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長嶋修が解説!平成が残した「不動産市場・業界の宿題」【前編】

  • Update: 2019-12-05
長嶋修が解説!平成が残した「不動産市場・業界の宿題」【前編】

今年は、平成から令和へと元号も変わった節目の年。

12月に入り、令和最初の年末年始もすぐそこまで来ています。

そこで今回は、令和最初の年末年始特別編として「平成が残した『不動産市場・業界の宿題」令和の今、取り組むべきは何か」について、さくら事務所不動産コンサルタントの長嶋修の解説を前編後編に分けて、お送りいたします。

住宅省エネ義務化、ハザードマップの義務化、住宅総量管理など、かねてからその必要性が叫ばれる中、平成から持ち越されてしまった多くの宿題。

令和を迎えた今年、不動産業界は何にどう取り組むべきなのでしょうか?

ぜひ最後までご覧ください。

平成が残した「不動産市場・業界の宿題」は?

元号が昭和から平成に変わった翌年の1990年バブル崩壊以降、「失われたウン十年」を過ごしてきた日本は、「金融システムの回復」や「目先の経済対策」「震災復興」といった後手に回った対応策に終始し、高度経済成長の先にある「成熟経済」や、本格的な「人口・世帯数減」「高齢化」といった未来について、とりたてて有効な手を打てませんでした。

例えば「年金問題」などは、1980年代後半からその持続可能性について議論されていたにもかかわらず、課題は解決されていません。また、輸出頼みの経済構造は典型的な「新興国モデル」に他なりませんが、自動車輸出を中心とした国策を続けるうち、中国はじめアジアの低廉な国の台頭により、産業構造の転換も手つかずといっていいでしょう。

そうこうしているうち、平成元年には株価時価総額トップ50のうち32社を日本企業が占めていたところ、平成30年にはトヨタ自動車1社のみと、大きく立ち遅れることとなっています。

そうした不作為が積みあがり、再び元号が平成から令和へと変わった今、私たちが平成に残し、今後取り組むべき「不動産市場・業界の宿題」について列挙します。

見送られ続けた「住宅省エネ義務化」

日本にはいまだに「住宅の省エネ義務化基準」が存在しないため、夏は熱を吸収し、冬は冷たさを溜め込むコンクリート打ちっぱなしの「住めば地獄」のような住宅を建てることも可能。

2015年に見送られ、5年後の2020年に義務化の方針だった「住宅省エネ基準の義務化」が再び見送られています。

理由は「およそ4割の住宅建設事業者が義務化基準に対応できないから」というもの。

低いレベルに合わせて物事が進まないという、典型的な日本の悪習が現れたといっていいでしょう。コンクリート打ちっぱなしの建物をはやらせた安藤忠雄氏は自身の講演で「私は自分の設計した家には住まない」と吐露しています。

本格的な高齢化社会を迎えるにあたり「健康寿命」を伸ばすことが急務なはずですが、東京都健康長寿医療センターの調査によれば、全国で1年あたり1万7000人が入浴中に心肺停止に陥っていると推計されており、これは交通事故の死亡者数をはるかに上回ります。

例えばドイツでは、持ち家・賃貸ともに、真冬時に室温が18度以下になる住宅を提供できません。

理由は「基本的人権を損なうため」つまり「憲法違反」というわけです。

フランス・ドイツなどEUの複数国では、住宅を売る・貸すときには、その住宅が1年に消費するエネルギー量を表示することが義務付けられています。

度重なる自然災害を前に「ハザードマップ説明義務化」

台風被害

台風15号や19号は各地に大きな爪痕を残しましたが、浸水した地域の多くは、自治体が提供する「ハザードマップ」におおむね合致するものでした。

ところがこのハザードマップは、住宅の売買・賃貸時に説明することが義務化されておらず、国交省が業界団体に対して「通知」という形でお願いをする段階にとどまります。

国交省によれば義務化しない理由は「全ての自治体がハザードマップを公開しているわけではないから」とのことでしたが、これもやはり低レベルに水準を合わせる悪平等主義の一つ。

