です。

建物の性能とコンディションを知り「欠陥住宅」や「買ってはいけない住宅」を見極めることで、リスクの少ない取引ができます。

そして耐震診断で評点が適合した物件は、「耐震基準適合証明書」の取得が可能です。

「耐震基準適合証明書」を取得すると築20年以上の物件でも住宅ローン控除が使えるようになり、その他にも税制で優遇措置を受けることもできます。

耐震診断・ホームインスペクションをうまく活用し、安心の住まいを手に入れよう

耐震診断とホームインスペクション(住宅診断)は目的が異なるため、住環境に合った方法で実施を検討してみてください。

今後も地震や台風など、どのような自然災害に遭遇するかわかりません。万が一に備えて適切なメンテナンスをすると住宅が持つ性能を維持でき、家族の安心と安全が守られます。とくに築年数の古い建物にお住まいの方は自宅の性能を知り、必要に応じて強化を図ってみるといいでしょう。

さくら事務所の中古一戸建てホームインスペクションでは住宅の状況をチェックしたのち、改修箇所についての適切なアドバイスを実施しています。また耐震診断サービスでは建物に精通したホームインスペクター(建築士)が、ご希望物件について専門的に耐震診断や耐震基準適合証明書の発行を行っています。中古住宅の購入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。