民法改正のポイント「契約不適合責任」、中古住宅売買はどう変わる?

  • Update: 2020-03-24
民法改正のポイント「契約不適合責任」、中古住宅売買はどう変わる?

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

では、改正民法で新設された契約不適合責任と旧来の瑕疵担保責任にどのような違いがあるのでしょうか?

中古住宅売買における変更点を解説します。

瑕疵担保責任との違い① 責任追及の方法が増える

瑕疵担保責任では「解除」と「損害賠償請求」しか認められていませんでしたが、契約不適合責任では「修補請求などの追完請求」「代金減額請求」が認められるようになりました。

買主にとっては責任追及方法のバリエーションが広がり、有利になったといえるでしょう。

瑕疵担保責任との違い② 「隠れた瑕疵(不具合)」でなくても責任追及できる

瑕疵担保責任が発生するには、瑕疵(不具合)が「隠れている」ことが必要でした。

つまり「買主が瑕疵に気づいていない、気づかなかったことに過失がない」ことが要求されたのです。

契約不適合責任では、瑕疵が隠れているかどうかは問題ではなくなりました。

買主が不具合に気づかなかったことに過失があっても契約不適合責任を追及できます。

瑕疵担保責任との違い③ 損害賠償は履行履歴まで請求できる

瑕疵担保責任と契約不適合責任では、損害賠償請求の範囲も異なります。

瑕疵担保責任では「契約が有効であると信じたことによる損失」、つまり「信頼利益」に限定されていました。

一方、契約不適合責任では「履行利益」まで請求できます。

履行利益とは「契約が有効であることを前提とする損害」、例えば「不動産の転売利益」などがあたります。

このように損害賠償請求の範囲が広がったことも、買主にとって有利になったと言えるでしょう。

瑕疵担保責任との違い④ 悪意や過失がないと損害賠償できなくなる

瑕疵担保責任の場合、売主が損害について善意無過失で責任がなくても買主は損害賠償請求できました。

契約不適合責任では、売主に帰責性(悪意や過失)がないと損害賠償請求できなくなります。

この点では改正内容が買主に不利に働きます。

瑕疵担保責任との違い⑤ 責任を追及できる期間は?

瑕疵担保責任では、「瑕疵を知ってから1年以内」に権利を行使しなければなりませんでした。

これに対し契約不適合責任では「不適合を知ってから1年以内に通知」すれば権利が保全され、具体的な対応は「不適合を知ってから5年以内」に受ければよくなります。

修補請求する場合、不具合に気づいてから1年以内に通知し、気づいてから5年以内に実際の修補を受けなければ権利が失われてしまいます。

瑕疵担保責任との違い⑥ 善意無過失のケースも解除可能に

契約不適合責任では、従来の瑕疵担保責任よりも「解除できるケース」が広がります。

これまでは「買主が善意無過失(その不具合を知らず、過失もない)」の場合にしか解除できませんでしたが、契約不適合責任ではその要件がなくなります。

民法改正で契約時の注意点はどう変わる?

民法改正で契約の注意点は?改正民法を前提とするとき、不動産の契約書作成の際に以下のようなことに気をつけてみて下さい。

契約時の注意点① 住宅に不具合がないかしっかり確認

まずは住宅に不具合がないかしっかり確認しましょう。

契約不適合責任を問えるといっても、トラブルが起こったら時間も労力もかかりますし、弁護士費用がかかる可能性もあります。

建物の状態や品質をしっかり調査し、不具合がないことを確認してから購入しましょう。

契約時の注意点② 追完の方法についての規定

民法の原則では、契約不適合責任で追完請求が行われた場合の追完の方法は、売主が指定できることになっています。

もしも「〇〇の場合には修補を優先してほしい」「〇〇の場合には不足分の引き渡しを優先してほしい」などの希望があれば、契約書に追完方法を明記しておく必要があります。

契約時の注意点③ 代金減額請求についての規定

民法の原則では、基本的に「追完請求」を先にしないと代金減額請求ができません。

もしも不具合が見つかったときにすぐに代金減額請求をしたい場合には、契約書に「追完請求なしに代金減額請求ができる」と定めておく必要があります。

契約時の注意点④ 免責特約に注意

契約相手によっては、契約不適合責任にもとづくさまざまな責任を「免責」するよう要求される可能性があります。

これまでの「瑕疵担保責任」においても、契約の際に双方が合意していれば、免責などの特約をつけることができました。

免責などの特約は、「契約不適合責任」においてもそれは同じです。

免責されたら、その責任は追及できません。

せっかく民法で権利が認められていても免責条項が多くなっていると意味がなくなります。

契約書にサインする前にどういった「免責特約」になっているのか確認注意しましょう。

契約時の注意点⑤ 契約不適合責任の期間に注意

個別民法の原則では、契約不適合責任は「不具合を知ってから1年以内に通知」し、「不具合を知ってから5年以内に履行を受ける」必要があります。

ただ契約によって契約不適合責任を問える期間を任意で規定することができます。

これまでの「瑕疵担保責任」でも、個人間の中古住宅売買の場合、売主が瑕疵担保責任を負う期間を3ヶ月、さらにその一部は免責とするという契約が一般的に多く見られました。

