国内外で被害の大きかった地震の特徴とは?
明治以降で被害が大きかった地震は?
2月6日、トルコ南部でマグニチュード(M)7.8の地震がありました。被害の全容の判明には時間がかかるものと思われますが、2月10日の朝現在では少なくとも2万人の方が亡くなっているとの報道もあります。被害に遭われた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災されたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
トルコは日本と同様、地球の表面を覆う「プレート」が複雑に接する地域で、歴史的にも大きな地震が繰り返されてきた地域です。明治以降の日本国内で被害が大きかった関東大地震(大正関東地震)がM7.9であったことを考えると、これに近い規模の大地震であるとみられます(※関東大地震は気象庁マグニチュード、モーメントマグニチュードとも7.9程度と推定されることで、一例として提示)。
日本は、沖合にプレートが沈み込む位置にあり、繰り返し巨大な津波を伴う地震が発生しています。過去に大きな被害を受けた地震が多く発生しています。ここでは、過去を知り未来に備えるため、明治時代以降の被害の大きかった地震(死者・行方不明者の多かった順)について、5位までの地震の特徴の説明を含めて紹介します。過去の震災を学ぶことで、未来の自分やご家族を守る助けとなれば幸いです。
①関東大地震(大正関東地震/関東大震災) 1923年9月1日 M7.9
明治以降の地震で最も人的被害が多かった地震は、関東大地震(大正関東地震/関東大震災)でした。近代になって首都圏で発生した唯一の大きな地震ともいわれ、約105,000人の死者・行方不明者を出した地震でした。今年の9月1日で発生から100年目の節目を迎えます。
関東大震災による大きな被害をもたらした理由は、震度7に匹敵する地震の揺れに加え、風の強い日の昼食時に発生したことから大規模な火災を生じたことでした。関東大震災による死者・行方不明者の9割は火災によるとされています。特に被害が大きかったのは、今の総武線・両国駅の北にあった軍の工場跡地(陸軍被服廠跡)です。ここに、家財道具を背負って避難してきた市民らが、大挙して押し寄せたところ、周囲から火災の炎が押し寄せた炎が巨大な竜巻のように人々を襲い、巻き上げていく“火災旋風”が発生しました。この場所だけで約38,000人が犠牲になり、同地震で最も大きな被害が出た場所です。
火災旋風で吹き飛ばされ木に引っかかった巻トタン(東京都復興記念館所蔵) 横山芳春撮影
②東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) 2011年3月11日 Mw9.0
2番目に被害が大きかった地震は、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でした。死者・行方不明者の方々の死因のうち90%以上は、津波に巻き込まれたことによる溺死とされ、高齢者が多かったことが特徴でした。沖合いを震源とする、世界的にみても極めて大きな規模の地震により、津波は場所によっては想定を超えた高さ40mの場所にまで駆け上がり、大きな被害をもたらしました。
3月前半というまだ雪の降る寒い時期の地震、津波から助かったものの、低体温症で命を落とされたケースも報告(新聞記事)されています。今後も発生が懸念される日本海溝や千島海溝を震源とした巨大地震では、津波から助かっても低体温症によって最大で2万人近くが命の危険にさらされると想定されており、津波で体を濡らさない対策などが求められます。
津波被害を受けた小学校(石巻市立大川小学校)横山芳春撮影
③明治三陸地震津波 1896年6月15日(M8 1/4)
3番目に 被害が大きかった地震は、1896年(明治29年)6月15日に発生した明治三陸地震による津波です。この地震は、M8.2と規模の大きな地震でしたが、揺れは比較的小さく、最大でも震度4程度とみられています。しかし、大きな津波が三陸沿岸を襲い、最大で38mの高さにまで津波が遡上し、約22,000人という東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に匹敵する死者・行方不明者を出す被害に至りました。
当時は、地震の後に津波が来るという考えが一般化していなかったことや、揺れ自体も巨大でないことから、津波が間近に来るまで人々が気づかなかった(釜石市HP)とされています。沿岸部で地震を感知したら、巨大な揺れでなくとも海岸を離れて避難、また津波警報、大津波警報を聞いた際には、すぐに高台の上などに避難を開始することが必要であると考えます。
④濃尾地震 1891年10月28日(M8.0)
4番目に被害が大きかった地震は、1891年10月28日に岐阜県美濃地方の内陸で発生した濃尾地震でした。内陸直下で発生した地震としては国内最大級となるM8.0の地震で、死者・行方不明者は7273人、震源域は福井県南部から岐阜県、愛知県にまで達し、地表に現れた活断層は長さ80m、ズレは岐阜県西根尾村(現在の本巣市)では最大で高さ6mに達しました。この地震以降、地震は断層によって引き起こされるという説が提唱されるようになりました。
震源域付近の家屋は壊滅し、岐阜、愛知を中心に震度6程度以上の強い揺れに見舞われています。地盤の軟弱な濃尾平野は、震源から離れていましたが揺れによる被害が大きく、とくに岐阜市や大垣付近では家屋の倒壊が多く、その後に発生した火災による被害で多くの死傷者が発生したとされています(岐阜県HP)。
