地面師から欠陥アパート、不動産テックまで・・・長嶋修が選ぶ不動産10大ニュース

  • Update: 2018-12-01
地面師から欠陥アパート、不動産テックまで・・・長嶋修が選ぶ不動産10大ニュース
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さくら事務所 長嶋修

かぼちゃの馬車や地面師などの事件から、免震・制震ダンパーのデータ偽装、北海道胆振東部地震や台風24号などの度重なる自然災害・・・今年も住宅・不動産業界では、さまざまなことがありました。

今回は、一年の振り返りとしてさくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修が選ぶ「2018年不動産10大ニュース」をご紹介します。

1.かぼちゃの馬車事件

実現不可能な収支計画に加えスルガ銀行と共謀した融資書類改ざん。被害者には弁護士や銀行員も。

あと数年発覚が遅れていたらバブル化から崩壊につながった可能性も考えられる。

金融庁は書類提出を求めるなど全金融機関を徹底調査の方針。

2.地面師事件

ニセの売主を含む地面師グループに、大手ハウスメーカーが55億円騙し取られる。

真の売主からの警告通知を無視する、決済当日に売主が権利証を持参しなかったのに残金を振り込むなどズサンな内幕が明らかに。

3Dプリンターの登場など、印刷・複製技術は年々進歩しており、不動産取引にブロックチェーン技術を導入するなどの手を講じなければ再発防止は不可能。

3.マンション管理組合向けの「不適切コンサル」

国土交通省が異例の注意喚起を行なったこともあり、低額でマンション大規模修繕コンサルを請け負い、ウラで多額のバックマージンを受け取る「不適切コンサル」が話題に。

工事費の10〜20パーセントのマージンを抜かれているマンションは、次回大規模修繕時に資金不足に陥るのは必至。

4.免震・制震データ偽装

圧倒的なシェアを占めるKYB製の免震・制震データの偽装が発覚し、市場を震撼。

物件名が公表されなかったことや機器の交換を保証していることから不動産市場に特段の影響はなかったものの、個別にマンション名が漏洩したり、2年程度としている交換時期が長引くようだと風評被害の恐れあり。

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5.政府「不動産放棄制度」を検討

これまで単独で放棄できなかった不動産を、他財産と切り離して所有権を放棄できる制度を2020年までに。骨太の方針にも盛り込まれた。

来年7月に公表予定の住宅・土地統計調査(総務省)では空き家数1,000万戸以上、空き家率は17パーセント程度に上っているものとみられ、改めて空き家問題が社会問題として浮上することが見込まれる中で、登記の義務化と合わせて具体的な制度設計が注目される。

6.欠陥アパート事件

天井裏の「界壁」がないアパートの欠陥で、レオパレスの工事不備が浮き彫りに。

手抜き・手抜かり工事の代償は大きく、レオパレスは赤字転落・株価大暴落。

7.北海道胆振東部地震

各地で災害が続く中、9月の北海道胆振東部地震では、札幌市の住宅地で建物が大きく傾くなど、地盤の重要性が明らかに。

今後、本格的な人口・世帯数減で行政効率の観点から、街のコンパクト化が急務になる中、地盤の安定性や水害の可能性など災害の観点から都市計画を見直す必要性が浮き彫りになった。

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8.米、継続的な利上げを表明

継続的な利上げを表明で、米住宅市場に頭打ち感。EUも金融引き締め方向で、国際協調的な金融政策が求められる中、日銀が現在のマイナス金利政策をいつまで継続できるか。

金利上昇は不動産価格の下落に直結。程度によっては不動産市場に大打撃となる。

9.首相、消費増税を明言

消費税率の10%への引き上げまで1年を切る中、安倍首相は11月15日「法律で定められたとおり、来年10月に10%に引き上げる予定だ。前回の引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員して、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と名言。

住宅市場には、極端な駆け込みや落ち込みを避ける目的で「住宅ローン控除期間を10年から15年へ延長」や「すまい給付金」などが検討されており、さしたる混乱はないものとみられるも、京都大学大学院の増田聡教授らが行った消費者心理実験によると、8%から10%への増税は「 税率を計算しやすい 」という理由ゆえに、他の時の1.4倍、女性に限れば2.9倍もの買い控え効果があることが判明。こうした実験は、被験者への聞き方の問題などもあり、必ずしもこの通りになるとは限らないが、もしこのようなレベルで消費が控えられた場合、景気や株価の落ち込みといったルートを通じて不動産市場に下落圧力が働く可能性も。

10.不動産テック協会設立

9月には「一般社団法人 不動産テック協会」が設立。

その中身は玉石混交も、テックベンチャーに加え大手不動産会社も会員に加わる本協会から、不動産業界を刷新する新技術やサービスの勃興を期待。

※ 長嶋は顧問に就任し、ゆくえを見守る予定です。