インスペクション(状況調査)の説明義務化、3つの問題

  • Update: 2018-02-19
インスペクション(状況調査)の説明義務化、3つの問題

ついにこの4月から、売買契約時などにインスペクション(状況調査)の説明が義務化されます。
具体的にこの法改正はどんなものなのなのでしょうか?

簡単に説明すると、住宅の売買にあたり、3段階で建物について説明しましょう、というものです。

nagare①媒介契約締結時
宅建業者がインスペクション業者のあっせんの可否を示し、媒介契約者の意向に応じてあっせんします。

②重要事項説明時
インスペクションを行った場合、宅建業者がその結果を買主さんに対して説明します

③売買契約締結時
基礎、外壁等の現況を売主さん・買主さん両方に確認し、その内容を宅建業者が売主さん買主さんに書面で出します。

さて、ここまでは制度上のお話。実際はどうなるでしょうか?

買主さんがインスペクションを聞くのは契約当日

実務上、買主さんは媒介契約・重要事項説明・売買契約の3つを契約当日に一緒にやってしまうケースがほとんどです。
売主さんは売り出しの際に媒介契約を行っていますので、インスペクションについて確認していますが、買主さんはこの日、売主さんや仲介業者さんのいる前で初めてインスペクションの存在を聞かされることになります。
このタイミングで聞かされても、今からインスペクションをいれるのは難しいでしょう。

オーバートークや誤った情報はトラブルの元

重要事項説明は宅地建物取引士にしかできません。ですので、インスペクションが行われた場合、重要事項説明時に買主さんにその内容を説明するのは宅地建物取引士になります。

とはいえ、宅地建物取引士は不動産のプロであって、建物のプロではありません。
買主さんが安心できるような正しい説明ができるのでしょうか?
ここで心配されるのが、現場でのオーバートーク。根拠もなく「大丈夫ですよ」と言ってしまったり、間違った情報を伝えてしまうようなケースもあるかもしれません。
オーバートークや間違った情報は、大きなトラブルの元です。

心配されるプレイヤーの品質、不動産業者との癒着

国交省ではこの改正宅建業法の施行を前に、インスペクションができる技術者(既存住宅状況調査技術者)を24000人生み出そうとしています。
24000人といえば、全米のインスペクターとほぼ同数。
アメリカが20年30年かけて育成してきたインスペクターを、日本では法改正にあわせるために一気に輩出しようとしているのです。
また、その資格者になるための研修も半日のみとされています。
半日の研修できちんとした診断ができるのでしょうか?正しい説明ができるようになるでしょうか?結果、同じ資格者でも品質にばらつきが出るのは必至です。

また、不動産業者の下請けになってしまうインスペクション業者も出てくるでしょう。「仕事を紹介してくれたら、紹介料をお支払いしますよ」と不動産業者さんから仕事を得ようとするのです。結果、「不動産業者の不利になるような内容は依頼者に報告しない(できない)」といった癒着構造が生まれます。
実際、アメリカではインスペクションが普及する過程で、不動産業者とインスペクション業者の癒着が問題になりました。現在、州によっては“不動産会社によるホームインスペクター紹介禁止”としています。(その売買に利害関係のないインスペクターを自分で探してください、ということです)

インスペクションは、購入前に物件のコンディションを確認するために行うもの。第三者の視線で中立公正な立場から正しい診断をしてもらわないと意味がありません。

取引に利害関係のないホームインスペクターを、買主が自分で選ぶことが重要なポイントです。