業界には「ハザードマップ説明を義務化したら、資産価値が下がる地域が出てしまう」と懸念する声がありますが、貸し手も売り手もどこかに引っ越すわけで理屈に合いません。

「臭いものにはフタをしろ」というところでしょう。

世帯数減少、空き家の増加・・・「都市計画の根本的な見直し」

1970年都市計画法改正によって市街地は、住宅建設を促進する「市街化区域」と、住宅建設を抑制する「市街化調整区域」に分けられました。

あれから50年。

当時の区分けが日本の世帯数の間尺に合わず、都市計画の根本的な見直しを行うべきでしたがそれに取り組まず「立地適正化計画」といった、端的に言えば中途半端な政策でお茶を濁そうとしています。

本計画では、区域外でも届け出をすれば住宅を建設でき、補助金をもらえるからとして、実質的に市街地をほとんど縮小していない自治体や、ハザードマップで浸水可能性のある地域も多数含まれています。

世帯数減少で空き家が増加し街がスポンジ化すると、ただでさえ税収減の中、道路や上下水道の修繕やごみ収集・除雪といった行政サービスの効率が悪化し、自治体の持続可能性が危ぶまれます。

「再建団体」に転落した北海道夕張市は、11校あった小中学校をそれぞれ1校に減らすなど公共施設や観光施設の大幅な廃止を断行。

市長の給与は70%減、職員も15%減(当初は30%減)と人件費にも切り込んだ上で、市民税や固定資産税は増税され、下水道料金も上がるなど負担を余儀なくされました。

中古住宅の資産効果をもって消費の活性化に「住宅総量管理」

住宅総量管理と都市計画日本には「住宅総量目標」といった概念がありません。

したがって景気対策としての新築住宅が増え続け、結果として空き家増大が止まらないのですが、実はかつては日本にも「住宅供給量の目安」があったのです。

戦後の高度成長期で深刻な住宅不足の中、1966年に「住宅建設計画法 」が施行、5年ごとの住宅供給目標が立てられました。

ところが、2006年に同法が廃止された際に、どういうわけか「量の目標」もなくなってしまったのです。

アメリカもドイツもかつては新築建設が住宅市場の主流でした。

しかし住宅数が充足する過程で、2次市場である中古住宅市場中心に切り替えています。

中古住宅の価値が落ちないことによる資産効果によって消費が活性化する、住み替え頻度が高まるといった市場経済に、できるだけ早い段階で舵を切るべきでしょう。

また、住宅の価値が落ちないことによる「資産効果」がもたらす経済効果や景気動向を占う指標とすべきです。

「住宅数の管理」が行われない理由は、国交省官僚による政策の問題ではなく、政治の問題でしょう。

たしかに住宅総量目安を設定してしまうと、いかに新築住宅を造り過ぎているのかが白日の下にさらされてしまうため、各所からの抵抗も強いはずです。

新築建設業界団体にはただでさえ先輩たちが天下っており、その中で、結果として新築住宅建設を抑制することになるだろう政策を行うのは容易ではないはずです。

与党自民党は古くから新築建設業界団体との関係が密であることは言うまでもありません。

したがってここには強い政治的決断が求められます。

住宅総量を管理するためには、まず国が大方針を示し、自治体に数値目標を出させ、建築許可の具体的権限も自治体に移行してしまうことです。

国は全国の住宅数やその質、人口動態は把握しているわけですから、それらを踏まえて必要な住宅総数を割り出し、何戸を取り壊し、何戸新築作るのかを定めます。

それを受けて各自治体はどうするのか「住宅総量管理計画」を提出させ、それを順守します。

なおこうした制度改正は、複雑な都市計画関連法の見直しが必要で一朝一夕にはいきませんが、ここを修正しないといつまでたっても空き家対策に明け暮れることになるでしょう。

新築建設による波及効果ではなく、中古住宅の資産性が保たれることにより消費や投資が生まれる「資産効果」や、自治体の行政効率といった観点の研究を早急に行い、早急に政策に取り入れるべきです。

こうした視点での研究が進むと、中古市場を整備しないで新築買ったそばから価値ゼロになるこれまでのあり方がいかに「逆資産効果」を生み出してきたかもわかり、他先進国並みの住宅政策がデフレ脱却のキーポイントであることも明らかになるはずです。


次回、後編では「マンション管理状態開示義務化」や「不動産市場へのブロックチェーン技術採用」について他、解説します。