フラット35「維持保全型」がスタート。ホームインスペクション実施でもっとお得に!

  • Update: 2024-01-20
フラット35「維持保全型」がスタート。ホームインスペクション実施でもっとお得に!

2022年4月より、【フラット35】維持保全型という新たな制度が新設されました。その対象となる中古住宅の利用要件に「インスペクション実施住宅(劣化事象等がないこと)」という項目も入っています。また、この【フラット35】維持保全型は【フラット35】より金利が優遇される制度ですが、【フラット35】Sと併用することで金利の引下げ期間の延長が可能となります

【フラット35】の適合証明審査(物件検査)もカバーしているホームインスペクション(住宅診断)を実施すれば、【フラット35】の適合証明審査を実施できるだけでなく、【フラット35】の適合証明審査の技術基準にはない施工状況の不具合や劣化の調査も実施することができます。

今回は、【フラット35】Sと【フラット35】維持保全型を併用することのメリット、ホームインスペクションと【フラット35】の適合証明審査の違いやホームインスペクションを活用するメリットについて解説します。

中古マンションホームインスペクション

フラット35Sとは

【フラット35】とは、全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して提供する最長35年の住宅ローンです。全期間固定金利となっているため、毎月の返済額を把握できるので安定した返済プランを立てやすいといえます。

また、新築・中古・リフォーム、戸建て・マンションといった住宅の種類や住宅の状態(性能、管理・修繕、エリア)に応じて、借入金利を一定期間引き下げられる制度の併用も可能となっています。

【フラット35】と併用できる金利引き下げ制度や特約には以下のような種類があります。

商品名

特徴

【フラット35】S

省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する際に、借入金利を一定期間引き下げられる

住宅の技術基準に応じて、金利の引き下げ期間や引き下げ幅が変わる

【フラット35】リノベ

※下から移動

【フラット35】維持保全型

維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合に借入金利を一定期間引き下げられる

【フラット35】地域連携型

子育て支援や地域活性化について積極的な取組を行う地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、住宅取得に対する地方公共団体による補助金交付などとセットで、借入金利を一定期間引き下げられる

【フラット35】地方移住支援型

地方公共団体による移住支援金の交付とセットで借入金利を一定期間引き下げられる

【フラット20】

借入期間を15年以上20年以下に設定することで、より低い金利で借入れできる

【フラット50】

中古住宅を対象に、一定の要件を満たすリフォームを行うと借入金利を一定期間引き下げられる

金利引継特約付き【フラット35】

長期優良住宅の売却時に債務を引き継げる特約

【フラット35(保証型)】

住宅金融支援機構が保険を引き受けることで実現した全期間固定金利の住宅ローン

機構住みかえ支援ローン

今住んでいる住宅を賃貸として貸し出し、次の住宅に住み替えるときに利用できる住宅ローン

家賃返済特約付き【フラット35】

将来返済が困難となったときに一定の条件に該当する場合には、返済方法変更の特例により償還期間を延長し、割賦金を減額した上で、住宅を住宅金融支援機構と提携する住宅借上機関に賃貸し、その賃料を住宅金融支援機構が直接受領して返済に充てられる特約

2022年4月より新設された、フラット35「維持保全型」は、維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合にフラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。2022年4月以降に適合証明書の交付を受けるものが対象となります。

【フラット35】維持保全型を利用するメリット

【フラット35】維持保全型には、以下のようなメリットがあります。

  • 【フラット35】より金利が引き下げられ、お得に借入できる
  • 他の制度との併用で返済総額がさらにお得になる

それぞれのメリットについて解説します。

【フラット35】より金利が引き下げられ、お得に借入できる

【フラット35】維持保全型は、通常の【フラット35】よりも金利を引き下げられるため、お得に借入できるのが特徴です。金利の違いは以下のとおりです。

【フラット35】

【フラット35】維持保全型

借入金利

全期間 年1.80%

当初5年間 年1.55%

6年目以降  年1.80%

参照:住宅金融支援機構|【フラット35】維持保全型 (2024年3月31日までの申込受付分に適用)

【フラット35】維持保全型であれば、最初の5年間において金利を年0.25%引き下げられます。少しでも金銭的な負担を減らしたいと考える人におすすめのプランといえるでしょう。

他プランとの併用で返済総額がさらにお得になる

【フラット35】維持保全型は、【フラット35】Sと併用することも可能です。具体的な金利の違いや返済総額の差は以下のとおりです。

〈試算例〉借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、借入金利年1.80%の場合

【フラット35】維持保全型

【フラット35】維持保全型と【フラット35】S(金利Bプラン)の併用

借入金利

当初5年間 年1.55%

6年目以降  年1.80%

当初10年間 年1.55%

11年目以降  年1.80%

【フラット35】との総返済額の差

約40万円

約74万円

参照:住宅金融支援機構|【フラット35】維持保全型 (2024年3月31日までの申込受付分に適用)