⑤兵庫県南部地震 1995年1月17日(M7.3)
5番目に被害が大きかった地震は、1995年1月17日に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)でした。死者・行方不明者は6,437人、内陸直下の活断層の活動による地震で、明け方の人々が寝ている時間に起きた地震でした。兵庫県南部地震で亡くなった方の死因の8割近くが窒息・圧死とされ、また8割近くが自宅で亡くなったとされています(兵庫県医師会 HP)。
兵庫県南部地震では、近年に大都市を襲った地震として、今後に生かすべき多くのことが見いだされいています。災害リスクの観点からは、早朝に発生した地震(睡眠時の家具転倒被害対策)、「震災の帯」ゆれやすい地盤における被害、地盤の液状化による被害、倒壊家屋の火災による被害、斜面や盛土造成地における被害が特徴的で、5つの教訓 としてコラムをまとめています。
他の被害が大きかった地震
以下、次のような地震が続いています。1943年~1948年は地震が多かった期間のようで、1944年の東南海地震と誘発されたとみられる1945年の三河地震、また1946年の南海地震と、その後の福井地震など1000人以上の死者・行方不明者があった地震が頻発していました。
⑥福井地震 (M7.1) 1948年 死者・行方不明者3,769人
⑦昭和三陸地震津波 (M8.1) 1933年 死者・行方不明者3,064人
⑧北丹後地震 (M7.3) 1927年 死者・行方不明者2,925人
⑨三河地震 (M6.8) 1945年 死者・行方不明者2,306人
⑩南海地震 (M8.0) 1946年 死者・行方不明者1,443人
⑪東南海地震 (M7.9) 1944年 死者・行方不明者1,251人
以下、表で示します。国内の地震は、海溝沿いに位置することから巨大な津波、また日本のお国柄で木造住宅の倒壊、および火災の発生による被害が特徴であるといえます。山がちの地形で、大都市は関東平野や濃尾平野など低平な低地に多くあることから、地盤が軟弱で揺れが大きくなりやすい、液状化現象が発生しやすい場所が多い、また斜面を造成した大規模盛土造成地も被害が出やすいことも、特徴といえます。
明治以降に日本で人的被害が多かった地震一覧
(令和4年版 防災白書「我が国の主な地震被害(明治以降)」 内閣府 より作成)
規模のうち「Mw」はモーメントマグニチュードを示す
戦前は1000名以上、戦後は20名以上の死者・行方不明者を掲載
世界で発生した規模の大きい地震は?
次に、世界で発生した地震の規模(マグニチュード,Mw)による順位はどうなっているでしょうか。1900年以降の地震の規模のランキングは次の通りです。
1位は1960年に発生したチリ地震で、日本国内でも15番目に多い被害をもたらした地震となりました。南米チリ沖で発生した非常に規模の大きな地震の津波は、太平洋を越えて日本沿岸で大きな被害を与えています。この地震以降、遠方で発生した地震による津波(遠地津波)に認識、警戒が進みました。
2位のアラスカ地震では、同年に日本で発生した新潟地震とともに、地盤の液状化による被害が発生しました。新潟では集合住宅の転倒や、アラスカではインフラの被害が大きく、これ以降日米での地盤の液状化に関する認知と、研究が進んでいます。
3位のスマトラ島沖の地震は「インド洋大津波」をもたらしました、30万人以上という津波被害をもたらし、現地で日本人の方も42名の死者・行方不明者の方が出ています(外務省HP)。
4位には東北地方太平洋沖地震、カムチャッカ半島の地震など巨大な地震が多く発生しています。
特にインドネシアのスマトラ島付近、日本の東北地方沖、ロシアのカムチャッカ半島付近、北米のアラスカからアリューシャン列島、そして南米チリと環太平洋地域を中心に巨大地震があることがわかります。
1900年以降に世界で規模の大きな地震10位
(気象庁HP 地震について (jma.go.jp)を参考に作成)
規模はモーメントマグニチュードを示す
地震の備えを見直す機会に
トルコも地震が多い国ですが、日本も世界的にみて非常に地震が多い国の一つであると考えられます。トルコの地震は決して対岸の火事ではなく、日本ではより大きな規模の地震も発生しています。津波や、木造住宅の倒壊、また火災という被害も日本の地震被害の特徴で、立地や住み方によって被害が変わってしまうことが想定されます。
ただし、国が開催する。南海トラフで巨大地震が起こる可能性を評価する定例の検討会が開かれ「特段の変化は観測されず」という報告も出されています。過度に心配にならずに、日々の生活をしつつ、必要な備えがについて可能なことから見直し、また実施する機会になればと思います。
十分な耐震性のある住宅に住み、家具の固定や転倒防止を進める、備蓄品を備えておくなどハード面の対策のほか、家庭で緊急地震速報が鳴ったらどう行動するかや、いざという時の連絡手段や避難滝などについて話しておくソフト面での対策も、両輪で行っておくことが望ましいと考えます。
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■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)
横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
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