「新築は予算オーバー、でも中古はちょっと不安…」と住宅購入でお悩みではありませんか?実は、中古物件をリノベーションすることで、予算内で理想の住まいを手に入れられる可能性があります。
新築では実現できない自由なデザインや、希望エリアでの物件取得が可能になるケースも少なくありません。本記事では、一般的な費用相場から具体的なメリット・デメリット、成功のための注意点まで、プロの目線で徹底解説します。これから住宅購入を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
中古物件のリノベーション費用
中古物件のリノベーション費用は、物件の広さ、築年数、状態、そして希望するリノベーションの内容によって大きく変動します。一般的な相場として、マンションの場合、以下のような相場となっています。
- 30㎡未満:約300万円~500万円
- 50㎡~70㎡:約800万円~1,200万円
ただし、この費用はあくまで内装中心のリノベーションを想定したものです。マンションと戸建てではリノベーションの範囲が異なることに注意が必要です。
マンションの場合は主に内装工事が中心となりますが、戸建ての場合は柱や土台などの構造部分の補強、外壁や屋根などの外部に面する部分のメンテナンスも必要になることが多く、費用はマンションよりもかなり高くなる傾向があります。
なお、物件取得の費用も考慮する必要があります。2024年の相場では、中古マンションが平均4,945万円、中古戸建て住宅が平均4,030万円となっています。つまり、物件購入費用とリノベーション費用を合わせても、多くの場合は5,000万円程度に抑えることが可能です。
中古物件をリノベーションするメリット
中古物件をリノベーションすることには、新築を購入するよりも多くのメリットがあります。費用面から資産価値まで、具体的なメリットを見ていきましょう。
物件価格が安く、初期コストを抑えられる
新築物件と比較すると、中古物件は物件価格自体が安いケースが多いです。例えば、4,000万円の新築戸建てと同等の立地・広さの中古物件であれば、2,500万円程度で購入できることも少なくありません。そこにリノベーション費用800万円をかけても、総額3,300万円となり、新築より費用を抑えられることが多いのです。
また、物件価格が安いため、住宅ローンの借入額を減らせる可能性もあります。これにより、月々の返済負担や総支払額を軽減できるメリットがあります。特に頭金が少ない場合でも、総費用が抑えられれば、無理のない返済計画を立てやすくなります。
間取りや内装を自分好みにカスタマイズできる
中古物件のリノベーションでは、以下のようなカスタマイズが可能です。
- 自分のライフスタイルに合わせた間取り変更
- 好みの素材や色を使った内装デザイン
- こだわりの設備導入(オーダーキッチンなど)
- 収納スペースの最適化
- テレワークスペースやホビールームなど特別な用途の部屋の設置
新築マンションや建売住宅では選べない、唯一無二の住空間を創り出せるのが大きな魅力です。デザイン性の高い住まいや、機能性を重視した間取りなど、自分だけの理想の住空間を実現できます。
希望エリアで物件が見つかりやすい
人気エリアでは新築物件の供給が限られていることが多いですが、中古物件は選択肢が豊富です。特に、以下のようなエリアでメリットが大きいと言えるでしょう。
- 都心の人気エリア
- 交通利便性の高いエリア
- 教育環境の整った地域
- 自然環境の良い地域
新築では予算オーバーとなる立地でも、中古物件をリノベーションすれば予算内で実現できることがあります。例えば、子育て世代に人気の学区内や、通勤アクセスの良い駅近物件などは、新築では高額になりがちですが、中古であれば手が届く価格で見つかることも少なくありません。
さらに、古い物件ほど敷地面積が広かったり、天井高が高かったりと、新築にはない特徴を持っていることもあります。こうした物件をリノベーションすることで、新築では実現できない住空間を手に入れられるのも魅力です。
税制優遇や補助金の対象になる場合も
リノベーションに関連する主な税制優遇・補助金制度は以下の通りです。
- 住宅ローン減税:リノベーション費用も対象になる場合があります
- 省エネ改修減税:断熱改修やバリアフリー改修で所得税の特別控除が受けられます
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業:国土交通省の補助金制度です
- 地方自治体の独自支援制度:地域によって様々な補助金制度があります
これらの制度を活用することで、リノベーション費用の一部を軽減できる可能性があります。例えば、省エネ性能を高める改修工事を行った場合、最大250万円の所得税控除を受けられる制度もあります。
ただし、適用条件や申請期限があるため、事前に専門家に確認することが重要です。また、自治体によっては空き家のリノベーションを促進するための独自補助金を設けていることもあるので、物件のある地域の制度も調査してみるとよいでしょう。
資産価値の下落リスクが比較的小さい
中古物件は既に価格下落が進んでいることが多く、購入後の急激な資産価値の目減りリスクが小さいというメリットがあります。特に「築浅すぎず古すぎない」築15〜25年程度の物件では、適切なリノベーションにより資産価値を維持・向上させることも可能です。