つまり、【フラット35】維持保全型と【フラット35】Sを併用すると金利引き下げの恩恵をより多く受け取れます。

このほか、【フラット35】維持保全型は、【フラット35】Sだけでなく、後述する【フラット35】地域連携型または【フラット35】地方移住支援型の制度も併用でき、最大で金利を0.50%引き下げることができます。

【フラット35】維持保全型の利用条件

【フラット35】維持保全型の利用条件は以下のとおりです。

  • 6種類の住宅に該当しているか
  • 所定の検査を受け、適合証明書を発行されているか

それぞれの利用条件について解説します。

6種類の住宅に該当しているか

【フラット35】維持保全型を利用するためには、以下のいずれかに該当する住宅が対象です。

住宅の種類

利用条件

長期優良住宅

(新築住宅・中古住宅)

長期優良住宅建築等計画が認定されている

予備認定マンション

(新築マンションのみ)

マンション管理センターから予備認定を受けている

管理計画認定マンション

(中古マンションのみ)

マンションの管理計画について、地方公共団体から管理計画認定を受けている

安心R住宅

(中古住宅のみ)

耐震性があり、建物状況調査などが行われている住宅のうち、リフォームなどについて情報提供がされている

インスペクション実施住宅

(中古住宅のみ)

既存住宅状況調査(建物状況調査)の方法に基づいて調査された住宅のうち、劣化事象等がないことが確認されている

既存住宅売買瑕疵保険付保住宅

(中古住宅のみ)

既存住宅売買瑕疵保険が付保されている

これらの基準に該当していない住宅を購入する場合は、【フラット35】維持保全型を利用できません。まずは、購入予定の物件について利用条件に該当するかどうかを確認しておいてください。

所定の検査を受け、適合証明書を発行されているか

【フラット35】維持保全型をはじめ【フラット35】を利用するためには、所定の検査を受け、住宅金融支援機構の技術基準に適合していることが確認されたうえで発行される適合証明書が必要になります。

新築住宅を購入する場合は、買主が自分で調査機関に依頼、もしくは建築会社や売主に依頼して適合証明書を準備するのが一般的です。竣工までの所定のタイミングで検査(書類審査と現地調査)を実施しますが、検査の回数やタイミングは、住宅の種類と建築状況によって異なります。これらの検査に合格すると、適合証明書が発行されます。

一方、中古住宅を購入する場合は、買主が適合証明検査機関に検査と適合証明書の発行を依頼をします。すでに住宅が完成していることから、書類(設計図書や登録記載事項証明書)の審査と目視を中心とした現地調査が行われます。【フラット35】を利用する際は、事前に調査や書類の発行が必要となる点に注意が必要です。

また、新築時に適合証明書を取得していても、有効期限が過ぎている場合は、適合証明書の再取得が必要となります。適合証明書の有効期間は下記の通りです。

・一戸建て住宅:1年間

・マンション:5年間(竣工から5年以内の場合)または3年間(竣工から5年超の場合)

【フラット35】維持保全型の注意点

【フラット35】維持保全型を利用する際の注意点は以下のとおりです。

  • 予算状況により受付終了の可能性あり
  • 借換融資での利用はできない
  • 【フラット35】リノベとの併用ができない

それぞれの注意点について解説します。

予算状況により受付終了の可能性あり

【フラット35】維持保全型だけでなく、【フラット35】に併用できる金利引き下げの制度には予算金額が設定されているため、達成する見込みとなった場合は受付を終了する可能性があります。受付終了日は、終了する約3週間前までに【フラット35】の公式サイトで通知される予定です。【フラット35】維持保全型の利用を検討している方は、事前に受付が終わっていないかを確認するようにしましょう。

借換融資での利用はできない

【フラット35】維持保全型は、借り換えできない点に注意しましょう。そもそも【フラット35】維持保全型は、新築住宅の建築・購入および中古住宅の購入の際に利用できる住宅ローンです。借換融資に対応しておらず、他の住宅ローンから移ることはできません。借換融資を考えている方は、他の住宅ローンで検討しましょう。

【フラット35】リノベとの併用ができない

【フラット35】維持保全型は【フラット35】リノベとの併用はできません。そのためリフォームを検討している方は、どのプランを利用するかよく考えてから申し込むようにしましょう。なお、【フラット35】維持保全型と併用可能なプランは以下のとおりです。

  • 【フラット35】S
  • 【フラット35】地域連携型
  • 【フラット35】地方移住支援型

【フラット35】地域連携型とは、子育て支援や地域活性化を積極的に行う地方公共団体と住宅金融支援機構が連携して補助金交付などをセットにした住宅ローンのことです。【フラット35】の金利を一定期間引き下げられます。

【フラット35】地方移住支援型は地方公共団体による移住支援金の交付とセットになったプランで、こちらも一定期間の金利を下げられます。

これらの制度を併用すると、最大で金利を0.50%引き下げることができます。

ホームインスペクションとの違いは?

