長嶋修が解説!コロナに揺れた2020年の不動産市場と今後の展望

  • Update: 2020-12-07
長嶋修が解説!コロナに揺れた2020年の不動産市場と今後の展望
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さくら事務所 長嶋修

新型コロナ感染拡大に世界が揺れたこの1年。

人々の生活も大きく変化を余儀なくされましたが、不動産業界には一体どのような影響があったのでしょうか?

さくら事務所の創業者会長、長嶋修が2020年の不動産市場を振り返りました。

郊外・地方移住といった動きはごく限定的

郊外人気

世界の多くの国で感染者数・死者数が爆発的に増加する中、我が国では相対的に影響は大きくなく、各国がロックダウン(都市封鎖)といった厳しい方策を取るも、我が国では「緊急事態宣言」といった比較的緩やかな措置でした。

欧米のいくつかの大都市では不動産取引がストップ。

ニューヨークなどでは感染を防ぐ、暴動回避といった観点から中心部から郊外へと移動する流れが起こったものの、日本では郊外・地方移住といった動きは限りなく限定的。東京都への人口流入減少はその大半が外国人の流入減で説明可能です。

不動産物件検索サイトによれば、緊急事態宣言中には郊外や地方物件の検索数が増加し、地方の不動産業者によれば物件資料請求なども増加したものの、緊急事態宣言が解除されるとすっかりもとに戻った模様。

それどころか「電車など公共交通での密を避けたい」「通勤がいかにムダなものかわかってしまった」といった理由から、より中心部や駅近を求める傾向が強まり、折からの低金利も手伝って「都心」「駅前・駅近」「大規模」「タワー」といったワードに代表される、比較的高額な物件の取引が活発です。

6月以降、都市部の不動産取引は急回復

日本において90年バブル崩壊やリーマン・ショック時と異なり今回特徴的だったのは、緊急事態宣言中にはさすがに各地の不動産取引が40~50%減となったものの、「投げ売り」が起きなかったこと。

例えばリーマン・ショック時には多くの新築マンション・一戸建てのデベロッパーが千万単位の値引き販売をして在庫処分を始めたものの、それでも持ちこたえることができず多くが破綻、つられて中古市場も暴落しました。もちろん緊急事態宣言がもっと長引けばどうなったかわかりません。

しかし6月になると溜まっていた需要が吹き出すどころか、それを補って余りある需要が吹き出す形で都市部の不動産取引は新築・中古・マンション・一戸建てのいずれも急回復しています。

とりわけ東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)などの中古マンション成約価格は日経平均株価推移と連動しますが、コロナ前に2万4000円内外だったのが1万6000円台まで落ち込んだ後、日米欧の積極的な財政出動と金融緩和、とりわけ日米は無制限の金融緩和を宣言したことが奏功し、株価は一気に2万6000円台まで回復しました。

金融システム破綻を免れると、市場には膨大な緩和マネーが残り、株はもちろん、金(ゴールド)、仮想通貨(ビットコインなど)、不動産など、原油以外のあらゆる資産が値上がりし、さながらバブルの様相を呈しています。

世界の緩和マネー流入により、国内市場はバブルの可能性も

相対的に割安感がありコロナの影響が小さい日本の不動産は海外マネーにも注目されており、今後わかっているだけでも兆円単位のマネーが流入する見込みです。

ただしこうしたマネーの行き先はやはり都心部中心で、不動産市場の2極化・3極化傾向が益々強まることとなりそうです。

今後は結局コロナのゆくえ次第ですが、このまま推移すると世界の緩和マネーが日本の不動産市場、そして株式市場などの資産市場に流入し、かつてないバブルが発生する可能性があります。

もしかするともうバブルに突入しているのかもしれません。