契約書の内容をよくみて、いつまでに契約不適合責任を追及できるのかしっかり理解把握しておきましょう。

短すぎて困る場合には交渉により延ばしてもらう必要があります。

・リノベ済み再販物件など、売主が宅建業者の場合

尚、売主が宅建業者(宅地建物取引業者)の場合には、宅地建物取引業法第40条により2年間の瑕疵担保責任があり、これは民法改正以降も同じです。

つまり、宅建業者による買取再販の中古リノベ済みマンション等はこれにあたり、2年以上は売主である宅建業者が負担しなければいけません。

とはいえ、買主としては事業者からリノベーション済み物件など購入する際も、ホームインスペクション(住宅診断)を活用するなどして、建物の状況を知っておくことが賢明です。

ホームインスペクション(住宅診断)の活用と注意点

民法改正とインスペクションの活用今回の民法改正により「引き渡される建物の品質等が契約内容と適合しているかどうか」がより重要になります。

これに対応するために、住宅の購入の際には第三者による建物の調査「ホームインスペクション(住宅診断)」で建物の状態を確認しておくことをお勧めします。

購入しようとする住宅に欠陥や不具合はないか、劣化状況はどの程度か、といった建物のコンディションを建築士が客観的に調査するものです。

事前にホームインスペクション(住宅診断)により物件の不具合を洗い出すことができれば、気がつかないまま欠陥住宅を購入していた、といったリスクも低減させることができます。

ホームインスペクション(住宅診断)を利用する上でも、いくつか注意点もあります。

売主側のインスペクションの内容は?

2019年4月に施行された改正宅建業法で、中古住宅の仲介時などにインスペクション(建物状況調査)の説明が義務化され、売主側でインスペクションを行うケースも増えてきました。

ですが、「売主でインスペクションをしておきました」というケースも決して安心はできません。

さくら事務所が通常行っているホームインスペクション(住宅診断)と、国の定める状況調査とでは、調査範囲やお伝えできるアドバイスなどが大きく異なります。

宅建業法で定められている状況調査の場合、調査を行う項目が絞られており、建物の状態や品質を知るに十分な調査でない可能性があります。建物全体のコンディションを見ることは難しいでしょう。

そもそも、住宅を売却したいと考える方から依頼された際、インスペクション業者が本当に利害関係のない第三者として、建物の状況を不具合や劣化等、忖度なく報告できるかどうかわからりません。

売却する際に不利になるような項目まできちんと調査結果に反映されているかどうか、わからないのです。

納得して契約するためには、やはり買主自身で取引に利害関係のないインスペクション会社に依頼することをお勧めします。

建物の状態を確認するのは買主の権利

ですが、買主がホームインスペクション(住宅診断)を希望しても、仲介業者から断られるケースもあります。

「契約までのスケジュールに間に合わない」「ホームインスペクション(住宅診断)を入れている間に他の人に契約されてしまうかもしれない」と契約を急かされ、利用を断念せざるを得ない残念なケースもまだあります。

ですが、これから長く住むことになるであろう住宅、建物の状態を知らずに契約してしまうのはやはりリスクが高いと言えるでしょう。

後から瑕疵や不具合が発覚すれば、トラブルに発展してしまうことも。

契約前に建物の状況を知ることは、買主の権利でもあります。ホームインスペクション(住宅診断)を希望されている旨は、仲介業者さんにきちんと伝えましょう。

インスペクション会社の選び方

ホームインスペクション(住宅診断)を行う場合には、その会社選びも非常に重要です。

十分な調査の実績を持っていることはもちろん、重要なのがそのコミュニケーション能力です。

難しい建築用語をわかりやすく説明してくれるか?買主がなにを不安に思っているのかをきちんと汲み取ってくれているのか?

これにより、ホームインスペクション(住宅診断)の満足度や安心感は大きく変わるでしょう。

仲介業者などの取引の関係者と良好なコミュニケーションをとることも、ホームインスペクターの重要なスキルです。

関係業者さんに高圧的な態度で接して、建物のあらさがしのような調査をしてしまうと、これから契約・お引き渡しとお客様がお付き合いする仲介業者さんとの関係にも悪影響があります。

取引の第三者として、今後お住まいになる方のことも考えられる誠実な姿勢も求められます。

民法改正で重要になった「契約内容」「建物の品質」

民法改正により、これまで以上に「契約内容」「目的物の品質」が重要になってきます。

中古住宅取引の場合、買主が自身が建物を知る権利として、ホームインスペクションにより品質を確認し、不具合があるのであれば、価格は妥当なのか?修繕費用として減額してもらえるのか?引き渡しまでに修繕するのであれば、どちらが負担するのか?といったことを契約書に盛り込んでおくといいでしょう。

ホームインスペクション(住宅診断)を上手に活用し、安心して中古住宅売買をしていただければと思います。