【フラット35】の適合証明審査(物件検査)の際にホームインスペクションを活用すると、【フラット35】の技術基準の項目には含まれない施工状況の不具合や劣化も調査できることを先ほどもお伝えしましたが、ここでは具体的な両者の違いについてご説明します。

ホームインスペクションとの違いは主に次の3つです。

適合証明審査の適否判定が目的

【フラット35】の適合証明審査で得られる結果は、住宅金融支援機構の技術基準に適合しているかどうかになります。建物の不具合や劣化状況を調査し報告することが目的ではないため、ホームインスペクションでは実施している、「状況の報告」「劣化の程度や範囲の報告」などは、【フラット35】の適合証明審査では行いません。

住宅でも対象外の建物あり

【フラット35】の適合証明審査では、新築と中古、戸建てとマンションといった種類に応じた技術基準が設定されています。一戸建ての場合延床面積70m2以上、マンションの場合は専有面積30m2以上の住宅といった規模のほかに、接道の状況(道路に2m以上接する)、構造・性能などの項目に適合する必要があり、住宅金融支援機構が定める技術基準を満たさない場合は審査の対象外となってしまいます。ただし、適合しなかった部分を適切に補修したうえで再検査で適合が認められれば、適合証明書の発行が可能になります。

ホームインスペクションでは対象外となる住宅はありませんので、【フラット35】の適合証明審査で対象外となる建物でも、調査をすることができます。

戸建ての場合、調査時間は1時間から2時間程度

【フラット35】の適合証明審査の検査項目は、当社ホームインスペクションの6割程度のため、所要時間もその半分の1〜2時間程度になります。仕上げの状態や建物全体が傾いているかなどの施工状況に関する調査項目はないため、【フラット35】の適合証明審査は適合していても、実は床や壁に生活や建物の性能に支障のある傾きがあったなどの不具合や、それらを修繕するための想定外の費用が発生するリスクが残されたままになります。ホームインスペクションを実施していれば、そうした施工状況の不具合や劣化も、同時に検査することができます。

そのため、単に【フラット35】を利用する目的のみでしたら、【フラット35】の適合証明審査は理にかなっています。しかし、中古住宅を購入するにあたり、「建物がどの程度劣化しているのか」「どのような修繕が必要か知りたい」「必要な修繕について対処方法や費用についてアドバイスもらいたい」「建物全体の傾斜の状況や傾向を知りたい」といった調査結果も希望される場合は、【フラット35】の適合証明審査のみを目的とした検査では対応できないでしょう。

適合証明審査と一緒にホームインスペクションを

【フラット35】の適合証明審査に適合しているから安心ということはありません。例えば、次のような事例があります。

以前、さくら事務所のホームインスペクターが、【フラット35】の適合証明審査にお伺いした際、道路側の床・壁の傾きの計測をしたところ、計測値は特に問題のある値ではありませんでしたが、建物全体を歩行するうちにホームインスペクター自身が違和感を感じたことがありました。そこで、ホームインスペクションのお申込みに切り替えて床下詳細調査を実施してみると、基礎の裏側にひび割れが見つかり、不同沈下の可能性があることが分かりました。こういった事例のように、ホームインスペクションでなければわからない不具合も少なくありません。

また、インスペクションを実施することで新たに設置されたフラット35「維持保全型」も利用することができ、【フラット35】Sと併用して頂くと金利の面でよりお得にローンを組むことができます。もちろんお金の面だけではなく、より安心して新生活をスタートすることができます。

さくら事務所のホームインスペクションは、【フラット35】の適合証明審査と併せてご利用いただくことが可能です。ホームインスペクションと同時に【フラット35】適合証明審査に必要な調査記録と書類審査を行い、【フラット35】に適合している場合には証明書を発行します。新耐震基準(1981年6月1日以降に建築確認申請受理)の建物であれば、追加料金なくご利用でき、適否の報告だけでなく、不適合の場合には、理由と修繕のアドバイスもいたします。【フラット35】のご利用をお考えの方は、ぜひホームインスペクションのご利用も併せてお考えください。