また、省エネ性能の向上を図るリノベーションは、将来の売却時に付加価値として評価されることがあります。特に断熱性能の向上や設備の更新は、住み心地の向上だけでなく、将来の売却時にもプラスに働く可能性が高いでしょう。
一方で、デザイン性については個性が強すぎると一般性が低下し、将来の売却時に評価されにくくなる可能性もあります。リノベーションを行う際は、完全に自分好みにできる良さがありますが、将来の売却も視野に入れるた場合は、バランスの取れたデザインを心がけるとよいでしょう
中古物件をリノベーションするデメリット
中古物件のリノベーションには多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。事前に理解しておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。
見えない劣化や瑕疵のリスクがある
購入前に発見できない問題として以下が挙げられます。
- 配管の老朽化
- 電気配線の劣化
- 壁や天井内の雨漏り跡
- シロアリ被害
- アスベストの使用(特に2000年頃までの物件)
これらの問題が工事中に発覚すると、追加費用や工期の延長につながります。ホームインスペクション(建物診断)を実施しても、壁の中などは完全に把握できない場合があるのが現実です。
特に外壁材、屋根材、ケイカル版等の内外装下地材などに含まれるアスベストは、2000年頃まで使用されていたケースもあり、発見された場合は専門業者による適切な処理が必要になります。
リノベ費用が想定より高くなる可能性
予算オーバーが発生する主な原因は以下の通りです。
- 工事中に発見された問題
- 設計変更や仕様グレードアップ
- 資材価格や人件費の高騰
- 想定外の構造上の制約
リノベーションでは、壁を壊してみたら予想外の設備配管があった、床下の構造が想定と異なっていたなど、工事を進める中で様々な課題が発生することがあります。こうした事態に備え、リノベーション費用の10〜20%程度は予備費として確保しておくことが望ましいでしょう。
また、工事の過程で「せっかくなのでここはグレードアップしたい」という気持ちが湧いてくることも少なくありません。こうした予定外の仕様変更も予算オーバーの原因になるため、事前にしっかりと計画を立て、優先順位を決めておくことが重要です。
リノベーションに時間がかかる
リノベーションの一般的な所要期間は、計画から完成までおよそ2〜7ヶ月程度かかります。初期の計画・設計段階では、打ち合わせや見積もり調整、図面作成などに1〜3ヶ月を要し、その後の工事期間には解体、下地工事、内装・設備工事、仕上げまでで1〜4ヶ月ほどかかるのが一般的です。
この期間中は、自宅に住めないため仮住まいの確保が必要となり、引っ越し費用や二重家賃などの負担も発生します。全体のスケジュールや費用を考えるうえで、この点も事前にしっかりと計画しておくことが重要です。
特に水回りを含む大規模なリノベーションでは、工事期間が長くなる傾向があります。また、人気のリノベーション会社は予約が取りにくく、希望の時期に工事が始められない可能性もあります。余裕を持ったスケジュール設計が必要です。
住宅ローンの手続きが複雑になる場合がある
中古物件の購入とリノベーションを組み合わせる場合、住宅ローンの選び方によっては手続きが複雑になることもあります。主に以下の3つの融資パターンがあり、それぞれにメリットと注意点があります。
① 物件購入とリノベーションを別々に融資するパターン 物件購入には住宅ローン、リノベーション費用にはリフォームローンや自己資金を使う方法です。この場合、それぞれで審査や契約が必要となるため、手続きが煩雑になりがちです。さらに、リフォームローンは住宅ローンよりも金利が高めで、借入可能額も少ないのが一般的です。
② 一体型ローン(物件+リノベーション費用をまとめて借りる) フラット35や、民間銀行が提供する「リノベーション一体型ローン」を利用する方法です。購入と改修費用を一本化して借りられるため手続きがスムーズですが、物件の事前審査や評価に時間がかかることがあり、早めの準備が必要です。
③ つなぎ融資が必要なケース リノベーション後の物件価値をもとに融資を受ける場合、一時的につなぎ融資を利用する必要があります。この方式は、完成後の評価額で本融資を受けるまでの資金ギャップを補う手段ですが、金利が高く、手続きも複雑になりやすいため注意が必要です。
耐震・断熱性能などが新築に比べて劣る場合もある
築年数の古い物件では、以下の性能面で新築に劣る可能性があります。
- 耐震性: 1981年以前の物件は旧耐震基準
- 断熱性: 2000年以前の物件は現行の省エネ基準を満たしていないことが多い
- 遮音性: 特にマンションの場合、階下への騒音対策が十分でない場合がある
- 設備の寿命: 基幹設備(配管など)は交換困難な場合もある
これらの性能を新築レベルまで引き上げるには、大規模な工事と高額な費用が必要になることがあります。例えば、断熱性能を高めるには壁や窓の大幅な改修が必要になり、マンションの場合は管理規約上の制約から実施が難しいケースもあります。
また、特に戸建て住宅では、耐震性能の向上が大きな課題になりますが、構造的な問題により十分な耐震補強ができない物件もあります。リノベーションの計画段階で、どこまで性能を向上させられるか、専門家と相談することが重要です。
中古物件をリノベーションするのはお得なのか?
