長年住んでいて水害がなかった場所でも、被害が発生する理由

  • Update: 2021-10-01
長年住んでいて水害がなかった場所でも、被害が発生する理由

都市型水害とは?

従来の農地などが広がっていた土地利用から、人口増加によって都市が発展すると、「都市型水害」と呼ばれる水害の発生が問題視されるようになってきました。都市は限られた土地に人々が多数居住する空間であるため、川はコンクリート張りの護岸で直線化され、地面は道路としてアスファルト舗装、また住居でもコンクリート等で覆われた部分や地下利用が増えるなど、人の居住や活動を最優先とした整備が進んでいきます。

こうした都市化が進んだ場所に、集中豪雨や局地的な大雨が降ると、本来は地面から地下に染み込んでいくはずの水は地表を流れていきます。水は低いところに集まっていき、下水の処理能力等を超えてしまうと水があふれ、浸水する「内水氾濫」が発生しやすくなります。内水氾濫は、川の堤防が決壊したり堤防を川の水が超える「洪水(外水氾濫)」とは異なり、近くに川などがなくても発生することがあり、高台でも周りより低い場所では発生することがあるなど、「川があふれる」パターンではないことに注意が必要です。

だいち災害リスク研究所 横山芳春 作成

ただし、都市型水害は内水氾濫だけでなく、雨水が地下に浸透しづらいために川の堤防が決壊したり堤防を川の水が超える「洪水(外水氾濫)」を引き起こすこともあります。また、大きな川の水位が高くなっているため、住宅街の水路から大きな川への排水が上手くいかないことで、内水氾濫を招くことや被害が大きくなるところもあります。

都市型水害の原因となる大雨は増えている

都市型水害は、都市化が進んだ場所に、集中豪雨や局地的な大雨が降ると発生しやすい災害であるといえます。近年では、世界的な地球温暖化の影響や、人為的活動による排熱や舗装などにより蒸発する水の量が少なくなることで、都市部の気温が高くなる「ヒートアイランド現象」などが原因で、集中豪雨や異常気象が発生しているという見解もあります。

実際に、ここ数10年間における「1時間に50㎜以上」という非常に激しい雨の降る回数は年々増加傾向にあります。もちろん、自治体による下水道など整備は年々進んでおりますが、「想定外」の雨などによって、これまで何十年住んでいて水害がなかった場所でも、被害が発生することもあります。住んでいる場所が、水害の影響を受けやすい場所かどうか確認する事が求められます。

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アンダーパスや地下・立体駐車場などにも注意

都市部は、限られた土地を有効に使うため、また線路や道路を交差させるためにアンダーパスや地下街が多く、住居やオフィスビルでも、地下階や地下駐車場、立体駐車場などが多いことが特徴です。水は高いところから低いところに流れるため、都市型水害の面からは、こうした地下やアンダーパスは、水が流れこんできて危険な場所となります。

過去の事例では、地下商店街に水が流れ込んできて避難できずに亡くなった方や、アンダーパスを車で通行しようとして浸水深が深いために車が走行不能となり、脱出できずに亡くなった方の事例もあります。外出先や移動時に激しい豪雨があった場合には、地下階に滝のように水が流れ込んで溜まってきているような際は、迅速に安全な階段から地上階に避難する、アンダーパスを利用しない、また水が溜まっていて深さが分からないときは通行しないなどの対策が必要となります。

水害が想定される地域の住宅では、地下階や地下駐車場、立体駐車場が浸水し、機械室・電気室などの設備が水没して機能喪失したケースや、立体駐車場から車が出せなくなって水没してしまったケースもあります。地下や半地下階の利用の際には高額な品物を置かない、浸水深に応じて土嚢や止水板などを設置することも検討が必要です。

都市型水害への対策

東京都における都市型水害対策」によると、都市型水害に対する自治体側の対策としては、ハード面、ソフトをあわせた総合的な対策が必要とされています。ハード面では、河川の整備、下水道の整備、流域対策の推進、整備水準のステップアップと河川・下水道の連携など、ソフト対策では、洪水情報の提供、浸水予想区域図の作成・公表、洪水ハザードマップの作成・公表、避難・防災体制の整備・確立、広報・啓発などが挙げられています。

住民側の対策としては、まずその場所が都市型水害発生時に想定される内水氾濫、河川の洪水(外水氾濫)が発生しやすい場所か、自治体の水害に関するハザードマップを確認することが求められます。ハザードマップには、河川の洪水を対象としたものと、内水氾濫を対象としたものがあります(沿岸では、台風の際に海面が高くなることで起きる高潮を対象としたマップもあります)。

洪水ハザードマップでは例えば大きな河川だけが対象で、そこに流れ込む小さな河川が対象となっていないこともあるので、どの河川が対象となっているかを確認しましょう。自治体によっては内水氾濫を対象としたマップが作成されていないことがあります。そのような場合は、住んでいる場所が川からほとんど標高の変わらない低地にあるか、または周囲より低い場所で水が集まりやすい場合には、内水氾濫が起こる可能性を考慮することが求められます。

住んでいる場所の水害リスクを知った上で、想定される浸水深などがどの程度かによって、また、木造戸建て住宅か鉄筋コンクリート造のマンションかの構造や、その階数によって在宅による屋内避難可能(垂直避難)か、浸水が想定される区域から外に逃げること(水平避難)が望ましいかが異なりますので、「逃げる?逃げない?水害に遭ったとき、あなたが取るべき正しい行動」も併せてご確認ください。

※他の専門家コラムはこちらから

【コラム①(長嶋)】水害リスク・見るべき土地と自治体の情報とは
【コラム③(土屋)】知らないでは済まされない! 恐怖の水害事例(マンション編)
【コラム④(田村)】知らないでは済まされない! 恐怖の水害事例【戸建て編)

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