2018年6月、準防火地域の容積率10%緩和を含む、「建築基準法の一部を改正する法律案」が衆議院で可決、成立しました。
度重なる火災被害から木造住宅の密集地域などで、火災の延焼を防ぎ、被害を最小限に抑えるべく、より防火性能の高い建物へ、建替えを促す目的もあります。
建物を新築する際、建築基準法によって防火について、外からの火が燃え移りやすくならないよう、室内で出火が起きた際に燃え広がらないよう、仕様が定められています。
「うちは、建てたばかりだからきっと法的にクリアしているし、木造密集地域でもないから大丈夫」という方もいるかもしれません。
ですが、意外なことが火事の被害を広げてしまう可能性があるのです。
今回は、ホームインスペクター(住宅診断士)が、防火・耐火について知っておきたいポイントを解説します。
人気のDIYで、まさか燃えやすい家に?
手軽にできて人気のDIYですが、そのDIYで火事の被害が広がってしまう可能性もあります。
例えばキッチン。
キッチンはDIYの中でも特に人気がありますし、手軽に自身で変更できるパーツもたくさん市販されていますね。
もともとはキッチンは火気使用室として、コンロの周囲の一定範囲で火が燃え移るのをさけるため、燃えにくい仕上げ材を使うことが定められています。
ですが、コンロの後ろの立ち上がりや接するカウンター、隣接する吊戸棚などをDIYで気軽に手を加えてしまう方もいるかもしれません。
本来、火元に近く、燃えにくいもので造られているべき(覆われているべき)部分が、可燃性のシートに変更するなど、DIYで手を加えられてしまうと火災の被害を拡大させてしまう恐れがあります。
IHコンロであっても油に火がついたときに広範囲で一気に火が燃え広がってしまう可能性も。
また、バルコニーを快適に使うためにウッドデッキを敷く方も多いでしょう。
ですが、よく調べずに市販の可燃性のものを敷いてしまうと、近隣が火事になったときに、そこから火災が広がってしまい、自身の住宅も火災の被害に遭ってしまいます。
DIYほどでなくても、見た目をスッキリさせるために、TVボードや棚などの後ろにタコ足配線を隠しているケースもよく見かけます。掃除もしにくくなりますので、埃がたまってしまうとそこから発火する危険があります。
気軽にできるDIYですが、これらは意外な盲点です。
自身で行う際には、その部材を使うことで危険がないか、今一度考えてみるといいでしょう。
リフォームでも同様に
プロに任せれば大丈夫、と思っても残念ながらリフォーム工事でも、同様のことが起こり得ます。
タイルや石を貼ったところ、そのために貼った下地が合板で、防火認定が取れなくなってしまったという事例もありました。
防火認定とは、建築基準法で定められた、一定の箇所に仕上げ材やその下地に用いる建材を選定し、燃えにくい仕様を守る規定です。
表面の仕上げの素材だけでなく、建物によっては外の仕上げ+その下に石膏ボードを貼る、というかたちで燃えにくいとされる基準(防火認定)をクリアしているケースもあるため、仕上げ材は燃えにくいとされるものでも下地にどのようなものが使用されているか確認しなかったため、基準をクリアできなくなってしまうのです。
他にも、結露がひどいので、サッシを交換したら、防火認定がとれていないものだった、なんて例もあります。
残念ながら、これらはほぼ担当者の理解不足が招いた悲劇です。心配な方はリフォーム工事について第三者にチェックしてもらってもいいでしょう。
見えないところの施工不良
今年、話題になった、賃貸アパートの施工不良の事件。
本来なら、隣接住戸から火が燃え広がるのを防止するために、界壁という壁が天井までなければならなかったところ、屋根裏でその界壁が上まで施工されていなかったのです。
また、隣接する住戸に限らず、隣家からの延焼を防ぐために、耐火性の高い下地(石膏ボード)を使うべきところ、基準のものが使われていなかった、という例も実際にありました。
そして、特に注意したいのが木造3階建て。本来、木造3階建ては2階建てに比べ、火災や災害が起きた時に、避難までの導線が長くなる可能性があるため、安全に避難するため、より高い防火性・耐火性が求められます。
例えば、「3階で寝ていたら、階段が焼け落ちてしまい逃げれなかった」なんてことのないように、燃えるまでにより時間がかかる仕様にしておく必要があるのです。
壁の内部が設計図通りにきちんと仕様を守って作られたかどうかは完成してからではわかりません。正しい仕様で設計されているか、計画通りに建てられているかもしっかりチェックしましょう。
いかがでしたでしょうか?
その他にも、建物の劣化により防火性能が落ちてしまっているケースもあります。
火災への備えとして、まずは自宅の点検をしてみてはいかがでしょうか?
火事以外の災害への弱点も見つかるかもしれません。
ご自身での判断が難しいところ、おかしいな?と思うところがあれば、建物のプロ、ホームインスペクター(住宅診断士)にお気軽にお問合せください。