中古物件のリノベーションが「お得」かどうかは、物件の条件や状態、購入者の優先順位によって大きく異なります。結論としては、「条件次第」と言えるでしょう。以下のようなケースでは特にお得になりやすい傾向があります。
お得になりやすいケース
- 立地条件の良い物件
- 築15〜25年程度で基本構造が健全な物件
- マンションの場合、管理状態が良く修繕積立金が適切に設定されている物件
- 大規模修繕が完了している、または近い将来に予定されていない物件
- DIYや自分でできる作業を取り入れられる場合
特に、立地や間取りを重視する方にとっては、新築では手が届かない好立地の物件をリノベーションすることで、理想の住まいを予算内で実現できる可能性が高まります。また、築年数が比較的浅く、基本構造や設備に大きな問題がない物件を選ぶことで、リノベーション費用を抑えることも可能です。
一方で、築年数があまりに古い物件や、構造的な問題を抱える物件の場合は、リノベーション費用が高額になり、必ずしも「お得」とは言えなくなる可能性もあります。また、リノベーションの範囲や内容によっても総コストは大きく変わるため、自分にとって何が重要かをしっかりと見極めることが大切です。
中古物件をリノベーションする際の注意点
中古物件のリノベーションを成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。物件選びから予算計画まで、押さえておくべきポイントを解説します。
物件購入前に「リノベに向いているか」を確認する
物件の構造や規約によっては、希望するリノベーションが実現できないことがあります。特にマンションは、管理規約や構造による制約が多いため、購入前の確認が不可欠です。
チェックポイント
- 間取り変更ができる構造か(マンションの壁式構造や戸建ての耐力壁には注意)
- 管理規約で水回りや床材の変更が可能か
- リノベーション実績がある物件かどうか
マンションの場合、内装の間仕切り壁は比較的自由に変更できますが、躯体は共用部分になるため変更はできません。また、床が二重床になっているか直貼りかによって、水回り設備の位置の自由度が異なります。直貼りの物件を二重床にすることは可能ですが、天井高さが低くなるため現実的ではないことが多いです。
戸建て住宅の場合は、壁の変更にあたって耐震性の確認が必要になることがあります。特に耐力壁を撤去する場合は、代替の補強策が必要になります。
ホームインスペクションを必ず実施する
中古物件は見た目だけでは状態を判断できません。専門家による建物診断(ホームインスペクション)を行うことで、後からの想定外の修繕リスクを減らせます。
実施のメリット
- 構造や設備の劣化状況を事前に把握できる
- 修繕が必要な箇所の見積もり精度が上がる
- 安心して購入判断ができる材料になる
特に戸建て住宅の場合は、基礎や柱、屋根などの状態を専門家の目で確認することが重要です。マンションでも専有部分の配管や設備の状態、結露やカビの有無などをチェックすることで、リノベーション計画の精度を高めることができます。
また、物件購入の条件交渉材料としても活用できるため、購入前に実施することをおすすめします。
総予算をしっかり組み、余裕を持つ
リノベ費用だけでなく、設計費、仮住まい、引っ越しなど、さまざまなコストが発生します。予算オーバーを避けるためにも、全体像を把握しておくことが大切です。
予算組みのポイント
- リノベ費用以外にかかる諸経費を把握する
- 追加工事に備えて予備費(+10〜15%)を確保
- ローン返済や生活費も無理のない範囲で調整
リノベーションの費用は、施工会社や内装のグレードによっても大きく変わります。複数の会社から見積もりを取り、内容を比較検討することが重要です。また、物件購入後すぐにフルリノベーションするのではなく、段階的に進めることで、費用を分散させる方法もあります。
住宅ローンの返済計画も含めた長期的な家計計画を立て、無理のない範囲で進めることが、快適な住生活につながります。
まとめ
中古物件のリノベーションは、新築購入とは異なる魅力とリスクを持っています。メリットとしては、コストを抑えながら理想の住まいを実現できる可能性が高く、特に立地条件の良い物件や自分らしい空間づくりを重視する方にとっては大きな選択肢となります。
しかし、中古物件特有の「見えない劣化」や予算オーバーのリスクを軽減するには、プロの目による適切な物件評価が欠かせません。特に壁の中の配管劣化や断熱材の状態、構造上の問題などは、素人目では判断が難しいものです。
こうしたリスクを最小限に抑え、安心してリノベーションを進めるためには、専門家によるホームインスペクション(建物診断)が非常に重要となります。さくら事務所では、豊富な経験を持つ専門スタッフによる詳細な建物診断サービスを提供しています。購入前の物件調査から、リノベーション計画の相談、施工後のチェックまで、プロセス全体をサポートしています。リノベーションをお考えの際は、ぜひご相談ください。